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遥かなる京丹後

 議会事務局から手渡された行程表を見て、目の前が真っ暗になった。「なんだこのスケジュールは!」。遠い所だとは知っていたが、いくらなんでも、これは遠すぎる。しかもなぜ、特急列車に乗らないのか?。たしか、特急列車も走っていたはず‥‥。

 1月15日(水)午後3時すぎ、初日の視察先・大阪府堺市を終えた小金井市議会議会運営委員会の面々は、これから始まる長距離移動に、気が遠くなる思いで南海電車に乗り込んだ。行き先は、翌日の視察先・京丹後市。いわずと知れた、丹後半島のど真ん中である。

 大阪駅までは車窓を眺めながら、それでも意気揚々と街なみを楽しんでいた。しかし大阪駅からは、しだいに言葉が途絶えていった。行程は以下のとおりである。大阪駅から篠山口駅までの66.1㎞を快速電車で68分間揺られ、篠山口駅から福知山駅までの48.1㎞を各駅停車で59分間乗車。福知山駅で京都丹後鉄道の各駅停車に乗り込み、30.4㎞を50分かけて宮津駅へ。そこから目的地・峰山駅までの23.6㎞を各駅停車で32分かけて辿り着くというもの。京都は大阪と隣接しているにもかかわらず、兵庫県を通って丹後半島に向かうことから、大阪駅から4時間かけて京丹後市に向かうという具合である。なぜ特急列車を利用しないのか?。議会事務局いわく「特急列車との接続が、うまくいかなかったので」。そのわりには、途中の駅で特急列車が何本か追い抜いていったようにも思えるのだが。「この行程どおりにいかないと、ホテルに着くのは相当に遅くなります」と議会事務局。一時間に1本程度しか電車は走っていないのである。乗り換えがうまくいかなければ、さらに悲惨な事態が待ち受けるのである。

 各駅停車に乗ると、いろんな光景を目にする。娘の中学時代の友だちは兵庫県の三田市に移り住んでいるが、三田市が山あいの田園に囲まれた所だということがわかった。三田市を過ぎて篠山市に向かうあたりでは、線路の下を蛇行するように、鮮やかな渓谷が走っている。地図を広げてみると、このあたりを丹波高地というらしい。しかし景色はここまで。日没を迎えてしまった。外は、家々の明かり以外は、ほとんど闇である。

 福知山駅は京都府に属する。ここからは京都丹後鉄道へ。各駅停車は一路「あまのはしだて」へと向かう。やがて車内アナウンスが。「お疲れさまでした。まもなく、あまのはしだてに到着いたします」。私と岸田正義議員は車窓を眺めながら、この外は海ですかねぇ‥と私が問う。さぁ‥私にもわかりませんねぇ。ず〜と向こう側に明かりが見えるので、その手前の真っ暗な部分は、おそらく海なんでしょうねぇ‥と岸田議員。いつかは来てみたいと思っていた天橋立。なんの感慨も浮かばなかった。

 わずか1両の車両。立っている人も多い。時計の針は7時を大きく回った。車内には高校生が何人も乗っている。この子たちは福知山駅から一緒だったなと、宮津駅で乗り換えたあとに彼らを見ながら思い浮かべる。福知山駅から宮津駅までは50分。乗り換えに10分。それから、さらなる駅へ。この子たちは高校まで、いったいどれくらいの時間をかけて通っているのだろうか。あまのはしだて駅から2つ目の「よさの駅」で、そのうちの多くが下車。つぎの「きょうたんごおおみや駅」でも、次々に下車した。駅の外には迎えに来られた車であろうか。何台もの車が、明かりを灯して待機していた。

 午後7時43分、ようやく目的地・峰山駅に到着。初日の視察地・堺市からはじつに4時間30分の道のりであった。駅の外は建物の明かり以外は何も見えない。どんな町なのかもまったくうかがいしれない。丹後半島の真ん中あたりなので、おそらく周りは山に囲まれているのであろう。じつに静かだ。

 京丹後市は人口5万人。丹後ちりめんが有名。しかし「9割の若者が、高校を卒業したら市外に出る」という。市役所の1階ロビーに、京丹後市の人口動態が掲示されていた。「前月比−26人」。「きらびやかな街」「魅力あふれる街」が脳裏を占めていた京丹後市は、人口減少の街となっていたのである。

 自民・公明政権によって、人口減少地域の鉄道網が弱められ、そのことによって、さらに人口減少に拍車がかかる────。鉄道網がすみずみにまで確立されていれば、過疎化をある程度は抑えることができるであろうし、自然豊かな丹後半島地域に、多くの観光客を呼び込むことが可能となるのである。丹後半島は今日、車なしではいけない場所になりつつある。

 「これから、どちらへいかれるのですか?」と、視察終了のきわに京丹後市議会議長が問う。「東京へ帰ります」と応えると、「え?。いまからじゃぁ、大変な時刻になりますよ」と驚きの声が返ってきた。我々一行は、峰山駅から7時間30分かけて武蔵小金井駅に帰還。到着時刻は午後8時15分であった。

(2020年1月20日付)

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