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2019年杉並区議会第一回定例会予算特別委員会意見開陳(富田たく) |
日本共産党杉並区議団を代表して、平成31年度杉並区各会計予算と関連議案に対する意見を述べます。 1.くらしについて ○国保 予算のあり方で第一に問われることは、区民のくらしを守ることです。 この点で国民健康保険料を来年度も値上げすることは許されません。国民健康保険の被保険者は、低所得で支払いが困難な世帯が多く、そこに構造的問題があることは区長会もくりかえし認めてきました。 にもかかわらず、提案された国保条例は、所得割はわずかに減額したものの、介護分を含めた均等割りは1200円の値上げで、1人当たり6万7800円にするものです。これで均等割りは17年連続値上げです。 この結果、年収400万円、子ども1人の3人世帯では来年度の国保料が45万円となり、2010年度にくらべ20万円も増えることになります。 今回の値上げは、区も認めましたが、多子世帯や所得の低い世帯に重い負担を課すものです。 質疑でも明らかになったように、医療給付に応じて都に納入する来年度の納付金は、今年度にくらべ8億円も減額になっています。それでもなぜ値上げを押し付けるのか、それは、法定外繰入の縮小・廃止にむけ段階的削減を行うからです。 質疑でも、法定外繰入は法的にも何ら問題なく、また国保以外の区民から繰入に批判があがっていないことは明らかです。 値上げを抑えるための必要額は4億4千万円であり、区の来年度予算の歳入増額のわずか4・8%です。区の努力で、値上げを抑えることは十分可能です。にもかかわらず、値上げをすることは許されません。 ○消費税 区民のくらしと営業にかかわる来年度最大の問題は、安倍政権による消費税10%増税の強行です。わが党区議団は、区内商店を訪問し、300店を超える商店主にアンケート調査を行いました。その結果、増税反対ないし延期を求める声は8割にのぼります。 増税による影響の重大性は、5%増税以降区内商店数が半減し、売り上げも大幅に減少していることであり、商業統計でも浮彫になっています。 それだけに区民のくらしと営業を守る区長として、安倍政権の増税にどう対応するのかが問われています。しかし、区長は、増税を懸念する中小業者の声を聞いていると言いながら、あくまでも国の判断にゆだねると答弁しました。 それでは区民のくらし、営業は守れません。重ねて安倍政権に10月の税率引き上げ中止を迫るよう、区長に求めるものです。 ○関連商工費、商店街支援 関連して区の商工予算についても述べておきます。 先に紹介したように、多くの商店では、売上が減少し、後継者問題もあり、営業を継続できるのかという困難に直面しています。それだけに、区の役割は重要です。 わが党は23区決算比較で、予算総額に占める商工費比率が、杉並区は低いことを指摘してきました。来年度予算では商工費は2年連続で減額、その額は2年間で約6500万円です。 商工費を増額し、商店街への支援を強化するとともに、代表質問でも提案した個々の商店への支援に踏み出すべきです。積極的な検討と早期実施を求めるものです。 2.施設再編、児童館、ゆうゆう館、使用料 次に、施設再編整備計画について述べます。 区は児童館を廃止しても、小学校内での放課後等居場所事業で、児童館機能は継承し拡充すると言ってきました。 しかし、施設の面では、学校の体育館や図書室、音楽室などは、「学校と調整の上、適宜(てきぎ)活用」と答弁したように、制約があり自由に使えません。運用面でも、事前登録が必要で、未就学児は受け入れないため、兄弟で遊ぶことができず、おやつの持ち込み禁止、ビブス着用の義務付け、日曜日は休業など、児童館の機能継承とは到底言えないことが、代表質問、一般質問で浮き彫りになっています。 さらに、放課後等居場所事業は、国のガイドラインや要綱に沿うものではなく、児童福祉法に基づく児童厚生施設でないことを区は認めています。 国のガイドラインで児童館は、子どもが、その置かれている環境や状況に関わりなく、自由に来館して過ごすことのできる児童福祉施設であり、子どもが自らの意思でひとりでも利用することができる、地域における子どものための拠点、館(やかた)であると定められています。 