労働総研ニュースNo.357 2019年12月



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自然災害の多発と自治体の防災・被災対策の現状及び課題 長坂圭造 
常任理事会報告他




自然災害の多発と自治体の防災・被災対策の現状及び課題

長坂 圭造

はじめに

 今年も、豪雨や台風が全国各地に大きな被害をもたらしました。改めて、亡くなられた方にお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆さんにお見舞いを申し上げたいと思います。
 このうち、台風15号では、千葉県を中心に大規模停電が発生し、住民の生活、農畜産業等に重大な影響を及ぼしました。
 千葉県については、「災害本部として指揮すべき森田知事が、台風当日に不在であった」とか、「台風の翌日に県庁を離れ自宅に戻っていた」といったことが発覚し、災害対策本部の立ち上がりが遅く、停電のための発電機を半分以上、倉庫に入れっぱなしであったなど、問題点が指摘されています。

山と海に囲まれ、災害に巻き込まれやすい日本

 (1) 放置される人工林
 日本の森林率は66%で平地が少なく、国土の3分の2が森林となっています。山と海に囲まれ僅かな平地に住宅が密集しています。山の多い日本は、台風や大雨などで土砂崩れが発生しやすく、河川も氾濫しやすいという状況があります。
 日本の森林の4割は人工林、5割が天然林、その他1割となっています。人工林は、植林から伐採まで、下刈り、間伐、枝打ち等、人が手入れし、管理しながら育てることが必要です。人工林のほとんどが、スギ、ヒノキなど、多くは、第二次世界大戦後に、戦後の荒廃した国土の再生のため、国土の保全や水源涵養を図ること、そして建築材として経済的価値が見込めるとして植えられ、植栽後30年から50年を経過し、伐採をすべき時期を迎えています。
 木材価格が下落し、1980年をピークに林業産出額は減少の一途をたどり、林業を生業とすることが困難となっています。林業離れによる後継者不足や就業者の高齢化、森林所有者も不明といった状況が広がり、資源(木材)として利用できる森林は年々増えているにもかかわらず、多くの人工林が放置されています。管理のおろそかになった森林は、大雨が発生した場合に、土砂崩れが発生しやすくなっています。

 (2) 決壊しやすい日本の川
 日本の川は、「長さが短く、流れが速い」という特徴があります。日本列島は、標高1000〜3000mにもなる山脈が背骨のように走っていて、太平洋側と日本海側に分かれて流れているため、ヨーロッパやアメリカの川と比べて全体の長さがとても短く、早く流れる川となっています。台風19号で決壊した日本で一番長い川である信濃川(長野県では千曲川)は、長野県川上村の標高2200m地点から川となって、367kmの流れを経て日本海にそそいでいます。フランスのロワール川は、水源地は標高約1400mで、1006kmもの長さがあります。
 雨が降ると水が川に集まり、川は一気に水かさを増し、大雨の時には、通常の50〜100倍にも増えると言われています。海外の川は、川の全長が長く、こう配が緩やかなため、上流に降った雨はゆっくりと流れてきますが、日本の川はこう配が急で、上流に降った雨が一気に海まで流れてくる「決壊しやすい」という特徴があります。

 (3) 川より低いところにも住宅地がある
 国土交通省によると、「川があふれた場合に、川の水面より低くなる『洪水氾濫域』の面積は、日本の国土の10%を占めており、そこに日本の全人口の51%が住んでいる」といいます。川に沿って高い堤防が作られていますが、台風19号では、大雨により堤防がいくつも決壊し、甚大な被害を及ぼしました。現状では、多くの方が川より低いところに住まわざるを得ないため、洪水の被害に遭いやすいという実態があります。

