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2019年杉並区議会第三回定例会決算特別委員会意見開陳(山田耕平) |
日本共産党杉並区議団を代表して平成30年度杉並区一般会計ほか各特別会計の歳入歳出決算について意見開陳を行ないます。 ◆住民の暮らしの実態 はじめに住民の暮らしの実態についてです。 質疑では、特別区民税収入が増加していることを取り上げました。その要因は人口増加に伴う部分もありますが、株式譲渡などにかかる分離課税の大幅な伸びが、特別区民税の増収に大きく影響していることが明らかとなりました。アベノミクスによる異次元の金融緩和、年金基金の株式市場投入による株価のつり上げ等により、一部の高額所得者の収入が著しく増加しているためではないでしょうか。 一方、特別区民税の納税義務者数の階層ごとの構成は大きく変わっていません。国の統計でも当該決算年度の実質賃金は2012年に比べ14万円の低下、二人以上世帯の年間平均消費支出は2013年から約25万円も減少しています。 こうした決算数値と国の統計から分かることは、低所得者の固定化と、富める者はますます裕福になるという二極化が、杉並区においても顕著になっていることです。 このような社会状況を直視し、基礎自治体が住民生活の守り手としての責務を果たすことが求められます。 党区議団は当該年度、杉並区がその責務を果たしてきたのか平成30年度各会計決算認定の是非について審査をしてきました。 その結果、認定第1号一般会計決算ほか認定第2号から第5号までの特別会計決算の認定について反対します。 以下、主な理由を述べます。 ◆豊かな財政力の一方、住民サービスは低下 一点目は、財政運営が優先される一方、区民生活のサービスが低下していることです。 当該決算年度のいわゆる黒字額である実質収支額は76億3,460万円、実質収支比率は6.3%と、昨年よりは低下したものの例年通りの高水準です。 実質収支比率は概ね3〜5%が適正と言われており、適度の余剰を超えるものは行政水準の向上や、住民負担の軽減に充てられるべきものです。当該年度、5%を超えた1.3%分は15億7千万円余りとなります。本来であれば、この余剰分は行政水準の向上や住民負担の軽減に充てられるものです。 さらに、財政調整基金の積立残高は、約59億円の積み増しにより、当該決算年度末には約425億円に達し、減債基金、施設整備基金、財政調整基金など主な基金残高は約515億円に達しています。 区民福祉向上に使う財政力は十分にある状況です。 当該年度の不用額は63億5400万円に上り、全体の執行率は96.7%となりました。 質疑では、著しく執行率が低い事業の問題を取り上げました。この間も指摘していますが、例えば、高齢者福祉の地域包括ケアの推進にかかわる諸施策の執行率については、当該年度も17事業中8事業が執行率80%を下回っています。この問題は平成29年度の決算でも指摘していますが依然として改善されていません。 中には高齢者緊急安全システムは、サービス利用の対象者を厳格化したことにより、区自ら定めた計画値を後退させるなど、事業実施のあり方にも重大な問題があります。対象を狭め、事業の先細りを招くような取り組みを行わないよう求めておきます。 豊かな財政力に相応しく、住民サービスを拡充することを求めるものです。 ◆際限無く引き上がり続ける国保料、当該年度は都道府県広域化を開始 二点目は、国保料の負担増です。 当該年度は、国保の都道府県化がスタートした年でした。 区は、都道府県化の目的・効果について、都道府県が国保財政の運営主体となることで安定的な財政運営や効率的な事業の確保ができる、区市町村が担う事務が効率化できるなどと答えましたが、肝心な「被保険者の保険料負担能力が低い」という国保の構造的課題の解決については、言及がありませんでした。 杉並区の国保事業会計でみれば、被保険者数は前年度より4000人以上減っているにもかかわらず、保険料の収入済み額は1億2300万円余増えました。当該年度も一人あたり5000円以上の値上げとなったからです。しかも保険給付費は減っているにもかかわらず、保険料負担は上がる結果となったことも浮き彫りとなりました。 こうした構造的課題を深刻にする事態が進んでいるにもかかわらず、区は国と都の圧力に屈し、法定外繰入の段階的縮小、廃止を進めていることは重大です。 これでは、「国保制度改革」とは名ばかりで、保険料のさらなる値上げで、被保険者の負担を増加させ、生活そのものを困難に追い詰めるものといわざるをえません。 国保制度の改革というなら、国と東京都に対し、抜本的な財政負担を求めるとともに、区としては、法定外繰入を廃止ではなく継続させ、保険料の値上げをストップし、引き下げを行うとともに、子どもの均等割りの軽減を行なうよう求めるものです。 ◆区立施設再編整備計画と区立施設使用料について 三点目は、区立施設再編整備計画と区立施設使用料をめぐる問題です。 ・児童館廃止 決算年度である2018年度までに、和泉児童館、成田西児童館、荻窪北児童館の3つの児童館が廃止されています。また、下井草児童館も年度末をもって廃止されました。 