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猪股嘉直
「憲法9条を守り生かして、戦争しない日本を求める 請願書」に対する賛成討論
 日本共産党の猪股嘉直です。請願の紹介議員(高橋ブラクソン久美子議員、大沢えみ子議員、望月高志議員、私)を代表してまた、日本共産党議員団をも代表して議請第1号「憲法9条を守り生かして、戦争しない日本を求める 請願書」に賛成する討論を行います。

 本請願は埼玉9区市民連絡会事務局長 秋山敦子さんと平和憲法を守る狭山共同センター事務局長の大沢進さんの連名で行われました。9区市民連絡会は狭山市などを含めた小選挙区9区地域の市民と野党の共闘組織です。また、平和憲法を守る狭山共同センターは狭山市内の労働組合や平和団体、民主団体など憲法9条を守り、平和を守ろうとの一点で集合しているおおよそ3000人の組織です。

 請願については先ほど総務経済常任委員会の委員長が報告されたように、同委員会で審査が行われ、私 猪股が紹介議員を代表して、質疑に対する答弁にたちました。
 請願の主旨は、「安倍首相が日本国憲法9条の1項、2項は残しつつ、3項に『自衛隊』という文言を明記するとの発言を行っている。それは憲法の平和主義の基本原則を壊すことになり、日本が再び海外に出かけて戦争をする国になってしまうことを意味する」「最近の世論調査では憲法9条の改定を望む声は少数であること。政治課題の中で、憲法改定の優先順位は低い」と指摘し、「国民は国際紛争を解決するためには武力ではなく、話し合いと対話によっての問題解決を望んでいる」と述べて、「平和都市宣言をしている狭山市として憲法9条の改定を行わないよう地方自治法99条に基づき、」政府と国会に意見書を提出するようにと求めています。


日本国憲法は他国からも評価

 請願の主旨で述べられているように、私は、日本の憲法は平和主義を貫き、日本ばかりでなく現代世界にとってもかけがえの無い憲法だと考えます。日本人がこの間の中東諸国における混乱の中でも信頼を受けているのは、日本国憲法を持つ国として評価されていることの証しだと思います。残念ながら、最近その評価を失いつつあり、日本のジャーナリストが凶弾に倒れる事態も発生しています。それは、米国と一緒に戦争する国への転換を始めるなど、その評価が変わってきているからだと思います。

日米安保は日本の平和と安全を脅かしている

 日本は憲法を施行以来71年間、戦争をしない、戦争によって他国の人を、また戦争によって他国の人から日本人が殺されることはありませんでした。「日米安保条約があったから、守られてきた」とう論がありますが、私は違うと思います。むしろ安保条約があるがゆえに、日本はアメリカが引き起こす戦争に加担させられ、相手国から見れば闘う相手になりかねない事態に陥りました。一例を挙げれば、1965年に米国が「トンキン湾事件」という、後にでっち上げ事件として世界に認定された事件を口実に、北ベトナムへの爆撃を行ったベトナム戦争では、日本は安保条約を理由に、兵員や武器の補給基地とされ、65年7月以来、沖縄基地がB52爆撃機の北爆発進基地として使われ始めました。75年4月、ベトナム戦争は終結しましたが、ベトナムが補給基地である日本を攻撃する可能性も充分に考えられることでした。
 また、日米安保条約は日本を守ると言うより、日本の安全が脅かされています。米軍機の墜落・不時着・落下物など深刻な事故が頻繁に発生しています。オスプレイを初めとしてヘリや飛行機の墜落、「不時着」が幾度も発生し、日本の警察などが立ち入り調査も出来ない状態です。最近、沖縄の保育所、そして一昨日には小学校にも落下物がありました。
 米兵による犯罪も枚挙にいとまがない状況です。例として2016年、昨年一年間だけですが米軍犯罪のデータを紹介します。昨年の米軍関係者による刑法犯罪を日本全国の地方検察庁と高等検察庁が作成した「合衆国軍隊構成員犯罪事件人員調べ」によりますと、住居侵入6件(不起訴5件)、強制わいせつ1件(不起訴)、強姦6件(不起訴5件)、殺人1件(起訴1)、傷害17件(不起訴14件)、暴行7件(不起訴6件)、窃盗27件(不起訴26件)、その他18件(不起訴12件)で、合計83件(不起訴69件)になります。起訴されたのは14件で16.9%です。日本全国の一般刑法犯の起訴率(2015年)は39.1%ですが、比較すると米軍は半分以下です。その他に自動車による過失致死傷が178件発生して、起訴は17件のみ。161件は不起訴です。起訴率10.6%です。
 請願の主旨では「北朝鮮の核実験やミサイル開発の発射、中国の海洋進出など日本を取り巻く情勢が厳しくなっていることを口実に憲法改定の動きが急速に強まった」と指摘しています。
 安倍首相が総裁を務める自由民主党は昭和30年(1955年)11月15日の文書「党の使命」を発表し、「現行憲法の自主的改正をはじめとする独立体制の整備を強力に実行する」宣言しました。そのことが現在の北東アジアを取り巻く情勢の中で、強く押し出されています。
 しかし、相手が物騒な動きをしている時、こちらも物騒な動きをすれば、相手を刺激するばかりです。火に油を注ぐようなものです。
 ペリー元米国防長官は、11月29日、朝日新聞に掲載されたインタビューで、「日本の指導者は、外交の失敗がもたらす帰結を理解する必要があります。外交の不在や見境のない発言は、戦争に、非常に壊滅的な核戦争に突入する条件を醸成(じょうせい)してしまいます」と指摘し、実行可能な軍事オプションは存在しないと強調し、「我々は外交を真剣に検討すべきです。私は安倍首相に、トランプ大統領との議論で、こうしたことを促すことを期待しています」とのべています。1994年の北朝鮮の核危機のさい、軍事攻撃を本格的に検討しながら、最後は直接対話に踏み切った元米国防長官の発言を、日本政府も重く受け止めるべきだと、私は考えます。