子ども達の遊ぶ権利や文化・芸術活動に参加する権利を保障するために、児童館を設置することは区の責務です。区民の声を聞かずに、その責務を放棄する区の姿勢は許されません。 また、学童クラブの需要が増えて現在の児童館施設だけで対応できないという状況が、児童館を全館廃止する理由にはなりません。小学生の居場所を拡充するためには、児童館は廃止ではなく維持・存続させ、小学校の学校開放など居場所事業の拡充をセットで進めるべきと指摘しておきます。 ゆうゆう館、区民集会所、区民会館、区民事務所会議室などを廃止して作られる地域コミュニティ施設の設置によって、大幅な区立施設の削減が進められます。地域コミュニティ施設ではタイムシェアを行い高齢者の優先枠を確保するとしていますが、日中に利用したい現役世代が排除される可能性が強く懸念されます。 また、ゆうゆう館の特色でもあった充実した個人利用や三療サービスについては、その質を維持した継続ができるかもわからない状況です。 ゆうゆう館の廃止と他施設の統廃合による大幅な施設削減についても撤回するよう求めるものです。 〇施設使用料の引き下げ 次に施設使用料についてです。 2015年からの施設使用料の見直しと登録団体半額制度の廃止によって、施設使用料が大幅値上げとなった結果、各地域の区民センターの集会室利用数が、減少していることが、質疑で明らかとなりました。 値上げのために活動を継続できず、利用団体が解散してしまう事態が発生しているにもかかわらず、区は、高齢者の団体が高齢化で活動が継続できなくなったとの認識を示したことは問題です。 区民の活動実態から目を背ける姿勢を改め、安心して施設を利用できるよう、登録団体の半額制度の復活と、使用料の引き下げを求めるものです。 3.福祉分野 (1)保育、学童等 次に保育分野についてです。 認可保育所整備について、入所を希望する全ての児童に対応するべく、整備が進められていることは重要です。 一方、杉並区は区保育室や認証保育所等が他自治体と比較しても非常に多く、いわゆる隠れ待機児童の多い自治体となっています。今後も認可保育所の増設による待機児童解消を堅持すると共に、区の施策として進められてきた認可外保育所については、認可移行に向けて適切な支援を行うことを求めます。 認可保育所の大規模増設が進むなかで、民間の運営事業者の割合も高まり、保育の質に格差が生じています。適切な指導監督、運営上の支援や保育士確保支援などを、これまで以上に進めるべきです。 区内保育所の民間比率が高まるなかで、安定的に保育の質を確保する上で公立保育所の果たす役割はますます重くなっています。公立保育所の民営化を止め、公立として維持、存続することを強く求めておきます。 〇学童クラブ待機児 今年度の学童クラブ待機児童は255人と近年では最高となりました。 わが党区議団の試算では、申し込み児童に対する待機児割合は2015年度で2.23%でしたが、今年度は5.57%と3年間で二倍以上に急増しています。今年度の東京都平均が3.7%と報道されていることからも、杉並区の待機児割合は極めて高い値です。 区が小学校内などに別棟(べつむね)を立てるなど対応を行い、260名規模の定員増を進めたことは評価するものですが、学童クラブは通学区ごとに対策を講じなければ、待機児童解消とはなりません。 そのため、来年度の待機児童解消見込みは、今年度待機児255名を少しだけ下回る程度となっています。 待機児解消に向け、今年度行った別棟(べつむね)の増設などの対応を各通学区で行うことを求めるとともに、廃止した児童館の一部を学童クラブ専用館に転用する再編整備計画では、待機児童解消の決定打にならず、早期の待機児解消にもならないことを指摘しておきます。 (2)高齢者施策について つづいて高齢者施策についてです。 高齢者分野の予算は、当然、増額となっていますが、詳細を分析すると、高齢者のきめこまかな支援などでは、廃止や後退があり、また他区と比較すると同じ事業でも対象メニューが少ないなどの問題があることが浮彫になりました。 減額事業を上げると「ふれあい入浴」「住宅改修助成」「緊急ショートステイ」などで、配食見守り事業は廃止です。