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2016年第1回杉並区議会定例会を終えて |
<2016年第一回定例議会を終えて> 2016年3月19日 日本共産党杉並区議団 第一回定例議会、通称予算議会が2月10日に開会され、3月16日に閉会しました。今議会はあんさんぶる荻窪と荻窪税務署等国有地を財産交換するという区政史上例のない議案上程が行われた議会となり、多数の地域住民やマスコミなど議会内外が注目することとなりました。党区議団は、道理のない財産交換方針の撤回を求めると共に、一般会計1719億円、医療や介護の特別会計を含め2892億円に及ぶ平成28年度予算案に対し、切実さを増す区民生活の困難解消に取り組み、福祉向上を目指す観点で質疑にのぞみました。 <区民生活の困難さと区財政の健全性とのかい離> 区民の暮らしは本当に大変な状態に置かれています。たとえば年収400万円子一人世帯で税と保険料の総額(医療・介護・年金保険料、住民税、所得税、消費税の主要6負担)がこの五年間で約30万円も増えており、実に年間117万円に達している実態を指摘しました。区民が大変な負担を押し付けられる中、区には地方消費税交付金112億円がもたらされており、重税にさいなまれている区民を中心とした施策の拡充が求められます。ところが区はこの一年で新たに40億円もの税金をため込み、基金総額は460億円に達しています。今年度予算でも最終的には数十億円の積み増しが予想され、区民生活の困難さと区財政の健全性に重大な乖離が見られます。 <認可保育園と特別養護老人ホームの増設> 党区議団はこの間、保育園の増設を求める待機児童保護者の運動と結んで、認可保育園の増設を訴えてきました。区は基金を一定取り崩し、この一年間で7園を増設し、定員を671名増やしました。これは区民と党区議団の共同による重要な成果です。 しかし、党区議団は現状を分析し、この十数年にわたる無策の遅れを取り戻すような規模の対策となっていないと判断、年頭の申入れにおいて保育園増設の緊急対策を要望しています。実際、毎日新聞が23区を対象に行った調査では、保育所入所申し込み人数と受け入れ枠の入所倍率で、杉並区がワースト1位となったことが報道されました。 こうした事態を受けて区は前例のない予算案の訂正(高齢者住宅整備予算を保育園整備予算に、款をまたいで訂正)まで行って、緊急の対応を余儀なくされました。本来なら予算案の出し直しが必要とされるほどの問題ですが、施策の遅れや膨大な事務量を生じさせることを鑑み、予算案の訂正については党区議団として了承しました。しかし同時に、先を見越した計画規模の設定、現場職員の加配などを党区議団として要望しました。 特別養護老人ホームの建設計画も打ち出されるようになっており、これも重要な変化です。ただし、この間の計画は学校統廃合や財産交換によるものなど他の区民サービスを削っての計画となっており、問題があります。施設削減に頼らない特養ホーム整備のために、未利用公有地の有効活用や民間用地の確保などを積極的に進めることを求めました。また、この間党区議団が求め続けてきた地域密着型特養(小規模特養ホーム)整備が成田東3丁目の都営住宅跡地に計画化されており、さらなる整備を促進することを求めています。 <あんさんぶる荻窪と税務署等国有地の財産交換について> あんさんぶる荻窪と荻窪税務署等国有地の財産交換が議案として上程されました。建設費約30億円をかけたあんさんぶる荻窪を築10年で廃止し、約40億円をかけて新複合施設を建設するムダ遣いが問題となっています。さらには児童館や学童クラブがあんさんぶる荻窪から追い出され、桃二小に押し込められるため、耐震補強をしたばかりの桃二小が前倒しで改築され、ムダ遣いと同時に教育現場に混乱をもたらしています。区内最大級の利用者を誇る荻窪北児童館の廃止は住民の激しい反対運動にあい、東京新聞や都政新報などマスコミも連続的に報じるなど、区民の関心は広がりつつあります。 党区議団はニュースを連打し情報提供に徹すると共に、財務省理財局や関東財務局などへの聞き取りを行い、提案型の論戦を展開。