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行財政改革調査特別委員会で池田市と明石市を視察

写真 冬の視察は、天候に大きく左右される。雨程度ならば構わないが、嵐や雪の場合には交通に支障をきたし、時間どおりに事が運ばないことも起きる。1月26日〜27日に実施された市議会行財政改革調査特別委員会の視察も、新幹線の行程途中に積雪地帯を抱え、東京駅で新幹線に乗った時点で、目的地へは「1時間程度は遅れて到着する」との情報が流れた。

 今回の視察の目的地は、初日が大阪の池田市、2日目は兵庫県の明石市である。天気情報では京都や大阪方面も雪マークが付き、テレビでは関西から山陰地方の広い範囲で「積雪」が報じられていた。そのため私は前日の夕方、靴底にポッカリと穴を開けてくたびれているブーツを物置に放り投げ、なけなしの金を握りしめて北口の靴屋に走ったのである。26日の朝、武蔵小金井駅の改札前に集合した私の足元には、新調したブーツが誇らしげにおさまっていた。

 東京駅から大阪駅までの区間で積雪がとくに激しいのは、岐阜県と滋賀県の境に位置する関が原。名古屋駅を過ぎたあたりから雪景色が見えはじめ、関が原では白一色に変貌した。車内には徐行運転実施とのアナウンスが流れ、雪景色に感化されてか、こころなしか車内も冷えてきたように思えた。

 滋賀県は、関が原以上に白一色に染まっていた。通過列車の待ち合わせのために停車した米原駅(写真参照)周辺は、降り続く雪で視界が100m程度。白色に埋まる街は、人の気配さえも消していた。

 不意に渡辺大三議員が言う。「イタさんの田舎は、こんな程度じゃないでしょ」。そうなのである。我が郷里・越前の冬は、太陽を見ることが少ない。鉛色に広がる北陸の空からは、来る日も来る日も重い雪が降り注ぎ、人々は雪のなかで春が来るのをひたすら待ちつづけている。だから渡辺氏が言うように、こんな程度ではないのである。しかし目の前の光景は、北陸の冬から38年余遠ざかっている私に、北陸の冬を想起させる厳しさを伝えていた。

 列車は京都へと入っていく。とたんに鉛色の空がひらけ、青空が広がっていく。いつのまにか白色は失せ、さまざまな色合いをみせる景色が車窓に映し出されていた。京都も大阪も晴れ。先程までの厳しい冬は、そこにはない。阪急梅田駅を歩く私の足元には、青空に不釣り合いなブーツが恥ずかしそうにつきまとっていた。 ※市議会事務局に提出した視察感想文を以下に紹介します。

(2016年2月19日付)

