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2024年杉並区議会第三回定例会 決算特別委員会 意見開陳(小池めぐみ)(2024年10月15日) |
日本共産党杉並区議団を代表して、令和5年度杉並区一般会計ほか特別会計の歳入歳出決算に対する意見を開陳します。 当該年度は、岸本区長就任後の初の予算編成でした。新型コロナ拡大と物価高騰が直撃した前年から、物価高騰と円安がさらに暮らしを直撃した年でもあり、わが党区議団は、杉並区が基礎自治体として区民や事業者のくらし・営業を支え区民福祉の増進のために総力をあげて取り組んだのか、また前年度岸本区長就任後から開始された区民参画の区政を前進させてきたのかという観点で決算審議に臨みました。 結論としましては一般会計ほか介護保険事業会計、後期高齢者医療事業会計については認定、国民健康保険事業会計については不認定といたします。 1.深刻化する物価高騰に対する支援 以下、主な理由を述べます。まず、物価高騰対策についてです 帝国データバンクの調査では2023年1年間の値上げ品目は3万2,396品目、総務省発表の2023年平均の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比3.0%の上昇でした。1982年の3.3%以来41年ぶりの高い水準で、モノに加えて宿泊費や教育費などのサービスにも物価高騰の波が押し寄せました。総務省公表の家計支出によると消費支出はこの年9か月連続のマイナス。コロナ禍で経済が疲弊しているところに物価高騰が直撃して消費も冷え込み、まさに逃げ場のない状況に区民・事業者が追い込まれた年でした。 ・中小企業光熱費高騰緊急対策助成金 5772事業所 こうした状況のもとで、岸本区政は多くの区内事業者の苦しむ声を受け、わが党区議団も求めてきた中小事業者への光熱費補助を実施しました。中小企業光熱費高騰緊急対策助成金は、23区の中でも先駆的な取組で、目標値の設定や申し込み方法については課題が残りましたが、5,772件もの事業者から申請があったことからも、いかに経営が大変な状況であり、支援が望まれていたかということがわかります。また、申請期間を当初の12月末から年明けの2月末までに延長したことも適切な判断だったと考えます。光熱費やコメを始めとする食料品の高騰が深刻さを増しながら継続することが予想されているので、今後も物価高騰対策をおこなうことを求めます。 ・区立小中学校の学校給食費無償化 区は、当該決算年度の10月から区立小中学校・特別支援学校の給食費無償化を実施しました。今年度の4月からは国立私立小中学校児童生徒、不登校生徒に対して給食費相当分の支給をおこなっています。今年の給食費で計算すると月平均6,300円、年間69,300円相当にもなり、この金額が無償になったことは子育て世帯にとって大きな負担軽減です。また、食材が軒並み高騰しているもとで、学校で栄養のあるおいしい給食を食べていることが安心に繋がる、本当に助かると、子育て家庭からは多くの喜びの声が届いています。 こども食堂にも1団体当たり最大6万円の給付金が支給されました。杉並区として、「子育てを地域全体で支える」という姿勢を示したことを評価するものです。 公衆浴場等への燃料費助成、福祉施設等への食糧・光熱費助成など、地域を支える施設・事業者への支援が実施されたことも重要です。物価高騰に対する積極的な支援に取り組んできたことを評価します。 2.福祉、教育など施策の前進 ・高齢者補聴器購入費助成 当初の予算より3倍の申し込み、補正予算で追加 次に福祉、教育分野での施策の前進について述べます。わが党区議団が長年求めてきた高齢者補聴器購入費助成が実施され、当初予算では460万円120件を見込んでいましたが、申請件数は最終的に510件と、約3倍の申し込みがあり、補正予算で経費を追加計上しました。聴こえの低下は、認知症やうつ病の発症にも繋がると言われています。高額であることから購入をためらっていた多くの高齢者の聴こえの権利が保障され、歓迎されています。 