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2016年杉並区議会第三回定例会一般質問(上保まさたけ) |
日本共産党杉並区議団を代表して、高円寺地域の小中一貫校計画について、就学援助について質問いたします。 1.高円寺地域の小中一貫校計画について まず、高円寺地域の小中一貫校計画についてです。 これまでも指摘してきたように、施設一体型小中一貫校では、小中学生が同じ敷地内で生活するために、小学校高学年のリーダー性が失われるなどのソフト面、子どもの発達に関する問題点共に、校庭が狭くなる、中学校の部活や小学生の校庭利用がぶつかりあう、校庭や校舎で小学校一二年生の安全性が損なわれるなどのハード面での問題点も各地で指摘されています。 発達の問題では、小学校一年生から中学3年までの9学年を一つの学校に押し込めることにより、普通の小中学校と比べ、小学校高学年の児童が高学年としてのリーダーシップを発揮できなくなり、自己肯定感が持ちづらくなることなど子どもの発達にも大きな悪影響を与えることが、文科省の研究機関の調査で指摘をされています。 昨年開校した和泉学園でも、数々の問題点が発生しています。 「小中一貫校で行事等は小中合同で行うことにより活性化する」と区は言っていましたが、結局運動会は今年から別々に行うことになりました。 職員体制に関しても、小中それぞれと小中合同で同じ内容の会議を行うため、会議の日数が増えたことや、栄養士が一人体制で9学年分のカロリー計算やアレルギー対応をしながら献立をつくり、超過勤務が常態化しているなど、教職員からも悲鳴の声が上がっています。 そして、隣接する小中学校二校分の敷地に建てた和泉学園でさえ、必要な諸室が十分に確保できず職員室が狭く、職員の休憩室がないことや、専科の教室などが充分に確保できず、小学校の校舎と中学校の校舎を行き来しなければならざるを得ないなどの問題点が発生しています。 しかし、こうした問題点を総括検証せず、和泉学園よりさらに環境の悪い高円寺地域の小中一貫校づくりが強行しようとしていることは重大問題です。和泉学園が隣接する小中学校二校分の敷地に建てられたことにくらべ、高円寺の計画では、高円寺中学一校の決して広くない敷地に、杉四小、杉八小、高円寺中学の3つの小中学校・児童・生徒を押しこめる計画です。そのため、南北72m、東西62m、高さはなんと約30mと校舎が高層大規模化し、近隣住民にも甚大な影響を与えます。校庭も700㎡縮小し、中学生が使用するにもかかわらず、一周120mのトラックしかひけません。校舎は敷地の南側に配置させるため、環七とJRの線路に囲まれます。そのため、大気汚染や騒音も多く、それに配慮しなければならないため、常に二重窓を閉め切り学校生活を送らなければなりません。校庭の日照にも大きな影響があります。 通学の問題では、多くの児童が通学時間と距離が増大するうえ、車両通行の多い環七を渡り通学することになります。 そもそもただでさえ道が狭く、震災の際に逃げるのが困難と言われている高円寺北一丁目の環七沿いに、商業地域だからと言って、約30mという高い建物に加え、それを学校として立て、さらにそこに80億円もの区民の血税をつぎ込むこと自体、異常極まりないことです。 こうした指摘は、この間の同計画や、区立施設再編整備計画改定案の説明会の場でも多くの区民から同様の疑問の声として出されました。 加えて9月5日付の毎日新聞では、この計画に対し「安易な統廃合」だと強調し、「単学級ならではのきめ細やかな教育が実践できている。子ども達にとっては今の環境のままが良い」という杉八小の保護者の声を取り上げ、計画に警鐘を鳴らしています。 区民やわが党区議団が指摘してきた事が、一般の大手マスコミにも取り上げられているのです。 同時にこの記事では、「小中一貫化の教育的効果も、文科省が強調する中一ギャップの解消も、統計などで実証されていない」という小中一貫教育の専門家である和光大学の山本由美先生の声を取り上げています。 これは、区の小中一貫教育にも言えることです。昨年開校した和泉学園の検証もまだ十分にできていませんし、その検証体制も十分とは言えません。 区は、この間、小中一貫校の検証機関をつくり検証を行っていくとしていたので、私は第2回定例会の文教委員会の際に、どのような検証機関になるのか質問をしました。しかしまず驚いたのは、その検証機関の名称で「小中一貫教育推進委員会」といいます。何が何でも小中一貫校を進めるんだという区の姿勢がにじみ出ている名称です。しかもこの機関で検証を行うメンバーは今まさに小中一貫校を頑固に進めている区の教育委員会の理事者のみで行うというものです。これでは、小中一貫校の客観的な検証や区教委自らの問題点を明らかにできるはずもなく、手前味噌な検証になることは目に見えています。 このように、小中一貫校、とりわけ高円寺地域の小中一貫校計画では、子ども達の教育環境や発達への悪影響、地域住民への甚大な影響など、様々な問題点が指摘されている。加えて和泉学園の検証もまだできていない中で、和泉学園より大きな問題を抱える高円寺地域の小中一貫校をなぜ進めることが出来るのか、区の見解を伺う。 