「憲法に『自衛隊』を銘記すれば、憲法の平和条項は死文化する」は日本会議が認めていること


 審査の中で、「憲法9条の1項、2項を残したまま3項を設けて『自衛隊』という言葉を明記すると、9条の2項を事実上 死文化(空文化)することになる」とう問題も議論になりました。審査を行った委員会でも申し上げたように、法律の世界では後から加わった条文が優先されて、前に規定されていたものを死文化する役目を果たします。民間団体で「日本会議」という団体があります。この団体が今年の5月3日に集会を開催しているところに自民党総裁としての安倍氏が「3項に自衛隊明記」というビデオメッセージを送ったわけですが、この日本会議という団体の幹部が、数多く執筆している「日本政策研究センター」というところが発行している「明日への選択」という月刊情報誌があります。今年の11月号には、
☆「9条加憲」で何が変わるのか と問題を投げかけて、
 ・憲法への「自衛隊明記」は、自衛隊の「権能」は変わらないとはいえ、法的な「地位」は確実なものとなり、その結果、これまで足枷となってきた「違憲」論は力を失う。同時に、自衛隊は初めて国家制度の中核に位置づけられ、「国家の安全保障」を正面から論じられる国になる。
と述べているように、「軍隊を持たない」と規定した2項を飛び越えるものになることを示唆しています。一昨年の安保関連法の成立で、日本の自衛隊の活動は確実に変わりました。これまでの自衛隊ではありません。こういう中で、自衛隊の活動が無制限の海外での武力行使に道を開く危険性がでてきているのです。

 審査の中で、自衛隊を支持する人は世論調査の中で92%もある、という指摘がありました。否定しません。それは大地震の際、あるいは大雨、土砂災害、川の氾濫の際など、献身的に災害救助を行う自衛隊を支持するのは当然だと思います。ところが今度はそのような活動をしている隊員が海外に行って戦争する可能性があるのです

 伊藤忠商事会長 社長、日本郵政社長 外交官などを歴任した、丹羽宇一郎氏が今年の夏出版した著作『戦争の大問題』の中で「戦争をなくすために大事なことはまず戦争を知ることである」とそ指摘しています。「国内の被害だけでなく、中国や太平洋の島々での住民虐殺や飢えた兵士同士の『人肉食』を通じ、『戦争は人を狂わせる』」とその悲惨さを指摘し、反響を呼びました。

