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2021年杉並区議会第一回定例会予算特別委員会意見開陳(富田たく) |
1. 日本共産党杉並区議団を代表しまして、令和3年度杉並区各会計予算と付託議案に対する意見を申し述べます。 収束の見えない新型コロナウイルス感染症によって、緊急事態宣言の再延長、飲食店の時間短縮営業、解雇、派遣切り、シフト減少など、区民や区内事業が大打撃を受けています。 (1)区民アンケートの中間結果 私たちが昨年11月から取り組んでいる区民アンケートには、現在3300件以上の回答が届いています。この一年間で「くらしむきが良くなった」と答えた方は3.8%。逆に、悪くなったと答えた方は45.2%と半数近くに上ります。 新型コロナによる景気悪化と一昨年10月の消費税の増税がくらしと営業に大きな影響を与えていることが、このアンケート結果からもわかります。 (2)区民の負担増 区の資料でも区民の負担増の実態が、浮き彫りになっています。2010年から2021年までの11年間で、国保加入世帯を中心に負担が急激に上昇しています。夫婦と子ども2人の4人世帯の場合、年収400万円のうち所得税、住民税、国保料、年金保険料の年間負担額は2010年当時、68万円余りでした。 しかし11年間で39万円以上の負担増となり、来年度は年間負担額が107万円余りに増加、加えて消費税の増税も重なり、税と社会保険料の年間負担は128万円以上と、年収400万円のほぼ3分の1にのぼる大変重たい負担となっています。 (3)予算審議の結果 こうした中で、来年度予算が区民の命と生活、営業を守る予算となっているか、必要な施策を継続、拡充するとともに、区民生活を破壊する都市計画道路などの開発予算をどう抑えるかが問われております。 我が党区議団は、これらの視点に立って来年度予算案の分析、審査を進めてきました。 その結果、 議案第21号 令和3年度杉並区一般会計予算、及び22号 国民健康保険事業会計予算、23号介護保険事業会計予算、24号 後期高齢者医療事業会計予算について反対いたします。 以下、その主な理由、および付託議案の賛否について述べます。 2.新型コロナウイルス感染症対策が不十分な点について 第1の理由は、新型コロナウイルス感染症対策が不十分な点です。 (4)感染者が減少している今こそ検査の抜本拡充を 新型コロナの感染拡大を抑え込むには、感染者を早期に発見し、保護、療養を行うことが重要であり、そのためには症状のない方も含めたPCR検査の実施、いわゆる社会的検査を行うことが求められます。 党区議団はこうした視点に立ち、杉並区内でのPCR検査の抜本的拡充を求め続けてきましたが、来年度予算において検査体制の拡充については不十分であると指摘せざるを得ません。 現状、新規感染者数が減少してはいますが、それに伴いPCR検査数を減らすのではなく、検査能力に余裕が出来ている今こそ、検査拡充によって感染を抑え込むことが重要です。 国は、高齢者施設や障害者施設での社会的検査を行う方向性を示しました。23区でも独自のPCR検査の拡充に取り組んでいる自治体もあります。北区では「高齢者施設等の入所施設、グループホームも含め、従事者に対し定期的に週に1回」の検査に踏み出してます。 こうした他自治体の取組を参考に、大規模な社会的検査に取組むことを求めます。 (5)ワクチンだのみでは失敗する 今後、新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されますが、ワクチンは感染収束への有力な手段と期待される一方、未知の問題を多く抱えており、その効果が長期にわたって続くかどうか、抗体がきかない変異株の発生などの指摘もあります。また、ワクチン接種が始まっても、社会全体での効果が確認されるにはかなりの時間がかかることが予想されます。 「ワクチンだのみ」に陥ることなく、検査の拡充や、医療機関への減収補填、十分な補償など感染症対策の基本的取り組みを同時並行で進めることが重要だと指摘するものです。 (6)保健所体制の強化 併せて、保健所体制の強化も求められます。 本年1月に都の方針に基づき、感染者が急増するなか「積極的疫学調査」が縮小されたことは問題です。本来であれば、疫学調査を行う人員、トレーサー体制などを強化し、感染リスクのある学校の寮や飲食店などの調査も積極的に行っていくことが求められます。 