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2016年杉並区議会第一回定例会一般質問(上保まさたけ) |
高円寺地域の学校統廃合による小中一貫校計画について 日本共産党杉並区議団を代表して、高円寺地域の学校統廃合による小中一貫校計画について質問します。 この質問で出てくる小中一貫校、そして一貫校という言葉は、すべて施設一体型小中一貫校の事であるという事を最初に申しあげておきます。 1月29日、高円寺地域の施設一体型一貫校の説明会が、冷たい雨の降る中、高円寺中学校の体育館で行われました。近隣の地域を始め多くの区民が参加されていました。そこではこの計画について、多くの区民が疑問を感じ、計画に反対しているということが改めて浮き彫りとなりました。 まず、説明会で出された声を少し紹介します。 杉四、高中の卒業生で二人の娘がいるという男性は、「話を聞いていて、誰のための中学校、小学校なのか思った。子どものための小学校中学校だと思います。みなさんのご子息、お子様、この学校に9年間入れて勉強させたいですか。この周りに住みたいですか。それを考えていただきたいと思います。私は今の杉四、高中の校舎で勉強しましたけど、どっちも子どもながらに校庭がものすごい狭いと思ってました。子どもながらに狭いと思ってたものがそれぞれ一つにされて、さらに狭くなって。娘二人を、正直この学校で勉強させたいとは今日の話を聞いて思いませんでした。それだったら、今の杉四のきれいな校舎で、勉強させたいと思います。本当に子どものことを考えて検討していただきたい」と訴えていました。 次の方は、杉四小に子どもを通わせ、自身も小学校の教師をしているという女性です。「小中一貫のメリットがどう考えても私には響いてきません。小学校は今の場所、中学校は今の場所でいいんじゃないでしょうか。私はこの中学校に子どもを入れたいです。私の主人はこの中学校を卒業しました。だけど、今考えています。ここには入れられないかもしれない。まず校庭が狭すぎます。中学生にとって校庭って本当に大事だと思います。部活が思う存分できない。そんな中学校に入れたいって親いますか。自分の子どもに思う存分やりたいことをやってもらいたい。私は実は小学校の教員です。教員の立場から考えて、私はこんな学校絶対にダメだと思います。今でもカリキュラムを組むっていうのは学校では本当に大変な状態です。そこに中学校も入ってくるとなると、本当に特別教室やら体育館やら押さえるのが大変です。 そして休み時間校庭で全員が遊べないという状況が起きてくるんじゃないでしょうか。子どもが毎日晴れているのに外で遊べない、そんな学校ってちょっと信じられないんです。私は子どもは地域の宝だと思います。そのよりどころになる学校が、よくない方向に変わろうとしていることが私はとても心配だし、許せなくてここで意見させていただきました。」と発言されました。 2人の若い方の発言には、会場から大きな共感の拍手が送られました。この他にも多くの方が発言されていましたが、説明会で発言した全員が、この一貫校計画について否定的、あるいは反対する意見であり、会場からは共感の拍手が送られました。そしてどの発言も、ご自身の実感を込めた、切実なものでした。 こういった区民の声を区はどう受け止めていますか。見解を求めます。 次に、ここからは説明会で出された声をもとに質問をいたします。 (一貫校設置場所の劣悪な環境について) まず、一貫校を設置する高円寺中学校について伺います。高円寺中は、西側は環七の騒音と道路公害、南側は中央線の騒音など、ただでさえ教育環境が悪い場所です。とりわけ環七の公害は深刻で、かつて同じ環七沿いの現在セシオン杉並のあるところにあった杉十小は、道路公害の健康被害から子ども達を守るために現在の場所に移転させました。しかし、今回の計画はまさに道路公害の少ない場所から道路公害のひどい場所にわざわざ子ども達を移す計画であり、このことからも到底区民・保護者の理解を得られるものではありません。 新校舎案はこうした悪条件を補うため、普通教室を北側と東側に設置しています。そのためほとんどの普通教室が日の当たりづらい作りとなっています。加えて校庭も北側にあり、6階の校舎の影に隠れ、日中もほとんど日が当たりません。