 (4) ダムを切り札とした治水事業
 日本の川事情を踏まえて、さまざまな治水事業が進められてきました。
 1つは河川改修で、(1)「河道掘削」(河川を掘削して水の流れる断面を大きくし水位を下げる)(2)「築堤」(堤防を造り、水の流れる断面を増やす)(3)「嵩上げ」(堤防を嵩上げし、河川の水の流れる断面を大きくする)(4)「引堤」(川幅を広げることにより河川の水の流れる断面を大きくし、水位を下げる)(5)「遊水地」(大雨で水があふれそうになった時、河川に遊水地を設け、一時的に流水をため、河川の水位を下げる)などがあります。
 2つ目はダム建設です。日本のダム保有数は、中国、アメリカに次いで世界第3位となっています。日本では、治水の切り札としてダムが推進されてきましたが、昨年の西日本豪雨で5人の犠牲者が出た愛媛県西予市では、ダムからの放流によって河川が急激に氾濫したことが被害の拡大につながった可能性が指摘されています。ダムは水を貯めるものですが、限界もあります。決壊することだけはあってはならないからです。過去最大の雨量を記録するような雨が降る中、ダムを放流するような事態が今後も発生しかねません。治水をダムだけに頼るのは危険としか言いようがありません。

自治体の防災体制・計画はどうか

 (1) 防災危機管理体制は
 自然災害に対して、防災、減災、避難、復旧・復興など、自治体が果たす役割は、ますます重要になっています。日本の災害対策制度の仕組みは、1959年に約5,100人の犠牲者を出し、戦後最大の自然災害となった伊勢湾台風災害を契機に体系化されたと言われています。
 1995年の阪神大震災以降、自治体では、それまで災害対応として、河川は土木部門、道路の通行規制は建設部門、避難所は福祉部門、救助は消防、など個々で対応していたものを、「大規模災害や危機管理事象が発生した場合に,部局の垣根を越えて情報を共有し,統率がとれる体制を構築する」という目的で「防災危機管理課」といった防災に対する専門の部署ができ、2001年の中央官庁再編により防災行政の強化が図られています。
 自治体の防災危機管理の意識・姿勢によりますが、毎年、豪雨や地震などが起きるたびに、自治体の防災意識も高まり、防災担当部署の人員は増えてはいます。しかし、それ以上に仕事が増え、恒常的な時間外勤務が発生する職場の代表となっています。

 (2) 「いざという時、何をするか」「どういう体制で臨むか」といった準備は、どうなっているか
 T市の例を紹介します。T市では、防災関係として、「地域防災計画」「水防計画」「地震対策業務継続計画」「津波避難行動指針」「受援計画」など、災害の際に「誰が、いつまでに、どう行動するか」といったことを細かく決めています。市の職員であれば、警報の段階を踏んで最終的には全員が出動する計画となっています。さらに「行動マニュアル」によって、その計画を実践する行動内容が細かく記載されており、防災職場を中心に担当部署ごとの打ち合わせも行われています。
 多くの自治体職場では、民生、福祉、産業など、平時には、それぞれの日常業務に追われており、非常時での対応意識について、防災部署との温度差があるのは否めません。適切な打ち合わせが行われていなかったり、念頭にない職員がいてもおかしくはありません。

 (3) 住民への防災意識の啓発はどうなっているか
 このT市は以前から、自治会を巻き込んで防災危機管理意識の啓発に力を入れてきていると思われます。T市では、地域の実情や災害について、家族や地域、学校、企業で話し合い、備えるための参考資料として「防災ガイドブック」を作成し、活用を訴えています。2015年4月には、全家庭に配布しています。他にも、「自主防災組織活動マニュアル」や児童・生徒向けには、大地震に備えて、小学校低学年用・高学年用・中学校用のパンフレットを作成し、災害に強いまちづくりを進めています。自治体は、自治会などでの避難訓練の実施も推進しています。

 (4) 自治体だけでの対応はむずかしい。住民と力をあわせて
 T市の場合、大雨で避難所を開設する場合には、160を超える避難所に、2〜4人の避難所要員、約400人を配置することにしています。担当者は「もしも、東日本大震災などの大きな地震が来て、全域で長期間、避難所を開設する場合には、避難所は、避難されてきた人と地域の方で『避難所運営委員会』など、自主運営していただく必要がある。自治体だけでの対応は無理がある」と対応について話をされています。各地域では、避難所の自主運営について、理解されている地域もあれば、そうでない地域もあり、同じ自治体内でも意識に差が生じています。

