目次
県内総生産と総支出
1996年度以来、県内総生産と総支出は減少あるいは横ばい状態がつづいている。これは、佐賀県の経済が1996年以来しぼんできていることを示している。
県内総生産と総支出の推移 (「佐賀県統計年鑑」)
年度 金額(100万円) 1993 2,650,669 1994 2,702,195 1995 2,794,196 1996 2,861,021 1997 2,839,490 1998 2,843,360 県内産業の生産の減少と停滞
その直接的な原因は県内産業の生産の減少あるいは停滞にある。 各産業別に見ると次のとおりである。
県内総生産と総支出の推移 (「佐賀県統計年鑑」)
産業分類 1993年度 94年度 95年度 96年度 97年度 98年度 農林水産業 129,364 132,885 127,364 119,540 106,756 106,713 鉱業 6,088 7,487 6,211 5,421 5,418 5,029 製造業 557,924 532,207 598,884 633,468 620,871 602,495 建設業 368,127 347,629 380,221 355,323 313,761 331,081 卸売・小売業 326,391 319,389 314,235 315,214 306,495 300,987 金融・保険業 82,734 94,825 94,608 104,435 101,031 97,016 不動産業 233,293 243,012 250,111 265,126 276,002 284,730 運輸・通信業 151,630 155,830 153,637 163,100 159,006 155,864 サービス業 411,090 426,641 444,584 474,020 478,407 490,694 全産業合計 2,381,474 2,431,161 2,568,085 2,584,515 2,554,398 2,545,661
- 農林水産業は一貫して生産額を減らしている
- 製造業は、96年度以降生産額を減らしている。
- 建設業は、95年度をピークに生産額を減らしている
- 卸・小売業は一貫して生産額を減らしている
- サービス業は生産額を増やしている。96年度までは、製造業、建設業などの減少をサービス業ののびが補ってきたが、97年度以降はサービス業ののび率も低下し、他産業の落ちこみをカバーできなくなった。その結果、97年度以降、産業全体として減少になった。
県民所得の分配
県民が生み出した富が、どの階級にどのように分けられたかをしめすのが、県民所得の分配である。この数年間で次のような特徴が見られる。
- 雇用者の「賃金・俸給」は96年度以降伸び悩んでいる。
- 財産所得のうち「家計の利子所得」の減少率が大きい。これは、低金利によって、家計の利子収入が減ったことを示している。
- 民間法人企業の「企業所得」の97年度以降の落ちこみが激しい。
- 農林漁業の生産額の減少を反映して、農家や漁家の所得の低下は年度ごとに急激に減少している。
- 「農林水産業をのぞく個人企業」すなわち一般の零細商工業者、自営業者の所得の減少は急激である。
県民所得の分配(一部を掲載、単位100万円) (「佐賀県統計年鑑」)
項 目 1993年度 94年度 95年度 96年度 97年度 98年度 雇用者所得 1,516,518 1,569,652 1,638,992 1,705,889 1,764,235 1,808,299 内、賃金・俸給 1,331,356 1,378,981 1,441,962 1,508,690 1,557,256 1,600,404 家計の利子所得 172,672 167,757 156,542 137,874 140,6126 131,599 企業所得 454,102 441,423 453,004 480,674 408,778 376,097 内、民間法人企業 117,252 125,601 154,755 172,982 91,711 92,198 内、個人企業(農林水産) 64,805 73,125 70,311 64,572 51,029 48,177 内、個人企業(非農林水産) 140,001 137,605 124,058 119,189 126,663 77,745 農林水産個人企業と非農林水産個人企業の計 204,806 210,730 194,369 183,761 177,692 125,922 県民所得合計 2,175,578 2,200,921 2,2264,196 2,322,071 2,306,427 2,289,592 県民総支出の内訳
県民が生み出した富がどのように使われたのかを示すのが、次の表である。この数年間で次のような特徴がある。
- 県内でも家計の最終消費支出は、常に県内総支出合計の60%前後を占めており、その動向は県内総支出全体の規模に大きく影響する。「家計最終消費支出」は97年度以降減少している。
- もう一つの柱は民間企業の設備投資(98年度で全体の15%程度)であるが、97年度より減少、停滞している。
- 「一般政府の固定資本形成」は、公共事業のことである。日米構造協議にもとづく公共事業拡大の対米公約の後、県内でも公共事業が1995年度をピークに急激に拡大してきたことを示している。
