これまでのあゆみ

第1回
1991.5.12 大阪府立労働センター

◎基調報告:
・医薬分業をめぐる最近の情勢と国民医療
・日本の製薬大企業—独占薬価・薬害問題—
・薬と人権
◎シンポジウム:第1部/薬と経済 第2部/薬と人権
第2回
1992.5.17 東京医科歯科大学

◎基調報告:「くすりと人権」「くすりと経済」
◎シンポジウム:第1部/薬をめぐる経済の仕組みを考える 第2部/人権を守る立場から薬を考える
第3回
1993.6.13 東北大学医学部

◎シンポジウム:第1部/患者の権利と医療・医薬を考える 第2部/薬価・診療報酬問題を考える
第4回
1994.7.9 東京新宿農協会館

◎基調報告:医薬品の開発と使用における倫理性と科学性の確立を求めて
◎シンポジウム:第1部/薬の正しい作り方、使い方を求めて 第2部/薬害エイズ問題解決のために
第5回
1995.5.21 大阪府立労働センター

◎報告:国民の立場からみた医薬品のあり方
・国民の納得いく薬物治療(薬剤費)のための提言
・患者が望む医療と医薬品情報のあり方

◎シンポジウム:薬と経済 薬と人権
第6回
1996.5.19 愛知県産業貿易館西館

◎基調報告:薬害エイズを学ぶ 薬害エイズに学ぶ
◎特別講演:薬害エイズの反省・教訓と今後
◎シンポジウム:薬害エイズに学ぶ
第7回
1997.5.18 東京・菓子会館

◎報告:
・医療保障制度改悪の新段階
・薬害被害者の復権と薬害根絶をめざして

◎シンポジウム:考えよう 薬価と薬の有効性・安全性
第8回
1998.5.17JA 岡山大ホール

◎報告:
・「国民のための医薬」から「国民の医薬」へ
・97年9月健保法等改定以降の日常診療の変化
・製薬産業の国際的再編成と規制緩和
・薬害を繰りかえす社会構造の変革をめざして

◎シンポジウム:医療制度の改悪と医薬品問題

※第5回までは「国民のための医薬シンポジウム」
第9回
1999.5.16 東京医科歯科大学講堂

◎シンポジウム:患者・国民に役立つ薬価・医療制度を求めて
第10回
2000.5.14 神戸市勤労会館

◎特別講演:患者の望む医療とEBMの実践
◎シンポジウム:人権と薬害

※第10回まで国民医療研究所と社会薬学研究会の共催
第11回
2001.5.13 東京・コーププラザ

◎シンポジウム:信頼できる薬と医療を求めて
第12回
2002.5.19 東京・平和と労働センター

◎講演1:戦争テロと保険・医療・福祉
◎講演2:あるべき薬物治療

◎シンポジウム:激動する社会のあるべき保健・医療・福祉と薬物治療
第13回
2003.5.18 東京・平和と労働センター

◎シンポジウム:安心できる薬と医療を求めて
第14回
2004.5.23 埼玉・大宮ソニックシティ

◎特別報告:組合員の健康管理を進める手助けに
◎シンポジウム:規制緩和と薬の安全性・危険性
第15回
2005.5.15 大阪・新大阪シティプラザ

◎記念講演I:大転換の医療と「多国籍企業」
◎記念講演II:今日の薬害問題—イレッサ、高血圧、コレステロールを例に
◎シンポジウム:転換期における医療と医薬品 —規制緩和と安全・安心な薬物療法
第16回
2006.5.14 長野JA長野県ビル

◎記念講演:日本国憲法と私たちの保健・医療・福祉
◎特別報告:佐久地域における保健医療活動
◎シンポジウム:信頼できる地域医療・医薬品と薬剤師
第17回
2007.5.13 東京・平和と労働センター