説明会では、区民から「どうしてこんなひどい教室や校庭の配置なのか」と質問が出ましたが、「日光を浴びないといけないというわけではない」、「逆に明るすぎるのも授業に支障がでる」などの驚くべき答弁が繰り返され、会場がどよめく場面もありました。 この一貫校には、杉四、杉八、高中の生徒に加え、現在の杉三の生徒の一部も通う事になるため、3.5校分の生徒が高中の敷地に押し込められることになります。それにより、校舎は6階建てで校庭も縮小されます。説明会では、校庭が狭い事についても、先ほども紹介しましたが、「部活が思う存分できないのではないか。」「休み時間校庭で全員が遊べない。」などの不安の声が多く出されました。 加えて、この校舎案を作成する過程で、子どもの成長に関する医学的な専門家の知識が何も取り入れられていないことも明らかとなりました。 このように、この高円寺の一貫校では、この地域で学ぶ子ども達が失う教育環境、教育条件が多すぎます。 こうした劣悪な場所に小中一貫校を作る必要性、必然性は何か、見解を伺います。 説明会では、現在小学校の教師をしている方、以前教師をしていた方から、この一貫校では、授業のカリキュラムを組むのが大変だという声が出されました。先ほども述べましたが、この一貫校計画は、現在の小中学校3.5校分の小学校一年生から中学校3年生までの9学年の生徒が、高円寺中の狭い敷地におしこめられることになります。教科によっては一つしかない専科の教室もあったり、プールも一つしかありません。小学校と中学校では授業時間も違います。この間、教科によっては、一つのクラスを少人数に分けて行う少人数でのカリキュラムも多く取り入れられるようになってきていると聞いています。 こうした悪条件の中で、現場の先生方は子ども達の教育環境を少しでも良くするために相当な負担がのしかかることが予想されます。そこで伺います。 高円寺の小中一貫校計画では授業のカリキュラムを組むのは相当困難という声が出されたが、どのように対応していくのでしょうか。加えて、この計画は現場の教職員に相当な負担を押し付けるものになるのではないでしょうか。見解を伺います。 (説明会の周知について) 次に、この説明会への住民周知についても伺います。この説明会は、まちづくり条例にもとづく説明会と銘打っており、説明会の住民への周知は、高円寺中から半径100mの範囲にビラを撒いただけということでした。しかし、それでは、杉四小、杉八小のエリアには、ほとんど説明会のビラが入らず、周知がされません。この計画は地域から学校を無くすという、地域にとっては大変大きな問題です。自分達の地域の子どもが通う学校がどのようになるのか、多くのみなさんが関心を持っています。にもかかわらず、せっかく一般の地域住民が参加できる説明会の周知をこうした地域を限定するやり方で行ったことに対し、怒りの声が上がっています。 18日に行われる説明会の開催にあたっては、このような地域を限定する住民周知のやりかたではなく、統合される三校周辺の地域に説明会の開催を周知するべきだと考えますが、区の見解を伺います。 加えて、それぞれの地域の方が参加しやすいように、それぞれの学校の地域に対応した小中一貫校計画に対する意見交換会や説明会を改めて開くことを求めますが、区の見解を伺います。 (小中一貫教育の効果について) 次に、小中一貫校のメリットがどうしても響いてこないという声も出されました。実は、小中一貫校の教育的効果については、国でも検証されていません。ここで、小中一貫校が子どもに与える影響について述べさせていただきます。 全国で学校統廃合を目的とした小中一貫校づくりが進められる中、昨年6月に小中一貫校を制度化する学校教育法の改悪が強行されました。 国は制度化の理由として、中一ギャップの解消などを上げていますが、それらは裏打ちされた科学的データがないことが、法制化の国会審議の中でも明らかになりました。 「中一ギャップ」とは、小学校6年生から中学一年に上がる時に、新しい環境での学習や生活に不適応を引き起こし、いじめや不登校や暴力行為などが急増するとし、このことを「中一ギャップ」といい、小中一貫校を作る時にこの間よく使われてきました。 これに関連して、文科省国立教育政策研究所は、「中一ギャップの真実」というパンフレットを一昨年発行しました。この中では、「中一ギャップという語に明確な定義はなく、その前提となっている事実認識も客観的事実とは言い切れない」と指摘しています。 