 (5) ハザードマップの現状
 どの自治体でも洪水、土砂災害ハザードマップなどが作られ、地図には、洪水になった場合には、「何メートルまで浸水する可能性がある」ということが記されています。どの地域に、どのような危険が潜んでいるのか、担当部局が把握している状況は精度が高くなっていると感じられます。
 昨年、西日本豪雨で川が決壊し、倉敷・真備町では、大きな被害が出ましたが、浸水した地域とハザードマップで注意を促していた地域は、ほぼ一致・重なりあっていました。住宅建設の際に、「大雨で浸水する危険がある」ということを、どれだけの方が知っていたか、また、防ぐための対策ができていたかが問題です。真備地区のハザードマップで紹介されている「指定避難所・緊急避難所」については、33カ所の避難所のうち、「洪水時には避難してはいけない」という避難所が13カ所もありました。「洪水時に避難可能」という避難所は14カ所にとどまっていました。

(6) 「土砂災害のおそれがある場所」は、まだハザードマップにない場合も
 洪水、土砂災害ハザードマップには、「土砂災害のおそれのある場所」についても掲載されています。「がけ崩れが起きやすい」「土砂流が起きやすい」「地滑りが起きやすい」といった地域について、国土交通省では「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」と指定し、林野庁は「山地災害危険地区」と定めています。林野庁の「山地災害危険地区」は、1978年(昭和53年)から設定されていますが、国土交通省の「警戒区域」は、指定が始まって、まだ20年も経っていません。1999年6月の広島市と呉市で32人もの命が犠牲になった土砂崩れをきっかけに、「土砂災害防止法」が制定され、2001年4月に施行されました。全国の都道府県が、土砂災害の危険性のある地域を「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)と「土砂災害特別警戒区域」(レッドゾーン)に指定しています。特別警戒区域では、宅地分譲や病院、福祉施設などの建築のための開発行為は許可制となり、危険が喫緊に迫った場合、行政による移転勧告や支援も行うことになっています。2018年時点で、「警戒区域」の指定は都道府県平均で88%となっています。
 台風21号や10月25日の大雨で4人が死亡した千葉県内の3カ所の土砂崩れ現場はいずれも、土砂災害警戒区域に指定されていませんでした。そのうち、2カ所は県が指定の準備を進めていましたが、千葉市緑区誉田(ほんだ)町の1カ所は指定の予定はありませんでした。土砂災害の危険箇所のうち、千葉県が警戒区域に指定した割合は36%で最下位でした。

 (7) ため池ハザードマップも作成
 昨年(2018年)7月の西日本豪雨において、多くのため池が決壊したことから、「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が制定され、2019年7月1日に施行されました。農業用ため池は、全国で約17万カ所あると言われ、降水量が少なく、大きな河川に恵まれていない西日本が多く、瀬戸内地域で全国の5割が分布している、と言われています。昨年、8月31日までに全国のため池を一斉点検したところ、全国1,540カ所について、応急措置が必要と判断されていました。所有者等による適正管理の努力義務を謳っていますが、例えば、T市の場合、市内に約180カ所のため池があるうち4割は個人の所有となっており、管理はなかなか難しいと言えます。

災害時の対応は、どうだったのか

 (1) 千葉県の台風15号での自治体の対応
 9月9日に台風15号が千葉県に上陸し、甚大な被害を及ぼしました。9月9日当日千葉県は、森田知事不在の中、第1非常配備のままで、災害本部を立ち上げたのは9月10日と遅く、しかも、森田知事は陣頭指揮をするのではなく、自宅を見に行ったことが判明しています。
 情報の伝達手段が寸断され、県下がどういう状態になっているのか情報が入らず、すぐには状況が把握できませんでした。職員への伝達指令の方法は、時間外勤務の場合、電話もしくはメールとなっており、課題であることが判明しました。
 千葉では、この台風15号まで、台風による大きな被害がなく、よもやこんなに大災害になると思っていなかったという声も聞かれました。また、千葉県の場合、市長部局の職員が15年間で約2,000人削減されたと言われ、支所の統廃合も進められていたことも、情報収集の遅れにつながったと考えられます。