さて、先ほども述べたように、この計画は、杉四小、杉八小、高円寺中学3校を高円寺中学の限られた敷地に押し込む施設一体型の小中一貫校計画であり、そのため校舎は南北72m、東西62m、高さは約30mと高層化し、近隣地域に重大な影響を与える計画です。 この高さは、オフィスビルだと7、8階、マンションだと10階建てに相当する高さです。 高円寺中近隣のみなさんにとっては、自分たちの住んでいる家の目の前に、突如高さ30mの校舎がまさにそびえ立つ。こんなことが、設計の段階になって初めて出てくるというまさに寝耳に水の計画でした。 この間、一貫校計画により、住環境に大きな被害を受ける近隣住民のみなさんが、被害者の会を作り、区と話し合いを続けられてきました。 私も何度かその様子を傍聴させていただきましたが、私が一番心を動かされたのは、地域のみなさんは、このような校舎で、児童生徒にとって本当に安全で快適な教育環境を整備できるか疑問を持ち、子ども達により良い環境で学んでほしいという事をしっかりと考えていることです。現在の校庭の周りに住むみなさんも、今まで校庭だったところに校舎が立つことはやむを得ないかもしれない。しかし、高さ30mの校舎が立つことは自分たちの住環境と財産に大きな被害を受けることになる。だから何とかして子ども達の教育環境を整えつつ、自分たちの住環境を守るためにはどうしたらいいのかということを、具体的な対案も示しながら、区と教育委員会を信頼して話し合いを続けてこられました。 しかしこの間、こうした信頼関係を区側より根底から覆す事件が起こりました。多くの区民や地域住民が納得していない中で、8月25日、区により、高円寺中のボーリング調査が強行されました。 先に述べた、住民との話し合いの中で、区は住民との合意がされない限り工事は行わないと約束をしていました。にもかかわらず、区は、8月中旬に、一方的に書面で同月24日にボーリング調査を行うことを宣言し、加えてその前日に資材を搬入するという暴挙を行いました。慌てて近隣住民は区に抗議をし、それによって学校整備課長は、翌日に搬入した資材の撤去を行うことと、話し合いのテーブルに着く事を住民と約束をしました。私もすぐその場に駆けつけましたので、そのことはハッキリと確認をしています。 しかし、区は翌日、この約束をも破り、ボーリング調査を強行したのです。 今回のボーリング調査は住民との約束をことごとく踏みにじるものであると同時に、区民を愚弄する態度であり許されません。我が党区議団はこのボーリング調査に満身の怒りを込めて抗議するものです。 この間の経緯を見る限り、住民との約束を反故にしたようにしか見えず、実際にそういう事態も起こっています。そのことに関して区として反省する点はないのか、見解を伺います。 そして直ちに住民に謝罪をし、話し合いを行い、住民の納得を得られるまで一切の工事を中止するべきだと考えますが、見解を伺います。 区はこの計画は地域住民との理解を得て進めていると強弁しますが、このこと一つとってもそれが事実ではない事は明らかです。 教育ビジョン2012では、地域と学校が協働し、共に支える学校づくり・教育を進めると謳われています。 杉並区小中一貫教育基本方針でも、地域とのかかわりの中で、社会とかかわる力を育成することを目標にしています。 しかし、この間の区の言動は、こうした重要視されるべき教育ビジョンや計画の方針から言っても矛盾しています。 先に述べたような学校づくりを目指している区が、自ら率先して地域と学校との信頼関係を壊しているのではないでしょうか。 そもそもこの計画は、計画を立てる段階から多くの区民の声を無視し進められてきました。計画を立てる前のパブリックコメントには7割を超える意見が反対意見でした。説明会を開けば発言する全員が反対の意見を出していました。しかし、区はそうした意見一切無視し小中一貫校づくりを強引に進めてきました。そのことに関しても地域の住民は強い憤りを感じています。 このような地域との軋轢を生むような形で学校を作ることが適切だと考えているのか、教育長の見解を伺う。 今からでも遅くはありません。小中一貫校計画を中止させ、地域住民の声をよく聞いて子ども達にとっても地域の住民にとってもより良い学校づくりへと転換させることを求めます。 さて、この項に関連して、最後に富士見丘地域の学校づくりについても何点か伺います。 先の第二回定例会では、我が党区議団の一般質問の答弁で、富士見丘中と富士見丘小による小中一貫校づくりが示唆されました。本定例会では、富士見丘小の移転先の用地に対する議案が出されていますが、その賛否は置いておいて、この移転に関して質問をします。 まず、小学校が移転した場合、上高井戸地域に小学校という地域資源が無くなることについて、区はどのように認識しているのか、見解を伺います。 富士見丘小の学区エリアは、世田谷区界の上高井戸地域の形上、通学区域が複雑で、小学校が当該用地に移った場合、一番遠い地域からは歩いて30分かかると言われていますし、放射5号線も渡らなければならなくなります。その場合、安全な通学はどう保障されるのか、区の見解を伺います。 