池田市と明石市の取り組みを視察して

[池田市/窓口業務のアウトソーシング]
写真 池田市が「窓口業務」の委託化=外部委任(アウトソーシング)に踏み切った理由は、「行財政改革」の名のもとに正規職員の不補充・削減がすすめられ、窓口業務の非正規職員(アルバイト含む)依存度が高まっていったからである。業務量は多いのに、経験不足、しかも勤務時間等に制約がある非正規職員が増加すれば、正規職員の肩に業務と責任が重くのしかかる。これでは正規職員はたまったものではない。だから現場から悲鳴があがり、「市長からのトップダウンではなく、職員からの提案で実行」となっていった。ようするに兵糧攻めである。学校給食調理業務の民間委託化がすすめられていった小金井市と、同じ過程である。
 民間委託化、業務のアウトソーシングは、全国の自治体ですすめられている。政府が「骨太方針」で、経済・財政再生計画の重要な柱に「公共サービスの産業化」を明示し、公共部門の業務を民間に開放して、企業の儲け口を拡大する方針を示しているからである。池田市の「窓口業務のアウトソーシング」も、この方針に沿うものとなっている。
 「自治体の財政負担が軽減し、民間にも仕事が行く。しかも、窓口サービスは維持される。なんら問題はない」と考える人もいる。しかしどうであろうか。池田市の説明では、年間で400万円余の経費削減になったという。理由は簡単である。委託料を市が設定し、入札あるいはプロポーザルにかけるからである。バブル景気のように民間が給料が高かった時代とは異なり、仕事を求める企業と、低い給料でも仕事に就きたい人々がいるいまの時代は、発注者有利となる。経費削減にならないはずがない。
 受託者側は、削減された市の職員数と同程度の人数を配置しているという。一定数の職員配置は不可欠だからである。しかし、同程度の人数を配置しても、市の職員数にはカウントされない。経常収支においても人件費にはカウントされず、物件費にカウントされる。400万円の経費削減ができたとはいえ、「人件費」でなければ「了」とするあり方に、しっくりしないものを感じるのは私だけであろうか。
 「窓口業務の委託化」においては、問題点を指摘する声も多い。第一に「偽装請負」の懸念である。「受託者側の管理者を通じて業務の指示を行なっている」と言うが、その一方で「申請書受理や書類交付にあたっては、間違いがないかを市の職員がチェックしている」と述べている。はたしてその都度、管理者を通じて委託職員に指示をするなどという、まどろっこしいことをしているのであろうか。業務に遅滞をきたすことにしかならないと思うのだが。
 第二に「委託職員の賃金水準」である。「委託職員の入れ代わりは、ほとんどない」というが、削減された市職員数と同程度の委託職員数の配置となっているということは、「委託料」で割り返すと委託職員一人平均、年378万円となる。ここから受託企業のフトコロに入る分や社会保険料、税金などを差し引くと、本人への支給額はそれよりも低くなる。「雇用者の賃金額は把握していない」「直接雇用か派遣職員かは不明」というのだから、求人広告で目にするような賃金で雇用されているのではないかと見ざるをえない。
 第三に「情報漏洩・流出」への不安である。発注者側は「仕様書や契約書で、情報管理を徹底させている」と述べ、受注者側は「職員の研修を行なっており、懸念するようなことはぜったいに起こさない」と述べるであろう。しかし、日本年金機構や生命保険会社の個人情報流出問題をみればわかるように、外部からのパソコン不性アクセスなどではなく、内部で働く人間が情報を意図的に外部へ持ち出している。「仕様書や契約書で、情報の適切な管理をうたっている」は、なんら防止策にはならないのである。もちろん、市職員による情報漏洩・流出も、起こそうと思えばできないことではない。では、どちらがリスクがより少ないであろうか。「公務労働、個人情報を扱っている」という意識を日常的・系統的に学び続けることができる位置にいる者のほうがリスクは少ないと、私は思う。また、働く人の権利を守る労働組合が身近にあることも、働くことへの不安をなくし、情報漏洩・流出を防ぐたしかな道になると、私は思う。だから、委託よりは市直営のほうがリスクは少ないと、私は確信する。
 第四に「窓口業務の安定的提供」への危惧である。経費削減をすすめるために委託は行なわれる。そのため、委託料は抑えられるだけ抑えるというのが、どの自治体でもやられていることである。そのしわ寄せは委託職員の人件費にはねかえってくる。事業者への委託は、単年度契約で最長5年間というのが一般的であるが、低い委託料では職員確保が難しくなり、5年を待たずに途中で契約断念というケースも起こりうる。仮にアベノミクスが効果を見せ、民間市場が活発化し、公務職場の仕事を受注しなくても民間の仕事でやっていけると事業者側が判断した場合、プロポーザルや入札に応じる事業者は出てくるのだろうか。
 先述の「情報漏洩・流出」問題でいえば、市職員が情報漏洩・流出を起こした場合は、その職員を処分することになる。しかし、委託職員が起こした場合は、委託事業者との契約解除に発展する。そうなると、新たな委託事業者が決まるまでの間は、市職員が窓口業務につかざるをえなくなる。しかし、委託事業者に任せていた部分を、いきなり市職員で対応することが可能なのだろうか。その業務を日常的にこなしていなければ、不可能だと思うのだが。
 第五に、そもそも窓口業務が外部委託になじむのかどうかという点である。池田市では、各種届出の受付やシステム入力、各種給付申請の受付・システム入力、保険料賦課のためのシステム入力などを、受託事業者に任せている。そのなかには、戸籍や住民基本台帳法に関わるもの、国保や介護保険、後期高齢者医療保険に関わるものも含まれている。しかし、国保や戸籍、住民基本台帳などは、社会保障の根幹や権利の証明に関する地方自治体の重要な職責であり、これを「窓口業務」として外部委託を行なうことは、制度の根幹を委任するというものになるのではないだろうか。同時に、「窓口業務」は公権力の行使を含むものであり、権限を持たない委託職員に付かせてよい部署ではないと考える。
 池田市は「他の業務の受付窓口も委託できないかどうかを検討していく」と述べている。問題点が指摘され、改善を余儀なくされた東京・足立区のようになっていくのではないだろうか。

