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地方交付税制度の改悪を武器に「追い立て合併」---県の合併推進出前講座を聞いての感想

2002年1月31日


 1月31日午後、太良町のしおさい館で、市町村合併問題で県の出前講座がありました。
 県の市町村課の主査である田中氏が約1時間10分ぐらい講義をし、その後で参加者との間で質疑応答がありました。
 田中氏の話しはソフトな語り口で、それ自体としては悪い印象はありません。
 しかし、田中氏の話しの中に国や県の考えはきちんと示されていました。
 田中氏の話しを通じて合併推進側が強調している論理、そして、どこに落とし穴があるか---私の感想を簡単ですがメモしておきたいと思います。これは、田中氏個人に対する批判でなく田中氏が語った国や県の考え方や手法についての批判です。

 私の印象では、田中氏は合併の「メリット論」はあまり強調していないようでした。たとえば、合併にともなう財政優遇策についてはほとんど語りませんでした。
 これは、おそらく、「メリット論」や「財政優遇論」がすでに破綻してしまったせいではないかと思います。
 その一方で、田中氏が時間の多くを使って強調したのは、国・地方を通じた財政困難、とくに、地方交付税制度の改革のなかで、合併しなければ市町村は財政的にやっていけないということでした。
 おりしも、新聞等のニュースで、国の地方交付税会計が借金しなければやっていけないということ、政府が段階補正の見なおしで人口5万人以下の市町村は交付税を減らすという方針であることが報道されています。
 国や県は、このような動きに対する住民の不安を最大限に利用して一挙に法定合併協議会の設置に持ちこむ戦略のようです。このやり方はもはや「押しつけ合併」を通りこして、「追い立て合併」と言ったほうがぴったりくるのではないかと思いました。

 もう一つは、これまでたびたび批判してきていますが、「とにかく法定合併協議会を設置して議論を」という「すりかえ論」です。

国と財界がつくった借金の後始末のための市町村合併

 田中氏は、市町村合併の必要性について、県のパンフ「さが進化論」にもとづいて4点について語りました。田中氏が一番強調したのは「国・地方における厳しい財政状況」でした。
 その特徴は、666兆円という国と地方の借金について「1億総ざんげ式」で住民に痛みを求めるというものでした。
 田中氏は、「どういう形で借金がされたのか?」と、借金の原因として所得税の減税、地域振興券の発行などをあげていました。そして、三つ目に「公共事業の前倒し」をあげていました。いずれも、国民がその利益にあずかったのだから、その返済のためにみんなが痛みを感じるのは当然とという論理でした。「われわれがローンをくんで作った借金」という言葉がそれを表しています。
 まず、ここに最初の間違いがあると思います。
 国・県の借金の最大要因が公共事業の大盤振るまいにあること、それは、アメリカの圧力によって、政府が、最初は「10年間で430兆円」つぎにエスカレートして「10年間で630兆円」という公共事業の実施をアメリカに約束したことが大元にあることはもはや国民の常識です。
 この対米約束を実行するため国自身が公共事業の大盤振る舞いをしただけでなく地方自治体にも公共事業の拡大を押しつけたのです。それが、現在の借金の大元なのです。
 その借金の後始末をするために地方に市町村合併を押しつけているのではありませんか。
 あるいは、自ら作った膨大な借金とその結果である財政困難を悪用して、年来の狙いであった市町村合併を一挙にやりとげようとしているとしていると言ったほうが正確かも知れません。
 問題の本質はここにあると思います。

 しかも、「借金で大変だ」と国民には痛みを押しつけながら、これまでの大型開発路線は基本的にはそのまま継続し、新たな借金をつくっているのです。  反省をしないものは、同じ過ちを繰り返すといいますが全くその通りです。
 まず、このことをはっきりしない合併推進の話しは、どんな話しでも信用できないというのが国民の気持ちではないでしょうか。
 田中氏に限りませんが、国や県からきて合併推進の話しをするときには、まず冒頭に「国や県の失政で大きな借金を作ってすみませんでした」と頭を下げるべきでしょう。
 そんなことには頬かむりをして、今度は自分たちが作った借金を武器にして市町村合併に追い立てる---田中氏の話しを聞きながら、「転んでもただで起きない」という諺そのままだと思いました。 

県も市町村といっしょに「交付税制度を改悪するな」という運動をおこすべきでないか

 田中氏は、太良町では合併でなく「自立」を求める議論が多いということを承知しているのでしょう。そのことを意識した話しの内容になっていると感じました。
 そのせいでしょうか。田中氏の話しの中では、「自立」ということが国の交付税制度にたよらず「自前の財源でやる」ということにすりかえられているような感じをうけました。
 田中氏の話しを聞いて、「自立するとは自前の財源だけでやっていくことだ」と受けとめた参加者もいたのではないでしょうか。
 「自立」ということは、別に自前の財源だけでやっていくということではありません。
 田中氏も話したとおり、全国の市町村の基準財政需要額と収入額の不均衡を是正するために、全国の地方自治体の共通の財政プール制度として地方交付税制度があるのです。
 逆にいえば、それぞれの市町村がどんなに立地条件が悪くとも自立を保障するためにあるのが地方交付税制度です。
 そういう地方交付税制度を、公共事業拡大の道具に使ったり、市町村合併推進のための「ムチ」に利用する国のやり方こそ地方交付税制度をゆがめているのではありませんか。

 太良町の百武豊町長も出席した昨年11月28日の全国町村長大会は「市町村合併にかんする緊急決議」のなかで、「市町村合併の強制を意図した地方交付税算定の見なおしは絶対に行わないこと」と国に要求しています。また、「いかなる形であれ合併を強制しないこと」も国に要求しています。
 私は、全国の地方自治体、とくに町村が全国町村会の緊急決議の内容で力を合わせて国にせまっていけば、国の思惑どおりにやらせないこともできるとおもいます。
 自らが地方自治体である県が今やるべきことは、市町村と協力して「地方交付税制度を合併押し付けの道具に使うな」と大きな声をあげることだと思います。
 県はいつから国の出先機関、国の「悪代官」になってしまったのでしょうか?

