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公共事業発注業務に関する研修会に参加
 

 10月末、都内で2日間にわたって行なわれた特定非営利活動法人(NPO法人)「建設政策研究所」主催の地方議会議員対象の研修会に参加した。9月中旬に案内チラシを拝見し、是が非でも参加したいと思い続けていたものである。

 この研修会に惹かれた理由はただ一つ、2日目に公共事業発注業務に関する講義があること。私は、公共事業に関する議会質問を行なう際には関係する文献や資料を読み、時には関係団体へ出かけて行って教えを乞うてきたが、その道の専門家から学ぶ機会はこれまでほとんどなかった。同時に今回の講義では、公共事業発注のイロハから学べるものとなっており、私が把握している認識の正誤を確かめることにもなるのである。願ってもない研修会である。

 結果からいえば、期待通りの中身であった。資料もいただき、再度、読み返さなければと思うところである。以下に、小金井市議会事務局に提出した感想文を掲載しますので、お時間のある方はご覧ください。

(2014年11月17日付)

建設政策研究所主催の研修会感想文

写真 この研修会を受講しようと思い至った理由は、次の諸点からである。第一は、公共工事発注業務の仕組みを基礎から学ぶこと。第二は、建設工事従事者の雇用形態の仕組みを学ぶこと。第三に、公共工事発注業務におけるルール、法制度を学び直すこと。第四に、小金井市が発注する公共工事や業務委託の改善につなげる機会にすること。第五に、私の頭脳に納められている公共工事発注における様々な知識が正しいかどうかのチェックを行なうこと――――である。そのことから、2日間行なわれた講義のうち、初日の全体講義は、あまり興味をそそるものではなかった。とはいっても、講義にはしっかり耳を傾け、必要なところはメモもとっている。たんに、私の関心事に合致していなかったというにすぎない。

 初日の全体講義は、記念講演と特別講演の2本立てである。最初の記念講演は「高齢になっても安心して暮らせる地域のしくみづくり」とあるように、少子高齢化社会を迎えるなかで、いかにして高齢者が安心して暮らして行けるしくみをつくっていくかというもの。配付された資料には、日本の財政の現状と社会保障給付費の状況、政治に対する国民の意識、高齢化の進展とそれに対する地域の受け皿状況が記され、講師の先生はそれらを説明しながら、一例としてオランダの地域ケアシステムを紹介した。

 先生は「今後、高齢化率が高まるとともに認知症発症者も増加する」と述べ、「東京都内の高齢化率の高まりのなかで、地方の福祉関係事業所の専門職員が単身で東京都内に移ってきている。しかし、報酬単価の引上げが行なわれないなかで、介護職の賃金が低く抑えられている」と指摘。全産業の平均月額賃金が32万4千円なのに対して、介護職の平均月額賃金は21万8千円にしかなっていないと述べた。そのうえで先生は述べる。北欧では「高福祉・高負担が当たり前となっている」。

 おりしも政治の舞台では安倍内閣の消費税10%化の是非が議論されており、北欧の例を最後に述べて先生が講義を終えたことから、参加者からは「やはり福祉を充実させるには、消費税の引上げしかないのでしょうね」との意見が出されていた。

 この講義の意味するところはなんだったのであろうか。政府も自治体も借金財政で厳しい。一方で少子高齢化が進展し「公助」は限界があるので、「自助」「互助」「共助」が求められる。しかし、介護報酬の削減などで介護体制が整わず、頼りの地域力も日本では育っていない。だから、高福祉を求めるならば、あるいは高福祉が必要となるのだから、北欧と同様に高負担は避けられない――――このように結論づけているように思える。講義はさながら、政府広報のように感じた。

 私は先生に問いたい。少子高齢化の日本をつくりだしたのは誰か。大型公共事業に湯水のように税金を投入し借金を膨らませ、大企業の税金は減税し、その一方で消費税増税などの庶民増税、自治体職員の削減、福祉の後退を招いたのは自民党・公明党の政治ではなかったのか。税負担とはそもそも累進課税が基本ではないのか、と。