[明石市/人物重視の新卒採用制度について]
写真 優秀な人材を確保したいと願うのは、自治体であれ民間であれ、どの業種・職種を問うことなく、同じである。問題は、どのようにしてそのような人材を確保するのかという点にある。
 明石市は、大手企業が社員を採用する際に使用する手法を活用している。従来の「教養試験」「専門試験」では頭は良く、まじめで勤勉だが、チャレンジ精神やバイタリティに欠ける面が見られることから、民間が採用している「一般常識・能力適性試験」に切り換えたというのである。同時に、一次試験の段階から個人面接を重要視し、集団討論ではあらかじめ与えておいた課題に対して、どのように対応していくのかを見定める。そのうえで、筆記100点、人物200点という配点で評価する。従来は筆記200点、人物100点で対応していたが、「人物重視」の観点から、配点を逆転させたという。
 一次試験を通過した人は二次試験を迎える。従来は、二次試験では集団討論は含まれてはいなかったが、「人物重視」の観点から二次試験でも集団討論を行ない、その場で課題・テーマを提示する。また、2013年度の採用試験からは、受験者に自己PR用の「エントリーシート」を提出させるようにしている。―――この段階にまで到達すると、昨年の我が息子の就職活動の取り組みを彷彿させるものがあり、民間の採用試験と何ら変わらないことがわかる。
 話をうかがうかぎりでは人材確保に相当、力を入れていることがわかるし、そのようにでもしなければ優秀な人材は確保できないのだろうなと思う。取り組みとしては理解できるところである。
 明石市では「任期付専門職」の採用も行なっている。任期は5年で、満了後も試験で合格すれば再度、任期5年の任期付職員に採用されるという。資料によると、弁護士、社会福祉士、臨床心理士、天文職、障害者施策、後見センター(社会福祉士)、手話通訳士となっている。採用された後の職場での役職は「課長」や「主任」「係長」など様々となっており、その人のこれまでの経験度合いをもとに「格付け」でその役職についているという。
 説明を聞いていて、いくつか疑問点が浮かんできた。(1)なぜこれらの人が任期付でなければならないのか、(2)「格付け」とはいえ、採用されていきなり「課長」「主任」「係長」などのポストに付されるわけだが、職場の人々はどのように感じるのだろうか、(3)任期が5年ということは、5年を経過したら、その人は職場からいなくなるということであり、職場づくりの面でどうなのか―――。
 私が思うに、「任期付」にした理由は、その方が財政的に負担が少ないからではないのか。「格付け」によって、新卒の人よりも給料は高いかもしれないが、退職金は少なくてすむし、その人はこれ以上、市役所に必要ないと判断すれば、「満了後の試験」を実施しなければよく、もしくは「合格」にしなければよいのである。つまるところ、任期付専門職の導入は、職員削減の一環ではないだろうか。マスコミをつかって「新しい挑戦」だと華々しくうたってはいるが、はたしてどんなものか。
 明石市は、管理職に対する「業績評価制度」を導入している。仕事ができるかどうかで、一時金の査定を行なうというのである。しかし、その評価はどこまで客観的といえるであろうか。人が人を評価し査定する―――対等であるべき人間同士において、特定の人に人を査定する権利が与えられていいのだろうか。はなはだ疑問である。

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