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2025年杉並区議会第3回定例会 決算特別委員会 意見開陳(富田たく)(2025年10月14日) |
■はじめに 日本共産党杉並区議団を代表して、令和6年度杉並区一般会計および各特別会計決算に対する意見を述べます。 当該決算年度は、物価高騰が長期化深刻化し、区民生活を直撃した年となりました。また、2024年1月1日に発生した能登半島地震によって、基礎自治体として震災対策の抜本強化が求められました。こうした状況のもと我が党区議団は、杉並区が区民のくらしと・事業をどう支え、防災・福祉・区民参画をどう前進させたのかを審査しました。 結論として、一般会計は認定、国保、介護、後期高齢者医療の各特別会計は不認定といたします。 以下、主な理由を述べます。 1. 対話と自治のまちづくり (1)当該年度も対話の区政が前進 一般会計決算の認定の第一の理由は、対話と自治のまちづくりを進めたことです。 当該年度、様々な施策において対話の取り組みが行われ、年間130回以上、延べ5,000人以上の区民が参加する規模となっています。区民意向調査でも、区政参画を歓迎する声が多く寄せられ、「対話の区政」が地域に根づき始めていることを感じさせます。 今後も区民参加の機会を広げ、政策に区民の声を活かすことを求めるものです。 (2)区立施設マネジメントの取り組み 区立施設マネジメント計画の策定にあたり、3地域でワークショップが開催され、施設の方向性が定まりました。従来の行政主導型から、住民と行政が協働して地域課題に取り組み、計画を共に作り上げる形に転換する最初の事例となりました。参加した住民の多くから、歓迎の声や満足感が寄せられるとともに、職員からは「区民との距離が縮まった」という声も出されました。信頼関係を構築しながら地域課題に取り組む重要なプロセスであり、引き続き丁寧な運営を求めます。 (3)都市計画道路周辺のまちづくり 都市計画道路周辺のまちづくりの検討に向け、(仮称)デザイン会議が始まりました。 行政と住民が対等な立場で協議を重ね、議論の成果をデザイン会議に反映していく取り組みは、まさに住民参画の具体的な実践であり、地域主体のまちづくりの新しい形だと考えます。今後、商店街の魅力や賑わい、街並み、歴史や文化など、数値化できない地域資源を住民と行政が共有し、地域の特性を反映したまちづくりを進めることを求めます。 これらの取組は、前田中区政のもとでは、行政の一方的な計画の押し付けの象徴として、地域住民から不信の声が寄せられてきたものです。今後、住民との対話を深め、信頼関係を構築し、住民自治によるまちづくりを進めることを求めます。 (4)善福寺川上流地下調節池整備 善福寺川 上流 地下 調節池 整備について、当該年度に事業認可されました。住民合意もない状況で事業化がすすめられたことは問題があることを指摘するものです。杉並区としては、住民と東京都との交渉の際は住民の立場に立ち、情報公開など説明責任を十分に果たすよう、区として東京都に求めることを要望します。 また、シールドトンネルの構造やBバイCの算出方法についても丁寧に説明すること、さらに説明会の開催にあたっては、住民と行政が対話できる対面・着座形式とするよう、引き続き東京都に求めることを要望します。 (5)阿佐ヶ谷駅北東 当該決算年度、杉並第一小学校の改築検討懇談会が設置され、今年の9月までに11回の懇談会が開催されました。2015年度の改築複合化検討会から始まり、長年に渡って地域・学校関係者の方々が粘り強く議論を尽くしてこられました。河北総合病院は、杉一小の改築建設予定地である病院跡地に、地下構造物を残すこと、および工期延長を区に要望していますが、これは施行協定書に反するものです。子どもたちの安全を最優先にした学校改築が進むよう、解決に向けた協議に尽力することを求めます。 2. 防災対策の充実 (6)耐震化、不燃化の促進・感震ブレーカーの設置促進 第二に、防災対策の充実が図られたことです。 当該年度、耐震診断件数は前年の約2倍、改修助成も増加し、耐震化率は95.6%と年度目標を上回りました。能登半島地震による防災意識の高まりと区の取組が合致し、成果を上げた結果と評価します。不燃化率は64.8%で年度目標に僅かに届かなかったものの、前年より1.2ポイント増加し、近年で最大の伸びを示しました。 