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2025年杉並区議会第1回定例会 予算特別委員会 意見開陳(くすやま美紀)(2025年3月18日) |
日本共産党杉並区議団を代表して、令和7年度・杉並区各会計予算と付託議案に対する意見を述べます。 長引く物価高騰が、住民生活と区内事業者に重くのしかかっています。杉並区の新年度予算編成において、くらしを守る対策は喫緊の課題です。 今定例会では、わが党区議団が取り組んでいる「くらし・区政への要望アンケート」に寄せられた区民の声を紹介してきました。回答者の約8割が生活苦を訴えるという、かつてない深刻な事態となっており、この声に応える区政運営が求められます。 こうした社会情勢のもと、わが党区議団は、岸本区政の新年度予算が、長引く物価高騰から住民生活を守る予算となっているのか、震災対策の強化や自治体の責務である福祉の増進に力を入れた予算になっているのか、前区政の歪みを正し住民参画の区政運営を進める予算となっているのか、これらの視点に立って新年度予算案の審査を進めてきました。 その結果、議案第28号 令和7年度 杉並区一般会計予算、議案第29号 杉並区国民健康保険事業会計予算については賛成、議案第30号 杉並区介護保険事業会計予算、議案第31号 後期高齢者医療事業会計予算については反対します。 以下、主な理由を述べます。 まず、物価高騰から、区民と事業者のくらし・営業を守ることについてです。 物価高騰が長期化・深刻化するなか、基礎自治体の役割が問われています。区長から、「区民生活への影響が危惧される状況が続いている」との認識が示され、社会経済状況や区民生活の実態等を注視し、必要となる対策を必要な財源を確保しながら講じるとの表明がされたことは重要と受け止めています。 ■住宅問題 新年度、岸本区長が「住まいは権利である」との理念のもと、わが党区議団も求めてきた家賃助成の創設に踏みだすことを高く評価いたします。杉並区の公営住宅の供給率が23区中19番目と低いことは大きな課題ですが、住宅確保要配慮者の住宅確保に向け、区営住宅、セーフティネット専用住宅、家賃助成、転居費用助成等の総合的な支援を進めていくことが表明されたことを歓迎します。引き続き、住宅施策の強化・拡充の推進を求めるものです。 ■教育費の負担軽減 教育費の負担軽減について、移動教室における「まかない費」相当分の徴収を廃止し、保護者負担の軽減をはかるとしたことは重要です。今後、就学援助の認定基準額の引き上げや、前区政のもとで廃止された修学旅行費補助金の復活、移動教室にかかる費用の負担軽減等、さらなる推進を求めるものです。 ■物価高騰対策 また、米や食料品が高騰するもと、区が直接、こども食堂の運営費や立ち上げにたいする助成を行うことが示されたことも重要であり、評価します。 物価高騰対策として、23区の多くの区でプレミアム付商品券やキャッシュレスポイント還元事業等が継続的に取り組まれ、区民の購買力向上に寄与しています。 区においても、先の臨時会において、厳しい状況にある区民や事業者の生活、経営を下支えするとして、わが党区議団も求め続けてきたキャッシュレスポイント還元事業が提案され、新年度実施されることは重要です。 総務省が2月末に発表した東京都区部の消費者物価指数では、物価高騰がさらに深刻となっていることが浮き彫りとなりました。昨年度実施された光熱費助成は事業者から喜ばれており、再度の実施を求めるものです。 次に、住民福祉の向上への取り組みについてです。 ■区職員の待遇改善 予算編成方針では、全ての職員が安心して働ける職場環境をつくることは、区民福祉の向上にも直結する取り組みとされており、非常に重要な視点と捉えています。増大・多様化する行政需要に対し、職員一人ひとりが、これまで以上に力を発揮しやすくなる職員体制や職場環境を整えることが必要です。 区が職員へのエンゲージメント調査を実施し、風通しの良い職場づくりへ繋げることは重要です。また、会計年度任用職員の再任用にかかる上限の撤廃、図書館司書の報酬額引き上げ等、処遇改善の取組を高く評価します。ハラスメント対策についても第三者による外部相談窓口を設置する等の取り組みが進められることも重要です。引き続き、職員の働き方の改善を進めることを求めます。 ■ゆうゆう館・コミュふらについて この間、ゆうゆう館の機能強化とともに「コミュニティふらっと」における高齢者施設としての機能に高齢者の「福祉の増進」「向上」「生きがい」「健康づくり」等、老人福祉法13条に定められた役割を位置付けることを求めてきましたが、今後、関連規定の見直しを検討・具体化する、とのことです。ゆうゆう館においても、コミュニティふらっと、それぞれでの機能効果を求めるものです。 ■障害者施策 障害者施策の内、移動支援事業については、令和8年度の見直しに向けた検討が進められます。この間、持ち越しとなっていた通所利用や身障等級による制限等の課題、移動支援にかかるヘルパーの確保が困難となり、その要因となっている報酬単価の低さ等の課題について、解消に向けた検討が進められることが示されました。これらの課題は、杉並区障害者団体連合会をはじめ、多くの区内団体、当事者、保護者等からも要望が寄せられているものです。