 (2) 自治体職員は、昼夜分かたず対応
 自治体職員は、自らも被災しながら、復旧・復興に奮闘しています。また、災害対応として、政令市会や中核市会などで被災地支援が積極的に行われ、総務省も2018年度から対口支援の制度化を図り、職員を派遣しています。それでも、人は足りていません。自治体では、行き過ぎた定数管理で、被災時に対応できないような状況が広がっています。
 「2週間休みなし」とか「3日間、家に帰ってこない」といった異常な働き方が生じ、組合にも職員の家族から相談が寄せられています。過労死基準を超える長時間労働が発生しています。どの自治体も「土木職員が足りない」と指摘し、現場の職員不足で災害ゴミ対応、家屋調査や罹災証明の発行の遅れなどが発生しています。復旧・復興のためのボランティアセンターは、各社会福祉協議会を中心に設置されますが、社会福祉協議会の規模から、「スタッフが足りない」という事態も発生しました。
 マスコミも「自治体の3割で土木職員がいない」「役所の職員が来るのが遅いのはなぜ」と報道するなど、行き過ぎた人減らしの問題点が明らかになっています。

 (3) 平成の大合併により対応に遅れた自治体も
 ある自治体は、市町村合併により、従来町役場のあった地域が支所や地域センターなどに置き換えられ、職員が減っていたこと、何より、異動によりその地域のことをわかる職員が減ったため、対応が遅れる要因だったと指摘されています。

 (4) 被災自治体を訪問し、首長と懇談
 千葉県内の被災自治体の首長らとの懇談では、職員が足りていないことが共通して出され、職員の応援体制についても「短期的には応えてもらえるが、中長期の派遣要請にはなかなか応えてもらえない」、中には「職員は200%の力を発揮し無理しすぎで心配」だと職員を気遣う声も聞かれました。
 また、ある首長は、「停電地域では全然情報が入ってこなかった。地域の被害状況を把握しようと急きょ、「全戸訪問しよう」との呼びかけに職員90人が参加し、2,500世帯を回って聞き取りを行った。住民から何を言われるかと思ったが、感謝の声をかけられ、みな励みになった。情報網がないため、臨時の広報を1週間で5号発行して届けた。現場に足を運び、役所から外に出て情報をつかみ、足を運んで住民に知らせる取り組みが大切だと実感した」と話してくださいました。

災害対策の問題点

 (1) 「国の責務」が中心に据えられていない
 国の「災害対策基本法」では、災害発生時に、国、都道府県、市区町村、住民等が果たすべき責務を記し、各機関や住民が自発的に防災に取り組むことが期待され、「国の責務」が中心に据えられていません。

 (2) 安全を軽視した経済優先の開発推進、予防対策の遅れ
 日本では安全を軽視した経済優先で開発を進めてきたため、災害が起こりやすくなっています。(1)危険な急傾斜地の宅地開発、(2)河川より低い地域の宅地化、(3)森林荒廃や耕作放棄地の拡大などによって災害が起こりやすくなっています。「大雨や大地震により、被害が起こるべくして起きる」というケースも見られます。危険な地域の宅地化をやめることや住宅を移転させること、宅地化された地域への予防策の強化、森林や田畑の管理の徹底などの施策が必要です。森林管理では、針葉樹林と広葉樹林の混交整備などを行っている自治体もあります。森林管理も耕作放棄地対策も国の責務として行うべきです。

