「平成30年度 狭山市一般会計予算」に反対する討論
日本共産党の猪股嘉直です。党市議団を代表して、議案第36号「平成30年度 狭山市一般会計予算」案に反対する討論を行います。
30年度の国の予算は、安倍政権のもと、軍事費の異常な突出と国民の暮らしを支える社会保障を容赦なく抑え込むものとなっています。
毎年増額を続けてきた軍事費は5兆1,911億円と過去最大を更新します。敵基地攻撃可能な巡行ミサイル、北朝鮮の核・ミサイル開発を口実にした「ミサイル防衛」システム、最新鋭戦闘機F35A、垂直離着陸機オスプレイなど、専守防衛ではなく米軍と一緒に戦争するための装備を大量に買い込むものとなっています。
また、研究開発減税や設備投資減税など、主に大企業が潤う減税措置も露骨です。
一方、社会保障費については、人口の高齢化や医療技術の進歩によって増加が避けられない、いわゆる「自然増」を新年度も1,300億円以上削り込みました。特に2018年度は生活保護がターゲットにされました。光熱費などにあてる生活扶助を最大で5%段階的にカットし、ひとり親家庭を対象にした「母子」加算も減額、160億円削るとしています。
こうした中、地方自治体は、国の悪政から住民の暮らしと命を守る砦としての役割が求められます。
新年度予算案の中で評価すべき点は以下のような施策があげられます。
@生活困窮世帯への学習支援事業「アスポート事業」の対象がこれまでの中学生に加えて小学生まで拡大する予算が計上されました。様々な障害への理解を深める「あいサポート運動」も始める予定です。
A住宅リフォーム助成制度は市内の建設労働者の組合が提唱し、少しずつ予算を増やしてきましたが、これまでの550万円から新年度600万円へと50万円の増額が予定されます。
B智光山公園のアスレチック遊具改修が新年度で終了します。遊具の材質もこれまでのものより耐久性が強くなります。
C小中学校のトイレ改修も2倍のペースに速められます。
D懸案となっていた、新入学小学生の学用品支給が中学生に続いて前倒しになり、入学時に間に合うようになります。
E中学生までの医療費無料制度がありますが、学校や幼稚園等で怪我をした時など、スポーツ保険を使う場合に医療機関窓口で一旦現金での支払いが求められていました。市民と党議員団が窓口払いをなくすことの提言をしてきましたが、新年度から窓口払いをなくす仕組みに変更となります。
F教職員の過重負担が社会問題にもなってきていますが、スクールサポートスタッフ、部活動支援員の配置が予算化されます。
これらの事業については、市民の強い要求であり、私たちも議会で主張してきたものが多く、こうして予算化されたことは大変嬉しいですし、評価すべきものと考えます。
一方、問題のある施策もあります。それらを指摘したいと思います。
私たちが毎回取り上げてきた、国有提供施設等所在市町村助成交付金は相変わらずわずかな交付額となっています。固定資産税分に相当する金額では20億8046万円、近隣の路線価格で評価すれば17億1521万円になるものが、実際には6億4800万円の交付。昨年よりも700万円の減額予算です。国の防衛予算は冒頭述べたように5兆1900億円とうなぎ上りですが、自治体への助成交付金は基地を持つ自治体で構成する基地協議会の要請も聞かないという国の姿勢です。
C2の配備や全国で発生している度重なる落下物や墜落、不時着の事故など、住民の不安が大きくなっています。狭山市として事故の未然防止と同時に固定資産相当額の交付金の要請をさらに強化すべきです。
狭山市駅西口駐車場を指定管理者に管理をゆだね、駐車場利用代が指定管理者から3273万円、納付されています。しかし、この納付金が市民に還元されていません。特に、中央公民館の駅前への移転によって無料駐車場が無くなってしまった公民館利用者からは不満の声が今でもあがっています。狭山市駅西口にはこの中央公民館の他に市民交流センター、産業労働センターなど公共施設が数多くありますが無料の車、自転車駐車場が無いのは大きな問題です。少なくとも公民館利用者や学生には減免制度実施を強く求めます。