 もしかすると、先生は私が指摘する部分は理解しているのかもしれない。今回の研修会は地方議会議員が対象である。「福祉を充実させるには、消費税の引上げしかないのでしょうね」との意見があったように、参加者の立場は様々なのであろう。だから先生は、核心部分に触れることなく終えたのかもしれない。私はそのように自身をいさめた。

 次の特別講演は、滋賀県湖南市の「自然エネルギーを活用するまちづくり」の報告である。報告は4つの柱からなっており、第一が「湖南市の概要と市民による市民共同発電の歴史」、第二が「湖南市の緑の分権改革プロジェクト」、第三が「湖南市地域自然エネルギー基本条例」の説明、第四が「コナン市民共同発電所プロジェクト」である。問題提起ではなく「報告」であることから、たんたんと説明が進み、説明が終わって「さあ、どうですか」と問われても、それぞれの自治体の置かれている状況や市民意識の到達度の違いなどがあり、「・・・・・・」となる。

 会場から出た質問は三つ。(1)「個人宅への自然再生エネルギー設置補助の有無は」、(2)「電力買い取り中止の動きがあるがどうするのか」、(3)「市の公共施設への太陽光発電設備の設置状況は」。答えは、(1)「個人宅に対しての補助はない」、(2)「大規模なものは新規中止の方向で考えている」、(3)「保育園などが大規模改修を行なう時に設置している」。初日の終了時間が到来し、参加者はそそくさと宿泊地に向かう準備を始めた。

写真 2日目は、私が待ちに待った講義である。講義は選択性であり、講義1は「まちづくりに活かす地域公共交通戦略」、講義2は「公共発注者の責務を考える」、講義3は「住宅政策から地域居住政策へ」の三つ。私は迷わず「公共発注者の責務を考える」を選択した。理由は冒頭に述べた通りである。

 「公共発注者の責務を考える」は参加者から敬遠されたようである。というのは、今回の地方議会議員研修会には62名が参加しているが、「公共発注者の責務を考える」に顔を出したのは12名のみ。講義1の「まちづくりに活かす地域公共交通戦略」の27名、講義3の「住宅政策から地域居住政策へ」の23名と比べると半分にとどまっているからである。

 午前の講義は2本である。最初が「改正品確法と公共工事/入札・契約制度の課題」。講師は地方議会議員研修会の主催者団体「NPO法人建設政策研究所」の人。かつてゼネコンの現場で設計・調達・発注を担当していたと、その人は述べた。

 この講義では、今年6月4日に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入契法)、「建設業法」の概要と、9月30日に閣議決定された「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(適正化指針)、「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針」(品確法基本方針)の説明が行なわれた。加えて、公共調達における基本的な枠組み、予定価格の算出方法、労働者の雇用に必要な経費の内訳、公共工事設計労務単価の概要の説明が行なわれ、そのことによる、地方公共団体に求められる入札・契約制度や一般競争入札・指名競争入札・随意契約の在り方が提起された。また、最低制限価格制度や低入札価格調査制度の仕組みが説明され、総合評価方式による入札の在り方の改善策も話された。

 講義は盛り沢山で、「予定価格の公表時期」「地域要件」「ランク別発注」「落札率」など、主催者側が調査している各地の事例も紹介され、さしずめ、公共工事発注の仕組み・概要を隅々まで品揃えした感があった。