 (3) 人権確保と程遠い避難所体制。健康で文化的な最低限度とかけ離れている応急救助
 ヨーロッパなどと比べ、あまりにも遅れた避難所施設の充実は早急に改善すべきです。体育館などが避難所で、「プライバシーがない」「トイレは汚い。行かずに済むよう、飲まない食べない」「エアコンがなし」といった環境で、「災害関連死につながっている」「日本の避難所は『難民キャンプ以下』だ」という指摘もあります。国際的には、国際赤十字が提唱する避難所の最低基準は、「1人あたり3.5平方メートル」「快適温度・換気」「トイレは20人に1つ以上で男女別」等となっています。自治体によっては、「段ボールベッドの導入」や「間仕切り」「家族ごとの簡易テント」が導入され、トイレも「マンホールトイレ」などの工夫が広がっています。
 地震大国イタリアの事例を紹介します。災害が起きた場合には、トイレ、キッチンカーによる食事、そしてベッドの3つが、すばやく避難所に運ばれるそうです。テントは法律で48時間以内、マットレスのベッドは1週間以内の到着を目指しているそうです。避難所でも快適な生活ができるよう、体制が整えられているそうです。
 国の応急救助は一時的との理屈からか、救助の「一般基準」は、憲法25条に基づく国民生活の最低限度の保障である生活保護基準より低く設定されています。例えば、食品の給与は、1日1,160円以内。避難所は、原則として学校、公民館、福祉センター等としています。「食品の給与」では、「炊き出しその他の食品の給与」としていながら、炊き出しは、ボランティアによるもので、自治体が炊き出しを行っている事例の報告はありません。「避難の長期化が見込まれる場合は、旅館やホテルを借り上げて、避難所とすることも可能」となっており、要配慮者など、東日本大震災や熊本地震で多数の旅館やホテルが活用されていますが、限定的となっています。限定的とせず、多くの避難者が旅館やホテルを利用できるようにすることも重要ではないでしょうか。

 (4) 被災者個人に対する生活再建、中小企業に対する生業再建支援の遅れと不充足
 昨年、大阪を襲った台風により、未だにビニールシートで屋根を覆っている家が残されています。業者が足りず、手が回らないという状況となっています。
 今年、千葉で被災された方が生活再建でぶつかっている問題として、引き続きその地域に住みたいが、(1)家を建て替えるお金はあっても、業者がいない、(2)高齢で、借金までして家を建て替えるべきか悩んでいる、(3)お金がないので家を建てられない、といったことがあげられています。
 1995年の阪神・淡路大震災を契機に、被災者生活再建を求める運動が高まり、「被災者生活再建支援法」が1998年に成立し、自然災害により家が全壊、大規模半壊などに対して、支援金が支給できるようになりました。しかし、その額は、最高300万円となっており、さらに引き上げが求められています。半壊や一部損壊であっても、建て替えが必要など、支援金の支給対象に半壊・一部損壊を加えるべきです。
 東日本大震災を機に「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」が創設され、多くの中小企業が利用し、復旧に一定の役割を果たしてきました。熊本地震では2事業体でも認定されるなど制度の改善が図られています。この制度について、台風・豪雨など災害救助法に認定される災害に適用し、個々の中小業者の営業再建に道を開く直接支援や被災事業所に対する社会保険料の負担軽減などの検討を図る必要があります。

 (5) 待ったなしの人材確保
 地方自治体の職員は減少し続けています。「行き過ぎた定数管理で災害時に対応できない」「土木職がどの自治体でも不足している」「現業職など災害時や復興時に必要な職員」が不足しています。人材確保は待ったなしです。

重大な環境問題

 世界気象機関によると、世界の平均気温は産業革命前より1.1度上昇。気象研究所などは、昨年7月の日本の記録的な猛暑は、温室効果ガス排出増に伴う地球温暖化の影響がなければ起こりえなかったと分析しています。温暖化との関連が指摘される異常気象、災害が世界各地で発生しています。気象庁は、昨年の西日本豪雨について、個別の豪雨災害では初めて、温暖化が一因との見解を示しました。気象研究所は、平均気温が産業革命前より4度高くなった場合、最大風速59m以上の猛烈な台風が日本の南海上を通る頻度は増加すると指摘しています。
 地球温暖化による気候変動、台風や豪雨の大規模化などは、人類の危機につながっていくのではないかと危惧されます。災害に強い町づくりのために、予防・防災に力を入れ、体制の充実を図ることはもちろん大事ですが、再生エネルギーへの転換を進めるなど、温暖化ガスの排出を減らし、地球温暖化防止対策を政府が真剣に取り組む必要があります。
(ながさか けいぞう・自治労連本部副委員長)

