労働総研ニュースNo.352 2019年7月



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コンビニの現状と働き方 その抜本的改革の展望 植田 忠義 
研究部会報告他




コンビニの現状と働き方  その抜本的改革の展望

植田 忠義

 本稿は、労働総研中小企業問題研究部会の公開研究会(今年5月8日)でおこなった報告を中心に、その後の情勢の発展も踏まえ、一部加筆したものです。

1.コンビニだけがフランチャイズではない

 冒頭から、与えられたテーマに「思いっきり」逆らっているようで申し訳ありません。ただ、私たちはコンビニだけでなく、あらゆる業種のフランチャイズ加盟店を対象にして、それを含めた日本のフランチャイズ事業全体の健全化を追求しているという立場を、やはり申し上げておく必要があると考えたからです。
 実際、わが国のフランチャイズ加盟店は26万6,000店舗以上であり、コンビニはそのうちの5万6,000店舗と言われています。店舗数ではコンビニは少数派です。
 また、コンビニ以外の学習塾とか居酒屋、持ち帰り弁当、住宅リフォームなど、飲食、サービス業分野のフランチャイズ本部と加盟店の間のトラブルは増大傾向で、被害実態も深刻です。にもかかわらず、コンビニがなぜこんなに注目され、関心を呼ぶのでしょうか。
 一つは、コンビニは全国展開しており、全コンビニで計算すると毎日約4,000万人が利用していることになり、身近な存在です。言われているように、単に商品の販売だけでなく、公共料金や税金の収納代行、銀行ATM、コピーなどの各種サービスなど、まさに生活総合サービス産業、国民生活のインフラとなっているからでしょう。
 ちなみに、業界最大手のセブンイレブンの場合、そこからのロイヤルティ(上納金)が本部の主たる収入になります。その率は、土地建物が加盟店所有の場合でも売上総利益の43%にものぼります。現在は労働者からの参入が圧倒的多数で、本部が土地・店舗を地主から借りてオーナーに転貸する方式です。この場合はロイヤルティ(上納金)の率は56%から76%にもなるのです。

2.コンビニ本部の労働者への接近

 私事ではありますが、日本のフランチャイズを知ってから46年になります。一貫して、フランチャイズの健全化の実現には労働運動が関わることなくして実現しないと考え、主張してきました。その意味で今回、こうした機会が設けられたことを非常に嬉しく思います。
 大きな課題として、コンビニ本部に働く労働者への接近を提起したいと思います。大手3社で約25,000人の労働者が非常に厳しい労働環境におかれています。パワハラは日常化しているなど無権利状態におかれていると言っても良いのではないでしょうか。
 ある時、セブンイレブン本部の労働者が、「このままでは殺される」と、私どもの事務所に駆け込んでこられた事がありました。私たちの会が結成された時、ファミリーマートの社員から、「貴会の趣旨に賛同する。がんばって欲しい」と匿名の手紙がありました。ある時期、ローソンでは、「50歳になっても課長の経験が無い社員は、以後昇給はない」という方針が決められたということを、ローソンの社員から聞かされたことがありました。何人かの社員が退職し、「有能な社員がいなくなり、相談ができない」という不満が加盟店オーナーから寄せられたこともありました。現在は多少、改善されたかもしれませんが、実は本部も人手不足で、派遣労働者に依存している面もあると聞きます。
 コンビニ店を訪問・巡回して本部の方針を伝えたり、加盟店オーナーの意見などを聞く任務を持った社員はSVまたはFCと呼ばれていますが、この任務の社員は加盟店と本部上司の板挟みにあうことが多く、ストレスが溜まる日々です。コンビニが成長を続けてきた背後には加盟店と本部労働者の様々な犠牲があったことに今、目を向ける時だと考えます。