◎記念講演:「健康格差社会」とその原因を考える
◎シンポジウム:真に生命と健康を守る薬と医療をめざして
第18回
2009.3.15 東京・東洋大学

◎シンポジウム:待ったなし!今こそ薬害根絶を! —医薬品行政と現場の大改革へ—
第19回
2010.11.2 8東京・平和と労働センター

◎シンポジウム:薬害の被害者救済と根絶の達成を —薬害肝炎検証委員会の提言をもとに考察する—
第20回
2011.11.23 東京・平和と労働センター
◎シンポジウム:イレッサ薬害訴訟における国・企業・関係学会の責任 —訴訟を通じて教訓を考える—
第21回
2012.11.23 東京・平和と労働センター

◎講演:イレッサ訴訟における企業と国の責任
◎シンポジウム:がんの薬物療法について考える —その批判的・科学的検討—
第22回
2013.11.24 東京・平和と労働センター

◎講演:医薬品の安全性確保とTPP
◎シンポジウム:「子宮頚がん予防」ワクチンの必要性・安全性・有効性
第23回
2014.11.24 東京・平和と労働センター

◎講演:歪められた医師主導臨床研究 医療従事者はいかに読み解くか —ディオバン問題をめぐって—
◎シンポジウム:HPV(「子宮頸がん予防」)ワクチン被害をめぐって
第24回
2015.11.23 東京大学鉄門講堂

◎講演:「医薬分業と薬剤師の果たすべき役割」 —国民の求める薬剤師のプロフェッショナルリズムとは—
◎シンポジウム:子宮頸がんワクチン問題
第25回
2016.11.27 東京・平和と労働センター

◎記念講演 HANSの病因病態の解明・治療の確立に向けて
◎シンポジウム「子宮頸がんワクチン」接種被害をめぐる諸問題

「第 25回国民の医薬シンポジウム」開催報告

 11月 27日(日)10:00~16:30に、東京都文京区の「平和と労働センター」2階ホールで、「第25回国民の医薬シンポジウム」を開催しました。参加者は約 120人で、HPVワクチン問題をめぐって、熱心な講演と質疑応答が行なわれました。

【午前の部】記念講演「HANSの病因、病態の解明・治療の確立に向けて」臨床症状の解析→病巣の症候学的解析→動物モデルの作成まで講師 横田俊平氏(横浜市立大学名誉教授・小児科医)
 午前に記念講演を行なった横田俊平氏(横浜市大名誉教授・小児科医)は、「HANSの病因病態の解明・治療の確立に向けて臨床症状の解析→病巣の症候学的解析→動物モデルの作成まで」と題して、34枚のスライドを提示し、(1)ワクチンによる副反応症状は、ワクチン接種後の女児に多彩な症状が一つの流れをもって進展していく特徴をもつ新疾患症候群=HANSである。臨床医は、患者に寄り添って、多種多様な HANSの臨床症状を丁寧に把握することが必要(2)臨床症状に関する調査、医学的解析と理学所見から神経生理学的に病状が説明でき、「視床下部病変」の概念が確立しつつある(3)HPVワクチンを用いてマウスにおける HANS類似病態の誘導に成功したことが報告されました。「まとめ」にて、「HANSは国内外で充分なevidence(証拠)が確立されている」とし、その根拠として、「臨床症候の解析(日本・デンマークから発信済み)、病態解析(日本から発信済み)、動物実験での疾患再現(イスラエル・日本で確立)」の 3点を提示され、「現在最も求められているのは、治療法の確立である」と指摘されました。

【午後の部】シンポジウム「「子宮頸がんワクチン」接種被害をめぐる諸問題」

 午後には、水口真寿美弁護士(HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団共同代表)、原告の酒井七海さん、打出喜義医師(小松短期大学特任教授・産婦人科)が報告し、フロアーとの間で活発な質疑応答が行なわれました。

報告1「HPVワクチン訴訟がめざすもの」水口真寿美氏(HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団共同代表・弁護士)

