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2017年杉並区議会第三回定例会決算特別委員会意見開陳(富田たく) |
日本共産党杉並区議団を代表して、2016年度、平成28年度杉並区一般会計ほか各特別会計の歳入歳出決算に対する意見を述べます。 当該年度、安倍自公政権の暴走政治はさらに加速し、国民の暮らしは一層厳しいものとなりました。アベノミクスによる異次元の金融緩和と株高政策によって、大企業の経常利益は過去最大を記録し、内部留保は400兆円を突破しました。10億ドル以上の資産保有者は2012年から16年で1・5倍の33人に増え、資産総額は7兆5千億から12兆6千億円へと増加、人数・金額ともに過去最高を記録しています。 その一方で働く人の賃金は冷え込んだままです。2012年に約390万円だった実質賃金は16年には約380万円と10万円も低下しています。そのうえ、毎年行われる社会保障費の自然増削減と制度改悪により、国民への福祉は後退させられています。 わが党区議団は、国政の悪政により貧困格差が大きく広がるなかで、杉並区が区民の生活実態をどのように認識し、どのように守ってきたか、また区民からの切実な要求をどのように区政に反映させたか、という観点に立ち審議に臨みました。 以下、審議の中で明確になった問題点について述べます。 【区民の生活実態と区の姿勢】 実質賃金が下がるなか、安倍自公政権のもとで追い打ちをかけるように国民の負担は大きく増加しています。とくに、高齢者世帯や非正規雇用世帯など低所得世帯の加入割合が多い国民健康保険加入世帯は深刻です。国の社会保障費の削減政策、国庫負担の削減政策で、保険料は大幅に引き上げられ、家計は限界に達しています。 40歳代夫婦二人、子ども一人で年収300万円の三人世帯では、2010年から17年までの7年間で保険料は二倍以上に引き上げられ年額35万3千円となりました。消費税や他の税金、保険料も引き上げられているので、この世帯の税と社会保険料の年間負担は7年間で1・5倍の97万8千円となり、年収の3分の1に達しようとしています。同様に年収400万円の3人世帯でも税と社会保険料の負担は7年間で1・4倍の120万円となり、年収の4分の1を超えています。 質疑では、年収が低い世帯ほど負担増が厳しく、負担割合が高いことが明らかになりました。 税や社会保険料は、子どもなど扶養家族が多い世帯ほど負担を抑えるのが本来の制度設計です。しかし、同じ年収規模の世帯を比較すると、この間の負担増により扶養家族が多い世帯ほど負担総額が高くなっていることも質疑で明らかとなりました。 この実態について杉並区の認識を確認すると、区民生活部長からは「一つのシミュレーションにしか過ぎない」との答弁が、政策経営部長からは「ことさら支出の負担を取り上げることは、きわめて一面的なものの見方」との答弁がありました。 負担増の厳しい世帯を切り捨てるかのような答弁は、極めて問題があると指摘せざるを得ません。 国の悪政によって、所得が低い世帯、扶養家族が多い世帯に負担が重くのしかかっているという現状に、真摯に目を向けることを求めます。また、区民の生活苦の実態に向き合い、区独自の保険料の減免や、他自治体でも広がっている家賃助成制度の実施など、直接的な負担軽減に努めることを強く求めるものです。 以前よりわが党区議団が要望していた入学準備金の前倒し支給については、委員会質疑で実施の方向性が明らかとなりました。この点については評価するとともに、義務教育にかかる家計支出を軽減するためにも就学援助の拡大も強く要望いたします。 国民健康保険については、来年4月からの広域化により、保険料の大幅負担増が懸念されています。東京都の試算では、区市町村独自の法定外繰入を行わない場合、保険料が2015年度に比べて平均1・28倍も増えることが明らかになりました。