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2025年杉並区議会第3回定例会一般質問(富田たく)(2025年9月9日) |
9月9日の本会議で富田たく区議が一般質問に立ちました。その際の質問全文を掲載します。 答弁を含めた一般質問の様子は、以下のリンクからご覧になれます。 ★リンク ⇒ 本会議の録画中継 (会議終了からおおむね24時間後(土曜日・日曜日・祝日を除く)に、「速報版」をご覧になれます) 日本共産党杉並区議団の富田たくです。区議団を代表して、 1.就学援助制度の拡充など、義務教育の保護者負担の軽減について 2.公契約条例について 以上、2項目について質問いたします。 1.就学援助制度の拡充など、義務教育の保護者負担の軽減について (1)生活保護基準引き下げに対する最高裁判決の受け止め 最初のテーマは、就学援助制度の拡充など、義務教育の保護者負担の軽減についてです。 就学援助とは、小中学校に通う児童生徒の保護者の収入が一定の認定基準を下回る場合に、入学準備金や学用品費、修学旅行費などの保護者負担に対して自治体が経済的に援助する制度であり、困窮する子育て世帯を支援する制度として重要な役割を果たしています。 【問1】 生活保護基準引き下げが違法と認定されたことについての受け止め この就学援助制度の認定条件となる世帯年収の認定基準額は、生活保護基準をもとに算出されており、生活保護基準が変更されることによって、認定の条件も変更されることになります。ですので、まずは、就学援助制度に密接にかかわる生活保護基準について、最初に確認したいと思います。 今から12年前の2013年から段階的に生活保護基準の10%の引き下げが行われ、それに連動して杉並区の就学援助認定基準額についても、大幅に引き下げられました。その結果、就学援助制度を利用できる世帯が大幅に減少してきたことは、この間、議会で何度も取り上げてまいりました。 最高裁は今年6月27日、2013年からの生活保護基準の引き下げについて、厚労省の判断の過程・手続きには、過誤・欠落があり生活保護法違反だったとする画期的な判決を下しました。 私は2013年5月の第2回定例会の一般質問でこの問題を取り上げ、安倍政権下で行われる当時の生活保護基準の大幅な引き下げについて、「生活保護受給者の生活はさらに困窮をきわめる」ことになると指摘し、生活保護基準が「最低賃金や就学援助、住民税の非課税基準、保育所の保育料の免除にかかわる階層区分、国民健康保険料の免除など、さまざまな制度の基準」となっていることから、「生活保護受給者のみならず、低所得者世帯に対しても生活をより一層困窮に追い込む要因となることは明白」であると指摘し、生活保護基準の引き下げを「撤回するよう、杉並区から国に対して働きかけることを強く要望し」ましたが、当時の前・田中区長のもとでは前向きな答弁はありませんでした。 この生活保護基準の引き下げについて、当初から問題点が指摘されていたにもかかわらず、国に対して声も上げず、生活保護受給者だけでなく、多くの、生活が苦しい世帯に影響が出ることが分かっていながら生活保護基準の引き下げを放置してきた前・田中区政の責任は重大だと厳しく指摘するものです。 あらためて、杉並区は今回の最高裁の判決をどのように受け止めているのか、区の認識を伺います。 また、当時の生活保護基準の引き下げによって、生活保護受給者の生活だけでなく、就学援助や住民税の非課税基準、保育料や国民健康保険料の免除基準など、生活保護を受給していなくても苦しい生活を強いられている多くの区民の生活に、どのような影響があったと認識しているのか確認します。 (2)就学援助について、前区政下での削減 【問2】 就学援助制度の重要性について 憲法26条第2項では「義務教育は、これを無償とする。」と義務教育の無償化を国に求めていますが、実態はそうはなっていません。さまざま発生する義務教育の負担が、困窮する世帯の子どもたちの教育を受ける権利を侵害する要因とならないように就学援助制度が設けられています。 今後、教育の無償化を日本社会で完全に実現するまでは、この就学援助が困窮する子どもたちの権利を守るための、重要な防波堤であり続けないといけないと考えますが、区の認識は如何でしょうか。 【問3】 前・田中区政下での就学援助の切り下げによる認定基準額の引き下げの実態 今回、最高裁で違法とされた生活保護基準の引き下げを、当時の前・田中区政のもとでは就学援助の認定基準額に適用してきました。これにより、多くの世帯が就学援助制度から締め出しを受けることとなりました。 確認いたしますが、就学援助の認定基準が改悪される前年の2012年から段階的な基準改悪が進められた2016年で、認定基準額がどれくらい引き下げられたのか、2人世帯から5人世帯までのモデルケースで認定基準額の推移と差額を示してください。 