 水口弁護士は、「HPVワクチン訴訟がめざすもの」と題して、感染しても子宮頸がんになるリスクの低い感染症に対し、有効性が不確実かつ限定的である一方で、重篤な副反応を生じさせるHPVワクチンを承認し定期接種化したことの問題点、早期承認と定期接種化の背景にある製薬企業の啓発を装ったプロモーション、WHOの利益相反問題などを指摘したうえで、本訴訟が賠償金の獲得にとどまらない真の救済と薬害防止を目的とするものであることなどを報告されました。

原告訴え
酒井七海さん(東京原告全国原告団代表)

 全国原告代表の酒井七海さんが副反応被害の発症の経緯、脳機能障害と車椅子生活を余儀なくされ、介護者なしには生活できない日常を紹介、被害の責任を明らかにし、原因、治療法の解明、生涯にわたる医療・生活の保障を強く求めると訴えられました。

報告2「子宮頸がんワクチン接種推進論者への反論」打出喜義氏(小松短期大学特任教授、産婦人科医)

 打出産婦人科医師は、「子宮頸がんワクチン接種推進論者への反論」と題して、子宮頸がんの発症、治療、予後の特徴を示し、その上で、HPVワクチンは長期にわたって強力な免疫賦活作用を維持するよう設計されていること、HPVはヒトタンパクの多くと相同性を有していることから、長期に渡る多彩な HPVワクチン副反応出現の可能性を指摘されました。

討論

 討論では、厚労省はあくまで接種後 1カ月以内の注射に伴う症状以外は副作用と認めておらず、被害救済も限定的であること、そのため指定医療機関も副作用として対応せず、心身の反応、詐病としてたらい回しされている現状、接種者アンケート調査を実施した結果、高頻度に副作用が現れていることが判明したこと、医療機関が患者に寄り添う姿勢で対応することの重要性等について活発に討論されました。今後、国に全接種者調査を求めていくこと、現場でもアンケート調査に取り組むこと、訴訟に向けた学習会の開催等を意思統一しました。

2017年4月12日 国民の医薬シンポジウム実行委員会

第26回
第26回国民の医薬シンポジウム 2017年12月17日(日)東京・全労連会館にて開催

 去る12月17日、「第26回国民の医薬シンポジウム」を、シンポジウムのキーワードの一つである、「薬と経済」をテーマに、当日上映した映画のテーマ「薬は誰のものか」を主題として、御茶の水の「全労連会館」で開催しました。全国各地から75名の参加があり、熱い討論がかわされました。

 午前の部では、片平実行委員長の開会挨拶(今回は「薬と経済」がテーマだが、そのことを考えるためには、「薬と人権」についての基本を踏まえる必要があるとして、「世界人権宣言」や、それを具体化した「国際人権規約」を紹介)の後、ドキュメンタリー映画「薬は誰のものか~エイズ治療薬と大企業の特許権」(84分)が上映されました。
 この映画は、2013年にインドで製作された作品で、1990年代後半、アフリカ諸国やインドなど世界の開発途上国における何千万ものHIV/エイズ感染者の実態と、感染者が生き延びるために有効な医薬品が開発されながら、それらの薬が多国籍製薬大企業(ファイザー、グラクソ・スミス・クライン等)が有する特許権のため、貧困層には手が届かないという問題を主テーマとしています。
 このような状況を打開しようと、世界各国で、患者団体や活動家、ジェネリック医薬品企業が患者たちに医薬品を届ける努力を重ねます。その末に、インドのジェネリック企業シプラ社が1日1ドルの低価格で治療薬を開発します。しかし、1995年から始まっていたWTO(世界貿易機関)のTRIPS協定のもとで、安価な医薬品の流通を阻む動きが続きました。その後、TPP(環太平洋パートナーシップ)やRCEP(東アジア経済連携協定)などが作られ、数々の貿易交渉の中で、最も深刻な問題になっているのが「医薬品アクセスと企業の特許問題」で、「命か利潤か」の攻防が続いています。この映画は、そうした問題を世界各地での取材でリアルに解明しています。まさに「薬は誰のものか」という問題を世界の人々に提起している映画といえます。
 上映終了後、この映画の普及に係わったアジア・太平洋資料センター(PSRC)の共同代表である内田聖子氏が、こうした点を解説されました。「上映会」の案内もされ、経費は3000円のDVD代金と、1回1万円の上映料とのことです。

