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質問・発言

●2023年3月22日 第1定例会・予算特別委員会

江尻加那

1.新産業廃棄物最終処分場の整備について
 (1)整備時期が1年遅れることになった原因と影響
 (2)新処分場西側の雨水排水対策

2.霞ヶ浦導水事業について
 (1)水道事業及び水道料金への影響
 (2)霞ヶ浦と那珂川の水を行き来させることによる生態系への影響
 (3)霞ヶ浦及び桜川・千波湖への水質への影響
 (4)事業からの撤退

3.障害者福祉行政について(知事)
 (1)県立障害者施設あすなろの郷再編整備
  ア.入所者へのアセスメントの結果
  イ.セーフティネット棟の定員200人
  ウ.社会福祉事業団の体制確保に対する県の責任
 (2)地域民間施設での入所や在宅生活に対する支援拡充

 日本共産党の江尻かなです。
 予算審議にあたり、廃棄物行政、水行政、そして福祉行政について、知事と関係部長に質問いたします。

1.新産業廃棄物最終処分場の整備について
(1)整備時期が1年遅れることになった原因と影響

 はじめに、県が新たに整備を進める産業廃棄物最終処分場についてです。新年度、処分場整備に3億5855万円、周辺道路整備に16億2517万円が計上されています。
 県が18年前に開設した処分場・エコフロンティアかさまが、再来年・令和7年度に埋め立て満了になるため、県は次の処分場として日立市諏訪町にある日立セメント株式会社の採石跡地を選び、唐津沢の谷間にある巨大な窪地に産廃を埋め立てる計画です。
 当初から、生活環境や自然が壊されると反対の声が上がりました。
 私も、候補地を選ぶ県の委員会に日立セメントの元専務が加わっており、選ぶ側と選ばれる側が同じなのは問題であり、計画は撤回すべきと追及してきました。知事は「単なる偶然だ」と言い逃れましたが、その後、搬入道路のルート選定も非公開で、概算事業費の比較も公表しないまま決めてしまいました。
 ところが今議会、整備が1年遅れると突然の計画変更です。産廃搬入道路(延長4km、幅員9m、トンネル2カ所、橋梁2カ所)の整備検討のために、処分場の基本計画・設計に時間がかかったというのが理由です。
 そこで、伺います。
 県は当初、産廃車両の搬入道路として、既存の県道37号(通称:梅林道路)を使う事を前提とし、山へ続くカーブの多い決して広くない道路沿いに保育所や学校、住宅団地があっても、交通安全対策をすれば済むと考えていました。
 しかし、結果として、新しい道を作らなければならなくなったのは、道路の現況や安全を軽視した県の選定そのものが間違いであり、県の不作為、想定の甘さが最大要因ではないでしょうか。知事の認識を伺います。
 合わせて、現在稼働中のエコフロンティアかさまについて、14日の常任委員会で担当課長は、「令和8年度までもつということは断言できない」と言っていますが、1年延びても埋立ては大丈夫なのか、知事として事業者である環境保全事業団に確認済なのかお答えください。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 産業廃棄物最終処分場は、県内産業の持続的な発展や県土の保全のためになくてはならない施設であり、民間による設置が困難な状況の中で、私が主導して新たな処分場の整備を進めているところであります。
 新処分場整備候補地の選定にあたっては、廃棄物処理や地盤工学などの専門家による検討委員会において、周辺道路の評価も含め、客観的に絞り込みを行い、最終的には、県の候補地選定会議において適切に選定しております。
 また、新設道路の整備につきましては、住民説明会などでのご意見を踏まえ、副知事をトップとする庁内の交通問題対策会議において検討を重ねた結果、地域住民がより安心できる生活環境を確保するという観点から、政策的に行うものでございます。
 このような搬入ルートの検討から、基本計画の策定、基本設計までに時間を要しましたことから、当初の予定より概ね1年遅れてある2026年度末の供用開始を目指すとものであります。
 また、エコフロンティアかさまの埋立につきましては、新処分場の供用開始時期を見据え、計画的な受け入れを進めることにより、切れ目のない最終処分場の確保に努めてまいります。