また、認知症の本人とその家族を支援する認知症サポーター「チームオレンジ」を当該年度は新たに4チーム設置しました。地域での安心な暮らしを支える高齢者施策が進んでいます。 ・生活保護扶養照会、ポスター わが党区議団は、前区政のもとで、生活保護の扶養照会が望まない相談者にまでおこなわれていた実態を告発し、是正を求めてきました。岸本区政のもとで、扶養照会を経済的援助と精神的援助に分け、生活保護申請者の意向に寄り添い、望まない扶養照会はおこなわないという姿勢が福祉事務所で徹底されることになりました。 また、今年度からは「生活保護は国民誰でも相談・申請することができます」というポスターが作成・掲示されました。今後も引き続き区民の声を聞き、よりメッセージの伝わるポスターに改善していくことを期待しています。 ・就学援助の認定基準額引き上げ 就学援助は前区政のもとで認定基準額が引き下げられ、対象世帯が減少しました。当該年度は認定基準額を生活保護基準の1.2倍から1.3倍に引き上げたことにより認定者が188人増加したことは重要な成果です。より多くの対象者が利用できるよう周知を徹底すること、また物価の上昇率を鑑み、基準額を1.5倍まで引き上げることを要望するものです。 ・子どもの権利に関する条例制定に向けた審議会の設置、・子どもの居場所基本方針、・ヤングケアラー実態調査 当該年度から子どもの権利に関する審議会を設置し、イベントや広報で「子どもの権利」の周知が行われています。区内8校での意見交換会、子ども日本語教室でのヒアリング、児童館等でのアンケート、子どもワークショップなどを通し、子ども家庭部、教育部局が連携して取り組みを進めてきました。職員が真剣に子どもの声を聞き、ワークショップでは「子どもの意見を大人に聴いてもらえるのがうれしい」という発言もありました。まさに杉並の子どもたちの権利擁護を進める取組と言えます。 同時に「子どもの居場所基本方針」の策定に向けて、児童館が無くなった地域などの特性を考え当事者や地域住民との意見交換などをおこない、丁寧に方針づくりを進めてきたことを高く評価します。 「ヤングケアラー」の実態調査や、支援を強化していくための研修、連携づくりもおこなわれました。2026年度の区立児童相談所の設置に向け、18歳以上も含む、子どもから若者への切れ目のない支援についても、対策を強化し計画策定に着手していただくことを要望しておきます。 3.防災対策 次に防災の取組について述べます。防災対策については、継続した耐震不燃化の取組で耐震化率、不燃領域率などの指標を着実に増加させるとともに、防災備蓄品の拡充や、震災救援所への蓄電池の設置などを行い、杉並区の防災対策を後退させることなく、着実に前進させたことを評価します。 特に、一般緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率については、登記簿謄本や現地確認などの調査を行い、これまで推計でしかわからなかった耐震化率の実態を把握したことは重要です。同時に、耐震診断に対する助成率を1/2、上限150万円から9/10へと拡充した事も重要です。さらに、本年度には、診断だけでなく設計や改修工事の助成率についても拡充されています。 感震ブレーカーについては、無料対象を火災危険度ランクの高い21町丁目の世帯まで拡充したことで、当該年度は目標を超える1,090台の設置となりました。 引き続き、耐震、不燃化のまちづくりが前進するよう、更なる取り組み強化を求めるものです。 1月1日に発生した能登半島地震を受け、区はさらなる防災の取組を拡充したことも重要です。震災救援所の収便袋や生理用品など備蓄品の拡充、太陽光発電設備の無い震災救援所への蓄電池の設置、プライベート空間確保の間地切りセットの配備、区立施設へのエレベーターBOXの設置など、防災の備えが拡充されました。 いつ来るともわからない大型地震に備えて、さらに区民の防災意識を高め、行政と区民とが協働して防災に取り組んでいく杉並区を目指してほしいと思います。 