感震ブレーカーの設置助成の実績も1,243台に達し、制度開始以来最多であり、区の取組を評価いたします。 (7)災害備蓄品の充実 エレベーター備蓄セットの配備について、当該決算年度から開始されました。前区政では全く取り組まなかったので、岸本区政のもとでエレベーター閉じ込め事故防止対策が進んでいることを評価します。 (8)エレベーター備蓄ボックス、防災マップ 災害備蓄品については、「トイレ用収便袋・女性用備蓄品」の追加、ポータブル型蓄電池の前倒し配備、食料備蓄の確保など、当初計画を上回る取り組みを進めている事も評価できます。防災マップについて、当該決算年度で全戸配布が行われました。発災時の通信途絶への備えとして有効であり、今後も定期的に全戸配布することを求めるものです。 (9)グリーンインフラ 高度に宅地化した杉並区における水害対策では、雨水を下水道や河川に流さずに、いかに地中に浸透させるかが重要です。当該決算年度は『「流域治水を核とした復興を起点とする持続社会」地域共創拠点』との連携協定が締結され、グリーンインフラ杉並区民会議なども開催されました。 住民を含めたあらゆる関係者が協働して取り組む流域治水の実現に向け、グリーンインフラを活用した雨水流出抑制対策を推進することを求めます。 3. 福祉施策について (10)子ども権利条例の制定、子どもの居場所づくり基本方針の策定 理由の第三に、福祉施策が拡充されたことです。 当該年度に策定された「子どもの居場所づくり基本方針」と「子どもの権利に関する条例」は、子どもの意見を丁寧に聴き取ってまとめられた点で極めて意義深いものです。条例により相談・救済窓口が設置されたことも重要であり、広く周知することが必要です。子どもや若者の参画を進め、施策の検討に当事者の声を反映することは、今後ますます欠かせません。 全児童館の存置と、中学校区に児童館がない7地域での再整備方針は地域からも歓迎され、早期の実現が求められています。一方、廃止された地域では子どもの居場所不足が深刻であり、地域ネットワークやアウトリーチ型支援と連携した取組が必要です。今後も、子どもの声を出発点とした区政の推進を期待します。 (11)保育の質の確保に向けて、人件費比率の調査 当該年度に実施された保育運営事業者への人件費 比率に関する調査・研究は、区内私立保育所の経営実態を丁寧に把握し、処遇改善の実効性を高める上で重要な取組と評価します。保育の質を確保し、今後の公的支援の在り方を検討する上でも大きな意義があると考えます。継続的な調査・分析を行い、保育人材の安定確保と保育の質の向上につなげていくことを期待します。 (12)障害者施策 障害者施策について、療育が必要な児童の受け皿拡充として、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスへの補助充実が図られました。今後も地域で安心して暮らせる支援体制を拡充することを求めます。 (13)生活保護の取り組みの前進 生活保護制度について、生活にお困りの方が、躊躇なく福祉事務所にご相談いただけるよう、生活保護制度を広く周知するポスターが作成されたことは重要です。今後、申請書のダウンロードが進められる等、前進面は大きく評価できます。引き続き、周知啓発を進めるよう求めます。 (14)介護事業者への支援について 当該決算年度、区長の「ケアする人をケアする」という理念のもと、ケア24への委託費増額などが実施されました。ケア労働者を励まし、人員増加が図られるなど、効果が示されました。 介護保険制度の連続改悪や物価高騰のもとで、介護事業所の運営は深刻さを増しています。今年度に行われた実態調査をもとに、あらたな支援策を来年度予算に反映していくことが表明されました。事業者からの回答を生かし、有効な支援策を求めるものです。 4. 多文化共生と人権尊重 (15)多文化共生の取り組みについて 第4の理由に、多文化共生、ジェンダー平等の推進など、人権尊重の取り組みを進めたことです。 当該決算年度、「杉並区 多文化共生 基本方針」が策定されました。外国人が増えるなか、互いの文化を尊重し、ともに生きる社会をどう築くかが問われています。参議院選挙では「外国人が生活保護を受けやすい」、「治安が悪化している」などの根拠のない発言が振りまかれましたが、区は明確に否定しました。 区として「デマや差別、ヘイトスピーチは許さない」という姿勢を強く打ち出すとともに、通報制度や相談窓口の整備、すべての人の人権が尊重される実効性のある条例の制定を求めます。