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2016年杉並区議会第三回定例会決算特別委員会意見開陳(上保まさたけ) |
日本共産党杉並区議団を代表して、2015年度、平成27年度杉並区一般会計ほか各特別会計の歳入歳出決算に対する意見を述べます。 当該年度は、安倍政権の暴走政治がさらに加速し、日本国憲法に真っ向から背く違憲立法である安保法制が強行された年となりました。この安保法制に盛り込まれたどれもが、憲法9条を蹂躙し、自衛隊の海外での武力行使に道を開くものです。これは紛れもなく戦争できる国づくりのための戦争法に他なりません。このような重大な違憲立法の存続を許すならば、立憲主義、民主主義、法の支配というわが国の存立の土台が根底から覆されることになりかねません。同時にこの戦争法の廃止を求め、世代や党派、立場の違いを超え、幅広い国民、区民が声をあげ、立ち上がったことは、日本政治に大きな希望をもたらしました。 くらしと経済では、アベノミクスによる異次元の金融緩和や4兆円規模の法人税減税で大企業が空前の利益をあげ、内部留保が300兆円を超える額へと膨れ上がる一方で、労働者の実質賃金は5年連続で下がり続け、格差と貧困がますます拡大しました。 年金の引き下げや、介護報酬削減、生活保護の切り下げなど社会保障費は小泉政権時を超える規模で削減され、多くの国民、区民の中に将来に対する不安を広げました。 こうした状況のもと、我が党区議団は、杉並区が国の悪政に立ちはだかって区民のくらしを守る防波堤としての責務を果たしてきたのか、区民の切実な実態と向き合い、区民福祉を向上させる立場に立ち、施策を展開してきたのか、区政の主人公である区民の声を反映した区政運営になっているのかという観点で、審議に臨みました。 以下、特徴的な問題点について述べます。 区民の負担増はますます厳しさを増しています。例えば年収400万円、40代夫婦、子ども1人の世帯では税と社会保険料の負担が6年間で年額約84万円から116万円へと32万円以上も増えています。6年間でひと月分の月収が家計から消えてゆく計算です。 この負担増について区の認識を質すと、「急速に進展する少子高齢化社会を見据えると、この社会保障費の増大について財源を誰が負担していくか、この議論は避けて通れないという認識は持っている。」という答弁にとどまり、区民の生活実態に真摯に向き合い、負担軽減、生活向上に足を踏み出そうという姿勢が全くありませんでした。 当該年度は消費税8%増税分の税収増が平年化した初めての年であり、消費税率の引き上げによる増収は前年度から比べ約45億円増で、5%だった一昨年度からみて約60億円増えています。 そもそも消費税の増税は、この増税分を全て社会保障に使うと言って実施されたはずでした。 しかし、質疑を通して明らかになったのは、前年度から行われている25事業の財源をただ消費税収に置き換えただけで、実際に社会保障費が増えたわけでは無いという事実です。 その為、国からも人件費や事務費ではなく社会保障に全て使用し国民の社会保障に還元せよとの通知が有るのにもかかわらず、この25事業にかかった経費、杉並区の一般財源から出された金額は、前年度より4億円も少なかったことがわかりました。 さらに、消費税が増税された分、税収が増え財政規模も増えるはずではないかとの質問に対しては「地方消費税交付金の60億円を、一般財源部分の社会福祉関連経費にあてることが出来たので、その分特定財源の繰入金と特別区債の発行を抑えることができた」と明け透けに語り、社会保障へ充当したのは見せ掛けの操作で、区民が負担した増税分が社会保障の増進に使われていないことを結果的に区自身も認めることになりました。 社会保障の財源のためにと言われ消費税を必死で支払っている区民がこの事実を聞けばどう思うでしょうか。区長は、これまで、社会保障の充実のために「税と社会保障の一体改革は必要だ」と言い続けてきましたが、そうした言い分が成り立っていないことは明らかです。我が党は逆進性が強く低所得者に重くのしかかる消費税は、社会保障の財源にふさわしくないという立場ですが、当該年度の消費税増税分の税収の使い方について大きな問題が有ると指摘するものです。 そして、国からの指導にもあるように社会保障の増進と、介護や国民健康保険料などの社会保険料の引き下げなど区民負担の軽減に活用し、区民のくらしを守る自治体としての責務を果たすよう求めるものです。 