4.ジェンダー平等 ・パートナーシップ制度開始、性の多様性条例 次に、ジェンダー平等実現のための取組について述べます。当該年度、杉並区性の多様性条例が施行され、パートナーシップ制度が始まりました。多くの当事者や支援者の方々の努力で実を結んだ制度であり、当該年度で26組、今年8月までで計38組がこの制度を利用していることを、本当にうれしく思います。憲法が保障する婚姻の平等、法の下の平等を実現するために、国での同性婚の実現が望まれていますが、基礎自治体が公的にパートナーとして認め、尊重し、支えるという姿勢を示すことは非常に重要です。 ・事実婚含むパートナーシップ制度に 「経済」「教育」「健康」「政治」分野でのジェンダー平等の達成度を測るジェンダーギャップ指数で、日本は当該年度、過去最低の146カ国中125位となりました。女性の非正規雇用率の高さ、男女の賃金格差、家事労働の負担割合が高いこと、管理職の女性割合の低さなど、女性が置かれている社会的な立場は男性に比べて弱く、政治の場においても女性が少ないことで、見過ごされている課題や困難があります。世界で日本だけが選択的夫婦別姓を導入出来ていないということも、その1つです。現在、国においても大きな議論になりつつありますが、杉並区でもパートナーシップ制度に事実婚を含むことを求める区民からの陳情が昨年度採択されました。今後設置されるジェンダー平等に関する審議会において、調査・研究・審議をして、より多くの人の人権を尊重するパートナーシップ制度へと進化させていってほしいと思います。 ・ハラスメントゼロ宣言、議員によるハラスメントについて 区では、区長が発表した「ハラスメントゼロ宣言」のあと、各部署にポスターを掲示し、相談員を配置してハラスメント撲滅に取り組み、職員研修などをおこなっていることを高く評価します。全体の奉仕者である私たち議員も、人権を尊重することを当たり前にしていくために、研修等をおこなうなど、ともに学び、差別や偏見を無くしすべての人の権利が尊重される杉並区を目指さなくてはなりません。ジェンダー平等社会の実現のために、基礎自治体からハラスメント防止や、会計年度任用職員の処遇改善に取り組むことは重要であり、評価します。 5.気候危機対策 次に、気候危機対策について述べます。当該年度、2030年に温室効果ガス50%削減達成を目標とする「杉並区地球温暖化対策実行計画」が策定されました。前区政下での計画は、目標設定も消極的で、目標実現のための分野別部署別目標などの内わけも示されていませんでしたが、今回の計画は、2030年カーボンハーフ実現にふさわしい目標と、その裏づけとなる分野別、部署別の目標、施策が明確に示されたことは重要です。再生可能エネルギーの導入、断熱改修等省エネに対する助成、すぎなみエコチャレンジ等の実施、さらに、わが党区議団も求めてきたカーボンオフセット事業や気候区民会議の開催など、世界的な課題である気候危機問題に対する取組が前進していることを評価します。 6.対話の区政・まちづくり ・総合計画・実行計画・施設マネジメント計画等に関する地域意見交換会 次に、対話の区政とまちづくりについて述べます。社会経済環境の変化への対応と、区長公約である「さとこビジョン」で示した取組の実現や区民参画に基づく対話協調型区政を更に推進するために、当該年度、総合計画・実行計画等6計画の改定が1年前倒しでおこなわれました。これまでおこなっていた方針案に対するパブリックコメントの実施だけではなく、区内7カ所での対話形式による意見交換会が初めておこなわれました。職員のみなさんが参加者の意見を聞きながら、対話の方法や場の持ち方も改善していく姿勢に、「区政の変化を感じた」という区民からの声もありました。最後には区民と職員が車座になって感想を話し合う光景を見て、「住民自治」とは決して言葉だけではなく、未来の希望を真剣に語り合うことで実現できるものだと実感しました。 