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2023年杉並区議会第三回定例会 決算特別委員会 意見開陳(くすやま美紀) |
日本共産党杉並区議団を代表し、令和4年度杉並区一般会計ほか各特別会計の歳入歳出決算にたいする意見を開陳します。 当該年度は、6月に行われた区長選挙で岸本聡子区長が当選し、7月11日から新区政がスタートしました。前区政は、住民の声を真摯に受け止めず、トップダウンによる強引な区政運営や区政の私物化を進めてきましたが、岸本区長は、住民との対話を重視し、情報公開を進め、住民合意のもとで命と暮らしを支える区政運営を進めることを表明しました。 わが党区議団は、岸本新区政が、前区政のゆがみをただし、住民参加の区政運営へ転換を図ってきたのか、また新型コロナ感染拡大に加え、かつてない物価高騰のもとで、自治体の責務である福祉の増進に向け総力をあげて取り組んだのかという観点で決算審議に臨みました。 結論は、一般会計ほか介護保険事業会計、後期高齢者医療事業会計については認定し、国民健康保険事業会計については不認定とします。 以下、主な理由を述べます。 第一に、住民との対話を重視し、施設再編整備計画や都市計画道路事業などの見直しが始まったことです。 前区政は、施設再編整備計画で児童館やゆうゆう館の廃止を強行してきました。区民や利用者がどんなに計画の中止や見直しを求めても、区の方針を押しつけるだけで、区民の声は完全に無視されてきました。 岸本区長は、就任後の所信表明で、施設再編について「計画ありきではなく、利用者、区民、現場の職員の話を丁寧に聞き、これまでの取組をしっかり検証したうえで今後の進め方を検討する」と表明。児童館、ゆうゆう館など施設再編に関する住民説明会を11回開催し、見直しを開始したことは重要です。 当該年度、10年ぶりに改定が行われた杉並区まちづくり基本方針・都市計画マスタープランについては骨子案の段階から区民意見を募集するというこれまでにない取組が行われました。549件もの意見が寄せられ、全ての意見が区ホームページに公開されました。それを基に修正版がつくられ、区内7地域で説明会を開催。区長が出席する回もあり、一方的な説明ではなく参加者がテーマに沿って意見を出し合う方法にするなど工夫がみられました。 都市計画道路事業も、前区政は住民合意がないまま進めてきましたが、岸本区長は、住民と課題を共有し対話を通じて議論を深めるなかで区の考え方をまとめていくと表明し、西荻の補助132号線、高円寺の補助221号線について、区長と区民の対話集会「さとことブレスト」を8回にわたって開催したことは大事な取組です。 阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりについても、前区政のもとで、杉一小の改築建て替えという当初の目的が、まちづくりという大きな課題の中に組み込まれ、学校関係者や地元住民を置き去りにしたまま進められてきました。わが党は、土地区画整理事業となったことで、議会や財産価格審議会を経ずに計画が進められてきたこと、貴重な区の財産である杉一小の場所が水害や土壌汚染の懸念もある病院敷地と仮換地となった問題点などを、これまで継続して指摘してきました。 昨年度の都市計画マスタープランに関する阿佐ヶ谷地域での説明会でも参加者から計画にたいする疑問や不安の声が多く出されました。今年8月31日「振り返る会」が開催され、参加者は109名と、この問題に関心のある多くの区民が参加しました。参加者からの要望に応じて継続の会の開催を早期に決定したことは、住民との対話を粘り強く進めていくうえで重要であり、歓迎するものです。まちづくり協定の目的は、杉一小の教育環境の向上が大前提であることを踏まえ、今後は教育的な観点からの議論を進めること、杉並区自治基本条例に基づき、住民が主体となってまちづくりを進めるために情報の共有と周知に最大限努力することを求めます。 施設再編、都市計画道路、まちづくりについて、住民不在の区政運営から、住民参加の区政運営へ大きく舵が切り替わってきたことを評価します。 第二に、情報公開を推進し、前区政の歪みを是正する取り組みが始まったことです。 前区政の情報公開への対応は、たとえば河北病院移転予定地の樹木ごとの調査結果を「個人情報」だとして全て黒塗りにする、また、14日以内の開示が原則でありながらビーチコートの活用実績に関する情報は70日も開示を延長するなど、明らかにしたくないと思われる情報については、黒塗り、延長の連続でした。 