さらに保健所では、感染対応だけでなくワクチン接種対応が加わり職員の残業が月100時間を超える状況が続いていることも看過できません。 保健所については、これまでの延長線上に留まらない抜本的な体制強化を求めます。 (7)区民、事業者支援について 緊急事態宣言が再延長されるなかで、減収や失業などで生活困難な区民や、時短営業などで経営困難な事業者への支援が不足している点も問題です。 区は事業者支援として「新ビジネススタイル事業導入助成」を予算へと盛り込みましたが、支援事業者の数は80件程度と予算規模が少なく、支援効果は局所的ではないでしょうか。 国や都の支援が不十分な状況で、他自治体では現金給付や減収補填などの独自の支援策を進めています。杉並区も住宅困窮者への家賃助成や、事業者への減収補填などの区独自施策を早期に実施するなど、区民、事業者への支援策を抜本的に拡充することを求めます。 3.コロナ禍のもとでの区民生活の負担増 第2の理由は、コロナ禍のもと、国民健康保険料を値上げし、負担増を区民に押し付けた点です。 (8)国保の値上げはゆるされない 国保の被保険者は、新型コロナウイルス感染症の長期化のもとで、失業や収入の激減など、深刻な事態に追い込まれており、我が党は、来年度の国保料について、すくなくとも値上げをしないことを求めてきました。 区長は党区議団の代表質問への答弁で「コロナ禍を考慮した保険料」とするとし、特別区長会では「抑制が必要である」と発言したとのことであり、来年度の保険料負担を軽減する取り組みを期待してきました。 しかし、提案された保険料案は、ひとりあたり3,716円の値上げするものであり、均等割額は19年連続の値上げとなります。一昨年の消費税増税に加えコロナ禍での経済悪化により区民生活が深刻化しているときに、国保料を値上げし、さらなる負担増を押し付けることは認められません。 国保料の度重なる値上げが押し付けられる根本原因の一つ目は、国、都が財政的責任を果たしてないことです。いわゆる国保改革で国は財政投入を拡大したとしていますが、昨年のわが党区議団の質疑で、杉並区の国保会計の決算では、国・都負担は増えているどころか、19億円の減額だったことを区自らが認めています。 二つ目は、法定外繰入の廃止を国が自治体に押し付けていることです。 国の言いなりで法定外繰入を段階的に廃止しようとするかぎり、コロナ禍で区民生活が深刻な事態の時でも、被保険者に値上げを押し付ける無慈悲な結果となってしまいます。 今こそ、こうした問題の見直しに向けて、杉並区がイニシアチブを発揮することを強く求めます。 党区議団の質疑において、繰入金を8,144万3千円増額すれば、来年度の保険料を値上げせず、据え置くことが出来ることが明らかとなりました。区の財政規模から見れば、十分に繰入れ可能な金額ではないでしょうか。保険料の値上げ中止に向けた、区長の決断を求めるものです。 4.コロナ禍のもとでの施策削減と道路開発 第3の理由は、コロナ禍のもとで区民生活に必要な施策が削減される一方で、不要不急の道路開発を進めようとしている点です。 (9)高齢者福祉費の減額 高齢者福祉費は、前年度予算と比較して減額となった事業が非常に多く、なおかつ、他の福祉分野と比較しても削減額が多くなっています。 見守りサービス等は6事業全てが減額され、敬老祝い品についても、前年度3,600名の人数となっていた81歳対象者を除外するなど、コロナ禍のもとで福祉施策が削減されていることは問題です。 福祉用具の給付費については、今年度と同様、わずか8万9千円しか計上されませんでした。党区議団は、都の高齢社会対策区市町村包括補助金を活用し、多くの区で実施されている補聴器やシルバーカーの購入助成に踏み出すことを求めてきましたが、区の姿勢はきわめて消極的です。福祉用具給付以外にも、包括補助金は高齢者施策に幅広く活用できるものです。積極的な活用を求めます。 (10)教育費の削減 教育費についても、重要な施策で削減が進められています。 小学校の民間警備員については、当初全面廃止が示されましたが、保護者などからの粘り強い働きかけがあり、区として全面廃止を諦め警備時間の縮小となりました。児童生徒の安全を考えれば、縮小すること自体が問題であり、警備時間をこれまで通りに戻すよう求めるものです。 中学生修学旅行費の保護者負担軽減については、他区と比べ優れた施策であるにもかかわらず、他区では行われていないなどの理由で、全面廃止となります。 