質疑の中で区からは、法定外繰入は禁止されているものではない旨の答弁がありましたので、これ以上の保険料の引き上げとならないよう、区独自の繰り入れを継続することをあらためて求めておきます。 これ以上の負担増、特に消費税の増税は家計圧迫による消費の低迷をさらに加速させ、景気の大幅な後退となることは明らかです。社会保障などの財源捻出は逆進性の高い消費税の増税ではなく、大企業大資産家への応分の負担によって生み出すべきです。区民生活を守る立場から、消費税の10%増税については、中止するよう国に対し声を上げるべきと指摘します。 【区民の生活実態と区の姿勢】 わが党区議団は毎年、区内の商工団体、障害者団体などさまざまな団体と懇談を行っています。今年も杉並区に対する切実な要望が寄せられました。その中には、毎年出される要望がいくつもありました。区民の切実な要求に杉並区が真摯に向き合っていないことを示しているのではないでしょうか。 障害者団体からは親亡き後の障害者の住まいの確保として、グループホームのさらなる整備の声が出されています。移動支援については、利用者の意向に沿った柔軟な対応が行われていないとのことが問題として挙げられておりました。当事者の意向をよく聞き支援の拡充に努めるべきです。 介護保険では、この間の制度改悪で介護現場に大きな影響が発生しています。介護報酬引き下げの撤回を国に求めるとともに、区独自に介護従事者の処遇改善を検討するよう求めます。 区は毎年20億、40億と財政調整基金の積み立てを行い当該年度は364憶円と過去10年で最大となりました。基金全体の残高も428億円に達しています。経常収支比率も80%前後を推移しています。杉並区のこの健全財政の力を区民の為に使えば、切実な要求を実現することは可能です。過度な財政指標の目標を盲目的に追求するのではなく、区民の声を反映した区政運営に改善することを求めます。 【保育緊急事態宣言と緊急対策、民営化の問題】 当該年度は、保育分野を巡り杉並区内に様々な問題が発生しました。 特に、田中区政の保育緊急事態宣言に基づく保育緊急対策では、利用頻度が極めて高い区立公園の転用方針等が示され、掛け替えのない居場所を奪われる子ども達や保護者、近隣住民が公園存続を求める切実な声を上げました。この間、現地の子どもたちの声や様子を紹介してきましたが、居場所を喪失した子どもたちの心には深刻な影響を与えています。 保育待機児童解消に向け全力を投じることは自治体の責務でありますが、待機児問題はこれまでの区行政の取り組みに責任があることは明らかです。 待機児問題が深刻化した2010年に田中区長は就任していますが、認可保育所整備に本腰を入れた最初の緊急対策「待機児解消緊急推進プラン」を発表したのは2013年、その間、認可保育所整備は遅れにおくれ、都内23区でも整備率の順位を下げ続けて来ました。 保育需要の増大傾向は都市部において顕著ですが、一度、待機児童をめぐる緊急対策を実施した経験がありながら、さらに2度目の緊急対策を出さざるを得ない状況になったことは、保育需要の見通しや施設整備の進捗状況を見誤ったことを端的に示しています。 杉並区行政の失政により生じた待機児童問題とその緊急対策は、緊急であるからこそ、住民生活に重大な影響を与える方針については、策定段階から住民と膝詰めで協議を進める姿勢が求められていました。 住民からは、保育所の代替用地についての提案が積極的に行なわれました。しかし、区は、住民からの提案等に一切聞く耳を持たず、柔軟な見直しも拒絶し、計画を強行しました。住民や議会に対する説明責任も果たされず、計画は強行され、各地で生じた問題は杉並区政への深刻な政治不信を生み出しています。 久我山東原公園の保育所転用では、緊急対策に賛成した会派からも代替用地の確保が求められていましたが、委員会の質疑で未だに目途も経っていない状況が明らかとなりました。住民や議会への約束を反故にする重大な問題であることを厳しく指摘します。 