「改憲」賛成は少数

 憲法改定に関する世論調査の問題も審査の中で議論になりました。審査では共同通信の調査を示しましたが、3大新聞の調査も紹介します。
読売新聞社が衆院選中に全国の有権者を対象に行った世論調査で、憲法9条に自衛隊の存在を明記する安倍首相の考えに「賛成」と回答した人は35%、「反対」は42%でした。
 衆院選の結果を受けて、朝日新聞社が10月23、24日実施した全国世論調査(電話)では、安倍晋三首相が意欲を見せる憲法9条への「自衛隊明記」について、安倍政権での改正の賛否を聞くと、「反対」45%が、「賛成」36%を上回りました。
毎日新聞(11月12日&13日)世論調査でも「改憲を急ぐ必要はない」が66%、「急ぐべきだ」の24%を大きく上回りました。
 共同通信の世論調査では「憲法改定」が、緊急度の問題、差し迫った課題かどうかという問いもありました。最も優先的に取り組むべきとの項目は「年金・医療・介護」で42.5%の方が、次は「景気・雇用・経済対策」で39.6%の方、3番目に「子育て・少子化対策」で31.5%の方が早く手をつけてと答えていましたが、憲法改定は7番目で6.8%の方が「早く」という結果でした。これらを見ても決して多くの方が憲法改定を望んでいるわけではないと考えます。


日本国憲法は「押し付けられた」のか?

 日本国憲法について「押し付けられた憲法」とする論があります。憲法草案はGHQから渡されたのは事実のようです。しかし、日本はポツダム宣言を受諾し、日本の非軍事化・民主化・国民主権の採用と基本的人権の確立という国際的約束をしました。日本はその約束を果たすために、憲法改正を含めさまざまな民主化のための措置を取る義務がありました。
 新しい憲法の制定が問われる中で、政府も憲法草案の作成を始めました。ところが、政府の準備していた草案は、天皇主権を原則におき、明治憲法の内容を残し、ポツダム宣言にもあからさまに反する内容となっていました。1946年2月、マッカーサーら占領軍は政府のつくった草案にかわる草案を起草して幣原内閣に手渡し、この結果46年3月、GHQの草案をもとに政府の憲法草案がつくられました。日本の憲法学者らも議論を重ね、これまでの憲法案に比べれば、はるかに民主主義的な内容となりました。
 同時に、主権在民の民主主義に矛盾するあいまいさも残しました。その最大のものは憲法草案の中に主権在民の原則を明記しなかったことです。
 46年6月に開会した議会に、政府は「明治憲法の改正」というかたちをとって、新憲法草案を上程します。日本共産党は、民主主義を徹底させる立場から、政府があいまいにした主権在民の原則を憲法に明記するように、憲法制定会議の場で求め、同時に「日本共産党憲法草案」を発表しました。翌月には憲法改正案委員小委員会に主権在民の原則の明記と天皇条項の削除、戦争放棄条項に「他国を征服する戦争に反対する」「多国間の戦争に絶対参加しない」旨を明記して、日本の中立を憲法に明文化すること、さらに国民の権利をより具体的に保障することなどを求める修正案を提出し、その主張を重ねました。
 議会では当初、日本共産党の修正案は無視されましたが、主権在民の明記を求める主張は議会の内外で大きな争点になりました。国民の強い要求が膨れ上がる中、8月の衆議院の修正で、憲法の前文と第1条に「主権が国民にあることを宣言し」など、主権在民の原則が追加して書き込まれました。このように日本国憲法は国民的議論の元でつくられたのです。

憲法制定時の日本共産党の対応は

 当時の日本共産党が憲法草案の採択で反対の態度をとった理由は二つです。一つは天皇条項が主権在民と矛盾したものであり、戦後の日本では天皇制の廃止と徹底した民主主義の政治体制への前進が求められていたからです。二つ目には、憲法9条のもとで「自衛権が無い」との立場でしたので、党はこれは「日本の主権と独立を危うくする」ものとして草案の採択に反対をしました。その後、戦争を放棄し、戦力の不保持を定めた憲法9条のもとでも自衛権を持っていることは、広く認められるようになりました。
 日本共産党は、2004年1月の第23回党大会で決定した、現在の綱領を採択するなかで、憲法の改悪に反対して9条を積極的に擁護する、天皇の問題でも徹底した国民主権の立場から、将来の天皇制についても国民の中での議論を経て、国民の総意によって解決されるべきもの、としています。

 戦前、戦中と一貫して戦争反対を貫き、基本的人権を尊重する日本共産党の議員として、不戦のため軍隊を持たないと定めた日本国憲法9条を守り生かしたい、この思いは請願者と同じです。
 この請願が皆さんの賛同を得て可決されることを願って、討論をおわります。


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