 「高負担・低サービスにはならない」と篠山市の例をあげたが----

 太良町が鹿島市と合併したら、水道料、国民健康保険税などが高くなることを太良町民は心配しています。
 そのことを意識したのでしょうか、田中氏は兵庫県篠山市の例をあげて「合併するときの協定では、負担は安いところにあわされている」と水道料や保育料の例をあげています。
 合併するとき住民の負担は高いところに合わせ、住民サービスは低いところにあわせたら誰も合併に賛成しません。合併当初は住民が反対しないようにするのは作戦として当然でしょう。
 国のほうも、「公共料金格差是正」のためとして、普通交付税の上乗せ、特別交付税の措置などを合併優遇策としてあげています。しかし、普通交付税の上乗せは5年限り、特別交付税措置は3年限りなのです。期限がきたらいやでも本音がでてくるのです。
 兵庫県篠山町は、早くも合併2年後の昨年2月、「行革実施計画」という大リストラ計画を発表したようです。
 その中には、保育所、小中学校の統廃合、使用料・手数料の引き上げなどが計画されているといいます。
 篠山市を合併の見本につかうのは、そろそろ色あせてきたのではないでしょうか?

  「メリット・デメリットを明らかにするために合併協議会設置を」というすりかえ

  「合併するかどうか」という議論をしたいと思っていた人達を、知らないうちに「合併してどうするか」という議論にひきずりテクニックが「法定合併協議会」であることは、これまで繰り返し明らかにしてきたところです。
 田中氏の話しも、太良町民がもっているいろいろな不安を逆用して法定合併協議会の設置に持ちこもうとするものでした。
 たとえば、合併後の市役所の所在地がどこになるかという問題です。
 多くの太良町民は、鹿島と合併すれば太良町の役場がなくなり、鹿島市まで行かねばならなくなることを心配しています。これが、常識的な感覚でしょう。
 ところが、田中氏によれば「合併しても、太良町役場を廃止するとは決まっていない。そんな議論は不毛」だというのです。
 そして「具体的な問題を検討するためには法定合併協議会の設置を」と持って行きます。
 ここには、二重のすり替えがあります。
 第一に、田中氏の話しは形式論理の見本みたいなものです。
 県の市町村合併推進要綱には、合併のメリットとして「鹿島市の都市機能の強化」ということが書いてあるではありませんか。
 合併が鹿島市を中心に動いていることは誰の目にもはっきりしています。
 第二に、田中氏の論理で行けば、「合併したらどうなるか?」という住民のいろいろな不安は、事実上「合併してどうするか」という議論が中心になっている法定合併協議会を設置しなければ解消しないことになっています。
 これで、田中氏が合併のメリット・デメリット論に深入りしないわけがわかりました。「そんな話しは法廷合併協議会を設置してから」というのでしょう。太良町から役場がなくなったら人口が減るのではないかという問題に田中氏は答えないままでした。

 「合併したらどうなる」という住民の不安につけこんで、法定合併協議会の設置をおしつける県のやり方、「羊頭をかかげて狗肉を売る」式のやりかたはやめるべきです。
 うっかりこの手に乗ったら大変です。
 法的には、法定合併協議会で協定した内容はそれぞれの議会での議決を必要としますが、一度、法定合併協議会のエスカレーターにのったら、そのまま合併へ運ばれてしまうのがこれまでの多くの例です。
 それだけに、法定合併協議会の設置にはいるまえに、現時点で入手可能な情報に基づいて合併の問題点を明らかにし、住民の間での議論をおこしていくことが大切だと思います。
 こういう国・県の態度です。合併したらどんな問題が出てくるか住民自身の手で調査し、学習することがますます大切だと痛感しました。

 1時間余にわたる田中氏の話しを聞いて、私が感じ取った県の戦略は以上のとおりです。
 まとめて言えば、次のとおりです。

  • 地方交付税制度の改悪を武器にした「追い立て合併」
  • 「合併したらどうなる」という住民の不安を逆用して法定合併協議会の設置に引きずりこむ---「とにかく法定協議会設置を」
  • 篠山町の合併するときの例をあげて合併後のことは語らない「合併後だんまり」
 なお、田中氏は太良町だからこういう話しをしたのかもしれません。他の市町村での県の出前講座も聞いてみたいと思いました。

参加者から厳しい質問

 参加したみなさんからは活発な質問がありました。
 その多くは、「鹿島との合併よりも太良町の自立を」という声でした。
 また、町民の間での自由な討論を保障するのが大切だと言う声もありました。

 百武町長が開会挨拶の中で触れていましたが、今度は、「合併に問題あり」という立場での講演を聞く機会をぜひつくってほしいと思います。  

2/1 追記

 1/31出前講座の模様を佐賀新聞がどう書くか注目していました。
 2/1に記事が載っていました。県の田中氏の話しを紹介したあと、出席した女性の声を載せていました。
 女性がそのように語ったこと自体はその通りですが、女性自身がその他の部分でもっと時間をかけて語ったこと、そしてその他の質問者の大部分が語ったことは、鹿島市との合併に対する疑問でした。私が記者だったらそのことを書くのにと思いました。
 佐賀新聞の「合併推進」のシナリオのせいかなと思いました。      


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