1月から2月にかけて、太良町でも市町村合併問題でいろいろな動きがありました。町主催の2回の「出前講座」、「合併問題を考える町民の会」(準備会)の自主的な懇談会などです。
私自身も、県内のいくつかの市・町で合併問題について講演する機会があり、各地の住民のみなさん、地方議員の皆さんとの議論のなかでいろいろなことを考えさせられました。
太良町の問題を中心に、中間まとめをしておきたいと思います。
「1市3町」、「1市4町」---どちらになっても太良町は大きな市の南端
今朝(3/6)の佐賀新聞に「杵藤地区合併問題---2市10町案は消滅」という見出しの記事が載っていました。
杵藤地区2市10町の合併問題をテーマにした首長、議長合同会議が5日、武雄市で開かれたが、反対意見が多くまとまらなかったという記事です。
武雄市、嬉野町、塩田町が2市10町案に賛成意見をのべたが、山内町をのぞく杵島郡6町が反対し、今後2市10町案での議論はしないことを確認したと書いてありました。
杵藤地区の合併組合わせの問題については、ホームページ「評論・佐賀と太良」の昨年の12/13付け記事「太良町12月定例議会の合併問題の質疑を聞いての感想」でコメントしておきました。このあとどうなるのでしょうか。
武雄市長の提案によって、「2市4町」の枠組が浮上してきたことも新聞で報道されています。
武雄市と合併したくない鹿島市、鹿島市よりは武雄市にかたむく嬉野町・塩田町の思惑のなかで、「1市3町」も「2市4町」もすんなりといくとは思えませんが、どちらにしても太良町にとっては大きな市の南端になることには変わりはありません。町づくりの指針になる文書----全国町村会のアピール「21世紀の日本にとって、農山村がなぜたいせつなのか」
私は、町民の皆さんと話し合うなかで、多様な自然環境、産物を生かした太良町の町づくりを進めてほしいという多くの町民のみなさんの願いを感じます。
私は、いろいろな業種(ミカン農家も、畜産農家も、漁家も、商工業者も、公務員も、勤め人も)の町民、そして老若男女をとわず多くの町民が集まって太良町の町づくりについて議論しあう場が持てないかと思ってきました。また、町づくりに指針になる文書はないかと思っていました。
全国町村会が昨年7月に発表した文書「21世紀の日本にとって、農山村がなぜ大切なのか---揺るぎない国民的合意にむけて--」というアピールを読んで「これだ」と思いました。詳しくは紹介できませんが、アピールは、農山村は国民の生存を支え、国土を支え、文化の基層を支え、自然を活かし、新しい産業を創っていくというかけがえのない価値をもっていることをまず明らかにしています。
次に、農業や林業などの第一次産業をまもり、農山村の資源を活用した産業を生み出すことは可能であり、農山村に住む人々に雇用と所得・生活の安定を保障することは可能だと言っています。最後にアピールは、農山村に根付いた町村だからこそ、このようなことが出来るのだと協調しています。
アピールが訴えている内容には多くの町民のみなさんが共感できるのではないでしょうか。そういう太良の町づくりを進めるためには、自主・自立の道を進んだほうが良いのか、鹿島市と合併したほうがよいのか----ここが問題です。自立した町だから、地域に根ざした産業政策ができる
全国町村会のアピールは地域に根ざした産業を育てるためにも町村自治が大切なことを強調しています。
「農山村の主産業である農林漁業は、地域の環境や景観と密接不可分です。それゆえ、農林漁業の維持・進行のための施策は、町村行政として必要不可欠な課題です。
しかも、町村における自治の仕組みと農林漁業の振興の仕組みが有機的に連携しなければ、農山村を維持・発展させていくことは出来ません」
町内をまわっていて「その通りだ」とおもいます。
たとえば、ミカン園のなかまで作業道路が良く整備されていることに驚かされます。太良の大切な生産基盤だとおもいました。
役場の話しでは、町独自の事業として「みかん園・園内作業道整備事業費補助金」という制度があるということでした。2000年度の決算では、町の単独事業として3,552万円が支出されていす。この制度は、2001年度で廃止されるということですが、その他にも、ミカンと畜産の町らしい町独自の施策が沢山あります。
太良町が独自に行っている主な農業施策(2000年度決算) 単位は1000円