一昨年の中途から始めた情報政策官の配置が契約期間中にも関わらず空席になり、情報政策アドバイザーに縮小されました。どんなに先進的な事例もこ周囲の理解と協力がなしには進みません。この間の施策の総括が求められます。
公共建築物の再編統合事業が進められていきます。その計画策定のための委託料等も予算化されていますが、智光山荘や勤労福祉センターや智光山荘のように計画策定前から廃止、除却を決定した施設もあります。利用率や老朽化等を主な理由にして廃止するべきではないと考えます。市民の声を聴き、その施設の重要性、他施策への関連等充分な考察が必要です。
狭山市駅西口事業では、現在でも「使いにくい駅」「無料駐車場が無い公共施設」との声があがっていますが、その事業に対しての償還金が新年度も約10億円。2021年度までは9億7千万円を超える返済、それ以降も億単位の返済が発生します。財政難を理由に様々な福祉施策が縮小される中、各事業の方針決定は市民の声を充分に聴取し、市民の立場に立ち進めていくことを改めて要請します。
入曽地区交流施設(仮称)や子育て支援施設、住宅建設の事業が始まります。廃校となった入間中学校跡地、入曽乳児保育所跡地を民間に貸与し、民間主導での整備事業です。老朽化した入曽公民館を当初は入曽駅に近い入間小学校跡地に建設する予定でしたが、場所を変更し、同時に公民館ではなく、交流施設に変更して建設する計画です。公民館は国の法律「社会教育法」に位置付けられた施設で、大戦後、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を掲げた新しい憲法を学ぶことを目的に全国に造られました。公民館には「地域住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する事業を行い、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする」と社会教育法で規定されています。この規定が「地域交流施設」でも確実に継承されなければならないと考えます。また同様に、今後の10年間で狭山市の全ての公民館をなくし「交流施」設にする計画ですが、再検討を求めます。
男女共同参画推進事業で中心的な事業の一つに「ひこうせん」の発行があります。この「ひこうせん」は年に一度、狭山市民に全戸配布しているものですが、これを回覧制にするというものです。世界的にもまた日本国内でも男女共同参画社会を推進しようという時に後退ではないでしょうか。
市民会館の駐車場が民間病院建設に伴い、40台分減らされた現状があります。この間の一般質問で取り上げてきましたが、現時点で改善されていないことに加え、今回、市民会館の臨時駐車場が埼玉県の入間川河川工事に関連して使用不能になっていたことが明らかになりました。ところがこの事実が管理者である狭山市では把握されていませんでした。市は施設の管理運営を指定管理者に委ねていても最終的な責任は市が管理者として持つべきです。指定管理者制度をはじめ民間委託を行うと直接管理から手が離れる上での問題が発生する可能性があります。厳に戒めるべき教訓だと思います。
狭山市公共交通会議が、この一年間開催されました。茶の花号を中心に市内の公共交通の見直しが検討され、新年度下半期をメドに実施される計画です。公共交通会議は引き続き開催され、茶の花号以外の交通の検討も行われるようですが、大きく2点、指摘したいと思います。一つは会議メンバーの構成についてです。市民代表と言うと多くは自治会会長というパターンが多いですが、そうした方は自治会長と言う多忙な任務がある上に、他にも当て職などの関係でさらに多忙です。市民の多方面からの意見聴取を考えた場合、年代層、男女比率、労働者層、青年学生などの選抜が必要と考えます。当然、会議開催の曜日、時間の設定も考える必要があります。立候補の枠を持つことも必要です。
もう一つは、公共交通見直しには予算が伴わなければなりません。予算枠を増やさなければ、一部を削って、他に回すだけで、不満の種が移動するだけです。高齢者の足の確保、交通空白地の解消に資する新たな公共交通の早期実現を求めます。
