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『事業部制』『カイゼン運動』実施の自治体を訪問しての感想

 2006年2月7日(火)、8日(水)の2日間、市議会行財政改革調査特別委員会は、岐阜県の大垣市へ「事業部制」の調査で、各務原市へ「カイゼン運動」の調査で訪問しました。この2箇所は、公明党議員が紹介したもので、「徹底したコスト削減で実績をあげている」との触れ込みでした。
 私は、この2箇所の取り組みは、市民や職員に負担を負わせ、大型開発事業は聖域扱いにしていることから、評価できるものではないと考えていますが、実際に訪問してお話しをうかがうと、相当なしわ寄せが市役所現場でも市民に対しても押し寄せていることがうかがえました。
 市議会の行財政改革調査特別委員会に提出した感想文を掲載します。写真は各務原市の1階エレベーター入口に貼られていたステッカーです。

各務原市「カイゼン運動」

写真
各務原市の1階エレベーター入口に貼られていたステッカー

 「カイゼン運動」とは「徹底したムダの排除」を意味し、別名「トヨタ方式」とも呼ばれている。民間経営手法を取り入れ、市政運営に徹底した市場原理を導入するもの。具体的には、(1)徹底した人員の削減を追求し、職員のパート化、外注化をすすめる、(2)業務のアウトソーシングを行ない、民間でできると判断したものは、業務を民間に委ねる、(3)職員から、そのための提案を行なわせる、というもの。そして、実際に行なわれてきたことは、補助金の削減、職員数の削減、職員の各種手当の削減、市民への敬老祝い金の削減、民間委託の推進、公立幼稚園の廃止、工事費の諸経費見直し(発注単価の引き下げ)などである。当然、市民からの反発は避けられず、公立幼稚園の廃止の時には「保護者からは、かなり抵抗があった」とのこと。また「電算システムの再構築」の名でサーバーを外部に移すことによって(2006年4月から)、職員は自分でカスタマイズができないため、「職員からは不満が出ている」との説明があった。
 「カイゼン運動」を推進するためには市長のトップダウンが不可欠なため、市長自ら課長職者以上の管理職対象に週一回の会議を開き、市長直轄の行財政改革対策監を配置。「市長からのトップダウンは強い」と、説明にあたった職員は述べる。
 補助金の見直しの方法は?の問いに、「ルールされているものはない。財政課で見直しを行なっている」との説明であったが、ルールがないというのは逆に言えば、恣意的に行なえるということになる。一方、各務原市の議会予算(2005年度)を見ると、「旅費」に1,261万2千円を計上している。その額の多さに疑問を持ち、「行政視察旅費」の説明欄を見ると、常任委員会視察は一人当たり年間15万円、特別委員会と議会運営委員会は一人当たり8万円、市議会だより編集委員会にも一人当たり8万円の旅費が計上されていた。「海外視察はこの中に含まれているのか」と問うと、「別枠で組む」との返答。また、専用の市長車、議長車があるとのことで、「カイゼン運動」とは、職員、市民には負担を負わせながら、市長や議会は「カイゼン」しないことがわかった。ところで、各務原市は隣接の川島町と合併するとのこと。しかし川島町は木曽川の中にあるため橋を架けなければならなくなり、その架橋経費が実に100億円。2004年度に「カイゼン運動」で削減できた経費25億5千万円の4倍にもなる。なんのための「カイゼン」であろうか。この「カイゼン運動」を推進している人物は、1997年に市長に就任。前社会党の県会議員だという。

大垣市「事業部制」

 「職員が持つ能力を最大限発揮できるような組織づくりや効率的な行政運営を推進するため」との目的で2003年度から導入。その基本は、各部局を民間のような『事業部』と見立て、予算や人事権などの権限を各部局に移譲する。そのうえで、各政策分野ごとに自らの決定に対して責任を負わせるというもの。具体的には、(1)事業内の予算流用や部局内の人員配置を担当部局長の権限とする。(2)経常的事業予算を各部局に枠配分し、予算編成権を各部局に移譲するとしている。
 説明によると、(1)については、たとえば、ある事業で委託料が安くなり、余った予算を備品購入に回す場合(予算流用)に、従来は総務部長の決済が必要だったものが、主管部長の判断でできるようになった。部局内の職員異動を主査以下で行なえるようにし、「1月以上、6月未満」の範囲で、部内応援を行なってきた(03年12人、04年2人、05年1人)。(2)については、今年度(05年度)、総予算450億円のうち57億円(12.7%)を枠配分方式にして、部局長に渡しているとのこと。
 伊藤忠商事出身の現市長の方針は、「厳しい財政状況の中で、限りあるお金や人を各部の裁量によって効率的に配分できるようにすることにより、効果の少ない事業予算を縮小し、投資効果の高い事業に予算を振り分けたりできるようにしたい」。また、「仕事量の変化に応じて人員配置も変えられるよう、人事異動の権限も各担当部に任せる」というもの。見方によっては、徹底的な「独立採算性」を貫き、住民にとって必要な事業であっても、「効果の少ない事業」と判断すれば、整理淘汰させるというものである。
 大垣市の「事業部制」のミソは、市長が展開させようとしている「政策的事業」は「枠配分」方式から除外され、「経常的事業」のみを「枠配分」方式にし、その「枠」自身も、前年度比でマイナスシーリングをかけるという代物である。しかし、「現時点、財政効果はまだ見えて来ない」とのこと。
 一方、「財政課が切れなかったところを、担当課が自ら事業を切ってきた。自ら削ることの方が辛い」との説明があったように、「枠配分」方式およびマイナスシーリングによって、「政策的事業」ではなく「経常的事業」を削らされる職員にとっては、関係する市民や市民団体の顔が見えるだけに、「事業部制」は、市民にとっても職員にとっても「酷」である。しかし市長の方は、自ら展開したい事業(政策的事業)は枠外であるため、都合の良い制度となる。
 「事業部制」の導入を提案する議員が小金井市にもいるが、「公」の仕事とはなにかを、再度、考えてみる必要があるのではないだろうか。


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