むしろ、コロナ禍で区民の暮らしが大変な時だからこそ、こうした施策を維持・拡充すべきであり、税収減を理由とした教育費の削減は認められません。 (11)都市計画道路の推進も問題 こうした区民福祉が削減される一方で、区民の住まいと生活を奪う都市計画道路など不要不急の再開発を、住民合意のないまま推し進めることは許されません。 道路開発にかかる巨額な経費を、コロナ対策と区民福祉の拡充に充てることこそ、杉並区の責務ではないでしょうか。現在進められている都市計画道路の計画凍結を求めます。 5.施設再編整備の前倒し 第4の理由は、これまで区民福祉のために設置されてきた児童館、ゆうゆう館などの福祉施設の廃止や、学童クラブの民営化、大規模化が進められる点です。 (12)施設再編整備計画の前倒しによる福祉施設の廃止は問題 なかでも、区立施設再編整備計画等に位置付けられてない西荻北児童館・善福寺児童館の廃止方針が示された点は重大な問題です。 そもそも、区では児童館・学童クラブ等の在り方検討を行っている最中であり、そうした検討の結果が出される前から、両児童館の廃止・機能移転を先取りして進めることは、全く道理がとおらず、認めるわけにはいきません あらためて、施設再編整備計画に基づく児童館廃止の方針を撤回することを強く求めます。 また、他自治体では「在り方」を検証し、児童館存続を決断した地域もあります。 「子どもたちが自立を身に付ける絶好の場所が児童館である。」と位置付ける自治体や、「学校生活から切り離された放課後の生活の場として児童館に学童クラブを設置」するとした自治体、「在り方検討の結果、学校施設外での活動を希望する小学生もいることから、新たな児童館は引き続き小学生が放課後を過ごす場所の選択肢の1つに位置づけます」とする自治体など、施設削減ありきではない議論が行われています。 杉並区ではひとつの小学校に対し、ひとつの児童館が整備されてきました。こうした歴史的な経緯や、他自治体と比較しても先進的な児童館運営の事例を踏まえ、在り方検討部会においては、区の児童館が果たしてきた役割も含めて検証することを求めます。 6.阿佐谷北東地域の再開発推進 第5の理由は、阿佐ヶ谷駅北東地域の再開発が進められる予算となっている点です。 杉並区ではみどりの条例によって樹木の保全が求められておりますが、再開発にて樹木を大量伐採しても、条例に整合したものという旨の区長の発言は問題です。 また、資料作成や技術的支援を民間事業者に委託し度々公費が支払われていますが、個人情報という理由で民間事業者の情報が全く開示されないことも問題です。明かしたくない理由があるのか、疑念を抱かざるを得ません。 換地対象となっている杉並第一小学校の土地については、実勢価格と乖離した土地評価となっており、不当に安く評価されている可能性があります。本来であれば大規模な土地の処分については区の財産価格審議会の審議で適正価格を評価するべきですが、それを行わずに換地を進めている点は重大な問題です。 住民説明会も行わず、コロナ禍でも区の財政状況や住民意見を無視して、樹木が大量に伐採される大型開発を進めることは絶対に容認できません。 7.議案賛否 (13)関連議案の賛否 以上が、各会計予算に対する主な反対理由です。 関連議案については、議案第7号、8号、12号、13号、28号、30号、31号、以上7議案については反対。議案第6号、9号、10号、11号、14号、15号、29号、以上7議案については賛成といたします。 8.アイヌ民族に対する差別発言について 意見開陳の最後に、佐々木千夏委員のアイヌ民族に対する発言について、抗議し撤回を求めるものです。 佐々木委員は予算審議のなかで、「アイヌ差別や虐殺の歴史が無く」、「(アイヌは)鎌倉時代に日本に渡来した人々であり、先住民族ではない」と発言しました。この発言は、現に差別を経験したアイヌの方々、また北海道内外でアイヌ差別をなくすために活動してきた方々の思いを踏みにじるものであり、放置することはできません。また、2019年にアイヌへの差別や権利侵害を禁止したアイヌ新法の精神にも明確に背くものだと指摘するものです。当該発言の撤回を強く求めるものです。佐々木委員に置かれましては誠実な対応を求めます。 結びにあたり、多くの資料を調製していただいた職員の皆様に厚くお礼を申し上げまして、意見の開陳を終わります。 ありがとうございました。 |
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