岸本区長は「区政の情報は区民のもの」として、原則14日以内の開示の徹底を図ることや非開示の場合も「客観的具体的に合理的理由」を説明するとした通知を出しました。その後、あらためて開示請求した結果、それまで非開示だった情報が全面公開となりました。また、区の説明会などの議事録も積極的に公開されるようになったことも大いに評価します。 前区長の区政私物化、税金の使い方で問題になっていたのが、公用車の乱脈運行と利害関係者とのゴルフ問題でした。わが党の調査で、田中・前区長が区長専用車で年間80日も深夜まで乗り回すなど、隣接区の区長と比べても乱脈な使い方をしていた実態があきらかになり是正が求められていました。 岸本区長は、区長専用車を廃止し、登庁には原則として自己所有の自転車を使用、公用車を使う場合は職員共有の庁有車を使用することにしたことも大事な変化です。 前区長による緊急事態宣言下での公用車での他県移動、ゴルフ場での飲酒・宿泊問題に加え、指定管理者の選定中に、その候補者と区幹部職員がゴルフを行った問題は、杉並区の職員倫理に関する規定の不備として課題となっていました。区は新たなルールを作るとしていましたが、質疑の中で、他区の事例を参考にしながら、利害関係者との接触に関する指針として策定し、服務規定に盛り込んでいく旨の答弁がありました。職員倫理に関し、前区政から前進したと評価します。実効性のある内容とするよう求めるものです。 第三に、物価高騰対策、福祉、教育の施策が拡充されたことです。 当該年度は、食料品をはじめ、電気、ガス代などの光熱費の高騰が区民と事業者を直撃しました。 岸田政権の物価高騰対策が極めて部分的・限定的なもとで、杉並区には区民の暮らしと営業を守るために総力を挙げて取り組むことが求められました。 昨年4月、前区政は、食材費の高騰を理由に小中学校の給食費を値上げし、保護者に負担を押しつけましたが、岸本区長は就任直後に補正予算を組み、4月までさかのぼって給食費の保護者負担分を引き下げました。さらに、介護・障害者・保育施設等への食料費や光熱費の支援、公衆浴場への燃料費補助、国が非課税世帯のみとしていた給付金についても区独自の均等割世帯へ拡大するなど、区民や事業者の願いにこたえた施策を実施したことも重要です。 高齢者施策では、前区政では全く進まなかった高齢者の補聴器購入費助成の実施を表明し、今年6月から助成を開始しました。多くの高齢者に活用され、今定例会では追加の予算も計上されたところです。 生活保護制度について、前区政時代は他自治体と比べ、保護申請時の扶養照会の実施率が高いことが問題視され、申請者の意思を尊重した運用への改善が求められていました。今年度から申請者の同意により実施するとしたことは大きな前進です。また、前区政が一貫して拒否してきた「生活保護の申請は国民の権利です」という文言を区ホームページ等に明記したことも重要であり、評価します。 このほか、50歳からの帯状疱疹ワクチン助成、全小中学校女子トイレへの生理用品配置、重度障害者の就労支援、子どもの貧困やヤングケアラーの実態調査の表明など多くの成果がありました。 住宅施策では、23区の多くで実施し、わが党が求め続けてきた家賃助成について、区長が令和6年度実施を表明しました、現在、対象者や助成額などについて検討が行われていますが、物価高騰が深刻化するもと、一刻も早い実施を求めるものです。 教育施策では、前区政時代、就学援助の認定基準額を引き下げたため援助を受けられる世帯が減少し、令和3年度の認定率は23区中19位となりました。区教委も杉並区の認定率は低いことを認め「保護者負担の軽減のあり方については至急検討を進める」と表明。今年度から認定基準を生活保護基準の1.2倍から1.3倍に引き上げ、対象者を拡大したことを評価します。 第四に、ジェンダー平等を進め、人権を尊重する取組を進めたことです。 当該年度、性を理由とする差別の禁止やパートナーシップ制度等を含む性の多様性条例が制定されました。全ての区民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、共生する地域社会の実現に資することを目的とした意義ある条例です。質疑の中で、パートナーシップ制度については、今年10月3日現在で17組のカップルが登録したと答弁がありました。