区は、児童館を廃止しても、児童館機能は継承するとして、子ども子育てプラザや放課後等居場所事業も利用が増えていることを強調していますが、放課後等居場所事業の施設の面では、学校の体育館や図書室、音楽室などは、制約があり、自由に使えません。運用面でも、事前登録が必要で、未就学児は受け入れないため、小学生と未就学児の兄弟で遊ぶことができない、おやつの持ち込みもできない、日曜日は休業など、児童館の機能継承とは到底言えないことは明らかです。 さらに、国のガイドラインや要綱に沿うものではなく、児童福祉法に基づく児童厚生施設でないことは区も認めています。国のガイドラインで、「児童館は、子どもが、その置かれている環境や状況に関わりなく、自由に来館して過ごすことができる児童福祉施設」であり、「子どもが自らの意思でひとりでも利用することができる。」「地域における子どものための拠点(館)やかたである。」と定められています。子どもたちの遊ぶ権利や文化芸術活動に参加する権利を保障するために、児童館を設置することは区の責務です。児童館の廃止方針の撤回を求めるものです。 ・阿佐ヶ谷駅北東まちづくり 阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりについて述べます。 杉並区は平成26年に策定した「緑地保全方針」で、屋敷林や農地を杉並の原風景と位置づけ、区民共有の資産としています。しかし、平成24年度から29年度の5年間で屋敷林は激減しました。こうした屋敷林の減少に歯止めをかけることが求められているなかで、保全の責任を負う区が主導し、保全地区の核ともいえる阿佐谷のけやき屋敷を事実上廃止し、樹林の多くを伐採する阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくり計画を進めることは許されません。 病院建設予定地のけやき屋敷の樹木について、区は「可能な限り守る」と答えてきました。しかし、大径木127本のうち保存するのは約40本で、7割が伐採される計画です。しかも、都がレッドリストで絶滅危惧種に指定している猛禽類ツミが確認された北東側の樹木も無くなります。都条例では、計画地内の樹木の保全や希少動物の保護を求め、保護策の提出と協議が定められていますが、区は、都と協議をしていないことも明らかとなりました。都条例にも背を向けて計画を進めることは許されません。 杉一小を移転しようとする河北総合病院敷地の医療廃棄物による汚染の可能性に不安が高まっています。子どもの安全にかかわる問題でありながら、区は調査を実施していないことは重大です。汚染の有無も明確にせず、土地交換を決めることは許されません。 公聴会や原案説明会でも、住民からは多くの反対意見や疑問を呈する声があげられています。みどり保全のための施策と相反する開発行為は許されないと指摘し、この計画の見直しを求めるものです。 なお、屋敷林の保全に関わる質疑において、区長より、我が党に対する事実に基づかない発言がありました。我が党は都市農地や屋敷林の維持、拡大に向けて固定資産税、相続税の引き下げ等の税制改革など、各種保全策を提案しています。 区長自らの思い込みに基づき、公党を貶めるような発言を行うことは行政の長としての資格が問われるものです。見識を疑わざるを得ません。 このような発言は厳に慎むことを求めるものです。 ・区立施設使用料 区立施設使用料について、党区議団は、この間、近隣自治体と比較しても高過ぎる実態を指摘し、使用料の引き下げを求め続けてきましたが、区は引き上げが適正であると強弁してきました。 質疑では、党区議団の情報公開により開示された内部資料を示しました。開示資料では、区自らが「総じて近隣自治体よりも高くなっている」との認識を示していたことが明らかになりました。区自らが、使用料が高いことを認識しつつ、議会でそれを認めない区の姿勢は、区民と議会を欺くものであり許されません。 使用料の引き上げ以降、区民の施設利用率も低下している実態も明らかとなっています。区立施設の使用料は、無料または定額とし、誰もが安心して利用できるようにすべきです。使用料見直しの際は、前回改定の水準に引き下げると共に登録団体半額助成制度の復活を求めるものです。 ・住民の声を真摯に受け止めよ この間の区政運営で顕著に示されているのは、住民合意のない計画決定と極めて乱暴な計画の強行です。 特に児童館の廃止や阿佐ヶ谷北東地区まちづくりなど、区の住民無視の姿勢は、各地で住民との深刻な軋轢を生んでいます。 このような区政運営を直ちに改めるべきです。杉並区自治基本条例は住民参画の保障を明確に示しており、区として、改めて条例に則った区政運営を求めます。 以上が本決算における主要な問題点です。 次に個別施策における問題点と改善提案について述べます。 ◆西荻窪地域の補助金不正問題 当該年度は、西荻窪地域の商店会イベントでの補助金不正問題が発生しました。この問題は、区の検証委員会での調査が進められていますが、今定例会の一般質問や区民生活委員会での質疑では、真相解明に向けた調査のあり方には疑問が残る状況であり、率直に言って調査は不十分であることを指摘するものです。 党区議団は、商店会の責任を明らかにすると共に、区の責任を曖昧にせず真相解明を進める立場から必要に応じて区への情報提供等も進めてきたところです。質疑において、党区議団の指摘も踏まえ調査、検証が進められることを確認しました。