介護保険については、保険料が上がっただけではありません。 当該年度から国の介護保険制度改悪が具体化され、杉並区でも様々な影響が発生しています。 一定以上所得者の介護サービス利用料が2割負担となり、サービスの利用を抑制する事態が発生しています。高齢者の介護度を重度化させることにも繋がりかねず、重大な問題です。 施設入所の際の補足給付についても、社会保障制度上、前例の無い資産調査が行なわれ、それにより給付対象外とされた利用者は、最悪のケースでは施設退所ということにもなりかねません。早急に施設退所の実態調査を行うことを求めておきます。 特養ホーム入所対象から要介護1.2の利用者が外されました。杉並区では、300名を超える入所待機者が対象から除外されており、影響は深刻です。明らかに数値上の待機者減らしであり、特養ホーム以外の受け皿が整備されてもいない現状で、入所対象を制限することに道理はありません。 こうした深刻な状況が広がる中、今年度からは、要介護認定において要支援1.2の利用者が介護保険給付とは別建の自治体独自サービスへの転換も始まっています。 介護保険利用者の負担軽減に向けた、様々な施策を展開するべきですが、杉並区は国の動向を注視するばかりで、区民の負担軽減に向けた対策や区独自の取り組みが極めて弱いことを厳しく指摘しておきます。 この間、特養ホーム整備が進んでいますが、区立施設再編整備計画により区立施設を削減した用地への整備方針も多く問題です。 一方、小規模特養ホーム(地域密着型特養)整備は、一箇所が計画化されましたが、取り組みが不十分です。用地が不足する都市部においては、小規模特養ホーム整備を積極的に推進すべきです。 次に喫緊の課題である保育についてです。 当該年度は、平成27年4月時点での待機児童数が、前年度の116名から42名へと減少しました。認可保育所整備が進み、待機児童ゼロに近付いたことは重要です。 一方、当該年度は実行計画では13園の認可保育所整備を位置付けながら、実際には7園の整備に留まりました。区は、民間の持ち込み型公募方式により、目標値まで整備数が伸びなかったとの認識を示しましたが、その結果を受け、認可保育所の整備から小規模保育施設の整備に方針を転換しました。 これは、明らかな政策判断ミスであり、当初の13園の整備方針を貫き、認可保育所整備に取り組み続ければ、今年度の待機児童問題の深刻化は防ぐことができたと考えます。 今年度に直結する待機児童問題の深刻化は、区の取り組みによるところが非常に大きいことを厳しく指摘するものです。 質疑でも取り上げましたが、区長就任後からこれまでの保育施策を振り返れば、就任後から必ずしも認可保育所の抜本増設に本腰を入れてこなかったことは明らかです。 委員会質疑では、過去の保育施策を巡る議事録や計画の文言を取り上げました。 区長就任後、平成23年の第2回定例会一般質問では、当時の担当部長が 「保育サービスを担う中心施設である認可保育所だけでは、社会変化に伴い増大する利用者ニーズに必ずしも十分応え切れていないのが実情」と認可保育所整備に対して後ろ向きの答弁をしています。 その2年後、1度目の待機児童解消に向けた緊急対策「待機児童対策緊急推進プラン」では、「働き方や保育ニーズが多様化している」「一定規模の土地や施設を必要とする認可保育所の整備には、計画段階から実際の開設に至るまで概ね2年〜3年間の期間と多くの財源を要するため、認可保育所のみでこれらの保育ニーズに対応することは現実的ではない」と明け透けに語っています。 過去の議事録や一度目の緊急対策でも認可保育所の増設により、待機児童を解消するという姿勢が極めて弱いことが明らかであり、この取り組みの遅れが杉並区の待機児童問題や認可保育所整備の遅れにも繋がっていることを厳しく指摘するものです。 区の政策的な判断ミス、これまでの取り組みの遅れにより、待機児童問題は深刻化しており、区が自らの責任を反省し、取り組みを総括することなく、区民や子ども達に愛された区立施設を転用し、住民に対しては「ご理解を頂きたい」「譲り合ってほしい」とする姿勢は極めて問題があります。 杉並区がこれまで積み上げた基金は460億円にも上っており、緊急事態というのであれば、真っ先に基金を活用し民有地活用に取り組むことを重ねて求めておきます。 さて、国の悪政や区の政策判断の誤りのうえに、区によるさらなる負担増の押し付けが、区立施設の使用料の見直しと区立施設再編整備計画です。 一昨年の1月から区立施設の使用料の値上げが始まりました。