3.コンビニ店に働く労働者とオーナーの問題

 年中無休、24時間営業のコンビニでは、最低限15人の従業員が必要と言われます。その圧倒的部分は非正規労働者です。フランチャイズ契約を結んだ店が9割以上で、店舗の管理運営の責任は加盟店オーナーにあります。従業員の採用、時給の決定などは個々の加盟店の権限、責任です。加盟店オーナーとそこで働く従業員の間には労働者と使用者の利害対立が生まれるのは当然です。小規模事業者だから労働関係法を無視して良い、ということにはなりません。本部にとって、人件費と労務管理が加盟店負担という仕組みこそ、フランチャイズシステムの最高の魅力です。コンビニだけで全国で約90万人の未組織労働者が存在します。
 最低賃金は年々上昇しています。人手不足で時給を上げてもバイト応募者はありません。多数のコンビニ店では人材派遣会社を利用しています。その場合の平均時給は1,500円です。それでも、希望どおりに人手が確保できるとは限りません。夜間、深夜は割増賃金となります。オーナーと家族が深夜を含む店舗運営シフトに加わる時間が長くなります。人件費高騰への対策です。「時給1000円」という労働運動の要求へのオーナーの意見は、多様です。「すでに超えている」地域と、「人員確保できるなら良い」という意見、「とても無理」という意見です。
 従業員から見ると、次々増える仕事を覚えるのも一苦労です。寿司を買ったら、「温めますか」と聞かれた体験が2度ありましたが、レジが混み合うと余裕がありません。密度の高い労働の割に時給が安いという評価になります。しかも社会保険制度がない、ブラック企業という評価になりがちです。
 オーナーにとって大きな悩みの一つが社会保険加入問題です。当局の「強制加入」圧力が強まっています。中小企業の社会保険料負担の軽減措置を求めるという要求は、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会など全ての中小企業団体で共通しています。国会でも「小規模企業振興基本法」の付帯決議で全会一致採択となっています。政府が実行をサボっています。
 人手不足、人件費高騰、社会保険加入、そして「有給休暇義務化」と、コンビニオーナーの悩みはいよいよ深刻です。本部はこの実情に対する対策は無に等しいと言えます。「もう限界だ」というオーナーの声は過去に例がない広がりです。
 本来、労働の場は「人間成長の場」ではないでしょうか。社会常識、人間としての情感、連帯性、などを身につけていく場であり、そういう職場環境にしていくべきです。現在のコンビニ店はあまりにもほど遠い実態だという面にも目を向けて考えたいと思っています。
 ある店では、一人の従業員がよびかけて従業員の「飲み会」を開いています。その日は出番でない人も参加して仕事の上での悩みなどを交流しあう会です。オーナーが本部社員に叱責されている光景を見た時の思いや、「オーナー夫婦は良い人だ。みんなで支え合おう」などと話し合うのです。オーナーはこの自主的な職場会に顔を出さず、1万円の飲食代をカンパするだけ。嫌な事だけでなくお客さんに喜ばれた事も交流して、連帯感を培うのです。こういう店では労働者の離職率は低いのです。こんな事例もないわけではありませんが、数少ないと思います。このような職場づくりのリーダーに巡り合う幸運を待つだけで良いわけがありません。中小企業に働く労働者の人権を守り、働き甲斐のある職場づくりに取り組む皆さんに大いに学びたいし、期待したいと思っています。

4.コンビニ業界の大きな転換の時代

 24時間営業の問題が社会的な注目、関心を呼んでいるのですが、各本部も現状の改革の必要性を数年前から認識していました。増加率は低下しても店舗数は増え続けているため、本部の売上・利益は増加が連続しています。しかし、個々の店の売上・利益は減少しており、客数も伸びていません。オーナーの高齢化も進み、後継者もいない店がほとんどです。従来型コンビニの未来は危ないという危機感を強く持つようになり、模索し始めています。その中心内容は、既存加盟店の経営が持続できる仕組みを新たに開発する方向への模索です。加盟店を増やすことで利益を拡大・蓄積する路線の見直しが必要だと明言する本部もあります。投資額の6割を加盟店の省力化支援に向けるという傾向です。経済産業省が行った実態調査を受けて経済産業大臣が大手本部に改善のための行動計画作成を要請し、各本部は応じました。
 国会では、日本共産党の辰巳孝太郎議員の質問に対して、公正取引委員長が「フランチャイズ契約の条項が、優越的地位を利用して不利益を強制する場合は独禁法違反となる可能性がある」という、過去に無かった答弁をしました。
 最近の数カ月で表面化したこのような動きは、コンビニ業界の大きな転換の可能性を示す、新たな局面と言えると思います。
 しかし、本部は利益追求の民間私企業です。確かにフランチャイズ本部として事業を続けるという立場からは、加盟店なくして成り立ちません。だからと言って、自らの利益を無視して加盟店の要求を全面的に受け入れるわけがありません。
 たとえば24時間営業の件についても、全店で深夜営業をやめる事は簡単に実現するとは思えません。仮に深夜の来店者が一夜で5人であったとしても、セブンイレブンの場合では10万人の来店者になります。1カ月300万人、年間3,600万人になります。手放すには「惜しい」と考えるかもしれません。本部任せで改善が進むでしょうか。
 したがって今重要なことは、国の責任で事態の解決に踏み出すことだと思います。国がフランチャイズ・コンビニを産業政策としてどう位置づけ、政策実行に必要な手立てを講じることです。経済産業大臣がやるべき事は、大手本部に「行動計画」作成を求めることもさることながら、自ら「行動計画」を持つことです。そこで浮上するのが法整備ではないでしょうか。
 「民法」は私契約の自由を定めています。同時に、「法令に違反し、または公序良俗に反する契約は無効」と定めています。その「法令」が無いのです。
 先般、本部が法的根拠がない「要請」に機敏に反応し、改善の「行動計画」を提出、公表した背景には、「規制強化」型の法制定を避ける狙いがあったと見るのが妥当でしょう。また、経済産業省としても、国内総生産の数パーセントを占めるフランチャイズを衰退産業にしてはならないという思いも強く働いていることは間違いありません。
 フランチャイズ法という面で触れておかなければならないのは、政党の態度です。日本共産党は加盟店の経営と人権を守る政策とそのための法制定を提案しています。他の政党は党としての政策がありません。
 私たちは、全ての政党と対等に対応する立場をとっています。事実、自民党をはじめ全政党と接してきました。自民党本部で政務調査会事務局長とお会いした事もあります。民主党(当時)の重鎮と言われる議員と会い、私たちの考えを伝えました。
 同議員は「この問題は与野党対決の問題ではない。法案も内閣提出が望ましい。与党を動かすためには野党第一党の民主党が動かなければだめだ」と明快な回答でした。同氏の尽力で、民主党との法案作成の協議が正式に開始の運びになりました。 会長と私で、民主党本部会議室で担当議員、事務局との協議を重ねました。こちらの提案に対して「官僚を説得できるか」とか、「解りにくい」とか次々に注文が出ました。その度に修正を加え、7回ほど協議を続けました。最後の段階で、「民主党が政権を取ったらできる」との回答がありました。そして、民主党政権が誕生したのです。ところがその後、政治資金集めパーティの案内は来るのですがフランチャイズ法の協議は途絶えたのです。
 その後、同党のある女性議員がコンビニ問題を熱心に取り上げ、私どもとの話し合いも始まりました。その過程で、今日の「コンビニ加盟店ユニオン」が発足しました。フランチャイズに関する議員連盟も発足しました。しかし、同議員の落選を機にすべて振り出しに戻ってしまいました。私たちは今、政党との関係の再構築に努力しており、立憲民主党との懇談会も実現したところです。
 注視したいことは、フランチャイズ・コンビニ本部と政党が政治資金の面でつながりを強めている傾向にあるという点です。フランチャイズ本部が集まった組織として「日本フランチャイズチェーン協会」があります。2年後には50周年を迎えます。通産大臣認可の社団法人としてスタートしており、国民に信頼されるフランチャイズ事業の発展をめざして「倫理綱領」を定めて発足した経過があります。私たちは、この組織がフランチャイズ事業の健全化のための活動を強化されることを希望しており、意見交換をする関係にあります。同会の新年会は年々参加者が増えており、特に、国会議員の参加が増えていると業界紙が報じています。
 国の財政支援も受けたこともあるこの組織が特定政党と特別な関係を持つのではなく、公正な立場で本来の役割を発揮することを求めたいと思います。