また、改定した区立施設マネジメント計画では、これまでの取組手法では施設利用者や住民の意見を十分に反映できなかったことを課題として受け止め、今後は住民との協議により地域の区立施設のあり方を検討すると示したことは、住民自治のまちづくりをすすめる上で重要な変化でした。 ・都市計画道路 都市計画道路について、当該年度は成田東の都市計画道路補助133号線に関する対話集会の「さとことブレスト」が、4回開催されました。都施行の計画道路であり、事業着手していない今だからこそ、基礎自治体として住民に周知し、意見を聴き、都に届けることが大切だと考えます。西荻窪の補助132号線と高円寺の補助221号線も含め、今年度3地域での「デザイン会議」がスタートしています。始まったばかりですが、参加者が運営委員となって、行政とともに運営方法やテーマを決めて進めていく形式にチャレンジしているところです。住民との合意形成はまだまだ道半ば、地域によっても課題は様々です。区は、住民とともに今後も粘り強く課題に向き合っていくことを求めます。 ・阿佐ヶ谷駅北東地区 阿佐ヶ谷駅北東地区に関し、杉一小の移転改築を進めるため、学校改築検討懇談会が設置されることになりました。前区政下での計画の決定プロセスは不十分・不透明であり、住民を巻き込んだ議論がなされなかったことは反省すべき点と考えます。今後はあさがやまちづくりセッションを始めとする学習・議論の場の設置や、丁寧な情報公開を徹底し、地域住民や、学校の当事者など多くの住民とともに、皆が望む阿佐ヶ谷のまちの未来のため、区は力を尽くすことを求めます。 ・情報公開 当該年度は、情報公開に関し、SNS等の活用によってスピード感やわかりやすさが格段にアップしました。今後の区HPの改修や公民連携プラットフォームの活用も含めて、より区民に情報が伝わりやすい、区政参画が拡がる杉並区を目指していただくことを要望します。 ・財政運営について 財政運営について申し述べます。当該年度の実質収支額、いわゆる決算剰余金の金額は111億円以上、実質収支比率は8.1%でした。実質収支比率は、一般的には3%から5%が望ましいと言われています。5%を超えた3.1%分を金額にすると、約42億6千万円です。 かなり大きな額ですが、この約42億円を当該年度中に区民福祉等にふりむけても、実質収支比率は適正値の範囲内です。一般的に適当と言われる範囲を超える黒字分については、その年度で必要とされている区民ニーズや区民福祉の向上、負担軽減に活用することを求めます。 ・国保についての不認定理由 最後に、国民健康保険事業会計決算に反対する意見を述べます。 当該年度の、国民健康保険料は、国の「国保改革」前年の2017年度と比べ、一人当たり32,744円の値上げとなり、年額保険料は18万2171円にものぼりました。年収400万円40代夫婦と子ども2人の世帯の場合、年額保険料は54万7507円で、年収に占める割合は13.7%にも達します。 国保料の値上げが毎年押しつけられる最大の要因は、国・都が財政責任を果たしていないことです。国は国保改革で財政投入を拡充したとしていますが、過去のわが党区議団の質疑で、2017年度と国保改革が行われた2018年度を比較すると、国と都の負担は19億円減額となったことは、区自ら認めています。 さらに東京都は、国保改革によって、「区市町村とともに国民健康保険の保険者」となり、「財政運営の責任主体」となったにもかかわらず、値上げ抑制への財政支援をしないだけでなく、区市町村に法定外繰入の廃止を迫っていることも重大な問題です。 保険料負担の重さについては、岸本区長も問題意識をもち、区長会でも発言をされていることは承知していますが、物価高騰のもと、被保険者に大幅引き上げを強いることになったことは容認できず、国民健康保険事業会計決算については、不認定とします。 以上で各会計決算に対する意見の開陳を終わります。多くの資料を調製していただいた職員の皆さまに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。 以上 |
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