県民総支出の推移(一部を掲載、1990年度基準の実質価格、単位100万円) (「佐賀県統計年鑑」)
項 目 1993年度 94年度 95年度 96年度 97年度 98年度 家計最終消費支出 1,489,340 1,554,299 1,604,338 1,654,470 1,625,289 1,622,335 一般政府最終消費支出 260,323 275,722 281,595 290,166 293,572 266,152 県内総資本形成 830,504 873,446 907,691 972,174 882,249 855,477 内、民間企業設備投資 370,053 383,469 416,524 459,926 458,106 407,871 内、一般政府(公共事業) 259,219 314,661 333,637 310,638 282,288 315,368 県内総支出計 2,503,040 2,558,406 2,671,343 2,759,543 2,693,684 2,704,750 次に、このような状況をもたらしたものは何か、その結果県民各層にどういう苦痛をもたらしたかを見てみる。なお、統計上の一貫性をもつために増減はすべて1995年度を基準にした。
消費税の増税によって年間200億円近い負担増
1997年消費税の5%への増税によって県民の負担は96年の252億円に対して、98年度は446億円、200億円近い負担増となった。(97年度は経過的な年度なので、増税の影響が100%出てくるのは98年度から)。
県内の消費税納税額の推移 (「佐賀県統計年鑑」)
年 度 納税額(100万円) 95年度を基準にした増減(100万円) 1993年度 23,749 94 23,893 95 24,475 0 96 25,194 719増 97 36,326 11,851増 98 46,220 21,745増 99 42,060 17,585増 97年の医療費値上げで年間50億円をこえる負担増
97年、橋本内閣の医療費負担増による県民全体の負担増を試算してみた。
「佐賀県統計年鑑」に佐賀市の「消費者物価指数」の動きのデータがある。そのなかで主に医療機関への支払いを示す「保健医療サービス」は1995年を基準にして、96年度平均101.2、97年度平均110.2、98年度平均126.3、99年度平均125.0、2000年度平均124.6というように異常にのびている。(ちなみに、物価全体の指数の伸びは2000年度で平均で102.6である)。これは、97年医療改悪が急激な医療費負担増を家計に強いたことを示している。保健医療サービスの家計にしめるウエイトは10000分の140という「佐賀県統計年鑑」の数字をもとに前出の「家計最終消費支出」から各年度の保健医療サービス費を割り出したのが次の表である。なお、これは医療費の値上げによる負担増であって、健康保険料の値上げによる負担増は含んでいない。
97年医療改悪による家計の「保健・医療サービス」支出の増 (「佐賀県統計年鑑」)
年度 消費者物価指数「保健医療サービス」 家計最終消費支出(100万円) 保健医療サービス支出(100万円) 96年度支出との比較(100万円) 1995年度 100.0 1,604,338 22,461 0 96年度 101.2 1,645,470 23,313 852増 97年度 110.2 1,625,289 25,075 2,614増 98年度 126.3 1,622,335 28,686 6,225増 97年医療改悪による県民の負担増は、政府管掌健康保険会計の保険給付金が減ったことによっても確かめることができる。96年度にくらべて97年度は約22億円、98年度は約43億円保険給付金が減っているが、これは患者の自己負担の増加を示すものである。県人口の4割弱が加入している政府管掌健康保険でこれだけの患者負担増であるから県民全体では、さらに多額であると思われる。
県内総生産と総支出の推移 (「佐賀県統計年鑑」)
年度 被保険者数+被扶養者数 保険給付件数 保険給付金額(100万円) 96年度を基準にした増減(100万円) 1995年度 339,501 3,140,416 41,842 0 96年度 340,826 3,264,200 43,526 1,684増 97年度 338,474 3,255,516 41,312 530減 98年度 337,429 3,290,539 39,268 2,579減 99年度 335,298 3,251,672 38,332 3,510減 政府の超低金利政策による家計の利子所得の減
バブル崩壊後政府が一貫して超低金利政策をとってきたため、利子所得を重要な収入源にしてきた高齢者世帯、年金生活世帯には大きな打撃となった。
家計の利子所得の推移 (「佐賀県統計年鑑」)
年度 金額(100万円) 93年度を基準にした増減(100万円) 1993年度 172,672 94 167,757 95 158,542 0 96 137,874 20,668減 97 140,626 17,916減 98 131,599 26,943減 低米価による農家の農業所得減