【問4】 認定基準額の引き下げによる、認定者数・率の激減の確認 同様に、同時期の認定者数と認定率についても、示してください。 私の調べでは、2012年の就学援助認定者数は5811人で認定率は23.9%、生活保護基準の改悪が行われたのちの2016年の認定者数は4444人で認定率は17.1%、1,367人の減少、認定率は6.8ポイントの低下となっています。 (3)岸本区政での認定基準額の引き上げによる認定率の上昇 【問5】 2023年引き上げによる認定基準と認定率 前・田中区政のもとでの認定基準額が引き下げられ、認定者が減少してきましたが、岸本区政となり、2023年に認定基準額を引き上げる判断が下されました。これによって、減少傾向だった認定者数、認定率はいったん上昇へと転じました。前区政で削減された認定基準を引き上げたことは大変重要であり、物価高騰のもと困窮する子育て世帯への支援強化という意味でも大いに評価できる取り組みだと受け止めています。 この認定率の引き上げについて、どのような判断により引き上げを行ったのか、改めて確認するとともに、認定基準額がどれくらい増えたのか、また前年の2022年と比べ認定者数、および認定率はどれくらい増えたのか、示して下さい。 (2022年 3,278人11.3% 2023年3,466人11.9%、188人増加、0.6ポイント増加) (4)就学援助について、認定者の減少の実態とその原因 【問6】 物価上昇の局面で、認定基準額が一定なので認定者が減少 前・田中区政のもとでの認定基準額の改悪による認定者数の激減とは別に、認定基準額の変動がない年度でも認定者数、認定率が減少傾向となっています。なぜ、認定者数が減少するのかが疑問だったのですが、物価指数と名目賃金指数、実質賃金指数を比較してみた結果、認定率が減少する要因の一つが浮かび上がってきました。 今年の予算特別委員会でも取り上げましたが、改めて説明すると、生鮮食品を除く東京都区部の消費者物価指数は就学援助認定基準の引下げの前年となる2012年を100とすると、2024年の物価指数は112となり、この12年間で東京の物価は12%も上昇しています。物価の上昇に合わせて、見た目の賃金、いわゆる名目賃金指数も2012年から11%上昇しています。 一方、物価の変動を加味した実質賃金指数は2012年を100とすると2024年は94と、逆に6%の減少となっています。 こうした傾向を見ると、実質的な賃金は減っているのに、見た目の給与が上昇しているため認定基準額を超えてしまい、就学援助を受けられなくなってしまった世帯が毎年一定程度発生している可能性が大きいと考えられます。 本来であれば、認定基準額は物価上昇や実質賃金を反映させて引き上げるべきでした。しかし、2012年から毎年、徐々に物価が上昇していたにもかかわらず、認定基準額が引き上げられずに固定化されていたために、以前なら就学援助が受けられて当然の生活水準の世帯が、支援の枠組みから除外されてしまう状況が、この10数年発生していたと指摘するものですが、区はどのように受け止めるか、確認いたします。 (5)就学援助について、認定基準額の引き上げの必要性 【問7】 認定基準の引き上げを 就学援助制度は、杉並区の判断でその基準や内容を決定できるものです。まずは、最高裁で違法だとの最終判断が下されたことからも、前・田中区制のもとで改悪された就学援助の認定基準額については、生活保護基準引き下げ前の2012年時の水準まで引き上げることが、杉並区としての責務と考えますが、区の認識は如何でしょうか。 さらに、2012年から東京都の物価指数が上昇しており、それを考慮に入れ2012年当時の認定基準額より物価上昇分だけ引き上げることが、困窮する子育て世帯を支援することにつながると考えますが、区の見解はいかがでしょうか。 (6)ひとり親世帯の認定基準額の増額 【問8】 ひとり親世帯の認定基準額の増額 この間、就学援助について議会事務局を通して東京23区の調査を行ってもらいました。その中で、困窮する子育て世帯の支援のために各自治体で様々な取り組みが行われています。 例えば、江東区では就学援助の認定基準額を算出する際、通常の世帯は生活保護基準の1.18倍で計算していますが、ひとり親世帯については1.45倍で計算しており、ひとり親世帯の認定基準額が、3人世帯の認定基準額と同等に引き上げられています。ひとり親世帯の貧困率が高いという問題点に着目した重要な取り組みだと考えます。 杉並区でも江東区を参考に、ひとり親世帯が就学援助をより受けやすくするために、ひとり親世帯の認定基準額の引き上げを検討すべきと考えますが、区の見解はいかがでしょうか。 (7)就学援助の入学準備金の引き上げについて 【問9】 入学準備金の引き上げを 就学援助制度には小学校1年生、および中学校1年生には入学準備金が支給されていますが、その金額が、東京都内でも自治体によって違っています。入学準備金の算定根拠となる基準が自治体によって違うのがその原因です。 杉並区の入学準備金は、都区財調単価で算出しており令和7年度は小学生で5万3,870円、中学生で5万9、040円です。中野区や渋谷区など、23区のうち10自治体では、生活保護基準で入学準備金を算定しており、小学生9万1、600円、中学生で10万1、000円の支給で、杉並区より小学生では約3万8,000円、中学生では約4万2,000円も多く支給されています。 まず、確認しますが、杉並区の入学準備金の算定根拠に都区財調単価を使用している理由を示して下さい。 入学時には小学校ではランドセルや体操着など、中学校でも標準服・いわゆる制服や体操着などの費用が掛かり、大きな負担となります。以前から提案していますが、杉並区の入学準備金の算定根拠を、都区財調単価から生活保護基準額に変更し、増額することを求めますがが、区の見解は如何でしょうか。 (8)定額で支給されている学用品費も物価上昇に合わせて増額するべき 【問10】 学用品費、学校行事費など定額支給も増額するべき 就学援助制度のなかで、定額で支給されている費目についても、物価上昇のもとで増額が求められています。特に、学用品費については、2012年当時の小学生1年生は年間1万5、240円、2年生以上は1万8、340円の支給でしたが、令和7年度は全学年9、860円と当時の3分の2以下へと減額となっています。学校行事費についても物価が上昇しているのに10数年間、同じ額での支給です。 目黒区では、昨年度は物価高騰への取組として、学用品費を小学生に1,000円、中学生に2,000円それぞれ追加で支給したとのことです。 こうした定額で支給されている費目についても、増額を検討していくべきと考えますが如何でしょうか? (9)就学援助対象世帯へ周知拡充の取組を評価 さて、就学援助制度を利用するためには、申請をしなければいけない申請主義の制度です。ですから、どんなに困窮していても、児童生徒の保護者が就学援助という制度自体を知らなければ、支援につながりません。そうした意味でも、杉並区の制度周知が重要です。 【問11】 就学援助対象世帯へ周知拡充の取組を評価 私は、これまで継続して、就学援助制度の周知拡充についても求めてきましたが、今年度に入り就学援助を紹介する杉並区のホームページや、保護者等に配布するチラシ等で、様々な改善が行われています。以前から求めていた、就学援助制度の認定基準額の一覧に、参考値として「給与収入の目安額」を表示していただいたことは、重要な取り組みと評価するものです。 あためて、認定基準額の他に給与収入の目安額を保護者等にお知らせするようホームページ等を変更した理由を確認します。 また、従来の広報だけでなく、新たに2種類のチラシを作成し配布していることも重要です。2種類のチラシはそれぞれどのような内容で、それぞれどのように活用しているのか紹介してください。 【問12】 制度周知の継続と、改善を 毎年新たな子ども達が小中学校に入学し、卒業していきます。対象となる世帯の入れ替わりが激しいのが就学援助制度です。ですので、制度周知は毎年、毎年、力を入れなければ、制度を知らずに利用できない世帯が生まれてしまいます。この間改善された周知方法を短期間でやめることなく継続すること、また、周知方法については常に改善していくよう検討していくことを求めますが、区の見解は如何でしょうか。 (10)修学旅行費等の負担軽減(全世帯対象) 【問13】 修学旅行費等の保護者負担の軽減について(全世帯対象) さて、この間の物価高騰のもとで、就学援助制度を受けていない世帯についても教育費の負担は生活を圧迫しています。特に、修学旅行費や中学2年生のスキー教室の費用が高騰しており、区からの補助を求める声が、子育て世帯から届いています。 文京区では、今年度より中学校の修学旅行費への補助が実施され、就学援助の受給の有無にかかわらず1万円が支給されるとのことです。 杉並区も、以前は中学校修学旅行費の補助事業がありましたが、前・田中区政のもとで廃止されてしまいました。 あらためて、修学旅行費やスキー教室費用について、この間どの程度保護者負担が増えているのか確認するとともに、全世帯を対象とした修学旅行費やスキー教室費用への補助を実施するべきと考ますが、区の見解は如何でしょうか。 (11)標準服(制服)の負担軽減 義務教育の保護者負担として、金額が多きものに中学校の標準服、いわゆる制服があります。学校によって金額が変わってきますが、標準服は3万円台から6万円弱、そこに体操服が1万5,000円前後と、入学時にまとまった費用が必要となります。 