今後、事実婚カップルも対象とするよう改めて求めるものです。 本条例をめぐって、トランスジェンダーが女性トイレや公衆浴場で女性の「安全」を脅かす存在になるという言説が議会内外でふりまかれています。しかし、女性の安全が脅かされているのは、性暴力の防止や被害者支援の法整備と取組の不十分さから来るものであり、トランスジェンダーに問題があるかのような議論は意図的に分断と対立をあおるものです。 性的マイノリティを排除するのではなく、性の多様性を認め合い、「個人の尊厳」が尊重される社会をつくることが世界の流れであり、求められていることです。性的マイノリティが直面している問題にこそ焦点をあてた議論を進めていくことを呼びかけるものです。 昨年11月、岸本区長によって「杉並区ハラスメントゼロ宣言」が出されました。きっかけは職員に行ったハラスメントに関するアンケート調査で、ハラスメントを受けたことがある、あるいはハラスメントの定義を知らないという職員が多数にのぼったことでした。前区政のもとで、ハラスメント対策が不徹底だったことを示すものですが、前区長自身が委員会の審議中に、女性議員の質問にたいし机をたたいて威嚇するというパワハラ行為を行ったことも許されないことです。 岸本区長のハラスメントゼロ宣言以降の取組により、今年3月に行われた2回目のアンケート調査では、「自身の意識に変化があった」と答えた職員が60%にのぼったことが示されました。区長のハラスメントゼロ宣言が職員の意識を変えつつあることは大きな成果です。引き続きハラスメント根絶に向け取組を強化するよう求めます。 ここまで認定の主な理由を述べてきましたが、財政運営について触れたいと思います。 当該年度の財政状況は、翌年度へと繰り越される決算剰余金が約102億円に上る一方、年度内の財政調整基金の積み増しは88億円以上と近年最大規模となりました。年度末残高は、350億円の維持という区の財政ルールを200億円以上うわまわり、ここ10年で最高額となる574億円にのぼりました。標準財政規模に対する黒字率である実質収支比率も7.7%と、一般的に適正と言われる3から5%を2.7ポイントうわまわり、健全財政を維持しています。大規模に積み上がった財政調整基金については、緊急的な物価高騰対策や、区民福祉、教育、負担軽減に活用するよう求めるものです。また、前区政下では財政調整基金に偏重した積み立てが進められましたが、今後は目的と計画性を持った基金積み立てとするよう求めます。 次に、国民健康保険事業会計決算の認定に反対する意見を述べます。 当該年度、国保料は5512円値上げされ一人当たりの年間保険料額は17万1380円となりました。13年連続の値上げです。値上げの主な要因は、新型コロナウイルスの感染拡大による医療給付費の増大によるものですが、感染拡大は被保険者の責任ではなく、保険料にはね返らないように、第一義的には国や都が対応すべきものです。しかし、国も都も、特別区長会から要望を受けていながら何ら財政支援を行わなかったことは許せません。そこで特別区長会は国保事業費納付金の6%相当分を賦課総額に参入せず、区も介護分の保険料率については据え置くという措置を行いました。区長会及び区が一定の努力をしたことは評価するものです。 しかしながら、結果的に一人当たり5512円もの値上げとなり、年収400万円40歳夫婦と子ども2人世帯では、収入の13.7%を占める52万5612円もの保険料負担となった事態を容認することはできません。 国保料が毎年値上がり、被保険者のくらしを脅かす事態が続く最大の原因は、国と都が国保への財政投入を大幅に削減してきたためです。そのうえ、国は自治体にたいし、保険料の上昇を抑えるための一般会計からの繰入を廃止するよう迫っていることは許せません。繰入をなくせば、保険料はさらにあがります。繰入廃止に法的拘束力がないことは区も認めています。国の圧力に屈することなく繰入を継続し、保険料の上昇を抑えるよう、さらなる努力を求めます。 以上で、各会計決算にたいする意見の開陳を終わります。多くの資料を調製していただいた職員のみなさんに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。 |
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