元イスラエル兵 ダニー・ネフセタイ氏の講演「武力で平和はつくれない」
講演するダニー氏
8月22〜24日に開催された「狭山・平和のための戦争展」の企画として、元イスラエル兵・ダニー・ネフセタイ氏の講演が行われました。
イスラエル生まれのダニー氏は、徴兵制により3年間の兵役を務め、退役後に観光で訪れたことを機に日本に在住し40年。現在は皆野町で家具職人をしながら、講演活動を行っています。
2008年、自分が所属していたイスラエル空軍がガザを攻撃。子どもを殺した空軍のトップは軍時代の友人でした。これを機に、ダニー氏は平和への願いを込めて講演を始めました。 現在、イスラエル・ガザ地区での戦闘が激化しています。
ダニー氏は、この地域の歴史的な成り立ちを語りながら「徴兵制のあるイスラエルでは18歳で男女とも入隊する。戦闘機のパイロットはみんなの憧れで、自分もカッコ良いと思っていた。でも日本に来て考えた。戦闘機の目的は何かといえば人を殺すことと物を破壊すること。これは本当に『カッコ良い』か?街中で殺すのはカッコ良いとは思わないのに、戦闘機はカッコ良いとなる」と。
その理由としてダニー氏は軍での教育に触れ、@差別(善と悪に分け、相手は人間じゃないと差別する)A人間のランク付け(上の命令に従うのが当然とされ、理性をなくして子どもがいても爆撃する)B解決方法として武力を選ぶ(戦争などは、本来、外務大臣などが交渉すべきなのに武力で解決しようとする)「この3点をされると人は鬼になる。昔『沈黙を破る』という映画で兵士へのインタビューがあったが、どんなに簡単に人間性を失ったかが話されている」として、ゆがんだ教育の恐ろしさに警鐘を鳴らしました。
核や武力は抑止力にならない
ダニー氏は「ハマスを殺したら勝利なのか?イスラエルでは国民の3人に1人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいる。 報復を恐れてイスラエル中が普通の生活ができていない。戦争に勝利はなく、両方とも『負け』だけ。最後は味方をお墓に運ぶことになる」と話しました。
「武力は抑止力として必要では?」という声に対し、ダニー氏は「軍=武力を持っているイスラエルはずっと戦争をしている。日本は憲法9条という紙切れ1枚でずっと戦争をしていない。ロシアは核を持ってるのにウクライナを攻撃した。ハマスは核を持ってるイスラエルを襲った。核や武力は一つも抑止力にならない。武力で平和はつくれない」ときっぱりと述べました。
ダニー氏は、「今、課題とされている戦争、原発、難民、差別、沖縄、気候危機、これらの共通点は『人権が奪われる』こと」と指摘。
環境面を考えても、1gで300mしか進まない戦車や、1時間で5600gもの燃料を消費するF35戦闘機(1800台のディーゼル車に相当)。このF35戦闘機に係る経費は1時間あたり600万円にもなります。 ダニー氏は「日本の平均年収400万の1・5倍を1時間で使う戦闘機はカッコ良いか?」と問いかけました。
税の使い方の点でも、「7兆円の防衛費は1秒間にすると24万円になる。30秒で750万が飛んでいく。これが『万が一、中国が攻めてきた時の備え』として使われているのはバカげている。今、国を潰すのにミサイルは必要ない。ウイルスをばら撒けば終わるし、原発も電源を絶てばおしまい。守りきれないから言わないだけ。今の中国軍は自衛隊の11倍、予算は4倍。日本が防衛費を30兆円にしたら、中国は60兆にするなど終わりがない。武力によって国を守るのは時代遅れ」と指摘しました。
平和は本当につくれるか
会場からは「ガザの状況の映像を見ると辛い。本当に平和は作れるのか?」との質問が出されました。
ダニー氏は「悲惨な現状を見ると真っ暗に思えるが、人口で言えばロシアとウクライナ、パレスチナを入れても地球の98%は戦争をしていない。戦争に関わらなかった人の方が圧倒的に多い。止めるのは可能。絶対に止められる。80年前は確かに真っ暗だったが、今は、私のような外国人でも自由になんでも言える。5歳の子どもは素直に受け止める。『武力には武力』ではなく、『武力じゃなくて話し合いでの解決が必要』と言えば、子どもは理解する。自分で考えて判断できる子どもを育てていけば戦争は止められる。世界中で声を上げなくちゃいけない」と力強く訴え、会場から大きな拍手が寄せられました。