問題の解決に向けて、徹底した調査を進めることを改めて要請します。 また、質疑のなかで、区長の党区議団に対する発言は、真相解明に向けた党区議団の姿勢や区への情報提供等の協力の努力を蔑ろにするものであり、到底、認められません。厳しく抗議すると共に、今後このような発言を控えるよう求めるものです。 ◆公立保育園の民営化方針と保育の質 次に保育施策についてです。 決算年度である2018年度までに、公立保育園10園が民営化され、その後も民営化方針が加速しています。 民間事業者が運営する保育施設が増加するなか、保育の質にも格差が発生している状況です。区立保育園は区内保育施設の保育の質を確保する上での基準となっており、求められる役割は、より一層重くなっています。財政効果の観点が優先され、区立保育園の民営化が進められることは認められません。今後の民営化を中止することを強く求めるものです。 質疑では、民間保育園の補助金を増額し、1歳児からの受け入れ園への看護師の配置、事務職員の正規化、処遇改善の補助金の目的を適切に果たすためのチェックを求めました。 区は来年度以降の補助金の検討・見直しを予定していますが、民間保育園の保育の質を確保する上で各補助金が拡充されるよう求めるものです。 ◆移動支援事業の拡充について この間、障害者の移動支援事業を巡る様々な問題点を取り上げてきました。これらの問題は長年に亘り改善が計られておらず、区内の障害者や家族、各団体から毎年度、切実な要望が寄せられてきました。障害者の社会参加を進める上で、速やかな改善が求められています。 移動支援事業の見直しにあたり、当事者の声や要望を踏まえ、願いに沿った検討を求めました。区からは今年度を目処に障害者や当事者との意見交換の場を設けることが示されました。そうした意見交換の機会を確実に保障し、移動支援を巡る問題をすみやかに改善するよう強く求めるものです。 ◆教育施策について 次に教育施策についてです。 ・学校トイレの洋式化 質疑では、区立小中学校トイレの洋式化について取り上げました。 当該年度も前年度と同様の規模の3校の改修が行われましたが、23区平均を下回ったままです。洋式化率が5割以下の小中学校は64校中、23校もあり、改修スピードの向上が求められます。 しかし、区はコストなどを理由に洋式化の目標の設定を拒んでいます。そのため、都の目標の洋式化率80%に到達するのが何年後になるのかも区は明言できませんでした。こうした消極的な姿勢を改め、明確な目標を持ち、計画的にトイレの洋式化を進めるよう求めるものです。 先にも指摘した通り、区の財政力の一部を使えば、洋式化をさらに進めることができるのではないでしょうか。 ・就学援助について 就学援助について述べます。当該決算年度は、安倍政権による生活保護基準の改悪が行われましたが、それに連動させず就学援助の認定基準を維持したことは評価するところです。ただし、2013年の生活保護基準の改悪によって区の認定基準が大幅に引き下げられたままであり、早急な改善が求められます。 今年度の都区財調単価引き上げにより、区の入学準備金支給額が引き上げられました。23区の約半数が杉並区より高い支給額を設定しております。他区に後れを取らないよう、改めて支給額の増額を求めるものです。 就学援助についてのホームページでの広報に物足りなさを感じます。質疑によって改善する旨の答弁がありましたが、あらためて、わかりやすく具体的な記述を求めます。 ◆情報公開の改善を 情報公開のあり方について述べます。 決算質疑に向けて、情報公開を求めてきた資料があります。しかし、2か月以上の延長となるなど、適切な対応が行われていません。なかには、質疑終了直後に公開される、または未だに一部のみしか公開されない等のケースもあります。 そもそも情報公開条例第一条では、「区民の知る権利を保障し、もつて区民の区政への参加を推進し、地方自治の本旨に即した、公正で開かれた区政の進展を図ることを目的」とし、「情報の公開を求める区民の権利が十分に尊重される」ことを明記しており、今回の区の対応は、条例の趣旨に逆行するものです。 今日、情報公開請求は住民の権利としても定着しつつあり、様々な形での情報公開が求められており、事務量も大幅に増加しています。必要に応じて、人員体制を拡充する等の対策を実施し、迅速な情報公開を求めるものです。 ◆差別を許さない区政、区議会を 最後に、ヘイトスピーチ対策について述べます。他会派委員よりヘイトスピーチ対策の拡充を求める質疑が行われました。わが党区議団も全面的に賛同するものです。 一部の国や民族、特定の国籍の外国人等を排斥する不当な差別的言動は、決して許されるものではありません。ヘイトスピーチ対策は杉並区政と共に、杉並区議会においても、あらゆる差別を許さない姿勢を明確に示す必要があると考えます。とりわけ、区民の負託を受け選ばれた私達区議会議員は、他者を排斥する発言は決して許されません。杉並区議会として、その姿勢を堅持することをお互いに確認したいと思います。 ◆おわりに 以上、党区議団の意見を述べてまいりましたが、多くの資料を準備して頂いた職員のみなさんに厚くお礼を申し上げ、意見開陳を終わります。 |
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