【江尻】
 候補地を絞る県の検討会で、46カ所県内の候補地がありました。それぞれ評価する際に、主要道路の幅員や交通量といった今の道路状況を県が「評価対象外」にしたことが、県の資料に残され、ホームページでも公開されています。「主要道路の幅員や交通量によっては、制約となる恐れがあるが、処分場整備に適さない基準はない」として、対象外にしてしまったこれが事実です。逆に言えば、梅林道路を含めて県道37号線の道路状況をしっかり評価すれば、この場所は候補地に選ばれなかったのではないでしょうか。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 県の選定会議での当該候補地の交通搬入路についての評価として、現状として大型車両が通行してることから、通行自体に問題ないと考えて検討をしたわけでございますが、一部市街地を通ることや、小学校があることから、配慮が必要だということで政策的に決定を行ったものでございます。

【江尻】
 問題ないとしたことが想定が甘かったということです。
 処分場整備費は当初の208億円から230億円になり、道路整備を合わせると350億円という事業費に増幅しています。新しく作る道路というのはトンネルを2カ所、橋梁も2カ所ある120億円の県道をたった3年で整備できるのでしょうか。さらなる増額や延期も考えられる処分場計画は見直し、中止すべきです。

(2)新処分場西側の雨水排水対策
 次に、具体的な雨水の排水対策として、具体的なことですので県民生活環境部長に伺います。
 大規模な開発に伴う雨水の対策が重要であることは言うまでもありません。
 県の計画では、処分場敷地内とその東側・南側に降った雨は、今度作る新たな防災調整池に貯めてから鮎川に流す一方、西側に隣接する広大な唐津沢に降った雨、ここから流れてくる雨水は新たな搬入道路と一体に整理される排水路で受けて、直接鮎川に流すとしています。こちらは調整池に溜めないまま流してしまって大丈夫なのでしょうか。
 本事業に反対する住民の工事差し止め裁判でも、土砂崩れや洪水などへの対策が不十分で、安全が守れないと、これが訴えの論点です。
 そこで、搬入道路の予備設計ができ、今後詳細設計とのことですが、排水路の規模や、放流先の鮎川の流下能力をどのように見込んでいるのか、この西側の雨水・排水対策について県民生活環境部長に伺います。

【県民生活環境部長】
 お答えいたします。
 新処分場西側の雨水につきましては、現在は、処分場予定地沿いを流れる既存の水路を経由し、鮎川上流部に流入しているところでございます。
 この既存の水路につきましては、新設道路の整備に合わせ、同等の水路を付け替え、これまでと同様に鮎川へ流入する計画でございます。
 また、新設道路には道路側溝を設置し、付け替えた水路と同様に鮎川上流部へ雨水を排水していきます。
 今回の新処分場及び新設道路の整備は、西側奥の山林には手を加えませんので、処分場等の整備に伴い西側奥から鮎川へ流入する雨水の量に変化はないものと考えられます。
 県といたしましては、付け替え水路等の流入位置や構造等について、鮎川上流部を管轄する日立市と協議し、適切に対応してまいります。

【江尻】
 具体的に伺いますが、県の基本計画にも示されているように、唐津山に降った雨というのは沢にそって東で集まり、最後は1カ所に集まってくる地形になっていると県の資料でも示されています。
 その集まってくる地点が、私が見るに、ちょうど搬入道路のトンネル出口の上部にあたるのではないか。そうすると豪雨に襲われた時、流れてくる雨水を、いま部長がおっしゃったように、新たに作る道路の側溝に導く方策は検討されているのか。
 もう一つは、この側溝から鮎川に放流した下流の一部分が、直径2m程度のトンネル状になっている部分があり、ここで流れが一定程度口を塞がれてしまうのではないか、そういう懸念もあります。
 いま部長がおっしゃったように、今後、管理者である日立市と鮎川の流下対策の検討も具体的に必要と考えますが、もう1度ご答弁いただければと思います。