区民の負担が毎年増え続けている中、登録団体からは「区民センターなどでスポーツをしているが、使用料が値上げされると活動が存続できるかわからない」などの声が寄せられました。区民サービスの後退は明らかです。 この使用料の値上げは、区民生活に重大な影響を与えるにも関わらずパブリックコメントも行われずに強行されました。加えて、「誰もが文化・芸術や生涯学習・スポーツに親しむことのできる環境」を目指している基本構想や、区民が生涯にわたってスポーツ・運動に親しみ、健康で豊かな生活を送ることを目指しているスポーツ推進計画にも大きく矛盾するものです。改めて、区民サービスの向上の視点に立ち、更なる値上げを中止させ、使用料の無料化を求めるものです。 使用料の値上げと並んで、区立施設再編整備計画は当該年度から猛威を振るうようになりました。和田堀会館、科学館、和泉児童館の廃止、産業商工会館の再編などが決定されました。中でも科学館の廃止は、私も小さい頃から慣れ親しんだ区立施設だけに大変ショックです。 しかし、区立施設再編整備計画は単に区立施設が削減されるというだけの問題ではありません。基本構想における荻窪駅周辺まちづくりを中心とした多心型まちづくりに基づく、まちづくりの大転換を意味しています。これまで46の地区を基準に整備されてきた区立施設の配置によって、杉並区はどこに住んでも便利で、豊かな人間関係が形成されてきました。しかしこれを一方的にやめてしまい、駅周辺まちづくりに呼応して駅前に区立施設を集積・複合化してしまうというものです。これは区民周知がいまだに不十分であり、区立施設再編によって各地で引き起こされている問題に直面した区民は、いったいなぜこのような問題が一気に降りかかるのかと混乱に陥っています。 その最たる例の一つが、当該年度の重大な議論となったあんさんぶる荻窪の財産交換です。 特養ホーム整備のためと説明されてきた財産交換ですが、実際は、2010年12月に、田中区長が荻窪駅周辺整備に国を取り込もうと荻窪税務署を駅前に賃料無料で確保すると約束し、税務署の建てかえ休止を求める公文書を国に提出していたことが発端であったことが明らかとなりました。その文書には特養ホーム建設については、ひとことも記載がありませんでしたが、この委員会での質疑に対し、企画課長があくまでも特養ホームの建設が念頭にあったと強弁したことには、田中区政には必要最低限の誠実な姿勢もないことが見て取れました。 わが会派は、この文書が財務省に送付された2010年12月に発足した基本構想審議会の第一部会での議論を取り上げました。そこでは部会長が、荻窪駅前開発が民間事業では採算が合わないこと、公的な施設をからめれば税金が投入できると明け透けに語っていることを指摘しました。まさに荻窪税務署や都税事務所、区税の窓口を駅前に集約化することで駅前開発を促進する狙いが語られているわけで、財務省送付文書の狙いもあらためて明らかとなったと指摘するものです。 その後、税務署移転先の確保が進まず、結果としてあんさんぶる荻窪を国に差し出すことになったことは田中区政による失政以外の何物でもありません。こうした経過を議会にいっさい報告せず隠したまま財産交換を進めようとした区長の行為は、まさに議会軽視をとおりこして非民主的かつ独裁的であり、区民参画を標榜する杉並区政にあって到底認められないと指摘するものです。 住民への対応も、一貫して不誠実なものでした。 住民は、あんさんぶる荻窪の財産交換に納得がいかず、再三にわたって「なぜ財産交換するのか。説明会を開いてほしい」と求めましたが、区は一度もあんさんぶる荻窪に特化した説明会を開催しませんでした。さらに、町会を振り回し混乱させ、町会長が「精神的苦痛を受けた」と区を訴えてる事態となりました。前代未聞のことであり、重く受け止めるべきです。 こうした区の姿勢は、区民が政策の立案から実施及び評価に至るまでの過程に主体的に参加し、意思決定に関わるとした自治基本条例に反するもので認められません。 現在、区立施設再編整備計画第一次実施プランの見直しが行われています。老朽化や稼働率、人口推計、財政の見通しなどを指標にして施設の削減や統廃合が進められていますが、コミュニティに果たす役割や住民活動の保障という観点が欠けています。また、住民説明会やパブリックコメントが、形ばかりのものになっていることを指摘します。まちづくりやコミュニティの形成に重大な影響を及ぼす区立施設の今後のあり方について、住民とともに考え、合意形成をしながら進めていくという自治体本来の姿勢に立ち返ることを求めます。 