障害当時者や関係団体と十分な協議を尽くし、見直しを進めることを求めます。 ■保育の質の確保 保育の質の確保について、人件費比率の調査や自治体独自のルールについて取り上げてきました。この間、区が区内事業者への聞き取りも含めて、調査・研究を実施したことに感謝申し上げます。 調査の結果、人件費比率の高低が職員一人当たりの賃金月額、保育士数、勤務経験年数にいずれも相関関係があること、また、区独自ルールを実施した場合のメリット・デメリット、事業者への聞き取り調査等、多角的な調査・研究が行われたことは、重要なことと受け止めています。人件費比率の課題は、行政の運営費が保育士の処遇改善に適切に使われているのかどうか?その点が最も重要な点と考えます。引き続き、現場で働く保育士へのアンケート調査等も含めて調査を進めて頂くことを求めます。 ■生活保護 生活保護について、杉並区が、申請者の意向を尊重した扶養照会の対応や、生活困窮者が申請を躊躇うことがないよう周知ポスターを作成する等、憲法に基づく国民の権利として、見直しを進めていることを評価します。新年度、荻窪事務所の人員増や、会計年度任用職員による後方支援等、ケースワーカーの負担軽減に取り組むとしていることも重要です。今後、猛暑から命を守るため、夏季の電気代補助についての検討を求めるものです。 ■「杉並区子どもの権利に関する条例」 ここで、議案第19号「杉並区子どもの権利に関する条例」について賛成の意見を述べます。子どもの権利条約に基づき、子どもの権利条例の制定を進めることは、国の動向も含めて時宜に適ったものです。この間、職員が「子どもの声を聞き取る」ために並々ならぬ努力をしてきたことも質疑を通じて明らかとなりました。そこで得られた経験を、今後の施策等にも反映することを求めるものです。さらに「子どもの権利」への認識については、子どももおとなも依然として十分では無いと考えます。さらなる普及啓発の努力を求めます。あわせて、子どもの居場所づくり基本方針については、現在の条件のもとで、児童館を含め、子どもの居場所拡充を実現していく方向性が示されたものであり、地域特性に応じて柔軟な運用を実施することを求めます。 ■教育環境の整備 次に、安心して学ぶことのできる教育環境の整備についてです。 教員の働き方、教員不足、不登校児童生徒への支援など、教育を巡っては様々な問題が山積しています。新年度、区立小学校の担任の業務を補佐するエデュケーション・アシスタントの導入が示されたことは重要です。引き続き、スクールカウンセラーの増員や学びの多様化学校の設置に向けた取組など、進めていただくことを求めます。 前区政のもとで遅れていた区立小中学校のトイレの洋式化が着実に進んでいることを高く評価します。質疑で、来年度末には、80%を超える見込みであることが示されました。引き続き、早期の100%達成に向けて取り組んでいただきたいと思います。 ■「いじめ防止等に関する条例」 議案第22号 杉並区いじめの防止等に関する条例について賛成の意見を述べます。 本議案は、今定例会で併せて提案された「杉並区子どもの権利に関する条例」と子どもの居場所づくり基本方針と共に、子どもの人権を守るための取り組みです。いじめを防止し、被害を受ける児童の尊厳を守り、教育を受ける権利を侵害しないことは重要です。実効性ある条例とするよう、引き続き、努力を尽くして頂くことを求めます。 杉並区の教育委員会は、様々な課題に直面していると考えますが、引き続き、教育行政の信頼回復に力を尽くすよう求めるものです。 ■防災対策 次に、震災対策、防災対策についてです。 震災救援所等の災害備蓄品について、新年度においても拡充が示されました。 内閣府が発行する、自治体向け「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン」の一部改訂では、トイレや居住スペース、生活用水等でスフィア基準を参考にした指針が取り入れられています。都市部においては様々な課題がありますが、ガイドラインやスフィア基準に沿った更なる震災救援所の整備を求めるものです。 木造住宅の耐震化については、昨今の資材価格や人件費の上昇により、耐震改修費用が高騰しているため、改修費の補助限度額が引き上げられることとなりました。また、不燃化対策を進めるために今後、(仮称)不燃化会議を開催し、区民と共に不燃化の促進等の取り組みを進めるとしたことも重要です。 首都直下地震やゲリラ豪雨、昨今多発している強盗事件などの備えに向けて、防災防犯用品カタログギフトの配布が実施されます。区民一人ひとりが、自分事としての備えを進めるきっかけとなる大事な事業と考えます。 ■対話によるまちづくり 次に、対話によるまちづくりについてです。 区立施設マネジメント計画については、この間、ワークショップが開催され、そこで寄せられた意見も踏まえ、3地域での計画が方針化されました。質疑でも取り上げましたが、いくつかの課題はあるものの、参加した区民からは区職員や住民がひざ詰めで意見交換をする計画策定プロセスに前向きな声が寄せられています。 ■デザイン会議 同様に、(仮称)デザイン会議においても、対話の努力がなされており、運営の方向性を決める段階から、区民と職員が意見交換しながら取り組みを進めています。