高齢者、とりわけ独居高齢者へのきめ細やかな支援の強化を求めるものです。 さらに都の補助制度を使い、高齢者の会食サービスの実施、シルバーカーや補聴器の支給などが、他区では行われております。都の補助金が利用できるわけですから、区としても検討、実施を求めます。 (3)障害者施策 次に障害者分野です。 親亡きあとの生活の場の確保は喫緊の課題です。グループホーム等の整備をさらに促進するよう求めます。 移動支援事業について、障害者団体や当事者から運用の見直しを求める声が寄せられ、わが党は繰り返し改善を求めてきました。区は事業のあり方を見直すとしていますが、具体的な課題の解決は遅々として進んでいません。 障害者の社会参加の保障と移動の権利は障害者権利条約にも示されており、基礎自治体として、その趣旨に基づいた対応を堅持すべきです。 (4)都の新規補助の活用 質疑のなかで、福祉分野の補助制度を積極的に活用すること、とりわけ、都が重視し来年度に新規の補助を設けた事業について、区としても積極的に活用することを求めました。 区は、都の補助要綱などを精査し検討する旨の答弁でしたが、ぜひ積極的な実施を求めます。 なかでも、新生児の聴覚検査体制の強化は重要です。ぜひ都補助を活用し、支援体制を図っていただきたいと思います。あわせて聴覚検査費用に対し3千円の助成を来年度から開始すると答弁されたことは重要です。ぜひ周知徹底、円滑な実施を求めます。 4.教育分野 〇体育館、トイレの洋式化、 つづいて教育分野についてです。 区立小中学校体育館へのエアコン設置について、都の補助を活用し、3年かけて全校に整備する計画を示したことは重要です。 一方、学校トイレの洋式化については、従来のペースにとどまっており、23区中20位と遅れているのが現状です。今年度と来年度に整備予定の学校を除くと、洋式化率がいまだに30%台が7校、40%台が15校と、全体の3分の1を占めています。保護者からも洋式化促進を求める声が上がっているにもかかわらず、財政負担を理由に消極的な姿勢は容認できません。 学校体育館へのエアコン設置と同様に計画性を持ち、洋式化率80%に向けて整備を促進するよう求めます。 〇就学援助 次に、就学援助についてです。 安倍政権が強行した昨年10月の生活保護基準の引き下げに、就学援助を連動させず、認定基準を引き下げなかったことは重要です。 しかし、5年前の生活保護基準引き下げでは、杉並区は国の悪政に追従して就学援助の認定基準を引き下げ、その目安額は23区のなかで下から7番目となってしまいました。この点を質疑で指摘しましたが、区は認定基準を引き上げる姿勢を見せません。 生活困窮世帯に対する支援を拡充するためにも、就学援助の認定基準は少なくとも2013年の生活保護基準引き下げ前の時点に戻すこと、今後は生活保護基準の1.2倍から基準額を引き上げ、1.5倍に近づけていくことを強く求めるものです。 5.まちづくり (1)阿佐谷駅北東地区まちづくり 続きまして、まちづくりについてです。 現在区が進めている阿佐谷駅北東地区まちづくりは、阿佐谷地域はもちろん、区全体のまちづくり、緑の保全にとって重大課題です。 この間の質疑でも強調しましたが、問題の第1は、駅前で利便性の高い杉並第一小学校跡地につくる施設が、区民要望にこたえた公共性のある施設となるのか、それとも商業施設の誘致などで周辺商店に影響を及ぼす施設になるのか、です。 区長は、商業施設誘致は決まっていない旨の答弁をくりかえしてきましたが、13日の質疑を通じて、方針決定文書でも、今年発表された計画案でも、区の基本方針は、商業施設の誘致、商業・業務の集積を図る、と明記されていたことが確認されました。 さらに、近隣商店街が合意できない大型商業施設の誘致はしないむねの明言を求めましたが、明言しませんでした。 あくまでも公共性を守り、近隣商店街から顧客を奪うようなことがあってはならないことを改めて求めておきます。 第2の問題は、駅前でありながら区の緑地保全方針における保全地区であり、みどりの顕彰(けんしょう)表彰(ひょうしょう)屋敷林に選定された樹林が、守られるのか、また貴重な植生が守られるのか、という問題です。 