あんさんぶる荻窪は存続させ、荻窪税務署を現地において中層で建替えてもらい、4000㎡を超えると想定される余った土地を定期借地で活用すれば、大規模特養ホームの建設は可能であるとの提案を行いました。区も「制度上できるかと思います」とこれを認めざるを得ませんでした。この提案は住民運動と財産交換に反対する他の議員に勇気を与えています。 この議会では、これほどまでに矛盾をきたした財産交換がなぜ方針化されたのかが大きく議論されました。きっかけとなったのは2010年12月、区が国に対して送った公文書が、住民による国への情報公開請求で発見されたことでした。そこには田中区長が荻窪駅周辺整備に国を取り込もうとして、荻窪税務署スペースを駅前に賃料無料で確保すると約束し、天沼3丁目の荻窪税務署の建替えを休止させた内容が含まれていました。ところが区長は税務署の移設先確保を進められず、2013年7月に国からもうこれ以上待てないと迫られ、2か月後の9月に、あんさんぶる荻窪の財産交換を提示したことが、他の公文書も合わせて白日の下にさらされたのでした。田中区長の失政のツケとしてあんさんぶる荻窪が国に差し出されたというのが実態だったのです。 区はこの公文書をひたすら隠し続け、2013年の財産交換当時、区議会議員が求めた情報公開請求にもこの文書を提出していないことが議会でも指摘されました。こうした議会でのやり取り一つとっても財産交換に正当性がないものと党区議団は厳しく指摘しています。区は議案の上程理由をあたかも地方自治法第96条第1項第6号(財産の交換を行う際は議会での議決をとること)に根拠を持つとしていますが、実際は、財産交換自体は二年後に実施されるものであり、国も税務署等国有地の財産価格鑑定評価書を提出しておらず、議案上程の法的根拠として不適切です。田中区長のトップダウンで進められてきた財産交換を、むりやり議会上程して議会各会派にその片棒を担がせるような議案となっています。 しかし、多くの問題と重大な議論を残しながら、財産交換議案は賛成多数で可決されました。賛成した議員には昨年の区議選で、児童館の廃止など区立施設再編計画(施設削減計画)に反対していた議員もおり、その責任は重大です。 賛成:自民(議長除く11名)、公明(8)、未来(6)、平和(6)、自無(5)、木梨もりよし、田中ゆうたろう 反対:共産(6)、松尾ゆり、堀部やすし、木村ようこ 財産交換議案について本会議での採決前日、あんさんぶる荻窪の地元町会長、児童に関わる団体の代表が各会派を訪ねました。財産交換の見直しを求める最後の要望を行なうと共に、例え交換が可決されたとしても諦めることなく、訴訟も含めあらゆる手段を講じて戦う決意が示されました。党区議団は引き続き、住民運動と固く結び、あんさんぶる荻窪を守るために力を尽くします。 <まちづくりの在り方> 都市計画道路の第四次事業化計画が発表されました。都内1200kmを超える都市計画道路のうち、10年以内に事業化(用地の測量、買収、道路建設)を進めるべきとする優先整備路線が、区内でも都施行、区施行合わせて9路線10区間が指定されました。中杉通りを五日市街道まで延長する計画では閑静な住宅街に16mの道路を建設し、方南町の商店街を丸ごと削り取るような道路の拡幅などが新たに指定されました。多くが住環境と財政を破壊する乱暴な道路計画です。区はおおむね容認の立場ですが、公平公正な住民周知に努め、反対の声も漏らさず都にあげるよう指摘しました。 杉並区総合的な住まいの在り方に関する審議会答申が出ました。家賃助成制度や空家の活用など多岐にわたる重要な提言が答申されましたが、全体として、さらなる検討を要する提起が多く、今住まいに困っている人たちに手を差し伸べるような決定打とはなっていません。区はこの間、民間ストックを活用した住宅施策を強調し、公営住宅の整備に後ろ向きでしたが、民間ストックの活用はまだまだ先の話になるという答申が出された状況であり、今こそ公営住宅の維持発展にしっかりと力を入れるよう求めるものです。 狭あい道路の拡幅に関わる条例制定を区長は急いでいます。狭あい道路拡幅の議論の本質は、住民合意のもとにお互いの私有財産を活用して暮らしやすく防災上有益な道路を整備することにあります。