こうした施設のリストラを教育にも持ち込もうとしている区の姿勢も重大です。 当該年度は、区内初となる施設一体型小中一貫校である和泉学園が開校された年となりました。 小中一貫校になることによって学校が活性化すると言われてきましたが、活性化するはずの運動会などの学校行事は今年から別々に行われています。教職員からは職員室が狭い、職員の休憩室がない、専科の教室など必要な諸室が十分に確保できていない実態のうえ、職員会議の日数だけが増えたなど、悲鳴があがっています。 質疑では、当学園が3校分の児童生徒がいるにもかかわらず、栄養士を一人体制にしている問題を取り上げました。9学年分のカロリー計算やアレルギー対応を一人でこなしながら献立をつくり、毎日のように夜遅くまで残業している異常な状態にあることを示しても、超過勤務の実態すら把握せず、それを問題だとも思わない区教委の答弁には、恐怖すら覚えます。早急な改善を求めます。 同時にこの小中一貫校の検証作業は、小中一貫教育推進委員会という名の機関で行われ、批判的な角度からの検証が何もできていないことも改めて明らかになりました。こうした問題の総括検証が図られないまま、高円寺地域に小中一貫校が作られようとしていることも異常極まりないことで容認できません。 和泉学園よりはるかに環境の悪い高円寺中へ杉四小、杉八小を統廃合する高円寺の小中一貫校計画は、南北約72m、東西約60m、高さ約30mの6階建てにものぼる校舎の巨大高層化、校庭の縮小、通学時間・距離の増大など子ども達の教育環境、近隣住民の住環境に悪影響を与えるものです。このような学校づくりを約80億もかけて強行する道理はどこにもありません。 加えて、他の委員の質疑において、当初設置するはずだった武道場を削減したことへの苦言が出されました。区は、近隣住民に配慮したとし、住民への責任転嫁を行いましたが、住民が反対しているのは、決して広くない高円寺中に施設一体型小中一貫校をつくることによって生ずる巨大校舎であり、区による住民への責任転嫁は、全く通りのないものであると指摘しておきます。施設一体型小中一貫校づくりを優先するあまり、小中学校に必要な機能を平気で削ること自体、改めて区の教育環境整備に対するいい加減さを露呈するものとなりました。 一貫校計画を中止し、小学校は小学校、中学校は中学校のまま建て替えを行えば、中学校に武道場を整備することは可能です。 この計画は、パブリックコメントでも説明会でも多くの区民が反対の声を上げてきました。しかしそうした区民の声に耳を傾けず、計画を強行してきたことにより、高円寺中の周辺の住民は計画に反対する横断幕を掲げるような重大事態にまで発展しています。 我が党区議団は、区政の主人公であり、学校づくりの要となる地域や子ども達の声に耳を傾け、一貫校計画自体を見直すことを求めます。 以上、述べてきたように田中区政の区政運営は、国の悪政に立ちはだかって区民のくらしを守る防波堤としての責務を果たすという点でも、区民の切実な実態と向き合い、区民福祉を向上させる立場に立つという点でも、区政の主人公である区民の声を反映した区政運営という点でも、改める点が多く存在しています。こうした区政運営を認めることはできません。 よって、 認定第1号、平成27年度杉並区一般会計歳入歳出決算、 認定第2号、杉並区国民健康保険事業会計歳入歳出決算、 認定第3号、杉並区介護保険事業会計歳入歳出決算、 認定第4号、杉並区後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算の認定に反対します。 認定第5号、杉並区中小企業勤労者福祉事業会計歳入歳出決算については認定といたします。 この間我が党区議団は、様々な区民や区内団体から来年度予算に対する要望を聞いてきました。先に取り上げたように、国の悪政が加速し、区民の負担が増え、くらしがますます苦しくなっていると感じています。一つ一つの要望は、細かくとても切実です。しかし、区の豊かな財政力を振り向得れば、答えられないものはありません。区民の声を聞き、願いに寄り添い、くらし福祉を向上させる立場に立つことを改めて求めます。 結びに当たりまして、多くの資料を短期間で準備していただいた職員の皆さんに厚く御礼を申し上げ、意見開陳を終わります。 |
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