今、国会では小泉内閣がすすめる銀行の「不良債権処理」が20万、30万という中小企業を倒産に追い込むのではないかということが議論されています。そこで、佐賀県の実態はどうか、佐賀銀行2001年3月決算資料や県の統計資料で確かめてみました。
佐賀銀行は2000年度大規模な不良債権の償却をすすめた
佐賀銀行の決算資料によれば、同行がおこなった不良債権処理の実績は次の通りです。
不良債権の最終処理額 単位百万円 直接償却 債権売却等 債権放棄 合計 2000年3月末 369 3,839 - 4,208 2001年3月末 4,567 3,503 - 8,070 2001年3月末期の処理額8,070百万円は、前期の処理額4,208百万円の実に倍近くになります。金額の増え方だけではありません。前期4億円もなかった直接償却額が4,567百万円にふえています。「2000年度下期は、政府・自民党がアメリカの圧力もあって『不良債権の早期最終処理 』を強調しはじめ『直接償却 』を推進した時期」(6/14付け「赤旗」)と言われていますが、佐賀銀行の直接償却の増加もそれを示しています。
大切なことは、佐賀銀行の不良債権の最終処理とくに直接償却の強化が県内中小企業の倒産の増大と機を一にして行われていることです。
県内の倒産件数と負債総額
年 件数 負債総額(百万円) 1999年 91 23,558 2000年 135 60,534 「統計佐賀」2001.5) この間の金融機関の貸しだし残高と県信用保証協会の保証状況を見てみましょう。
年 金融機関 貸出残高合計 信用保証協会保証申しこみ 件数 金額 1999年 1,848,759 9,173 87,512 2000年 1,802,894 10,745 119,748 (単位はいずれも百万円。「統計佐賀」2001.5) 金融機関の貸出残高の減は金融機関が前年にくらべて貸出しをおさえたことをしめしています。しかし、県信用保証協会の保証申しこみが件数でも金額でも前年より増えていることは、中小企業の資金需要は減っていないことを示しています。
以上の点をまとめていえば、2000年、県内では金融機関の強力な債権の回収がすすめられ、金融機関の中小企業に対する貸出残高は減少した。これと並行して県内の中小企業の倒産が件数でも負債総額でも増大した。どちらが先かということについてはいろいろ議論があると思いますが、銀行の不良債権処理の動向と中小企業の倒産が相関関係にあることは県内のデータでも実証されていると思います。
処理した以上にふえた新規の不良債権
佐賀銀行がこれだけ強力に不良債権の最終処理をすすめた結果、不良債権はへったのか?逆です。佐賀銀行の決算資料は、2000年度、不良債権の新規発生がむしろ増えたことを示しています。佐賀銀行の決算資料で不良債権の目安とされている「リスク管理債権額」「金融再生法開示基準」をみるとそれぞれ次の通りです。
(単体 単位は百万円) 分 類 2001年3月末 2000年3月末 リスク債権額 破綻先債権額 8,603 13,796 延滞債権額 21,846 9,948 3ヵ月以上延滞債権 2,143 2,997 貸出条件緩和債権 55,673 58,267 合 計 88,267 85,011 分 類 2001年3月末 2000年3月末 金融再生法開示債権 破産厚生債権及びこれに準ずる債権 33,229 27,185 危険債権 26,664 20,292 要管理債券 34,887 36,284 合 計 94,781 93,763 どちらの基準でみても2000年3月末にくらべて2001年3月末は、不良債権といわれるものの額が増えていることがわかります。2000年度不良債権の最終処理、とくに直接償却を強力に推進したにもかかわらずなぜ増えたのか?それは、処理額をうわまわる不良債権の新規発生があったからです。佐賀銀行の決算資料では、2001年3月末の新規発生不良債権額は19,362百万円となっています。2000年3月末最終処理額の倍以上です。不況の深刻化で県内中小企業の財務状況はなおいっそう厳しくなってきたことをあらわしています。
県信用保証協会の「代位弁済」が2000年度は前年度にくらべて倍近くになっていることは、中小企業が借金を返せなくなった深刻な実態をあらわしています。県信用保証協会の代位弁済状況
年度 件数 金額 1999年度 378 2,927百万円 2000年度 715 6,633百万円 2000年度の10倍以上の規模の不良債権処理は何を招くか
なぜ、中小企業の「不良債権」がふえるのか? それは、売上高、利益の減少という不況のさらにいっそうの深刻化のなかで借金がかえせないからです。
佐賀新聞社が実施した県内の企業経営動向調査(2001年1〜3月期実績)は、前年同期にくらべて「売上高、計上利益ともに減少した企業が6割をしめている」という調査結果を明らかにし、「県内経済は停滞感がつよまっている」としています。(「佐賀新聞」5/31)。
小泉内閣の方針どおり金融機関の不良債権処理を強行したらどうなるか。佐賀銀行の決算資料からどのくらいの規模の不良資産処理が行われるか試算してみました。2000年度は8,070百万円の不良債権の最終処理がおこなわれ、倒産件数は135件です。
今後、不良債権の処理範囲が拡大されるとどうなるか---リスク管理債権額で想定してみたのが次の表です。
不良債権額(百万円) 不良資産累積額(百万円) 2000年処理額(8070百万円)に対する割合 破綻先債権額 8,603 8,603 1.07倍 延滞債権額 21,846 30,449 3.77倍 3ヵ月以上延滞債権 2,143 32,592 4.04倍 貸出条件緩和債権 55,673 88,267 10.94倍 処理が「延滞債権額」まで及ぶと処理対象の不良債権は30,409百万円になり、2000年度の3.77倍の規模になります。同様にして、「3ヵ月以上延滞債権」にまでおよぶと4.04倍、「貸出条件緩和債権」までおよぶと実に10.94倍・11倍近い規模になります。
2000年度の11倍の規模の不良債権処理が進められたらどうなるか。2000年度の11倍、1500件近くの中小企業が倒産するなどと単純にはいえませんが、2000年度よりはるかに大規模な中小企業の倒産と失業をひきおこすであろうことは間違いありません。このような無謀な政策をやめさせ、消費税の3%への引き下げ、社会保障の拡充など、国民の消費購買力増強で景気の回復をはかる政策に転換させなければならないと思います。
(メモ)
使用した決算資料が佐賀銀行に限られていますが、佐賀銀行は県内の代表的な地方銀行であり、県内中小企業とのかかわりが大きいという点から、おおよその傾向は示していると思います。その点を承知したうえで参考にしていただければ幸いです。