【県民生活環境部長】
 繰り返しになりますが、現況で流れてくる雨水はもちろん、一部処分場予定地に流れるもの、道路を伝わって流れていくもの、浸水していくものと分かれてくると思うのですけれども、ご指摘の道路のつける場所については今設計を進めておりまして、議員指摘のあったようなことのないよう、これから設計・調査等々を進めていくことで考えております。

【江尻】
 これから調査という事で、地域住民の方の心配事、具体的なデーターで示されている方もいますので、きちんと県として耳を傾けて設計に反映していただきたいとこれは念を押してお願いしておきます。
 そもそも、知事も先程おっしゃったように、本来なら民間が整備すべきこの産廃処分場ですが、民間では整備が困難、だから県が変わって整備する必要があると、一貫してそういう説明ですが、そうであるなら住民意見というのは最大限尊重すべきであり、あの場所に作ることへの懸念や反対意見を、まるで反対のための反対というような認識は改めていただきたいと思っております。
 私はこうした点から今回新年度予算に計上されています処分場の整備事業予算には反対をいたします。
 以上でこの質問は終わります。

2.霞ヶ浦導水事業について
(1)水道事業及び水道料金への影響

 続きまして、大型開発であり、国の直轄事業である霞ヶ浦導水事業について質問いたします。
 資料1をご覧ください。那珂川と霞ヶ浦と利根川を結ぶ全長約45.6 km の地下トンネルで結び、水を行き来させる国の水源開発として始まった導水事業は、総事業費2395億円、工期は延期が繰り返され2030年度、あと8年とされています。
 新年度予算に国は約59億円を計上し、併せて県としても9億8千万円もの負担金を払う予算になっています。
 私は、この事業について、水余りなのに新たな水源開発は必要なく、霞ヶ浦の浄化にも役立たないどころか、逆に環境破壊や水道料金値上げをもたらす最悪の税金の無駄遣いだと警告し、中止や撤退を県に求めてまいりました。
 そして、今定例会の初日に提出された茨城県包括外部監査報告書でも、霞ヶ浦導水事業について指摘がありました。こう書いてあります。
 水戸市など県央地域に県が水を供給する県中央広域水道について、今後、霞ヶ浦導水事業が完成すると、減価償却費や水源管理の負担金が発生して、厳しい経営状況となり、赤字が続けば料金改定が必要であるという監査報告でした。
 そこで、政策企画部長に対して、この導水事業が本県水道事業や水道料金に及ぼす影響について所感を伺います。

【政策企画部長】
 お答えいたします。
 霞ヶ浦導水事業の完成後におきましては、公営企業会計の会計処理基準にもとづき、霞ケ浦導水事業を水源とする県企業局の水道用水供給事業において、減価償却費や水源管理負担金が費用として計上されることになります。
 一方、公営企業の料金につきましては、地方公営企業法に基づき、「公正妥当なものでなければならず、かつ、能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし、地方公営企業の健全な運営を確保することができるものでなければならない」と定められております。
 そのため、県企業局におきましては、ご指摘の包括外部監査報告書でも述べられておりますとおり、今後の厳しい経営環境を見越し、コストダウンへの取り組み、浄水場の再編等も考慮した合理的な広域化の検討、市町村等の水道事業者への県水転換の働きかけ等の経営努力を行っていると聞いており、特に、市町村含めたさらなる経営改善を図る政策の一つとして、知事部局と連携しながら、水道の広域連携を推進しているところであります。
 広域連携は、施設の統廃合による最適化により更新費用の削減が可能となるほか、広域化に係る国の有利な財源の活用などにより、市町村等が単独で経営を継続する場合に比べ、料金として回収すべき将来の給水原価の上昇を抑制するなどの効果が期待できると考えております。
 こうした考えのもと、現在、政策企画部が中心となり、地域の状況に応じ、業務の共同発注などのスケールメリットを活かした「管理の一体化」や料金の統一を必要としない「経営の一体化」など、経費をできるだけ抑制しながら、安全安心で強靭かつ持続可能な水道事業の実現を目指して検討を進めているところであります。
 県といたしましては、引き続き市町村等とともに広域連携を推進することで、将来の水道料金の影響をできる限り抑制できるよう取り組んでまいります。