佐賀県の場合、「県民所得の分配」の表でわかるようにこれまで一貫して、法人企業にくらべて個人事業(農林水産と非農林水産の両方を含む)が生み出す所得の方が大きかった。しかし、この所得は90年代を通じて、大きく減少しており、佐賀県の不況を一段と深刻にしていると思われる。
県内農家の粗生産額と主用農産物であるコメと果実、農業所得の推移はつぎのとおりである。コメと果実(主にミカン)を中心に1995年度にくらべて99年度は200億円近い農家の所得減少が見られる。これが、農家だけでなく農業地域全体に与えた影響は深刻である。
県内農業の粗生産額と生産農業所得 (「佐賀県統計年鑑」)
年度 農業粗生産額合計(千万円) コメ粗生産額(千万円) 95年度を基準にしたコメ粗生産額の増減(千万円) 果実粗生産額(千万円) 95年度を基準にした果実粗生産額の増減(千万円) 生産農業所得(千万円) 95年度を基準にした生産農業所得の増減(千万円) 1993年度 16,622 5,468 1,901 7,355 94年度 17,683 6,749 2,604 8,056 95年度 17,080 5,711 0 2,405 0 7,616 0 96年度 16,823 5,611 100減 2,424 19増 7,099 517増 97年度 14,945 4,649 1,062減 1,883 522減 5,600 2,016減 98年度 15,359 4,745 966減 2,183 222減 6,333 1,283減 99年度 14,245 3,593 1,758減 1,761 644減 5,695 1,921減 倒産・リストラによる雇用の悪化
雇用指数の悪化--全国との比較 (規模30人以上の事業所を対象とする「毎月勤労統計調査」による)
年度 全国 佐賀県 1995年度 100.0 100.0 96 99.6 101.3 97 99.8 100.3 98 99.9 99.4 99 98.7 95.0 2000 97.6 93.3 このデータから、この2〜3年の間に県内の雇用状況は全国に比べても、急激に悪化していることがわかる。しかも、この間、正規雇用労働者からパート労働者への転換、雇用の悪化が急激に進行している。30人以上の規模の事業所でのパート労働者の比率の変化を次の表で示す。
常用労働者の中でしめるパート労働者の比率の推移 (規模30人以上の事業所を対象とする「毎月勤労統計調査」による)
年月 常用労働者数 その内のパート労働者数 比率(%) 1997年2月 132,871 13,153 9.90% 1998年2月 131,546 11,280 8.57% 1999年2月 132,517 14,269 10.77% 2000年2月 139,986 19,563 13.97% 2001年2月 13,8150 19,783 14.32% この間、企業の倒産とリストラで大量の失業者が生まれたが不況のなかで再就職は困難を極めた。いくつかの数字によってそれを示す。なお、「倒産・リストラによる解雇者数」はどうしても明らかにしなければならないデータであるが、手持ちの資料では不明なためあえて空欄にしておいた。
失業と再就職難をしめす資料 (佐賀労基局調べ。パートタイムをふくむ)
年度 企業の倒産件数 倒産・リストラによる解雇者数 雇用保険受給者数(延べ) 新規求職者数 新規求人数 有効求人倍率 1995年度 64 78,632 38,263 45,818 0.70 1996年度 89 82,497 40,679 52,009 0.76 1997年度 105 87,551 43,195 47,509 0.65 1998年度 116 108,059 49,407 39,450 0.43 1999年度 91 100,303 52,198 42,533 0.42 2000年度 135 100,332 55,135 47,242 0.47 賃金の悪化
県内の従業員30人以上の事業所について見れば、この2〜3年の間に急激な賃金水準の低下をきたしている。
賃金指数の推移 (規模30人以上の事業所を対象とする「毎月勤労統計調査」による)
年度 全国 佐賀県 1995年度 100.0 100.0 96 101.6 98.1 97 103.6 100.9 98 100.2 100.8 99 101.1 96.3 2000 101.5 95.2 以上の雇用、賃金関連のデータから、佐賀県ではこの2〜3年の間に全国水準から見てもはるかに急激な雇用の悪化、賃金水準の悪化が進行していることがわかる。
消費の冷えこみ
以上のような県民の負担増、所得の低下は県民のふところを冷えこませ、その結果あらゆる面で消費支出が減退した。これがまた、さらに、景気を悪化させるという悪循環が繰り返されている。それをいくつかの指標でみる。
県民の消費低下を示すいくつかの指標 (「統計佐賀」による)
年度 大型小売店売上高(100万円) 乗用車新車販売台数(台) 新設住宅着工戸数(戸) 1995年度 121,999 22,186 8,208 1996年度 119,996 23,064 9,195 1997年度 119,618 21,681 7,420 1998年度 118,043 18,819 6,677 1999年度 112,973 17,629 6,489 2000年度 110,752 18,514 5,971 2〜3年に1回行われる「商業調査」によれば、県内の卸売業、小売業の販売総額は1997年で22,044億円であるが、2年後の1999年には21240億円に激減している。年間800億円におよぶ売上げの低下が県下の卸・小売業そして製造業に及ぼした影響は深刻である。