さて、関連して、この地域では今年度から情緒障害通級指導学級の特別支援教室への移行のモデル実施が行われています。特別支援教室の環境、教職員の配置など、通常学級の担任の先生との連携など、通級指導学級と比べて適切な対応が行われているのか疑問です。現在の状況を区はどのように把握しているのか伺い、次の質問に移ります。 2.就学援助について 次に、就学援助について質問をいたします。 子どもの貧困が社会問題となっている中で、教育の自己負担経費が家計を圧迫しています。特に進学時には、必要な教材をそろえるためにとりわけお金がかかり、生活困窮世帯には大きなハードルとなっています。 こうした家計を援助するために就学援助の費目の中に入学準備金というものがあります。しかし、この制度が実態に即していない現状があります。 区の入学準備金は小学校で20700円、中学校で22900円が、要保護の世帯、または準要保護認定をうけた世帯に支給されることになっています。しかしながら、小中学校の入学に係る経費は、この基準額よりもずっと多いのです。 先の国会で文科大臣は、文科省の平成26年度子どもの学習費調査の結果をとりあげ、新入学児童生徒学用品等におけるおおむねの経費は、小学校1年生が53697円、中学校一年生が58603円となっており、「実際の支給額と乖離がある」と述べています。 加えて、入学準備金と銘打っているにも関わらず、支給月が7月となっていることも、家計の大きな負担となっています。 政府は一昨年の1月に、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を制定し、同年8月に「子どもの貧困対策に関する大綱」を制定しました。この中では、「国として就学援助の実施状況等を定期的に調査し、公表するとともに、『就学援助ポータブルサイト』を整備するなど、就学援助の適切な運用、きめ細やかな広報等の取り組みを促し、各市町村における就学援助の活用・充実を図ることとされている」と述べられています。 文科省は、この流れを受け、昨年の8月に「平成28年度要保護児童生徒援助費補助金の事務処理について」というものを地方自治体に通知しています。この中では、「市町村が、それぞれの費目を給与する場合は、次にあげる点に留意すること」として、「要保護者への支給は、年度の当初から開始し、各費目について、児童生徒が援助を必要とする時期に速やかに支給することができるよう十分配慮すること(特に「新入学児童生徒学用品」等)としています。 こうした通知を背景に、この間、都内の他の自治体では改善の取り組みも始まっています。八王子市では、2017年2月1日現在市内在住で、「16年度就学援助制度」で「準要保護」の認定を受けている、または認定基準に該当する家庭の児童に対し、小中学校の入学準備金を入学前の3月に支給することを決めました。 23区でも世田谷区と板橋区では、中学校の入学準備金の入学前支給を実施しています。 文科省が、入学準備金は引き上げるべき、そして入学前などの必要な時期に支給をするべきだと言っている。そしてすでに他自治体でも入学前支給の取り組みが行われています。 この入学準備金をめぐって、私は忘れられない事件があります。一昨年の9月、千葉県銚子市の県営住宅で、母子家庭の母親が無理心中を図って中学生の長女を殺害するという痛ましい事件が起こりました。この事件の大きな引き金となったのは、娘の中学校入学時に、入学準備に必要な経費を工面できず、ヤミ金に手を出してしまったことだと報道されています。 こうした痛ましい事件を二度と引き起こさないためにも、入学準備金の制度を実態に即し、拡充する必要があるのではないでしょうか。 現状を改善するためにも入学準備金の増額、同時に入学前に支給するように当区でも改めるべきだと考えますが、区の見解を伺います。 我が党区議団の調査では、入学準備金の存在自体を知らない家庭も少なからずおり、福祉事務所などの関係機関と連携した周知徹底の強化が必要と考えますが、区の見解を伺います。 さて、最後になりますが、義務教育を終えても多くの生徒が高校、大学等へと進学を希望しています。しかし、こうした高等教育機関への進学の大きなハードルともなっているのが世界一高いともいわれる学費です。 そのため、今や学生の二人に一人が奨学金を借りていますが、返済不要の奨学金がないため、大学卒業と同時に平均300万円の借金を抱えるというのが実態です。 高等教育をうける若者が、学んだことを活かし、社会を良くしていくのだから、その分を国が補償しようというのがヨーロッパなどでの教育費の考え方です。ところが日本ではこれから未来ある若者が、大学を卒業すると同時に多額の借金を抱えながら社会に出る――こんな国では希望ある未来を見出すことはできません。 高等教育の学費の引き下げのための教育予算の抜本的な増額と、給付制奨学金の創設など、学費負担軽減の施策の拡充を国に対し求めるべきだと考えますが、区の見解を伺い、私の一般質問を終わります。 |
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