【江尻】
 県水の中でも県中央広域水道の料金が全国一高いっていうのはご存知でしょうか。
 導水事業が完成した減価償却期間は55年に及びます。その間ずっと経営に影響を与え、広域化によって水戸市などの県央地域の市町村だけではなく、全県の市町村にその負担を今度は賄ってもらおうというようなことが広域化でなされては絶対にあってはならないと考えております。
 料金の値上げに繋がるという指摘を外部監査でも受けたことは重大だと受け止めていただきたいと思いますし、影響は料金だけではなくて生態系にも及びます。

(2)霞ヶ浦と那珂川の水を行き来させることによる生態系への影響
 例えば、霞ヶ浦と那珂川の水を行き来させることで、霞ヶ浦にいる特定外来生物のアメリカナマズやカワヒバリガイが今度は那珂川に侵入してくるのではないか。那珂川はアユの生産が有名ですけれども、漁業者からは那珂川から霞ヶ浦に水を送る時に、アユの稚魚が吸い込まれないか裁判も争い、国は対策のために試験通水を続けています。
 こうした生態系への影響はどのように考えているか伺います。

【政策企画部長】
 お答えいたします。
 生態系への影響でございますが、漁業関係者等からは、那珂川からの取水に伴う魚類の迷入や霞ヶ浦から那珂川への導水に伴う外来生物の移送について、懸念が示されてきたところでございます。
 このため、国においては、那珂樋菅と高浜機場それぞれにおいて、対策を講じることとしております。
 まず、那珂樋菅におきましては、魚類迷入防止等の対策を行うこととし、有識者からなる委員会を2008年に設置し、魚類迷入試験の実施とその結果をもとに科学的な評価・検証を行い、2022年7月の第8回委員会において、対策案の承認を得たところであります。
 具体的には、那珂樋菅の取水口の前面スクリーン、吹き流し、除塵ネット、魚返しなどを設置して、魚類の迷入量を低減させるとともに、仔アユが降下する10月から11月の夜間には取水停止する対策を講じることとしております。
 次に、高浜機場におきましては、有識者からなる検討会を2016年に設置し、様々な浄化手法実験の実施とその結果をもとに科学的な評価・検証を行い、2021年9月の第6回検討会において、対策案の承認を得たところであります。
 具体的には、高浜機場敷地内に、ろ過施設を設置し、外来魚の魚卵などが捕捉されることにより、移送が防止されることとしております。
 国からは、関係漁協に対して丁寧に説明を行い、魚類等に影響を与えないよう適切な対応をとっていく他、完成後においても適切にモニタリングを実施していくと聞いてるとこであります。

【江尻】
 そこまで色々しなければ防げない、やったとしても本当に防げるのかという懸念もあり、今でも試験通水を国としても続けていると思いますけれども、確認ですが、漁業者等関係者の合意が得られない取水や送水は絶対にあってはならない、この立場は県も同じということでよろしいでしょうか。端的にお答えください

【政策企画部長】
 国からは関係局に対して丁寧に説明を行って、魚類等に影響を与えないよう適切な対応を行っているとお伺いしております。
 県としてもそういったことについて、きちんと国の方と連携しながら取り組んでいきたいと考えております。