 午後の部は、「高額医薬品問題を考える」をテーマにしたシンポジウムが行なわれ、東大大学院薬学系研究科特任准教授の五十嵐中(あたる)氏が「くすりの費用対効果評価とは?-「オカネより命」を超えてー」と題して、同じく東大の名誉教授で、会計学がご専門の醍醐聰氏が「製薬企業のグローバル化と高薬価問題」と題して、また全日本民医連副会長で京都民医連中央病院名誉院長の吉中丈志氏が、「高額医薬品問題 医療介護負担増―貧困・格差という文脈」と題して、それぞれスライドを映しながら講演されました。
 五十嵐氏は、医薬品の「費用対効果評価」について、先ず、ソバルディ・ハーボニー(C型肝炎治療薬)、オプジーボ(肺がん治療薬)、レパーサプラルエント(高脂血症治療薬)を取り上げて、これら高薬価薬(オプジーボは、1ヶ月260万円!)の医療財政へのインパクト(例えば、オプジーボは、肺がんの場合には、最高1兆円??)を試算し、その高薬価を「何%下げられるか」という推計値を紹介しました。そして、医療経済評価の「原則」は「薬の費用対効果」の算定であるとして、ICER(増分費用効果比)やQALY(質調整生存年)等の指標を紹介し、「費用対効果評価」(「オカネと効き目のバランス」の重要性を指摘しました。

 醍醐氏は、「先進諸国では、いずれも高薬価問題に直面し、各種の薬剤費抑制策に取り組んでおり、それらは、(1)英・仏・伊等=保険償還や価格に介入するタイプ、(2)独・英・仏等=企業の利益に介入するタイプ、(3)米・英・仏等=推奨医薬品リストの作成や参照価格制度など、使用に介入するタイプ、(4)英国など多数=費用対効果評価の結果を保険収載の可否に反映させる、(5)仏・独等=ハイリスクの患者に重症化予防を行い、高額薬剤の使用を防止する、の5つに大別される」と指摘。日本では、薬剤費については、市場拡大再算定制度(当初想定した売上げ市場規模の2倍以上、かつ年間売り上げが薬価ベースで150億円超となった場合、当該医薬品並びに、場合によっては類似薬効の他の医薬品も含めて、薬価の引き下げを行なうという措置のこと。日本薬学会「薬学用語解説」による)がとられているが、適用条件が狭すぎて、実効性が限定されており、4半期ごとの見直しの対象となるのは極く一部なので、今後はこれを見直し、「薬価高止まり」の是正と、開発インセンティブとの調和をはかる必要がある、として、その具体案を提示されました。
 吉中氏は、日本では医療を含め、社会保障は憲法で国民の権利と規定されているが、生活困窮状態にあり、「患者になれない」病人が多く存在しているとして、その事例を示されました。また、患者さんからは、「化学療法の薬が高くて困る」との声があがり、調剤薬局には「無料低額診療が適用されない」などの問題があることを指摘。社会保障を充実させるための政治の転換が必要、と強調されました。
 以上、3人の講師の問題提起の後、会場からの質疑と、それらに対する講師の回答がされました。「医薬品の経済評価はきちんとした費用と効果のデータが必要。『効く』ということについて、もう一度見直すことが必要」(五十嵐氏)、「薬価算定式を公開することが必要。審議会の議事録は全て開示すべきだ。」(醍醐氏)、「政府が国際協調しながら医薬品開発のサポートをすべき。全世界で核兵器廃絶をすれば、相当の費用が支出できる」(吉中氏)などの指摘がされました。
 以上でシンポジウムは終了し、閉会の挨拶で、佐藤嗣道実行委員は、各講師が話された内容の概要を紹介した後で、「高すぎる医薬品が現実に存在する。市民レベルでの発言も必要と感じた。」と感想を述べ、閉会しました。

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