中小企業、自営業者への打撃
県民の購買力の低下は、県内の中小企業・自営業者に大打撃を与え、倒産、廃業などを生み出した。自民党政府の銀行に対する「不良債権処理」の強要がこれに拍車をかけた。中小企業、自営業者への打撃は倒産、廃業による事業所数の減少、売上高の減少、利益の激減にあらわれている。
産業別事業所数の推移 (総務庁「事業所・企業統計調査」による)
年度 民営事業所総数 同従業者数 建設業事業所数 同従業者数 製造業事業所数 同従業者数 卸・小売業、飲食店事業所数 同従業者数 サービス業 同従業者数 1991年度 43,835 330,466 4,538 40,219 3,927 81,280 21,009 99,913 11,573 73,560 1996年度 44,248 357,759 4,921 45,278 3,863 78,757 20,277 107,333 11,991 88,022 1999年度 42,379 388,695 4,663 38,857 3,546 72,904 19,117 104,537 11,883 87,646
従業者規模別事業所数の推移(民営) (総務庁「事業所・企業統計調査」による)
年度 総数 1〜4人 5〜9人 10〜19人 20〜29人 30人以上 1991年度 43,835 29,264 7,351 4,099 1,322 2,008 1996年度 44,248 28,321 7,949 4,505 1,465 2,008 1999年度 42,379 27,103 7,559 4,432 1,381 1,904 上記二つの表によって、県内の民営事業所があらゆる産業分野において、規模をとわず減少していったことがわかる。従業者規模数1〜4人という小規模・自営業者層だけでなく、佐賀県経済でいえば中堅どころの30人以上の層でも事業所規模を減らしていることは、中小企業の上中層をふくめて深刻な状態にあることがわかる。
さらに、自民党政府は「景気対策」の名目で公共事業予算をくんできたが、96年度から99年度にかけて県内の建設業者数と従業者数は激減している。これは、公共事業の大型化、中小規模の公共事業への大手ゼネコンの割りこみの結果、県内の中小規模の建設業が受注機会をせばめ、低単価で下請けを余儀なくされているのではないかということを示唆している。これは、建設業関係の詳細な資料を入手して分析したいところであるが、公共事業のあり方として重大な問題を含んでいる。
また、自民党政府は不況のなかでサービス業が新しい雇用を創出する決め手であるかのようにいってきたが、96年から99年にかけては県内のサービス業自体が事業所数も従業者数も減らしており、小泉内閣による「新規雇用拡大」の宣伝が事実に合わないことを示している。この結果、民間法人企業と非農林水産個人企業の県民所得の分配はいずれも激減している。これは、民間企業の設備投資の減退をまねき、さらに景気を悪化させていた。
(再掲)民間法人企業と個人企業の県民所得の分配(単位100万円) (「佐賀県統計年鑑」)
項 目 1993年度 94年度 95年度 96年度 97年度 98年度 内、民間法人企業 117,252 125,601 154,755 172,982 91,711 92,198 内、個人企業(非農林水産) 140,001 137,605 124,058 119,189 126,663 77,745 以上のまとめ
以上の分析結果から、佐賀県経済がこうむっている不況の原因は明らかである。
第1に県民に負担増と収入減をもたらした消費税増税、医療改悪、超低金利政策。
第2に「不良債権処理」と「リストラの推進」という自民党政府の誤った政策はこれをさらに加速した。
第3に農業県である佐賀県の場合、政府によるコメの自由化と低米価政策、果樹や野菜の輸入拡大など「経済のグローバル化」がもたらしている被害は大きい。
第4に「規制緩和」「構造政策」の推進によって、佐賀県経済の主力をなしている自営業者、中小企業者層が大きな打撃を受けていることである。この点は、工業統計や商業統計、事業所統計などさらに詳細な資料を入手したうえで「構造改革」が佐賀県経済に与えている影響として分析と研究を深めたい。したがって、景気回復をはかるには、消費税減税、社会保障の拡充などによって県民のふところを暖かくすることが第一に必要なことは佐賀県内の資料からも明らかである。
さらに、農業県であり、小規模企業・自営業者層の割合の多い佐賀県では、とくに小泉内閣による「構造政策」はやめさせ、農林漁業や中小企業・小規模企業に光をあてる政策に転換させる運動が重要である。
中小企業を大量に倒産に追い込む「不良債権処理」、失業を大量に生み出す「リストラ」の推進は絶対に行うべきでない。(「不良債権処理」問題については、不良債権処理の強行は県内中小企業の大量倒産と大量失業を招くことは必至」を参照)。