個人番号カード交付事業に約2,780万円の予算が計上されています。この事業に相当する国庫補助金は約2,460万円で、300万円のかい離があります。カードの発行目標も11%という低率で、この事業そのものの妥当性も疑われます。個人情報の漏えい事件も取り出されており、国に廃止要請をすることを求めます。
保育所については市も努力されていますが、それにも増して要望が強く保育所待機児童はこの3月末で174人、4月からの新年度でも86人の待機が予想されています。幼稚園跡地の活用などで早急な対応をするよう、求めます。
生活保護行政では、国や近隣市の動向では保護率が増加していますが、当市は逆に減っています。埼玉県の資料によれば、県内43の福祉事務所の平均保護率は1.29(さいたま市を除く)です。最下位は白岡市が43位で0.52。次が羽生市42位の0.68。狭山市は41番目の0.69です。狭山市は他市と比べて貧困家庭が少ないのでしょうか。
同じく埼玉県の資料によれば、県の福祉部は狭山市に対して「面接相談の適切な取り扱いについて」という指導を行っています。@相談者の新政申請権を侵害しない事はもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎む事 A相談者の状況について、収入・預貯金・手持ち金がない、電気・水道などのライフラインが止められているなど、急迫状況にないか詳細に聴取し、記録すること B申請の意思が表明された相談者に対しては、速やかに保護申請書を交付するとともに、申請手続きについての助言を行う事 C申請の意思がない場合には、申請に至らなかった経緯及び理由を具体的に「面接記録票」に記録すること。そもそも補助率が低いが、必要とされている世帯が充分利用できているとは言い難い状況にあり、
こうした指導を県から受ける状態の中で、予算と決算のかい離が発生し、そのために次の年度の予算額が減少すると言う循環になっていることが考えられます。こうした生活保護行政の総括を行い、これまでの業務の見直し、改善が求められます。
狭山市ビジネスサポート事業を産業労働センター管理事業の中に位置付け、平成31年度(2019年度)から開始する予定で、その準備に関わる予算も計上されました。このビジネスサポート事業は、中小企業に特化して販路の拡大や商品開発、事業の拡大等について相談料は無料で事業者の相談相手となって活動する、全国的には現時点で10数自治体が開始あるいは計画を持っている事業とのこと。
事業が開始されれば、その経費は4000万円で、ほとんど人件費との事です。計画では数人の人材で事業を行うとのことで、これまでの狭山市の正規職員以外の年間所得では破格の人件費となります。その事業については関心を持っているところですが、それではこれまで商工会議所が担当していた中小企業への支援活動はどうだったのか。そのことをどのように総括されて、今回の方針が生まれたのか。ここをはっきりさせないままで、新たな事業を展開するのは賛成できません。まずは、これまでの事業の総括、問題点の洗い出し、その上での今後の方針の策定を求めます。
市鵜ノ木営住宅B棟も共用開始となりました。これまでの鵜ノ木、上諏訪、榎の3つの市営住宅は新築となりました。現在でも他の市営住宅が空いているところ、また、希望者が多く、空き待ち状態の住宅もあります。いずれにしても空いているところについては入居条件の緩和や7月いっせい募集にこだわらず、募集時期を増やすなど検討が必要ではないでしょうか?同時に今後の建て替え計画の作成が求められます。
学校給食の値上げが新年度行われます。今、他の自治体では給食の無料化、半額補助や2人目、3人目の児童生徒への無料化など子育て・教育支援の観点からも行ってきています。当市としても、検討すべき課題と考えます。また、保護者の負担する給食費、即ち材料費が市の一般会計に含まれない、私会計となっています。文科省は学校給食費を自治体の公的会計に入れるようにすることを決めました。当市も、その方向に舵をとるべきだと考えます。
縷々もうしあげましたが、狭山市が国の政治による数々の困難の防波堤になり、市民の暮らしと健康を守る市政への転換を求めて、「平成30年度一般会計予算」に反対する討論とします。