3月5日、杵藤地区の首長・議長合同会議で杵島郡6町の反対で2市10町案が消滅した後、合併の枠組として2市4町案が浮上してきました。武雄市と鹿島市、山内町、嬉野町、塩田町、太良町の合併案です。
2市4町案が太良町や鹿島市にとってどういうものか考えてみました。
一言でいえば、歴史的・地理的な必然性がないばかりでなく、域内の矛盾を大きくするばかりで、太良町や鹿島市にとってマイナス要因が目立つ合併構想だということです。川と道にそって人々の生活圏が形成される
2月27日に太良町主催の合併問題「出前講座」で講演した久留米大学の大矢野栄次教授は、講演の最後に興味深いことを指摘していました。
それは、大矢野教授自身は10万人単位の合併でなければ失敗するという主張のようですが、合併するにあたっては「歴史的な川と道の絆を背景とした生活圏を考慮」しなければならないということです。
なるほどと思いました。
たしかに、大矢野教授が指摘しているとおり、河川の流域あるいは道にそって人々の生活圏あるいは交流圏というものが歴史的に形成されてきたようです。
河川の利水と治水という点から流域に住む人達の結びつきが生まれ、同じ道を往来するという点から人とモノ、文化の交流が活発になり、人々の共存と連帯が生まれていったのではないでしょうか。
「多良海道地図作成委員会」が作成した「多良海道」の地図をこんな視点でみると、この地域でどのような生活圏と交流圏が歴史的に出来てきたのか、うかがい知ることが出来ます。
藩政時代の太良は諫早領に属していましたから、この道を通じて諫早や小長井などとの交流が進み、また、鹿島や浜などとの交流も進んだのでしょう。国道207号線沿いの衰退につながる2市4町合併
大矢野教授の「歴史的な川と道の絆を背景とした生活圏」という考え方からいくと、「2市4町」合併案は歴史的な必然性はないことになります。
逆に、合併して新たに出来た「市」のなかに矛盾するものを抱えこんでしまうことになるのではないかと気になります。
2市4町が存在するこの地域には、大きくいって二つの「道」があります。
一つは、国道207号線とJR長崎線----有明海沿岸にそっている道です。
もう一つは、長崎自動車道路、国道34号線、JR佐世保線の道です。長崎新幹線がこれに加わろうとしています。
この二つの道にそって形成されてきた二つの地域は、絆より競合する側面が大きいのではないかという気がします。それは、佐賀から長崎につうじる人とモノの流れ、情報と文化の流れという点でどちらの方がより太いパイプになるかという競合関係です。
私は、競合関係にあるこれら二つの地域が合併した場合、両方の地域の共存・共栄として発展していくよりも、合併した自治体の域内での二つの地域の矛盾と対立の激化をもたらす可能性の方が大きいような気がします。
そして、最後には、国道207号線沿いを犠牲にした国道34号線沿いの都市機能の強化という結果になるのではないかという気がしてなりません。
長崎新幹線の建設とそれにともなうJR長崎線の廃止(地元自治体で第三セクター化するという話しが進んでいますが)はこれに拍車をかけるのではないかと思います。
2市4町の合併により、独自の発言権のない「ウラ道」となってしまうよりも、有明海沿岸にそった生活圏と交流圏の発展、多良岳を中心にした緑と水の共生に力を入れた方がはるかに夢のある地域づくりができると思うのですがどうでしょうか。
(私はこれを「有明海同盟」と「多良岳連邦」とネーミングしています)
そのためにも、2市4町合併でなく、鹿島市や太良町の自主・自立を貫くべきだと思います。新幹線建設のぼう大な地元負担が長崎線沿いの住民にも
もう一つ、2市4町合併で浮上する大きな問題は、長崎新幹線建設にともなう財政負担の問題です。
日本鉄道建設公団は今年1月8日、九州新幹線・長崎ルートの武雄温泉駅から長崎駅までの工事実施計画をまとめ、国土交通省に認可を申請しました。JR九州は長崎新幹線開通にともない、長崎線肥前山口―諌早間の並行在来線の経営分離を表明しています。
1996年12月ころですが、井本知事は、県の試算によると武雄温泉駅―長崎間の建設費(県負担)は130億円、嬉野温泉駅建設に200億円、肥前山口―武雄間の複線化費用も必要といっています。
ただし、これは、建設費が3,500億円と見積もられ、地元負担が建設費総額の15%であったころの話しです。
そのあと、建設費は4,000億円に増え、地元負担は建設費の3分の1にふえています。
長崎県側の地元負担が49キロで572億円ということですから、キロあたり約11.7億円です。佐賀県側(県境〜武雄温泉駅)は17キロですから、単純計算すると約198億円になります。これに、嬉野温泉駅の新設費と肥前山口―武雄間の複線化費用の地元負担が加わります。
県は関係する市町村(武雄市と嬉野町)に地元負担の一部を負担させるでしょう。
嬉野町の嬉野温泉駅新設の地元負担は大きくなるのではないかと思われます。
武雄市ではすでに、JR佐世保線の武雄温泉駅を含め、東西を約三`にわたり高架化する事業が昨年6月からはじまりました。2007年3月までの工期で、事業費は周辺の区画整理を含め214億円だといわれています。2市4町が合併したら、太良や鹿島など長崎線沿いの住民もこれらの長崎新幹線建設費の地元負担金(市町村分)や関連事業費を負担することになります。
合併の例としてよくあげられる兵庫県篠山町の合併を促進した最大の要因は、JR複線化にともなう駅周辺開発など大型プロジェクト遂行のための財政基盤確立だったといいます。
2市4町合併案も同じように、新幹線建設・関連事業の膨大な地元負担を財政的にまかなうための合併でないかという気がしてなりません。
JR長崎線は廃止されるのに、新幹線建設の地元負担はさせられる------長崎線ぞいの住民にとっては割りきれない話しです。以上
メモ 市町村合併問題が中心なので、長崎新幹線建設についての私の考えを述べることはしませんでした。別の機会にふれてみたいと思います。