あくまでも住民合意が基本であり、この合意に納得のいかない区民を取り締まるかのような姿勢は、かえって問題の解決を遠ざけることになります。区民同士の対立を招くことのないよう、共に理解を進める機会となるよう指摘しました。 まちづくりという点では、建設労働者が減少している問題も取り上げました。減少している問題も取り上げました。大震災時の救助活動や道路確保作業等とも合わせ、地域に点在する建設労働者の防災上、地域コミュニティ上の役割は、ますます重要です。今議会では、党区議団が要望し続けていた感震ブレーカーの設置助成が予算化されていますが、この設置作業も東京土建杉並支部などの団体が担うこととなっています。建設産業労働者の区内での減少を食い止めるためにも適正賃金の確保は急務となっています。そのための決定打となる公契約条例の制定を強く求めました。 <教育破壊について> 高円寺地域の施設一体型小中一貫校計画は、小中学校3.5校分の児童生徒を一校におしこめるという事実上の学校統廃合計画であり、昨年開校された区内初の施設一体型一貫校「和泉学園」以上に重大な問題を抱える計画です。小中一貫校における児童の発達への悪影響が専門家から指摘されているにもかかわらず、和泉学園の検証も行っていないことが党区議団の質疑で明らかとなりました。高円寺地域の住民の多くがこの一貫校計画に反対しているなか、強引に進めることは許されません。改めて計画の白紙撤回を求めました。 杉一小の改築複合化計画では、新校舎の屋上校庭化が進められようとしています。区は、校庭が広くなると説明しますが、地上の校庭空地は建物で埋め尽くされます。この改築案には様々な問題が懸念されます。一時避難場所は近隣の民有地や駅前ロータリーで十分とする区の答弁には驚かざるをえません。屋上校庭では児童がボールを思いっきり蹴り上げたり、野球をすることもままなりません。本来児童の心と体を開放するはずの校庭が、児童の活動に制限を課す場所になりかねない事態は異常です。自民党の地元区議は、年度内の決定という区のスケジュールに間に合わないので決めるしかないと意見し、屋上校庭案を推しました。しかし、杉一小は耐震化されたばかりで、区立施設の複合化もすぐにでも行わねばならない課題ではありません。なぜこうまでして急ぐのか不可解です。住民の声をしっかりと聞き、議論を尽くすことが何よりも重要であり、拙速に進めることは許されません。 新年度から、特別支援教室の設置が段階的にスタートします。これまでの通級指導から全校に教室が設置されることになります。施策拡充のように見えますが実際には、効率化の名の下、教員の配置割合が3割も減少し、身体的な成長のゆがみを正すプレールームといった特別な設備も全学校には整備されないなど、指導の質が低下しかねない事態を招いており、本末転倒です。杉並が全都全国に誇る宝の施策、通級学級の技術と信頼を守るため、現場の声を真摯に受け止めることを指摘しました。 <LGBTQ> この議会中、自民無所属維新という会派の議員が“L(レズビアン:女性同性愛)G(ゲイ:男性同性愛)B(バイセクシャル:両性愛)T(トランスジェンダー:狭義には「性同一性障がい」)のうち、LGBは「性的指向、すなわち個人的趣味」であり、区が予算や労力をかけるべきでない”と発言したことが大きな社会問題となりました。党区議団は同性愛や両性愛などの「性的指向」はその人の恋愛観であり、性自認であり、「趣味」「嗜好」の話ではないと指摘。どのような性的指向であっても、それぞれの恋愛観や人生観が大切にされ尊重される社会を実現するために、この問題については議論を続けていきたいと思います。 <賛否> 党区議団は以上の理由などから、H28年度一般会計予算案、医療・介護の各事業会計予算案など計15議案に反対、26議案に賛成しました。 田中区政の暴走が区民サービスに重大な影響を与え始めており、区政の転換が必要です。一方、区長追随の杉並区議会の責任も厳しく問われます。 党区議団は住民と共に区政刷新に向けて、全力を尽くします。 (2016年第1回杉並区議会定例会を終えて) |
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