区民のかけがえのないサービスを天秤にかけ、子どもたちの居場所を奪うような田中区長の区政運営の在り方は、到底、認められません。 区立保育園の乱暴な民営化方針も大きな問題です。民営化対象園となった上井草・杉並両園では、民営化が突然示され、通知を受け取った保護者からは驚きと不安の声が多数寄せられました。また、民営化までの手続きが極めて稚拙だったため、保護者には大きな負担を与えることになりました。 本来、保育園の入園は、契約行為として取り扱われるものです。民営化のように当初設定されていた内容を大幅に変更することは、入園の契約内容の変更となるため、十分な移行期間と利用者の合意形成が最低限、必要ですが、それらが全く果たされておりません。手続き上、重大な瑕疵があると指摘するもので、認めることはできません。 さらに、保育士不足が深刻化する中、保育士を安定的に確保できる公立保育園の存在はますます重要です。 他の自治体では、公立保育園の増設や公立保育士の確保に舵を切る事例も生まれています。安定的に保育士を確保する上でも、区立認可保育所での保育士確保が求められます。区立保育園の民営化方針を見直し、区立保育園として維持するべきです。 区内では民間事業者が運営する認可保育所が増加しており、「保育の質」にも格差が生じています。公立保育園は「保育の質」の基準ともなっており、今後の保育分野において公立保育園の重要性は明らかです。民営化方針を撤回することを重ねて求めておきます。 【民営化、民間委託の問題】 行財政改革、財政の健全化を口実にした民間委託が進められています。当該年度、国保年金課や介護保険課の定型業務の外部委託などによって、50名以上の職員定数の削減が実績として挙げられておりました。しかし、区全体の職員数は退職不補充で12名の定員削減と、実際の数字と開きがあります。そもそも、自治体運営では民間企業のように大規模な子会社化やリストラは行えません。人件費削減のためと民間委託しても区全体の職員定数の削減は急激には行えないため、逆に委託経費と初期費用がかさみ、区が当初考えていた財政的な効果は薄くなるのが実態です。そのうえ、民間企業への委託によって、個人情報の取り扱いの問題、情報漏洩リスクの増加、区職員の専門性の喪失、委託事業者の予期せぬ業務撤退のリスクなど、問題は山積みです。定型業務の外部委託は自治体運営にはなじまないと指摘し、その方針を撤回するよう求めます。 【高円寺中問題】 当該年度、高円寺地域の小中一貫校計画をめぐっても重大な問題が発生しました。 住環境に甚大な被害を与える巨大校舎建設が近隣住民に知らされたのが、ボーリング調査を含めた工事開始の3ヶ月前でした。住環境の悪化を懸念した住民が、区に話し合いを求めましたが、区は巨大校舎建設に固執し、現在、工事が強行されている状態です。 住民は工事中止を求めて学校門前での非暴力による抗議行動を行っておりましたが、工事業者がこうした住民に対し、恫喝・嫌がらせを目的としたスラップ訴訟を起こす事態となりました。その際、工事説明会で住民を隠し撮りした写真が裁判所に提出されていることが明らかとなりました。 工事業者による盗撮やスラップ訴訟などの人権侵害を、区が容認していることは重大な問題で、認めることはできません。工事の強行をやめ、近隣住民の声に真摯に向き合うことを求めます。 【杉一小建て替え問題】 当該年度、杉並第一小学校と産業商工会館、阿佐ヶ谷区民センターの複合化計画が、近隣の河北総合病院の移転計画により大規模な見直しを余儀なくされました。 区が示した見直し方針案は、阿佐谷を代表する緑の削減、地域の商店街に打撃を与える高層商業ビルの建設、けやき公園プールの廃止など、多くの問題点があり区民からは懸念や疑問が噴出しています。 わが党区議団は、見直し内容の区民周知の不十分さや、住民の声を無視した内容であることを指摘し改善を求めましたが、区は「商店街は概ね賛成している」と事実をねじ曲げた答弁を行い、計画を強行する姿勢に固執しています。 