平和憲法を守る狭山共同センターが学習会
大久保弁護士の解説に熱心に聞き入る参加者
大久保弁護士「自民党憲法草案を読む」に 大勢の参加が
9月27日、平和憲法を守る狭山共同センターが、大久保賢一弁護士を招いての憲法学習会を開催しました。「自民党憲法草案を読む」と題しての学習会には市内全域から50名余が参加し、大久保弁護士の話に熱心に耳を傾けました
「戦争の反省」抜け落ち
今なぜ憲法改正なのか?自民党は現在の憲法について、「押し付け憲法」「他の国は何度も変えている」として、憲法改正をすすめようとしています。
しかし、大久保弁護士は「どれも根拠がない。確かに今の憲法の草案が提示されたのはGHQの時代だが、日本の憲法学者をはじめ国民的議論がなされ、帝国議会で正式な手続きを踏んで発布されたもの。憲法改正は、人間に例えれば命に関わる大手術であり、変える回数が多けりゃ良いってもんでもない。一度も手術をしてない健康体の方が、よっぽど良い事ではないか」ときっぱりと述べました。
安倍首相は今国会の所信表明演説で、いよいよ「自民党の憲法草案を元に、憲法改正の議論を」と述べました。
では自民党の憲法草案には、具体的にどのような事が書かれているのでしょうか?
大久保弁護士は、まず「前文」について、「政府の行為による戦争への反省がすっぽり抜け落ちている」と指摘。「武力ではなく、他国の公正と信義を信頼して平和を作る」という現憲法の理念が削除され、この考えに基づいて第2章の「戦争の放棄」が「安全保障」という文言になり、9条2項にある「軍は持たない・戦争はしない」という条項が「国防軍・軍法会議」に書き換えられています。
侵すことの出来ない権利」が「法の認める範囲」へ
12条・13条では、これまで「個人」であったものを「人」に変え、基本的人権については「公共の福祉に反しない限り」とされていた文言を「公益及び公の秩序に反しない限り」に変えています。
大久保弁護士は、これは、「人間が生まれながらに持っている『政治が侵す事のできない権利』を、『国が認める範囲での権利』に変えてしまうという重要な問題」と指摘。自民党草案では『緊急事態宣言が出されれば、個人の権利よりも法が優先する』という条項が新設されている事を紹介しました。
大久保弁護士は「民主主義は多数決の論理ではない。例えば学校で『〇〇ちゃんが一人で掃除当番をすればいいと思います。多数決で賛成が多いので決まりました』という事にはならないだろう。人間は皆、自分の幸福を追求する権利を持っているが、もちろん自分だけでなく、他人の幸福追求件も保障されなければならない。そのための一定の秩序は必要であり、その秩序を維持するための強制力として『国家』がある。政治の正当性(人に対しての強制力)として、王や国家の独断ではなく、民の意見を尊重するために民主主義はあるが、同時に『侵す事のできない権利としての基本的人権』がなければ、民主主義とは言えない」と指摘しました。
今、領土問題などでの緊張が高まっている事などを理由に、「積極的平和主義」などとして安保法制が整備され、自衛隊員が海外での戦闘行為に駆り出されようとしています。
武力に頼らない平和の姿を示す
大久保弁護士は、「メディアが情報を報じなくなり、安保法制を憲法違反とする内閣法制局は首をすげ替えられた。最後の抵抗として国民の運動がある。EUでは様々な問題がありながらも、加盟国間では紛争がなくなった。アジアでもできる。武力がなくても平和が守られるという、本当の意味での積極的平和主義の姿を、国民が積極的に提案していく事が、これからの運動にとって重要ではないか」と結びました。
参加者らは「大変分かりやすかった」「基本的人権と言いながら、実際には緊急事態だと言えば何でもできるなど、自民党草案の怖さが分かった」と感想を述べました。