住民参画と協働の一事例と言えるものです。これまでの住民の声が反映されない都市計画道路の進め方を改めると共に、現状の道路計画は固定的に見るのではなく、住民との対話による変更、修正、見直しなども視野に検討を進めて頂きたいと思います。 職員にとっては、運営上の苦労もあると考えますが、会議で話し合われたことについては、今後の都市計画道路も含めてまちづくりに反映することを求めます。 ■区立施設利用料 区立施設利用料についてです。 区長は「集会施設等の公共資源のネットワークを生かし、区民と共に地域の様々な課題を解決していくことが重要」との認識を示しました。住民自治を進める上で、低廉で使いやすい施設使用料とすることは重要です。今定例会では、現下の物価高騰の社会経済状況を踏まえ、現行の使用料は据え置き、使用料の見直しは令和8年度以降に引き続き検討する、との方針が示されました。他自治体において、区立施設使用料の引き上げが相次ぐなか、杉並区の据え置きの判断は重要です。さらなる使用料引き下げを求めるものです。なお、今回の見直しで、子どもや高齢者への使用料負担軽減等の対策を進めることが示されたことを評価します。引き続き、負担軽減の対象拡大や実施時期の前倒し等の対策を進めることを求めます。 対話による区政は、合意形成には時間がかかりますが、住民自治を進める上で重要な土台・基礎となるものです。引き続き、努力を尽くして頂くよう求めるものです。 ■気候危機対策 気候危機への対応についてです。 岸本区政のもとで始まった気候区民会議は、区民主体の取組として先駆的であり重要と評価します。再エネの導入、断熱改修、省エネ助成などの助成件数が増加していることも重要です。2030年のカーボンハーフ達成に向け、さらに全区民的取り組みへと発展させていくことを求めるものです。 ■ジェンダー平等、多文化共生 ジェンダー平等、多文化共生についてです。 今年度ジェンダー平等に関する審議会が設置され、幅広い分野から知見のある委員が集い、杉並区でジェンダー平等を推進していくための取り組みについて議論が始まりました。1つの枠組みの中ではなく、あらゆる施策においてジェンダー主流化の観点から是正に取り組むという、杉並区が新しい一歩を踏み出したことを歓迎し、新年度の審議と答申にも期待するものです。 杉並区多文化共生方針の策定により、今後、区でも増加が見込まれる外国籍住民とともに互いを尊重し、理解し合い、さらに住みよい杉並区としていくために、情報保障や協働、共生の取り組みを進めていくことが示されました。すべての人の人権が尊重され、差別のない社会でこそ、安心して生き、学び働くことができます。その理念のもと、新年度以降も全庁横断的な取組を求めます。 ■平和事業 平和事業についてです。 戦後・被爆80年にあたり、広島市の協力を得て「ヒロシマ原爆・平和展」の開催、被爆者証言記録映像の制作・公開などの事業に取り組むことを評価します。 被爆者や戦争体験者の高齢化に伴って、語り部・体験講話の担い手の確保が難しくなっているなかで、若い世代の平和意識向上は喫緊の課題です。区長から、広島平和学習中学生派遣事業に参加した中学生が、10年後、どのような気持ちで平和の担い手・語り手として繋がっていけるかを念頭において、継続的な平和事業をデザインしていきたい」との認識が示されたことは重要と受け止めています。若い世代が平和文化の担い手として育っていく取組をさらに進めていただきたいと思います。 最後に、各特別会計に対して意見を述べます。 ■国民健康保険事業会計 まず、国民健康保険事業会計です。 この間、連続値上げとなってきた国民健康保険料が、新年度、引き下げとなったことは極めて重要と受け止めています。特に物価高騰が深刻化する状況下では必要な対策と考えます。しかし、保険料自体高いことに変わりはなく、依然として事態は深刻です。 国保制度の構造的問題を解消するためには、国の財政支出と財政運営の責任主体としての東京都が役割を果たすことが不可欠です。引き続き、杉並区として保険料の負担軽減に向けてあらゆる努力を尽くすことを求め、本事業会計と議案第38号には賛成します。 ■介護保険事業会計 次に、介護保険事業会計についてです。 今年度の第9期計画改定において、介護保険料は、基準月額で200円の引き上げとなりました。大幅な値上げも懸念される中、準備基金を最大限取り崩し、負担軽減に取り組んだ姿勢は重要であると評価しますが、本事業会計には反対します。 ■後期高齢者医療保険事業会計 後期高齢者医療保険事業会計について 年金削減や異常な物価高騰が高齢者のくらしを脅かしているもとで、今年度、保険料は大幅に値上げされました。新年度は、激変緩和措置の終了に伴って所得率が引きあがり、さらに値上げとなる高齢者が発生することから、本事業会計には反対します。 ■最後に その他、予算特別委員会に付託された議案については、賛成とします。 以上、各会計予算に対する意見の開陳を終わります。多くの資料を調製していただいた職員のみなさんに心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。 以上 |
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