そして、いじめの「被害経験率は、小学校時代の方が中学校時代よりも高く」、中学校でいじめが急増するという印象は、あくまでも学校による「認知件数」の結果によるものであり、実態を正確に反映しているかは疑わしいと指摘しています。 そもそも中学校でいじめや不登校になる原因は、学力競争や受験競争など中学校文化が持つ競争的なプレッシャーや、学校規則などの管理統制が強まることにあり、中学校自体が持つ問題といえます。加えてこうした負の側面は、小中一貫校によって強まる恐れも指摘されています。昨年の参議院の参考人質疑では、共栄大学副学長の藤田英典参考人から「小中一貫校の法制化は、中学校文化が小学校に前倒しされることで、競争的、管理的な学校生活となり、いじめや不登校の悪化を招きかねない」と指摘されました。 そして、文科省としても中一ギャップや学力の向上などをはじめとして、一貫校と一般の小中学校とを比較した調査もないことも明らかとなりました。国による一貫校の制度化は、教育的効果とデメリットが十分に検証されていないまま、法制化に踏み切ったことになります。 こうした十分な検証がされていないことは、区の小中一貫校計画にも当てはまることです。昨年から杉並区初となる施設一体型小中一貫校である和泉学園が開校しましたが、小中一貫校と普通の小中学校との教育的効果や地域にもたらす問題など、区ははっきりとした評価、検証をしていません。その証拠に、当初区は、運動会などの学校行事は一貫校になることによって活性化すると議会でも言ってきましたが、昨年の第4回定例会の文教委員会では、「学校行事などは必ずしも小中合同でやればいいというものではない」と答えるなど、区の答弁自体もあいまいになってきています。 すべての事に対していえることですが、いざ実践してみるとうまくいかない事はたくさんあることです。そうした検証をふまえて次の計画というものは立てる物ではないんでしょうか。そうしたプロセスを経ずに、和泉学園より教育環境の劣悪な高円寺一貫校を強行することは、区民の理解を得られるものでなく、絶対に認められません。 (小中一貫校計画は、区の教育方針とも矛盾) 加えて述べたいのが、小中一貫校計画は、区の教育方針とも矛盾するということです。杉並区小中一貫校基本方針というものがあります。2014年に改訂されましたけれども、この中にある「小中一貫教育の目的」では、小中学校の9年間というのは、自分の存在を価値あるものと受け止められる感覚である自己有用感、自分の価値や存在意義を肯定する感覚や感情である自己肯定感が育まれ、社会の一員としての感覚が培われる大事な時期だと言っています。 一方、この間の国会の参考人質疑では、二人の参考人から、教育学、心理学の研究チームによる文科省研究費研究助成事業である「小中一貫教育の総合的研究」という調査結果が紹介されました。これは2013年〜14年に施設一体型小中一貫校と普通の小中学校8千人の児童を対象に行った調査で、「自信があるか」「自分には価値があるか」「居場所はあるか」などの感覚について聞いたものです。しかし、この調査結果は驚くべきものでした。こうした問いに対し、普通校よりも小中一貫校の4,5,6年生にネガティブな結果が出ているということです。国会の質疑では「普通の小学校では、最高学年として運動会などの行事等で全校的な責任を負い、自治を経験する機会があります。しかし、一貫校では、それが奪われ、高学年が自信を持つプロセスが消えているためだ」と指摘をされています。 このように区が小中学校時代に育みたい、培いたいと思っている感覚や感情が、小中一貫校では育むのが困難になっていることが検証されているのです。 これだけ多くの問題点があり、加えて昨年開校した和泉学園の評価もまだ十分に行われていないにも関わらず、来年度には工事に入ろうとしている。こんな拙速な進め方は区民の納得を到底得られるものではありません。 この計画は子どもも保護者も地域も誰も求めていませんが、いったい誰が求めた計画なのか。見解を伺います。 この一貫校計画の狙いは、学校統廃合による教育費の削減であり、それによってもたらされる教育環境の悪化は明らかです。 説明会で示された区民の声を尊重し、計画を凍結させ、それぞれの学校を残し、発展させるべきだが、区の見解を求め、質問を終わります。 |
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