新入生や買い替えが必要な生徒の費用負担軽減のために、卒業生などの標準服や体操服のリサイクル活動が行われています。杉並区ではPTAなど保護者が中心となって行っており、各学校で取り組みが異なっているようです。 読売新聞オンラインの報道によると、中央区では区立の幼稚園や小中学校で着用されなくなった「標準服」を回収し、9月7日に譲渡会を初めて開くとのことです。高ければ5万円以上の標準服が、クリーニング代相当の1200円から2200円で購入できるようです。 保護者負担軽減のみならず、リサイクル、リユースによるゴミ削減の効果もあり、環境への取組としても重要だと考えます。 【問14】 標準服のリサイクルの実態の把握と支援への検討を 区としても、区内小中学校のPTA等で行われている標準服のリサイクル活動について、どの学校でどのように行っているのかを把握するための調査を行うとともに、まずは、区ホームページ等で各学校の標準服リサイクルの取り組みを、紹介してみてはどうでしょうか。 また、実態調査の際に、標準服リサイクル活動の課題や大変さなども聞き取り、学校間での格差をなくすよう、区として制服リサイクルに対する支援を検討することが、今後必要となると考えます。この点について区の見解を求めて、次のテーマに移ります。 2.公契約条例について (12)現場労働者の労働報酬の実態把握について 【問15】 公契約に携わる現場労働者の労働実態把握を 二つ目のテーマは公契約条例についてです。 杉並区では公契約条例に基づき、区が発注する特定公契約に従事する労働者の報酬下限額が設定されており、岸本区政のもとで、物価高騰に合わせ報酬下限額を引き上げる努力が行われていることは評価するところです。 ただし、現場労働者の組合によるアンケート調査では、杉並区発注の工事契約で働く現場労働者の報酬額が、公契約条例で取り決められた報酬下限額を下回る実態が指摘されています。 まずは、杉並区として現場労働者の労働実態を把握するために、区発注の公共事業での現場労働者、特に二次・三次請け等の下請事業者の労働者を対象にしたアンケート等による実態調査を行い公表することを求めますが、区の見解は如何でしょうか。 【問16】 事業者への働きかけ(昨年の予算要望) 更に、現場労働者の労働環境の向上を図るとともに、設計労務単価に見合った賃金が現場労働者に届くよう、契約事業者に対しては更なる働きかけを行うことを求めますが、区の見解は如何でしょうか。 (13)長期継続契約について、労務費変動に伴う契約変更について 【問17】 長期継続契約について、労務費変動に伴う契約変更について 現在契約されている長期継続契約については、契約初年度に想定した契約期間中の労務費の変動幅で契約されておりますが、この間の物価高騰に伴う労務費の上昇が、契約時の想定を上回り、労働者の報酬が、杉並区が設定している労働報酬下限額を下回る状況が発生していることも問題です。 既存の長期継続契約で、インフレスライド条項が盛り込まれていないことがその要因となっていると考えるものですが、早急に契約内容の確認及びインフレスライド条項を追加するなどの契約改定が必要と考えますが、区の認識を求めます。 (14)公契約条例について、その他の改善点 【問18】 見習い労働者の報酬下限額について 労働報酬下限額の答申を出す杉並区公契約審議会では、見習い扱いの労働者の報酬について意見が出されています。 現状、軽作業員の日給1万8,700円の7割を時給換算した約1,619円とされていますが、見習いであっても軽作業員の7割ではなく職種ごとの単価の7割で計算されるべきであり、少なくとも普通作業員の日給2万6,800円の7割を時給換算した2,345円としてもらいたいとの意見です。 雇い主側に比べ、労働者側は仕事を受ける側として立場が弱い状況であり、区としてもそうした立場をよく理解し、審議会で意見を出されている方々からの聞き取り等を行い、適正な労働報酬下限額の設定に向け研究、検討することを求めますが、区の見解は如何でしょうか。 【問19】 指定管理者等の自主事業に従事する労働者の報酬下限額について 指定管理者の自主事業など、区立施設内での事業にもかかわらず、区との直接契約ではないため自主事業で働く労働者に労働報酬下限額が適用されていない実態が有ります。 指定管理者の募集要項では自主事業が業務の範囲と定義されている以上、労働報酬下限額を適用すべきものと考えます。また、工事現場などでは杉並区と直接契約を結んでいない二次受け、三次受けの下請事業者の労働者に労働報酬下限額が適用されていることからも、指定管理の自主事業であってもそこで働く労働者に労働報酬下限額を適用すべきであると考えます。 最後にこの点について区の認識を確認して、一般質問を終わります。 以上 |
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