【江尻】
 説明だけではダメなんです、きちんと合意を得られなければならないと。
 漁業者が懸念や納得がいってないのに、水槽水が行われるようなことは絶対に県としても認めていただきたくないと思っております。

(3)霞ヶ浦及び桜川・千波湖への水質への影響
 本当にこの那珂川からの導水によって霞ヶ浦がきれいになるのでしょうか。
 また、水戸市を流れる桜川と千波湖の浄化がことさら強調されるようにもなりましたが、こうした水質への影響はどのように県として分析されているのかお答えください。

【政策企画部長】
 お答えいたします。
 水質への影響でございますが、まず、霞ヶ浦につきましては、国のシュミレーションによれば、利根川や那珂川からの導水によって、西浦の湖水は、現在、年間約2回入れ替わっているものが、約3回入れ替えることが見込まれ、これによる水質改善効果を期待しているとこでございます。
 次に、桜川・千波湖につきましては、霞ヶ浦導水事業により那珂川から桜川へ送水された水を千波湖へ送水する、いわゆる千波湖導水事業により、最大で毎秒3立方メートルの水を千波湖へ送水することで千波湖の水の入れ替えが促進され、水質が大幅に改善されるものと期待しております。
 昨年8月と9月には、那珂川から桜川・千波湖の試験導水が行われており、水質改善効果が確認されたところであり、地元の水戸市からも大きな期待が寄せられているところございます。
 このため、県といたしましては、霞ヶ浦導水事業により、那珂川と利根川から浄化用水が導入されることで、霞ヶ浦や桜川・千波湖の水質浄化が期待できる、大変有効な事業であると考えております。

【江尻】
 千波湖・桜川の試験導水は効果があるといま部長が仰いましたけれども、水戸市議会では目立った改善はないという議論もあります。
 さらに、霞ヶ浦に至っては、国は当初、COD を0.8ミリグラム改善させると言っていたのに、最後の5回目の計画変更に乗じて0.4ミリグラムへと効果を半減させてしまいました。
 0.4っていうのは霞ヶ浦の COD の年間変動から見ると、せいぜい誤差の範囲と言わざるを得ません。

(4)事業からの撤退
 最後に知事に、この導水事業は本当にこのまま参画し続け、負担金を払い続けることでいいのか伺いたいと思います。
 昭和51年に調査が始まった当時は日本は高度経済成長期で、首都圏の水需要の伸びを予測し、那珂川の水を霞ヶ浦に貯めて首都圏に送る構想でした。
 それから50年近く。水需要は減り続け、事業継続の正当性もなくなっていると思います。霞ヶ浦の浄化をスローガンにして事業が延命されていますけれども、那珂川の水を入れて薄めてもこの期待できる効果というのはないと私は思っています。むしろ異なる水系の水を混ぜるというこの生物多様性方にも反する自然摂理に反する行為ではないかとも考えています。
 これまで5回もの計画変更を行って、多額の事業費を使ってもトンネル工事は4割未満です。もう止めるべきではありませんか。そして、事業中止で浮いた予算を那珂川水系の治水や霞ヶ浦周辺の下水道の浄化に当てるという判断を知事に求めたいと思いますがいかがでしょうか。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 霞ヶ浦導水事業につきましては、霞ヶ浦や桜川・千波湖の水質浄化、利根川・那珂川の渇水対策、新規都市用水の確保を目的に事業が実施されているところでございます。
 まず、水質浄化効果につきましては、先ほどの政策企画部長の答弁のとおり、霞ケ浦や桜川・千波湖において、希釈や入れ替えが促進されるなど導水による水質改善効果を期待しているところでございます。
 次に、渇水対策効果でございますが、那珂川では、春の田植えの時期には、塩水遡上による農業用水の取水障害が起きるなど、毎年のように影響が生じており、また、利根川においても近年夏場に取水制限を行われていることから、これらの渇水被害の軽減も期待するところでございます。
 特に那珂川においては、2019年4月27日から5月21日にかけて、農業用水が15%、都市用水が10%と、2001年以来となる取水制限が実施されました。
 このように那珂川では農業用水だけでなく、都市用水の取水にも支障をきたすなど、決して安定した取水ができている状況でございません。
 霞ヶ浦導水事業が完成することで、霞ヶ浦からの導水により那珂川の塩水を押し戻すなど、渇水の際の影響が緩和されるものと期待しております。
 さらに、新規都市用水の確保につきましても、霞ヶ浦導水事業の完成を前提に暫定水利権を取得し、既に水道用水として県内10市町村約70万人に、工業用水として県内24事業所に給水しているところでございます。
 このようなことから、霞ヶ浦導水事業は、水質浄化や渇水対策、新規都市用水の確保の観点から、本県にとって必要不可欠な事業と認識しております。
 県といたしましては、県単独でのご要望はもちろんのこと、県及び県内37市町村で構成する霞ヶ浦導水事業建設促進協議会の要望活動を通じ、関係都県とも連携しながら、続き続き、国に対し、コスト縮減と工期短縮に万全を期すよう、強く働きかけを行ってまいります。