農林漁業開発資金利子補給補助金 901 かんきつ経営農家資金利子補給補助金 4,900 みかん園園内作業道整備事業費補助金 35,518 みかん品質向上(マルチ)補助金 2,595 家畜診療所運営費補助金 1,200 乳牛導入事業費補助金 1,380 繁殖雌牛優良牛導入事業費補助金 560 牛異常産3種混合ワクチン予防接種補助金 436 地域養豚振興特別対策事業費補助金 6,307 死亡獣畜処理対策事業費補助金 1,773 私は、太良町という自立した町があったからこそ、この地域の特産であるミカンと畜産を大切にする特色ある農業施策を進めることが出来たのではないかとおもいます。これは、竹崎かに・タイラギという特色ある漁業を大切にする漁業施策という点でも同じです。
伊福区は今から50年近く前、七浦村が鹿島市に合併したときに分離して太良町と一緒になった地区ですが、その当時のことを良く知っている古老からこんな話しを聞きました。
「伊福はミカン農家が多い地区だ。太良町は町全体がミカンに力を入れているので太良町と一緒になってよかった」。私は、これを聞いて、「ここに、太良町が自立した町として存在する意味があるんだな」と思いました。
逆に、太良町が鹿島市と合併したら、合併した市の政策の重点は鹿島市中心部の商業開発におかれるのではないか、ミカンや畜産など農業はかたすみにおかれるのではないか---農家のみなさんが心配している通りだと思います。米作中心の平場の農村とは違った中山間地域の太良の農業、竹崎かにとタイラギという特色ある大浦の漁業を守り、その基盤の上に新しい産業・観光産業などを発展させて行くためには、太良という町を熟知した町政、そういう課題を中心課題として真正面から取りくむ町政がなくてはならないと思います。
だからこそ、太良町をなくしてはならないと思うのです。
手ごろな規模だから、町民のニーズにこたえる町政が出来る
私は、太良町は他の市町村以上に町民の健康づくり・保健事業に力を入れているのではないかと思います。
町が独自に行っている保健事業に次のようなものがあります。
母子保健事業のうち、妊婦および乳児検診 個人負担なし 各種がん検診(胃、子宮、乳、肺、大腸) 個人負担なし 各種予防接種(BCG、ポリオ、風疹、日本脳炎、三種混合、二種混合、麻疹) 個人負担なし 結核予防(胸部レントゲン撮影) 個人負担なし 前立腺がん検診 個人負担なし 住民一人あたりの保健事業につかっているお金は国保会計でも、一般会計でも太良町が鹿島市にくらべてうんと大きくなっています。
加入者一人あたりの国民健康保険税が、鹿島市にくらべて太良町が安いのは(2000年度調停額で、鹿島市は74,249円、太良町は59,510円)、太良町が町民の保健事業を熱心に行っていることが大きな要因の一つになっているのではないかと思います。
鹿島市との合併によって、これまで太良町が積み重ねてきた健康づくりの努力の結果が崩されてしまう恐れはないのか----私はこのことを危惧します。鹿島市と合併すれば、これまで太良町が行ってきた保健事業が続けられる保障はないからです。全国町村会のアピールは「町村の優位性は、小規模であるがゆえに、地域全体を見渡し、住民ニーズをきめ細かく捉え、施策間の調整を図りやすいという点にあると言えます」と述べています。ここが大事だと思います。
国や県は、町村は規模が小さくて何もできないようなことをいっていますが、むしろ逆です。
地域の問題点や住民の要求をきめこまかくとらえることが出来る、素早く対処することが出来る、生産・環境・暮らしのいろんな側面に総合的に配慮して仕事を進めることができる-----これは、小規模な町村だから出来ることです。
私は、太良町が人口12,000人程度という手ごろな規模をいかした行政を展開すれば、自然環境に満ちあふれた町、安全で美味しいものを食べることのできる町、住民の健康と福祉を大切にしている町として、他には見られない独自のまちづくりを進めることが出来ると思います。
合併して鹿島市の片隅にいるよりも、はるかに誇らしいことではないでしょうか。合併で得するのは鹿島だけ-------久留米大学・大矢野教授の指摘
2月27日に「しおさい館」で町主催の合併問題での出前講座があり、久留米大学の大矢野栄次教授が講演しました。
講演の後の質問で参加者から「太良と鹿島と合併して得するのはどちらか」という質問がありました。これに大矢野教授は「得するのは鹿島だ」と言下に答えました。
たしかにその通りです。
都市(とくに経済界)が、合併に熱心なのは合併によって周辺町村の財政、購買力を中心都市に集中することにあります。規模が拡大した財政(人口一人あたりの財政規模は小さくなりますが)を中心部の「都市機能の強化」に集中的に使い、それによって集客力の強化をはかるというのが大きなねらいです。
その結果、周辺の旧町村はどうなるか?