13日の質疑でも明らかになりましたが、区画整理事業としたことで、都条例による許可対象でなく、協議対象となりました。しかも、区民が不安に思うのは、区の文書ではあくまでも「可能なかぎり守る」というあいまいな表現となっていることです。 条例が開発者に求めていることは、既存樹林を保全する、又は域内に移植することです。「可能なかぎり」などの表現はありません。 現在調査を実施中と思いますが、その結果をただちに公表するとともに、計画書についても、都に提出する前に区民と区議会に示すよう求めておきます。 (2)道路計画 都市計画道路の整備方針、第4次事業化計画を巡り、地元住民から計画の見直しを求める声が広がっています。数十年前の計画が、地元住民との協議も尽くさずに動き出し、強行されることは重大な問題です。 地域の街並みを破壊し、住民のコミュニティを壊すことに繋がる都市計画道路整備は、きっぱりと中止するよう求めます。 合わせて外環道、外環の2についても、自然環境や住環境の破壊に繋がるものであり、この間の酸欠ガスや地下水の地上への噴出という事故発生も踏まえ、速やかに計画を中止することを求めます。 6.学校芝生維持管理をめぐる不正行為、入札問題 最後に、わが党の調査と質疑で明らかになった大手造園業者による学校芝生維持管理支援委託をめぐる不正事件について述べます。 不正行為は、仕様書・契約の不履行であり、刑法159条に抵触する可能性があり、しかも長期にわたり不正を繰り返すというきわめて重大で悪質な行為であることが、質疑を通じて浮き彫りになりました。 にもかかわらず、問題は、不正を行った事業者にたいする区の対応が、まるで事業者を擁護するかのような姿勢に終始してきたことです。 第1に、明らかに仕様書・契約の不履行だったにもかかわらず、いまだに契約を継続していること。 第2に、明らかに刑法159条・有印(ゆういん)私文書偽造の可能性がありながら、これを否定していること。 第3に重大なことは、指名停止に関する要綱では、区が対象とする用件の指名停止期間は、標準でも3月(みつき)、最大で5月(ごつき)であるにもかかわらず、過去3年の履行成績が良好だったという理由で2月(ふたつき)に軽減したことです。 過去6年間も悪質な不正を行いながら、それを不問にするかのような判断は、不正事業者擁護と批判されても仕方がない状況です。改善を強く求めます。 次に、今回の事件を通じて、事前の調整が行われたのではないかと思われる不自然、不可解な入札結果が浮彫になりました。 学校芝生の維持管理委託ではブロックで分割して発注し競争入札を行っていますが、各ブロックの1位をとる事業者が毎回同じという不自然な事態が数年にわたって続いています。 入札には15事業者が応札(おうさつ)していますが、大手の5社だけが、全ブロックを独占する結果です。しかも、他のブロック別に発注、入札した事業でも同様の結果が発見されました。 公正取引委員会の手引き書では、こうした、落札回数が均等で、落札結果に規則性があるケースは、公正取引委員会に通報する事案にあたると示しています。 しかし区は、「なんら不自然ではない」という答弁をくりかえし、公正取引委員会への問い合わせを拒否する態度でした。こうした区の姿勢は、疑惑に蓋をする態度であり、公平公正な入札を堅持しようとする態度ではありません。 改めて、関係する入札結果について全面的に調査し、かつ公正取引委員会への問い合わせを行うよう求めるものです。 以上、述べてまいりました理由により、予算関係については、 議案第16号 平成31年度杉並区一般会計予算、 17号 国民健康保険事業会計予算、 19号 介護保険事業会計予算、 20号 後期高齢者医療事業会計予算 には反対、 18号 用地会計には賛成します。 関連議案については、 議案第23号 杉並区国民健康保険条例の一部を改正する条例については反対、議案第7号、8号、9号、10号、11号、22号には賛成といたします。 最後になりましたが、多くの資料を調製していただいた職員の皆さんに厚くお礼を申し上げまして、意見の開陳を終わります。 |
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