【江尻】
 「コスト縮減、早期完成」の意見をつけ、5回もの計画変更を県は同意しましが、もう一顧だにされていない状況です。
 様々な課題があるのであれば、今まさにその課題解決のために県が政策を遂行すべきなのに、いつできるかもわからない導水事業に効果を期待して、いつまでも県費を投入し続けることが問題ではないかと思います。
 この道水関連予算には改めて賛成できないと申し上げます。

3.障害者福祉行政について
(1)県立障害者施設あすなろの郷再編整備
 ア 入所者へのアセスメントの結果

 最後に障害者福祉行政について引き続き知事に質問いたします。
 県立でただ一つの障害者支援施設あすなろの郷の建替工事が、いよいよ2カ年の計画で始まり、建設費109億円のうち新年度44億円が計上されました。
 整備にあたっては、大変な紆余曲折がありました。
 知事が就任直後、突如民間導入を打ち出したからです。県の施設定員を今の半分以下の200人に縮小し、そこに入れない入所者は民間事業者が整備する施設に入所を促すというものでした。
 これに対して、保護者などから「今のまま県立施設に入所し続けたい」と切実な声がだされ、県に見直しを求める動きが議会としても強がりました。そして、多くの方々の尽力によって、民間事業者ではなく、現在の指定管理者である社会福祉事業団が自主事業として敷地内の今ある既存施設で入所者を受け入れていくということになりました。
 知事はこの経過を真摯に受け止めるべきだと思います。ところがこれで安心というわけではありません。
 現在の入所者394人そのうち、どの人を新たな200人のセーフティネットで受け入れるかを判断するために県はアセスメントを行いました。
 その結果を資料2にしましたのでご覧いただきたいと思います。
 アセスメントという言葉自体、私は障害者をふるいにかけるようなもので本当に違和感を覚えますけれども、394人のうち、セーフティネットの対象者が188人。その対象にはならないが、あすなろの郷の既存施設に入所した方がいいという方が49人。そして残り157人は民間への移行も可能だという判断ですが、県が個別面談をした結果、民間への移行希望する方はいらっしゃらなかったという結果です。
 しかし、既存施設のうち、事業団の自主事業となる新棟と呼ばれる比較的新しい建物での受け入れ可能人数は、160人と伺っております。ですから、49と157を合わせてこの206人全員が入れないと。ではどうするのか。知事はこの結果を踏まえ、県として希望者全員の受け入れを考えていくのか明確にご答弁いただきたいと思います。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 あすなろの郷の入所者に対するアセスメントについては、障害者福祉に関する専門的知見を有する県社会福祉会に委託し、あらかじめ、強度行動障害と医療的ケアに関する客観的な基準を設け、入所者394人を対象に、一人一人、丁寧に実施してまいりました。
 その結果、セーフティネット棟の入所基準を満たした最重度の障害者は188人、また、セーフティネット棟の入所対象とはなりませんでしたが、その障害特性から、現状の入所環境を大きく変えない方が良いと判断された方が49人となりました。
 一方、それ以外の157人の方は、民間の障害者施設でも対応が可能との判断がされましたので、当該入所者の保護者の皆様とは、個別面談を通じて、あすなろの郷の既存施設か、民間施設への入所を希望されるか、意向確認に努めてきたところであります。
 結果的に、民間施設への移行を希望される方はおりませんでしたが、その主な理由は、「現在の支援員に慣れているから」と、「環境を変えたくないから」が多数を占めておりました。
 こうした結果を踏まえますと、「民間施設に移行したくない」からではなく、障害特性などから「入所環境を変えたくない」ためと認識しております。
 今後は、入所環境を変えずに、民間の力を活用するという考え方が両立するような方策について検討してまいります。