 初日の講義では一切、質問をしなかった私が、2日目の最初の講義で三点、質問した。(1)「契約差金を確保したいという自治体側の思惑もあり、予定価格の事前公表がやめられないという問題をどうみるか」、(2)「制限付一般競争入札で何々ランク以上という発注の仕方をどうみるか」、(3)「一定規模の地元業者が少ないなかで地域要件を取り入れにくい状況および、他自治体で地域要件を入れられて小金井市内業者が入りにくくなるという問題をどうするか」。講師は、(1)「品確法は予定価格の引上げを目指している。発注者側が法律の趣旨を理解・認識すべき」、(2)「ランク付けの設定は自治体で決められる。ランクを細分化することによって、大手が参入できない工夫をすべき。京都市は細かいランクを設定している」、(3)「総合評価で地域要件を入れ、加点できる仕組みにすべき。入札・契約においては、競争性・透明性の確保が必要。地元業者を下請け等に入れさせるためには、総合評価方式で評価項目に入れ、加点を多くさせること。地元業者に仕事が行くようにするには、分離・分割発注も有効」と述べた。

 午前の2つ目の講義および午後の講義は「公契約条例」。午前は千葉県野田市の条例をもとに条例の意義と役割が語られ、午後は講師の先生が関わった札幌市の公契約条例制定の取り組み概要と問題点である。講師はいずれも北海学園大学の準教授。労働分野が専門だという。

 「公契約条例」においては私もその一人だが、「官製ワーキングプア」問題が真っ先に課題として登場する。そのことに対して先生は言う。「公共事業や委託事業、備品購入などの外部のみに目が行くのではなく、臨時職員・非常勤職員など自治体内部の非正規公務員の問題も視野に入れるべき」「市の非正規雇用者の賃金が上がらなければ、指定管理施設の雇用職員の賃金も上がらない」。

 一方、「委託事業・指定管理者」においては、「賃金の低さだけが問題ではない」と述べ、一定期間ごとに失業の恐れ、入札のたびに労働条件切り下げの恐れ、勤続や経験と関係なく賃金は抑制傾向、別会社で雇用は継続されてもゼロからやり直し(有給休暇など)になると指摘した。

 条例制定にいたらなかった札幌市の教訓として「業界団体の反発があった」と述べた先生は、「業界団体からは『条例は市の発注事業で働く人だけが優遇され、同じ業務でも民間などで働く他の労働者と賃金格差が生じる。同一労働同一賃金の原則に反する』という指摘があったが、こうした疑問に対して丁寧な対応、議論がされてこなかった」と問題点を明らかにした。

 このことに対しては小金井市の業界団体からも聞かれており、公契約の分野だけでなく民間の分野においても、業界全体として賃金水準をいかに引き上げていけるかがカギである。ただし、小金井市においては行政側が予算額のアップにつながるのを嫌がり、賃金条項を含まない条例でお茶を濁そうという動きになっていたところではあるが。

 先生は述べる。「公契約の議論はまちづくりの議論」。官製ワーキングプア問題はもちろんだが、経営難や労働力確保難などの事業者側の直面する困難、公共サービスの質の低下など利用者側の直面する問題、地域の労働市場・産業・税収不足などの自治体側の困難が、議会でも行政内部でも大いに議論されるべき――――と。そう言われると、小金井市における条例制定の道のりは相当に長いものになると思わざるをえなくなるのである。

 2日目の講義は、私にとっては相当に刺激的であった。いただいた資料は、時間をかけて読み返すだけの価値を十分にそなえており、議会論戦で大いに役立つものとなっている。しかし、有意義な講義であったにもかかわらず参加者が12名とは実に惜しい。なぜ参加者から敬遠されたのか、理由はただ一つ。難しい内容だからである。「公共発注者の責務を考える」は福祉などの課題とは異なり、日常生活ではあまりにも縁が薄い。講義を受けても、何を言っているのかわからないということにもなるのである。

 研修会の受講理由のおおかたを消化した私は、わかりやすくまとめられている大切な資料をカバンに納め、江戸城址の脇を通って、地下鉄「九段下駅」から帰途についた。

 なお、配付された資料によると、参加者は、北は北海道から南は沖縄にいたる43の自治体から県議4人、区議2人、市議48人、町議7人、村議1人の計62名。講義に対する質問内容から判断するに、会派はまちまちのようである。東京からは、私のほかに江東区と練馬区から区議が一人ずつ来ている。


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