2018〜19年度第5回常任理事会報告

労働総研2018〜19年度第5回常任理事会は、全労連会館で、2019年10月26日午後1時30分〜3時、熊谷金道代表理事の司会で行われた。
1.報告事項
 前回常任理事会以降の研究活動や企画委員会・事務局活動などが斎藤力事務局次長より報告され、承認された。
2.協議事項
(1)新入会の申請が藤田実事務局長より報告され、承認された。
(2)研究所プロジェクト(若者調査)の現状と今後の予定について、プロジェクト研究の課題について、アンケート調査の集計について、聞き取り調査の実施について、そして今後の主な予定など、事務局次長より報告され、討論の上、承認された。
(3)研究部会や研究会の状況と今後の予定について、次回常任理事会・研究部会代表者会議(2020年1月)にて、各研究部会・研究会からの報告や意見交換をおこなうこととした。

研究部会報告

・女性労働研究部会(9月20日・10月24日)
 9月は、全労連の「介護労働実態調査」について、栗原香さん(全労連・介護ヘルパーネット事務局担当)に報告していただいた。介護労働者は女性が圧倒的多数で低賃金であり、人手不足と労働強化の悪循環に陥っている深刻な実態が明らかにされた。とりわけ訪問介護の実態はひどく、正規が2割にすぎず、50歳以上が4分の3を占めている。家族介護の経験や介護労働はきわめて大事な仕事であること、介護保険制度の改悪を許さず、賃金をはじめ労働条件の改善、人手不足の解消等が急務であることが論議された。
 10月は、「統計から見た若年女性労働者の実態」について岩崎明日香さんが報告した。2018年の20〜44歳の未婚女性の就業状況は正規50%、非正規29%、通学・家事等15%、自営2%、失業3%だが、有配偶女性では正規30%、非正規36%、通学・家事等29%。雇用形態別にみた年収は未婚が多数の20代女性では200〜400万円の正規労働者が大きな山をつくるが、有配偶が増える30代になると50〜99万円の非正規労働者が急増し、最多である。有配偶女性が正規で働けない実態が明らかで、労働時間短縮等とともに、性別役割分担を克服し、男女ともに仕事と生活を両立できる働き方が求められている。

・労働時間・健康問題研究部会(9月27日)
 まず岩橋祐治氏(全労連副議長、いの健全国センター事務局長)から、ILO「仕事の世界における暴力とハラスメントの除去」に関する条約・勧告と日本での課題として、ハラスメントの最近の状況、ハラスメント防止対策強化の内容、ILO条約のポイントと内容を資料も使い報告された。次に佐々木昭三氏(労働総研常任理事、社会医学研究センター理事)から、第5回過労死防止学会「働き方改革」関連法と長時間労働規制の課題として、学会の概要と研究会との関りある報告要旨の内容とポイントを報告された。討論は、ILO条約の批准と内容を活かす運動ととりくみ、日本におけるハラスメント規制と対策、EUのハラスメント規制の動向、職場の労働組合・労働安全衛生活動とハラスメント規制、青年労働者の過労死・過労自死の要因、長時間労働産業・業種の分析の検討、過労死防止白書・調査活動の動向など。

10・11月の研究活動

10月7日 賃金・最賃問題研究部会
  16日 労働組合研究部会
  21日 労働運動史研究部会
  24日 女性労働研究部会
11月7日 労働組合研究部会
  10日 雇用問題研究会
  11日 賃金・最賃問題研究部会
  29日 労働時間・健康問題研究部会

10・11月の事務局日誌

10月3日 労働法制中連事務局団体会議
  11日 企画委員会
  21日 自交総連大会へメッセージ
  26日 第5回常任理事会
  31日 労働法制中連総会
11月21〜22日 国民春闘討論集会
  22日 全労連30周年記念集会・レセプション
  30日 建設政策研究所30周年記念講演・レセプション