父が他界して四半世紀(その６)
立ち飲みで一杯
「父が他界して四半世紀」と題して、この間５回、私の成長期と父のことを合わせて書いてきましたが、今回は父の「面白エピソード」を少し書きます。
お酒の好きだった父が、帰宅途中の国道４号線の山道で寝てしまい、通りがかりの人に助けられた話は昨年６月の第一回目で書きましたが、東京に来てからの事を書きます。
私が小岩高校生だった時の事。高校を終えて、小岩駅の京成バス・金町行の停留所に並ぼうとしたら、いつもより早い帰宅の父が、まだ日が長く明るい酒店の前で、ワンカップらしきものを口に運んで立っていました。
以前は、酒屋さんが店前での立ち飲みサービスをしてたんです。今は無いと思いますが。私はその父を見つけて、自分が恥ずかしくなり、父に「帰ろうよ」と言って誘い、バスに乗りました。父も、そんなところを息子に見つかり、気前が悪そうに、苦笑いをしていました。私には、黙って見過ごしてあげる度量が無かったのです。
私は３０歳を過ぎて、所沢の病院から川口の病院に転勤になり、毎日、西武線秋津駅と、ＪＲ新秋津駅を往復したのですが、その途中にある「立ち飲み屋」さんに、川口に通った１０年間、お世話になりました。酒店前ではありませんが、父のＤＮＡをしっかり受け継いだのかと思います。
懐かしいところはどこまでも
狭山に移り住んだ父は、過去に通った小岩、新小岩、金町などが忘れ難かったのか、会社の休みには、わざわざ狭山から小岩などに出かけ、パチンコをしたりしていました。小岩までの往復時間とパチンコ店にいる時間、どっちが長いでしょう？父はすぐに負けてしまうので、パチンコ店での滞在時間はほとんど無いと思います。
また、千葉県船橋あたりで大型スーパーなどが開店すると開店記念日とかで、そこまで行くのです。何か口実を見つけては、昔馴染んだ地に行く。ほっとするのでしょうか？
お米を売ったら、映画でも観て…
生前のおふくろが、父の「のんき話」をよくしてくれましたが、その中で戦後の話ですが、お米販売の話があります。東北・宮城からおコメを沢山持って東京に売りに行くのです。母は長男を背負い、母の背中と長男との間にコメを挟み、運び、売っては宮城に帰る。生活の糧にするのです。父も同じように売り歩くのですが、母に言わせると、「父ちゃんは、売り終わると、帰りに映画を観て来る」とこぼしていました。
私も映画、芝居は大好きです。私は父に風貌が似ず、母親譲りですが、お酒と映画好きは受け継いだようです。