役場や議会など行政機構の消滅、住民の利便性の低下、商工業の落ちこみ、地域全体としての停滞、そして人口減です。その次には、人口減を理由にした学校の統廃合です。
これは、1955年に鹿島市と合併した旧七浦村が1998年には36%も人口を減らしたという事実が如実に物語っています。同じ期間の太良町の人口減は28%です。この差は、旧七浦村が合併によって、役場、議会、中学校がなくなったということ以外には説明できません。
合併後の太良町を待ちうけているのは、旧七浦村以上の人口減ではないでしょうか。合併反対をそらすために低負担・高サービスで出発---兵庫県篠山町のウラ話し
鹿島市との合併によって、もうひとつ大きな問題になるのは住民負担の問題です。
固定資産税の税率は、現行の100分の1.4から1.5にあがります。
水道料は、2ヶ月40リューベ使用の場合で、鹿島市は消費税込みで7,560円、太良町は4,830円、鹿島市が5割も高いのです。水道会計が一つにされると、太良町民にとって水道料の大幅値上げになるのではないかと心配です。
国民健康保険税は、住民一人あたりでみると鹿島市が74,249円、太良町が59,510円です(2000年度調停額)。2000年度同じ会計になると、太良町民にとって保険税の値上げが予想されます。このような指摘に対して、1月31日に町主催で開かれた「出前講座」で佐賀県・市町村課からきた講師は「合併の先進例である兵庫県篠山市では住民負担は低いところに合わせ、住民サービスは高いところに合わせている」と話していました。
太良町民は水道料や国民健康保健税の値上げは心配しなくてもいいということでしょうか。
ところが、これにはウラがあります。
「四国新聞」に、篠山市のもとになった四つの町のひとつ「丹南町」元町長・杉本幸男さんの次のような談話が載っていました。
「合併協議会が住民に対して示した町づくりの基本姿勢は『高サービス、低負担 』、低料金に合わせないと各町との調整はつかなかった。高サービス・低負担と言う方針がいずれ行きづまるのはわかっていたが、合併成立に住民の賛同をうるにはこう訴えるしかなかった」。「低負担・高サービス」は一時の方便だったということです。
合併後3年もすると本音が出てくるようです。
おなじ「四国新聞」は次のように書いています。「政策部次長の大対信文さんは、近い将来公共料金の見なおしが必要になるだろうとの認識をしめしている」。「『合併して所帯が大きくなったからといって、住民サービスをアップするための財源的な余裕はない 』篠山市の誕生に中心的な役割を果たした元丹南町長の杉本幸男さんは、行政側の本音を代弁する」(同上)。実際、篠山町は昨年2月に公共料金の見なおしをふくむリストラ計画を発表しています。
「四国新聞」は、三つの町から役場がなくなった結果を次のように書いています。「小さい町だからこそできたきめこまかい住民サービスが、大きな器になって低下したケースがすでにいくつか見られる。たとえば、所得税・市民税の申告相談。相談会場を減らした」。次に、兵庫県の外郭団体(「21世紀兵庫創造協会」)の委託でまとめられた報告書「市町村合併が地域社会に与えた影響に関する調査」の指摘を紹介しましょう。
報告書は、「役場が廃止になった3町でとくに大きな不満は支所機能の低下と住民サービスの低下である」。「全地域に共通して聞かれた不満は住民と行政の距離が遠くなったということである」と指摘しています。
このように、合併後の篠山町は住民にとって決してばら色ではなかったことを、県の外郭団体の報告書も語っているのです。「合併しなければ地方交付税が減らされる」という問題について
「地方交付税が減らされる。合併しないとやっていけないのではないか」という議論があります。
これについて、2月27日、町主催の出前講座で講演した久留米大学の大矢野栄次教授は「地方交付税問題は国からの脅しであって、地方交付税の増額を目的として効率的行政区を描くのはナンセンスである」と話していました。
2月11日の朝日新聞に、「全国3,223市町村のうち合併特例法の期限である2005年3月までに合併することが有力な市町村は全体の約2割の692市町村」という記事が載っていました。
これでいくと、残りの8割、2,531の市町村は合併せず、合併しない市町村が多数派になるわけです。
これでは、「合併しない市町村は地方交付税をへらす」ということは出来なくなるでしょう。仮に、そんなことをしたら、日本中が吹き上がってしまいます。今、大切なことは、「合併しなければ地方交付税を減らす」という脅かしにのってあわてて合併することでなく、「そんなことは許さない」という態度をとることだと思います。
そうすれば、国は自分の財政難を地方に転嫁するという方向でなく、無駄な公共事業の削減など他の方向で解決する道を選ばざるを得なくなるでしょう。
そういう点では、全国町村会を先頭に「市町村合併の強制を意図した地方交付税算定の見なおしは絶対に行うな」「合併を強制するな」という声を大きくすべきだと思います。
もちろん、地方自治体がこれまでのように政府の誘導策によって必要でない公共事業までどんどんやったという公共事業中心の行政は改めなければなりません。住民の目から見て「効率的で無駄のない行政」を確立しなければならないことは当然です。太良町の自主・自立をめざした町民的討議と太良町の「自主・自立宣言」を
私は、以上のような点から太良町が鹿島市との合併でなく「自主・自立の道」を進むことを提案するものです。そして、町民のあいだで、どのようにして自主・自立のまちづくりを進めるか討論をおこすことを呼びかけたいと思います。
その上で、太良町が合併でなく、自主・自立の道を進むという宣言を内外に発表することを私は提案したいと思います。