この点からも、この方針が区民の声や要求に背をむけて進められているとしか言えず、認められません。あらためて、パブリックコメントなどで幅広い区民の声を聞き、計画を練り直すべきと指摘します。 【職員の健康問題】 区職員の長時間労働の問題も深刻です。前区長時代から続く職員定数削減によって、長時間労働が職員に負わされています。わが党区議団は、適切な人員配置で職員の長時間労働を解消するよう求めてきましたが、当該年度は過労死ラインである月80時間以上の残業を行った職員数に改善が見られませんでした。 管理職の労働実態を把握する姿勢も極めて弱いと指摘せざるを得ません。委員会では管理職みずから土日、昼夜関係なく業務を遂行することを推奨するかのような発言もありました。あらためて、管理職を含め職員の長時間労働の実態把握と解消を求める者です。 【反区民的な区政運営 自治体の憲法とも言える自治基本条例との乖離】 この間、田中区政は、区民無視の計画を次々と強行しています。 区立施設再編整備計画や保育緊急事態宣言に基づく緊急対策においても、その姿勢が著しくあらわれています。 先に改定された杉並区実行計画、行財政改革推進計画、協働推進計画、区立施設再編整備計画は今後の区政運営の基本方針となるもので、区民サービスの後退に直結する様々な問題が含まれています。これら計画改訂案に対しては、多くの区民から計画の見直しを求める声が寄せられましたが、ほとんどの意見は反映されず、計画決定されています。 杉並区自治基本条例では、区民参画の保障が謳われており「区民等が政策の立案から決定・評価に至るまでの過程に主体的に参加し、意思決定に関わる」とされています。さらに、パブリックコメントにおいても「区民の皆さんの意見を伺い、それらを政策等にいかしていきます」と明確に示されています。 住民の声を蔑ろにし、計画を強行することは、杉並区自治基本条例にも明確に反する重大な問題であり認めることはできません。区長の政治姿勢を直ちに改めるよう厳しく求めておきます。 【議会軽視問題】 区長と理事者の皆さんの議会に対する姿勢についても指摘したいと思います。 議会は自治体の最高議決機関であるとともに、二元代表制の一角として区長が進める区政運営をチェックする責務を負っています。 その責務を全うするため私たち区議会議員は議会質疑を行っているのです。委員会を含め今定例会では区長と理事者の皆さんからは、不誠実な議会答弁が大変多かったと感じました。 一般質問に答弁せずに翌日配られた委員会資料にその内容を載せる、同じ質疑でも会派や議員が違うと答弁の内容が変わる、質問に対する答弁を行わず、対案を示せと開き直る、区職員の長時間勤務を議会のせいにする、質疑と関係のない前区長の選挙公約を取り上げ、特定の議員を攻撃するなど、聞いていて首をかしげるようなものばかりです。あらためて議会に対する姿勢を見直していただくとともに、今後は誠実な答弁を求めるものです。 以上述べてきた理由により、認定第1号・平成28年度 杉並区 一般会計 歳入歳出決算、認定第2号・平成28年度 杉並区 国民健康保険事業会計 歳入歳出決算、認定第3号・平成28年度 杉並区 用地会計 歳入歳出決算、認定第4号・平成28年度 杉並区 介護保険事業会計 歳入歳出決算、認定第5号・平成28年度 杉並区 後期高齢者医療事業会計 歳入歳出決算の認定に反対します。 認定第6号・平成28年度 杉並区 中小企業勤労者 福祉事業会計 歳入歳出決算については、他の委員の質疑のなかで条例上適性を欠いている実態が指摘され、その点についての疑義も現時点において払しょくできていないため、認定に反対とします。 最後に、区職員の皆さんが多くの貴重な資料を短期間で準備していただいたことに厚くお礼を申し上げて、意見開陳を終わります。 |
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