また、様々な困難を抱える外国人への支援や交流の場として、多文化共生拠点の整備も急がれます。 差別のない共生社会に向け、今後も取り組みを推進していくことを求めます。 (16)会計年度任用職員の報酬限度額の引き上げ、23区初の生理休暇の有給化 当該決算年度、ジェンダー平等に関する審議会が設置され、今年9月に答申が提出されました。ジェンダー主流化を、区の施策の中で実現していくための重要な一歩です。 会計年度任用職員の約4割の報酬が引き上げられ、勤勉手当の支給が始まりました。その結果、会計年度任用職員・一般の年間平均給与額は前年度より約72万円の増となりました。女性職員が多い非正規公務員の低賃金の改善は重要な前進です。 23区初の会計年度任用職員の生理休暇の有給化で、取得者数が約4倍となりました。名称の変更など、さらなる改善を要望いたします。 (17)男女共同参画における意識と生活の実態調査 女性の管理職は区長就任前の2022年4月時点で18.4%でしたが、当該決算年度は23.4%、今年度は27.5%へ増加しています。今年度はハラスメントの外部相談窓口の設置やエンゲージメント調査なども始まりました。全職員がやりがいを持ち、持続可能な働き方ができるような職場づくりに、全庁的に取り組むことを求めます。 (18)「生理の貧困」への対策 女性の健康衛生と尊厳を守る取組として、3カ所の区民センターと区役所本庁舎への無料の生理用品の設置が始まりました。今年度も新たに3施設に追加設置しています。今後は、中高校生の利用の多いコミュニティふらっと永福や高円寺南などにも拡大を求めます。 (19)パートナーシップについて 区のパートナーシップ制度を利用したい人にさらに利用してもらえるよう、来年4月の3周年に向け、周知の拡大や事実婚を含める等の対象の拡大についても求めておきます。 5. 職員について (20)職員の倫理規定 第5に、職員の倫理規定を明確化したことです。 当該決算年度、杉並区 職員服務 規程が改定され、「利害関係者との接触に関する指針」とそのガイドラインが策定されました。前・区政下での公用車の乱脈運用や、ゴルフ出張問題の反省を踏まえ、岸本区政では区長専用車両の廃止と倫理規定の強化など、区政運営が改善されたことを高く評価しています。今後も区民から信頼される区政運営を求めます。 6. 気候危機対策 (21)気候危機対策 第6の理由は。気候危機対策の取り組みが前進していることです。 2018年に策定された杉並区の「温暖化対策実行計画」では、2021年度までに二酸化炭素排出量を2005年度比で3.8%削減する目標が掲げられていましたが、その目標は計画策定前の2015年にすでに達成されており、前区政の温暖化対策がいかに杜撰であったかを指摘しました。 岸本区政で改定された計画により、当該決算年度の再生可能エネルギー導入助成は2020年度の約3倍に増加、太陽光発電は5.4倍、蓄電池は5.3倍、エコキュートは2.5倍と大幅に伸びていることを評価します。区民主体の先駆的な取り組みとして「気候区民会議」が開催されたことも高く評価するものです。 引き続き、2030年カーボンハーフ実現に向け、更なる区民参加を進めるよう支援体制の強化を求めます。 7. 教育について (22)給食費無償化対象拡大(国私立等に通う児童生徒、不登校児童生徒) 第7に、区費のスクールカウンセラー増員など、教育分野の取り組みを前進させたことです。 2023年度10月から始まった区立小中学校の給食費無償化に続き、当該決算年度は国立・私立等に通う児童生徒や不登校児童生徒への給食費相当分の支給が始まりました。児童生徒が給食費の負担を気にせずに、教育を受けられるべきであり、国に先駆けた区の取組として非常に重要です。 (23)教育費の負担軽減について この間、困窮する子育て世帯を支援するために就学援助制度の拡充を求めてきました。 前区政では、国による2013年の生活保護基準の引き下げを就学援助制度に適用させ、認定者を大幅に減少させました。当時の保護基準引き下げについては最高裁で違法との結論が出ています。また、東京23区では12区が引き下げ以前の保護基準を就学援助に適用し、認定基準の引き下げを行っていません。 岸本区政のもと2023年に認定基準を引き上げ、対象者を拡大したことは重要な前進ですが、認定基準は2013年以前を下回ったままです。物価高騰で困窮する子育て世帯を守るために、速やかな基準引き上げを強く求めておきます。 (24)教育環境の整備(学校トイレ洋式化等) 前区政下では小中学校のトイレ洋式化が遅れ、23区で最下位でしたが、岸本区政のもと5年間で100%を目指す方針が打ち出されました。当該決算年度は洋式化率79.6%と7ポイント上昇し、前進が見られます。今後も計画を着実に進め、前倒し実施も検討することを求めておきます。 (25)教職員の負担軽減 区は2023年度から「学校で働きたい方 説明会」を実施し、当該年度は170名が参加、臨時的任用教員などの採用に30名がつながりました。教員の長時間労働やなり手不足が深刻な中、人材確保に向けた区独自の取組を評価するものです。今後の説明会の拡充と、長時間労働の是正を引き続き求めます。 (26)平和事業について 一般会計の最後に、平和事業について要望いたします。 当該決算年度には、日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。また、本年は戦後・被爆から80年の節目を迎えました。原水爆禁止運動発祥の地である杉並区として、平和施策を一層充実させ、平和と核廃絶の理念を次世代へ継承していくことが求められます。 被爆者団体や区民の活動を積極的に支援し、特に若い世代との連携・協働をさらに推進することを求めます。 8. 特別会計の不認定理由 (27)国民健康保険事業会計の不認定理由 次に各特別会計について、不認定の理由を述べます。 当該決算年度の国民健康保険料は、特別区全体で1人当たり19万6,019円と、前年より約1万3,800円の値上げとなり、過去10年で最大の上げ幅となりました。物価高騰下での大幅な負担増は、区民の暮らしに深刻な影響を及ぼしています。杉並区では年収300万円3人世帯で年間の保険料が約40万円に、年収400万円4人世帯では約61万円に達し、2010年度比で2倍を超える水準です。 2018年度の制度改革では、国の財政支援により「低所得者の負担軽減」が掲げられていましたが、実際には改善が進んでいません。特に東京都は医療給付費が全国3番目に低い一方で、保険料が全国最高という矛盾した構造を抱えています。 こうした中、杉並区が法定外繰入を継続し、保険料上昇を抑制してきた姿勢は一定の評価に値します。しかし、依然として負担は重く、制度の根本的な改善が求められるため、国民健康保険事業会計は不認定とします。 区には、引き続き国や東京都に対し財政支援の強化を求めるとともに、区民の生活を守る立場で独自の取り組みを堅持することを強く求めます。 (28)介護保険事業会計の不認定理由 次に、介護保険事業会計についてです。 当該年度は、第9期介護事業計画が始まりました。第9期での大幅な値上げも懸念される中、準備基金を最大限に取り崩し、負担軽減に取り組んだ姿勢は重要です。一方、一部で低所得世帯でも保険料が引きあがる状況にもなりました。負担軽減のために一定の努力を行ったことは評価するものですが、物価高騰のもと低所得世帯に対する負担増は問題があるため不認定といたします。 (29)後期高齢者医療保険事業会計の不認定理由 次に、後期高齢者医療保険事業会計についてです。 当該決算年度および今年度の2年間の保険料について、1人当たり平均で年間6,514円の値上げとなる条例改定が、東京都 後期高齢者医療 広域連合議会で可決されました。制度開始以降で最大の値上げ額です。年金削減や異常な物価高騰が高齢者の暮らしを脅かしているもとで、保険料の値上げが行われたことは認められず、本事業会計については不認定といたします。 9. 最後に 以上、当該年度の決算審議を通じて、防災対策の推進、区民福祉の向上、教育施策の前進、対話によるまちづくりが成果を上げていること確認しました。引き続き、区民の区政参画を進め、住民自治に基づく区政運営を進めることを求めます。 なお、決算質疑の中で他会派議員が区長の学歴について質疑を行いましたが、所管課、及び区長が明確に卒業している旨、答弁しましたが、他会派議員は自身のSNS上で、区長の学歴詐称疑惑などと発信。区長が経歴を偽っているような印象を与える投稿を行いました。 議会での公式答弁に反する内容であり、事実を誤認させるものです。SNS上の投稿を削除・訂正を強く求めるものです。 最後に、資料作成等にご協力いただいた職員の皆さまに感謝を申し上げ、意見開陳を終わります。 以上 |
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