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2025年杉並区議会第3回定例会一般質問(酒井まさえ)(2025年9月9日) |
9月9日の本会議で酒井まさえ区議が一般質問に立ちました。その際の質問全文を掲載します。 答弁を含めた一般質問の様子は、以下のリンクからご覧になれます。 ★リンク ⇒ 本会議の録画中継 (会議終了からおおむね24時間後(土曜日・日曜日・祝日を除く)に、「速報版」をご覧になれます) 日本共産党杉並区議団を代表して、 1.介護について 2.高齢者の聞こえの支援について 質問します。 1.介護について (1)【介護事業所の現状】 最初に介護ついて質問します。 介護の現場では、ヘルパーなどの介護人材不足と経営悪化よる介護事業所の撤退・廃業・倒産が続出しています。東京商工リサーチの調査によると、2024年度の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が179件(前年度比36.6%増)と、過去最多を記録しました。コロナ禍と大型の連鎖倒産が発生した2022年度の144件を大幅に上回る結果です。業種別では、介護報酬のマイナス改定やヘルパー不足などが影響した「訪問介護事業所」が86件(前年度比21.1%増)と全体の約半数の48.0%を占め、過去最多を記録したとのことでした。 地方では、訪問介護事業所が一か所もない空白自治体が今年の6月時点で115自治体、一か所となった自治体が269自治体となりました。また、都内の訪問介護事業所の倒産件数は40件に及んだとされています。杉並でも、訪問介護事業所から運営が大変だという声を聞いています。これは政府が2024年度から訪問介護の基本報酬を削減したことが大きな打撃となっています。 介護職員不足も深刻です。最大の要因は全産業平均を大きく下回る低賃金と劣悪な労働条件です。全産業平均との賃金格差は2023年の月6万9千円から、2024年は月8万3千円へと拡大しています。 保険料・利用料を払っても「人材や事業所が無いため、介護サービスが受けられない」「ヘルパーが足りなくてサービスを減らさなければならない」という危機的事態で、介護の基盤の崩壊が起きています。 介護のこうした状況は、現役世代にとっても大問題です。働く現役世代が介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」が10万人以上にのぼるなど要介護者の家族の負担は重くなっています。 このような状況のもと、日本共産党は、介護の危機の打開のために、保険料・利用料の負担増に跳ね返らせることなく、介護職員の処遇改善、介護報酬の増額、介護事業の継続支援を行うため、現行の介護保険の国庫負担を10%増やし35%とし、国の支出を1・3兆円増やすことを提案し、国庫負担を引き上げることを国に求めています。 Q1、区は、こうした介護事業所の現状や介護をめぐる危機的な状況に対し、どのような問題意識をお持ちでしょうか。区の認識を伺います。 介護の危機を打開するうえで、区としても現状を把握し手立てをとることが求められると思います Q2、区は現在、高齢者実態調査のなかで、介護サービス事業所の実態調査も行っています。前回の調査から変更した項目や新たに加えられた項目と、調査の目的について、お答えください。 (2)【訪問介護事業所への支援】 介護事業所の中でも、特に訪問介護事業所の撤退・廃業が続出していることは深刻です。 私は、区内の訪問介護事業所に話を聞きました。紹介します。 ・A事業所「処遇改善加算はあっても、事業所の運営に使うわけにはいかず、ますます経営は厳しい。事業所を運営するのに、責任者の自分の報酬はなく、年金収入で食いつないでいる」 ・B事業所、「訪問介護もデイサービスも赤字、法人内に居宅支援事業所や訪問看護などがあるので何とか持ちこたえている。ヘルパーが足りなくて、ケアマネから依頼を受けても断ることもある」 ・C事業所 「人が増えなくてぎりぎりで回している。人を入れるのにお金と時間が必要で大変。居宅支援があるから赤字でもやっていける。近所の訪問介護事業所は、閉鎖するとの声があがっている」 ・D事業所 「今月いっぱいで閉鎖する。1年以上も赤字だった。居宅支援事業所もあったので何とか維持していたが、もう続かなくなった。ヘルパーさんの給与は事業所の備品を売って支払った。支援していた利用者さんを、近隣の介護事業所に引き継ぐのが大変。他も余裕がない」 ・E事業所 「介護保険分と障害者の支援をしているから、何とか運営している。介護だけだと続けていけない」 今回の私の聞き取りでは、5つの事業所の内4つの事業所の経営は赤字になっていました。 こうしたなか、他の自治体では独自の支援が始まっています。 世田谷区は、2024年10月から「緊急安定経営事業者支援給付金」を1事業所当たり88万円交付しています。 品川区は、介護の基本報酬の改定後4事業所が廃止・閉鎖していることから、今年6月に1事業所当たり12万円から240万円の給付することを決定しました。