イ. セーフティネット棟の定員200人
【江尻】
 長くあすなろの郷に入所されている方々が、環境を変えたくないというのは本当にその通りだと思います。ですから、今一番の心配は、残りたいという方があすなろの郷に全員残れるかどうかです。
 あわせて知事に考えていただきたいのは、建て替えた暁には、待機者が入所できると期待されているわけです。昨年度末で待機者は196人。今すぐにでもという方がそのうち30数名いらっしゃると聞いています。ですから、私はこういう現状を見れば県が作るセーフティネット棟の定員が200人ではあまりに少ないのではないかと改めて思いますけれども、知事はどのような所見でしょうか。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 あすなろの郷再編の基本的な考え方として、県はセーフティネット棟において、民間事業者では対応が困難とされる最重度の障害者への支援に注力してまいります。
 一方、それ以外の方に対しては、民間事業者と連携しながら、「県と民間事業者の役割分担」のもと、障害者の支援に努めていくことにしております。
 こうした考え方に基づき、支援区分6相当で、強度行動障害や医療的ケアが必要なため、民間施設では対応が困難な最重度の障害者に対しては、引き続き、県が責任をもって支援していくこととしております。
 なお、アセスメントによるセーフティネット棟の対象者は188人でありましたが、その後、お亡くなりになる方がおり、現在は183人となっております。
 また、障害区分や障害特性など条件を設けずに申し込み順に受け付けていたあすなろの郷の待機者は196人であります。
 その多くの方々は、在宅や民間施設の入所サービスで対応できる方々であり、市町村の認定調査結果に基づく県の簡易アセスメントにおいても、セーフティネット棟の対象者は10人程度の結果となっておりますので、定員200人の中で対応できるものと考えております。
 このため、待機者に対しましても、順次、詳細なアセスメント実施し、セーフティネット棟の入所対象となる最重度の障害者に対しては、定員200人で、県として責任をもって支援してまいります。
 一方、県内にはあすなろの郷の他にも質の高いサービスを提供している民間施設も多数あることから、最重度の障害者以外の方々につきましては、民間施設も含め、幅広い選択肢を提供してまいります。

【江尻】
 知事は何度も最重度、最重度とそこは受け入れていくとおっしゃいますけれども、この民間移行が可能だという157人の方、障害区分いくつかご存知ですか。157人の方も最も重い区分6の方々です。高度の強度行動障害がないと言われるかもしれませんが、この方達も環境が変わったら大変だということです。
 ですから今、知事は環境を変えずに民間施設でもとおっしゃっていましたが、あすなろの郷の敷地にはまだまだ十分な広さがあります。この環境を活かして、県としての増設も可能です。特にこの間だけで5人もの方が亡くなられたと今お答えがありましたが、入所者の高齢化への対応が求められています。65歳以上の入所者がますます増えます。他の都道府県事業団では、障害のある高齢者のための施設を整備してところがあります。200人で終わりとせず、県としての拡充や施設の増設も是非検討していただきたいと思いますが再度お答えください。

