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世界に誇る『雨水浸透マス』設置率

 小金井市は昨年9月末、「雨水浸透施設」等の設置率(雨水浸透施設が設置可能な市内建物の設置率)が50%を超えた。先進国のドイツ、スイスの各都市の設置率を上回り、事実上、世界一の設置率となっている。「雨水浸透施設」とは、屋根に降った雨を下水道や河川に流さずに地下に戻すための排水施設で、中心は「雨水浸透マス」。1988年秋から事業をスタートさせ、1999年3月に「毎日・地方自治大賞」優秀賞受賞、2000年5月に社団法人土木学会の環境賞受賞、2001年5月には「第3回日本水大賞」グランプリ受賞と、この事業が日本中に知られていくなかで、事業の中身を学ぶために、各地から行政関係者が次々と小金井市を訪れるようになっている。当然に議会関係者も多く、昨年11月には日本共産党仙台市議団が視察に訪れ、小金井市議団とも懇談を行なった。

 市民は、雨水浸透マスの設置を義務付けられてはいない。条例では「市民は、節水、緑地の保全等により自ら地下水及び湧水の保全に努めるとともに、市が実施する地下水及び湧水の保全に関する施策に協力するものとする」(「地下水及び湧水を保全する条例」第6条)と「協力」を求めているのみ。一方、事業者に対しても「その事業活動を行うに当たっては、地下水及び湧水の保全のために必要な措置を講ずるとともに、市が実施する地下水及び湧水の保全に関する施策に協力し」(第4条)と、市民と同様に「協力」を求めているだけ。ではなぜ、世界一とまでに称賛される設置率になったのか。市が作成した文書等には「市民・水道屋さん・行政のパートナーシップにつきる。この三者のいずれか一つでも理解が得られなかったとしたら、この事業の成功はありえませんでした」と述べている。しかし、それでも「なぜ?」は消え失せない。なぜなら、雨水浸透施設を設置する経費が住宅所有者(市民)の負担になるからだ。このご時世、さらなる負担を避けたいのは心情であろう。

 仙台市議団は私に問う。「条例で義務化してもいないのに、なぜ、こんなに設置率が高いのか」。私の説明は次のようなものであった。「小金井市は、段丘の緑地帯とともに3つの都立公園(小金井公園、武蔵野公園、野川公園)に囲まれ、段丘下に野川が、北側には玉川上水が流れ、市民がこの自然をこよなく愛している。また、段丘下の“ハケ”には湧き水が出ており、小金井市民は地下水を大切にしたいと願っている。そのため、浸透マス設置事業に協力している」。このように述べたものの、その一方で私の頭の中では「とはいっても、経費が余計にかかる雨水浸透マスの設置を断わる市民もいるだろう。なのになぜ、50%にまで普及したのだろう?」との疑念が飛来していた。

 「なぜだろう?」。この思いを晴らすために、いろいろ聞き歩いた。そこで一定のことがわかってきた。それは────。「小金井市は『排水設備指定工事店』を受け付ける際に、排水設備の工事を施工する際には小金井市が定めた基準による『雨水浸透マス』を設置するよう指導しており、指導に従わないときには、指定店からはずすことができるという制度があることから。はずされると、その情報は他自治体にも伝わり、他自治体の仕事も受注できなくなる」という代物。なんと恐ろしい制度であろうか。しかし、この事業は、事業の重要性を理解した排水設備業者の取り組みへの意欲から成り立っている。「雨水浸透マスを考えはじめた昭和61〜62年当時、小金井市側からのマス設置の要請に対して、指定店全体の合意のもとで協力することを決めた経緯がある。そのため、指定店側の協力が得られている」(下水道課職員)。しかも、そのほうが安上がりだとも言う。「雨水の下水管からのオーバーフロー分も下水道に流さなければならない。となると、オーバーフロー分用の下水管と溜マスを別途、付けなければならず、かえって宅建業者の工事は大変になる。溜マスよりも雨水浸透マスのほうが面倒くさくなく、安上がり」。わかったような、わからないような・・・・。小金井市は、雨水浸透マス設置事業に執念を燃やす指定店の熱意を後押しする形で、1993年4月から「雨水浸透施設等設置助成事業」を開始し、個人所有の「1988年9月以前に建築された建物」に雨水浸透施設を設置する場合に、上限40万円を限度に助成金を交付することとした。雨水浸透施設を設置する施工業者は「小金井市排水設備指定工事店」でなければならないとされている(「雨水浸透施設等設置助成金交付要綱」第3条4)。

 私に背景を教えてくれた人は、さらに付け加えた。「事業の取り組み部門が『下水道課』にあることが重要。下水管を宅地からひくためには、市の下水道課に図面を提示しなければならない。その図面に雨水浸透マスが入ってなければ“ダメ!”となる。もし、この事業が環境課であったなら、チェックはできない」。なるほど、なるほど。聞けば聞くほど、さすがは“プロ”と思わずにはいられない。ようやく、仙台市議団の疑問に答えることができたかなと、思った。

(2008年3月8日付)

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