2024年の基本報酬の引き下げ分の差額を給付するとになり、3930万円を補正予算で組みました。 新潟・村上市では2025年3月より、介護の基本報酬の改定に伴う引き下げ分を17の事業所に支給しました。ガソリン代は、1台につき1か月3000円の補助も実施しています。 岩手県宮古市は今年の6月の議会で、赤字の事業所にたいする支援金給付として2709万円(2024年度、2025年度分)の補正予算を組み、7月から申請が開始されています。今年の3月議会で日本共産党の市議会議員が「介護基金を使って、市内事業所の減収分を支援すべき」と提案し、市長は「市内の事業所の実情を把握し、そのうえで検討したい」と答弁しました。市は、市内の事業所の実態調査をし、85%の事業所が「報酬引き下げの影響がある」と答え、6割の事業所が赤字に及んでいることを踏まえて補正予算が提案されました。 Q3、杉並区内の多くの訪問介護事業所が、経営困難な状況に置かれていいます。今定例会の補正予算で、都の助成対象外となっている介護サービス事業所に対し、区独自に今年度上半期分の食材費、光熱費の一部を助成する経費が盛り込まれたことは重要ですが、さらなる支援策が必要と考えます。他自治体の例も参考に、区独自のさらなる支援策の実施を求めますが、いかがですか伺います。 (3)【人材確保・定着への支援】 次に、人材確保・定着支援について質問します。 介護職員の中でも、ホームヘルパー不足は深刻です。猛暑の中での訪問、食事の介助、排泄介助、汗だくになって入浴介助などの重労働です。時には病状が悪ければ、すぐ家族や医療機関に連絡することもします。利用者宅は、決して環境が整っているお宅ばかりではなく、過酷な労働環境で働くことも多々あります。そうした重労働にも関わらず、ヘルパーの平均賃金は、全産業平均を大きく下回っています。介護職員の減少を食い止め介護職員を確保するには、賃金を速やかに全産業平均まで引き上げることが急務です。 ① 研修の支援 Q4、区は、「ケアする人をケアする」支援として介護サービス事業所で働く職員の資格取得、初任者研修・実務者研修の費用を今年度から全額助成することやケアマネジャーや主任ケアマネジャーの法定研修の助成を行ってます。大変評価できるもので、今後も継続することが重要と考えます。 介護事業所や介護職員からはどのような声が寄せられていますか?伺います。 ② 住宅の支援 Q5、東京都が2024年4月より行っている「介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業」は、一人当たり月額1万円、介護職員は勤続5年目まではさらに1万円加算され2万円補助されます。重要な支援です。都内の事業所の8割が利用しているとのことですが「長く働いている人にも増やしてほしい」「申請の事務が大変で、なかなか申請できない」「専任の事務がいないのでなかなか申請できない」などの声を聞いています。区もこうした声を聞いていると思いますが、東京都に勤続6年以降も手当てを増額することや、申請事務を簡素化するなど、改善を求めていただきたいですが、いかがですか伺います。 ③ 就職相談・面接会 Q6、事業者にとって、区が行う就職相談・面接会は、人材確保として絶好のチャンスになります。 区内の事業所からは「年に1回で、参加できる事業所は少なく参加できない。会場が狭い。大きな事業所は人事の担当がいるので参加しやすいが、小さな事業所はそこに行くだけで大変」という声が寄せられています。大田区は、ハローワークなどと連携して、定例的に介護保険事業者による就職相談・面接会を年に9回実施しています。昨年の一般質問の答弁で区は「令和7年度に向けて必要な改善・見直しを図ってまいりたい」とのことでした。今年度の計画はどのようになっていますか、伺います。 ④ 介護のしごとの魅力発信につて Q7、介護の仕事は、人手不足で重労働、賃金も安いために若い人からも敬遠されがちですが、介護労働は、高齢者一人ひとりの生活を支え、尊厳を保ち自分らしい生き方ができるように支援する魅力ある仕事です。超高齢化社会に向かっているなかで、その役割はますます重要になっています。 多くの方に担ってもらうためには、介護職の魅力を伝えることが必要で、他区では様々なイベントを行っています。杉並区では、毎年11月の「いい介護の日」に合わせて区役所のロビーでパネル展を行っていますが、区役所だけではなく、区民センターなど、各地域で行い、より多くの方に伝えることが大切と思います。いかがですか? ⑤ 小・中・高校生に向けて介護のしごとの魅力を伝える取り組み Q8、小・中・高校生に対して介護職の魅力を伝える取り組みは、いくつかの区が行っています。 豊島区は、マンガでわかる介護のお仕事パンフレットを作成し配布、パンフレットには、介護サービス事業所で働く職員のインタービューも掲載しています。北区も、中学生にリーフレットを配布、江戸川区は、介護のしごとの魅力を伝える冊子作成と実際に学校訪問も行っています。 