【大井川知事】
 先ほどの答弁と同じになりますけども、県としましては、最重度の障害区分6、さらに高度障害などを最重度の方々に注力して、200人の定員であるセーフティネットの範囲の中でしっかり対応できるものと考えております。

ウ.社会福祉事業団の体制確保に対する県の責任
【江尻】
 しっかり対応ということですけれども、実際に事業を運営するのは県の社会福祉事業団です。再編後も手厚い支援が行われることが求められております。決してサービスは低下させないというのが育成会と県の約束だと認識しています。
 職員が適切な処遇で安心して働き続けられる体制確保が欠かせませんが、県の100%出資の法人であり、指定管理料の額の決定も含めて、県の公的な役割の発揮が必要だと思いますが、県の責任について所感を伺います。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 民間事業者では対応が困難とされている最重度の障害者については、国が定める基準を上回る手厚い人員配置による支援体制を講じることが必要となります。
 このため、現在、整備を進めているセーフティネット棟において、引き続き、県の指定管理事業により支援をしてまいります。
 一方、現在、最重度の障害者以外の方々は、国が定める基準に基づく人員配置で対応しており、アセスメントの結果、民間施設でも対応可能との評価でありますので、引き続き、国の基準に基づき適切な支援が講じられるものと考えます。
 従いまして、あすなろの郷の既存施設を活用した社会福祉事業団の独立採算による自主事業により、しっかりと支援してまいります。
 なお、あすなろの郷については、過去の出資団体等調査特別委員会において、「民間法人の活用なども視野に入れた経営の効率化を図るべき」や、「自主・自立した運営を目指すべき」との提言も受けております。
 このため、独立採算による自主事業が増えることは、提言に沿ったものであり、県といたしましては、重度の障害者に対する支援が可能な民間事業者の協力も幅広く得ながら、これまで同様、手厚い支援を行えるよう最大限の努力をしてまいります。

(2)地域民間施設での入所や在宅生活に対する支援拡充
【江尻】
 独立採算ではなかなか賄えないという、県のあすなろの郷の果たしてきた役割を、知事はもっと認識していただきたいと思いますし、民間で対応可能だということであれば、専門性と経験のある職員の確保、民間施設への上乗せ支援や、在宅生活に対して短期入所などの支援も拡充の必要があると思いますが、最後に伺います。

【大井川知事】
 お答えいたします。
 近年、入所や通所をはじめ、多様な障害福祉サービスを提供する民間事業者も増加してきており、身近な地域で、それぞれの障害特性や家族の状況に応じた支援を選択できるような環境が整いつつあると認識しております。
 一方、セーフティネット棟の対象となるような最重度の障害者の支援は、経験に基づく高度なノウハウや、専門的な医療サポート体制が必要なことから、大変難易度が高く、補助金などの支援措置で解決する問題ではないと認識しております。
 このため、当該最重度の障害者に対しては、県が中心となって1カ所でサポートできる体制を構築することが理想的であると考えております。
 最重度障害者以外の障害者に対する支援については、「県と民間の役割分担」を明確にすることにより、在宅の方を含め、支援が必要な障害者に対し、手を差し伸べていける体制構築に取り組んでまいります。

【江尻】
 答弁いただきましたが、事業団は民間事業者に比べて約1.5倍の職員配置で対応しています。こうした公的な役割こそ重要であり、200人に縮小すべきではないと本来ならもう一箇所私は県内に複数設けるべきだとも思っています。
 今回のあすなろの郷再編整備は109億円です。一方、産廃道路は120億円。税金の使い方が間違っていると思います。
 福祉の予算にこそ手厚く配置・配慮していただきたいと申し上げて質問を終わります。以上です。


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