「戦争とPTSD」〜知られざる戦争の暗部〜 講演会開催
退職教員中心で憲法を学ぶ〖市民アクション狭山・E 〗が、4月16日に「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」(以下『市民の会』)代表である黒井秋夫氏を招き講演会を開催。日本共産党のはしもと亜矢議員が参加しました。
戦後 無気力に過ごす父親
黒井氏の父親は、20歳で徴兵され、2度の従軍の後、中国で敗戦を迎えました。戦後、定職に就くことは無く、家族とほとんど会話もないまま無気力に過ごしていたといいます。
「父の死後、2015年にベトナム戦争帰還兵に関する研究を知り、父の姿が重なった」と語る黒田氏。18年に『市民の会』の前身となる団体を立ち上げ、20年には武蔵村山市の自宅敷地内に交流館を開設しました。
米軍の資料では、「戦争に従軍した米兵の2〜5割が、治療が必要な心の傷を受ける」と発表しています。
黒井氏は「父親の無気力も、戦争による後遺症と知ることができていたら、医療に繋げ、支えられたかもしれない。奇跡的に暴力は無かったから憎みはしなかったが、尊敬も出来なかった」と述べ、戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)について、「戦争帰還兵の多くがこの世を去り、子ども世代は7〜80代を迎えている。戦争を起こした国の責任として急いで実態調査を行ってほしい」と語りました。
この問題については、23年3月に当時の日本共産党の宮本徹衆議院議員が国会で初めて取り上げ、厚労省が「国として調査する」と答弁。
その後、国は、旧軍の病院や日本傷痍軍人会などに残されたカルテや体験記を収集。今年の7月〜10月には、東京にある戦傷病者史料館〖しょうけい館〗での企画展も予定されています。
しかし、現在の調査対象は、戦傷病者に限られています。
黒井氏は「私の父のように、傷病者として記録の無い発症者も多く存在する。実態を知るためにはより広範な調査を行うべき」と強調しました。
共に平和をつくる為に
黒井氏は「戦後の復興が進み、平和で明るく豊かな世の中とされているが、その陰で苦しんでいる人が多くいる。戦場を経験した父親からの暴力で傷ついた子どもの存在を多くの人に知って欲しい。日本だけで平和はつくれない。朝鮮半島とロシアと共に平和を作らなければならない。日本の努力が必要」と語りました。
『市民の会』では、戦争加害で中国の人々は日本兵の子どもたち以上に傷ついていると考え、昨年、家族会として中国へ赴き謝罪も行っています。
参加者からは「戦争の準備をしている政府を支持している国民に対して私たちは何ができるか」との質問が出され、黒井氏は「日本は暴力的に支配されている国ではない。人の心が変わればいくらでも世の中は変えられる。今『市民の会』では〖独裁体制から民主主義へ〗という本の読書会を行い学習している。あきらめず声を上げ続けること。幅広い層に伝える運動を目指してほしい」と語りました。
黒井氏の講演を聞いた参加者からは「人を殺すための訓練は心を殺す。人を殺して褒められる状況は、人として生きられなくなると感じた」と感想が寄せられました。