昨年の一般質問の答弁では「小・中・高校生に向けて介護の魅力を伝える取り組みにつきましても、今後、教育委員会等と意見交換してまいりたい」とのことでした。進捗状況はいかがでしょうか? 2.高齢者の聞こえの支援について (1)【難聴を早期に発見する仕組みをつくる】 次に高齢者の聞こえの支援について質問します。 70歳以上の高齢者の約半数は加齢性難聴といわれています。加齢性難聴になると、危険察知能力が低下することから事故につながったり、社会的に孤立しうつ状態になったり、認知症のリスクが高まることなどが指摘されています。 加齢性難聴は、聞こえが悪くなっていることに気づかず進んでしまっていることが多いと言われており、早期に発見することが重要です。 早期発見のための方法として、もっとも有効なのは聴力検査です。 聴力検査を区民健診に取り入れている区は、千代田区、豊島区、北区、中野区です。港区は、区民健診ではなく、60歳、65歳,70歳,75歳の人を対象に聴力検査をしています。葛飾区では、今年10月より「聞こえの健診」を実施予定でしたが、住民や議会からの要望で今年の7月から実施し、65歳から74歳の高齢者の聴力検査が開始されました。 毎年、杉並医師会からは、65歳の時点で難聴の有病率が上昇することから、65歳と75歳時の2回、区民健診として聴力検査の実施を区に要望しています。 Q1、早期発見のためには、聴力検査を区民健診に入れることや、独自に聴力検査を実施することが必要と考えますが、区の認識はいかがでしょうか。 Q2、また、難聴を早期に発見するために、「聞こえのチェックリスト」などをゆうゆう館やケア24、高齢者が集まるデイサービスなどに置き、受診につながるきっかけとすることを提案しますが、はいかがでしょうか。伺います。 (2)【杉並区の補聴器購入費助成】 次に補聴器購入費助成について伺います。 23区では、現在、全区が補聴器購入費助成を行っています。 杉並では、2023年から助成を開始し、現在の助成額は、非課税者に48,300円 課税者は24,200円です。2024年度の助成件数は、非課税者が208件、課税者が371件あわせて579件で、前年度より13%増えています。助成の件数が増えていることは喜ばしいことです。 しかしながら、補聴器は高額で、安いものは10万円くらいのもありますが、おおよそ20万〜50万円もします。助成制度があってもなかなか、購入に至らない人もいます。 区内に住むAさん男性83歳一人暮らしで、生活保護受給しています。左耳は子どもの頃の中耳炎の影響で聞こえにくく。2〜3年前より右耳も聞こえなくなりました。「この間は、後ろから車が来たが聞こえなくてぶつかりそうになった。テレビはヘッドホンを付けて観ている。お金がなくて、補聴器は高くて買えない」とのことです。こういう方は、私の周りに多くいます。 また、「以前に、補聴器を買って付けたが、慣れなくてずっと使っていない」という人もいます。 東京都は、2024年4月から「高齢者聞こえのコミュニケーション支援事業」を開始し補聴器の購入費の助成をしている自治体にその2分の1の補助をしています。基準額は144,900円で、最大で186,000円の2分の1の補助をしています。 Q3、私は、議会事務局を通じ、23区の補聴器購入費助成について調査しました。東京都の「高齢者聞こえのコミュニケーション支援事業」の給付を受けて、助成額の上限を7万円以上に増額、または予定している区は13区、東京都が基準額としている144,900円を助成している区は3区で、千代田区、港区、台東区、葛飾区は10月から予定しています。杉並区も是非、助成額の増額を検討していただきたいと思いますが、見解を伺います。 (3)【補聴器使用後、継続するための難聴高齢者のフォロー】 最後に補聴器使用を、継続するためのフォローについて伺います。 私は、お店に在籍する認定補聴器技能者に、難聴の高齢者が補聴器購入後に使用を継続するためのフォローの状況をお聞きしました。「補聴器を使用し、慣れるまでにおおよそ3か月かかるので、3か月間はお試し期間にし慣れるまで通っていただき、購入していただきます。その後は、定期的に調整をします」とのことでした。このように丁寧に難聴高齢者のフォローをすることにより、補聴器使用が継続されています。それでも、中断してしまう高齢者もいるとのことです。 Q4、区は、助成の条件のひとつに認定補聴器技能者のいるお店で購入するとしていることから、多くの方が補聴器使用を継続している状況だと思います。助成を受けた高齢者が、補聴器使用を継続できているか重要なことですが、区は状況を把握していますか。伺います。 Q5、補聴器使用を中止してしまう理由の一つとして、補聴器使用者への偏見(かっこわるい、年よりじみている)がまだあると言われています。補聴器使用の重要性などを広く区民に知らせる普及啓発活動に取り組むことも必要と思いますが、見解を伺い質問を終わります。 以上 |
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