5.コンビニ加盟店ユニオンに関して

 コンビニ加盟店オーナーは労働者であり、労働組合として認め、団体交渉権を保障することを目的にして結成されました。岡山県を活動拠点とする民主党国会議員の尽力で、当時の民主党幹事長小沢一郎氏の日程に合わせて岡山県で結成総会が開かれました。連合岡山が認め、同連合加盟組織です。
 私たちはコンビニ加盟店ユニオンの結成について、3点確認しています。@全国FC加盟店協会は、コンビニオーナーは事業経営者であるという立場を堅持していきます。A当会の会員がコンビニ加盟店ユニオンに入会することを組織的な問題にはしません。Bコンビニ加盟店ユニオンとの間で考え方や意見の相違があっても、公開の場で非難、批判することはしません。この確認を守ってきました。一昨年、ユニオンと私たちの会の役員が一堂に会して懇談会を行い、「組織結成の経過に違いはあっても、一致する要求では協力し合う」という点で合意しました。ユニオンからの相談に対応した事もあり、私たちの20周年の集会では来賓として委員長が挨拶を述べてくれました。
 結社の自由はあり、その組織・団体が本部に支配されておらず、自主的にフランチャイズ事業の健全化を志向している場合は、必要で可能な行動を共同して取り組むというのが会結成時に確認したことです。したがって、加盟店ユニオンとは敵対関係にはありません。加盟店の組織は一つであるべきだという考えは間違っていると思います。アメリカにも大きな加盟店組織が二つあると聞いています。

6.小規模業者とコンビニの連携・共同の可能性

 コンビニが誕生した直後は、商店街や地域の小売商店の間では「コンビニ敵論」が支配的でした。大スーパーに加えて大手小売企業が小型店で網の目支配を企むという見方です。実際、コンビニの扱い商品は多くの中小商店と競合し、テレビコマーシャルや長時間営業、商品の販売だけでなく各種サービスを拡大し、消費者の支持を広げました。地域の中小商店を廃業に追い込む事態が進行しました。シャッター通りと呼ばれる商店街が各地に生まれ、また、卸売業者や配送業者がコンビニ傘下に組み込まれ、中小商店は売れ筋商品の仕入れ自体が困難になっていきました。大型店と違って、店舗面積の小さいコンビニの出店は規制法のない野放しです。コンビニ敵論には根拠がありました。
 私たちは2つの面で努力しました。一つはコンビニオーナーがフランチャイズ契約によって大手小売資本の支配・圧迫に苦しめられている事、その意味で中小商店の苦しみの根源が共通しているという実態の告発です。もう一つの面は、食文化など地域固有の資源・「宝」を活かす方向に転じるならば、地域での雇用機会の確保や地域産業振興に貢献できる可能性があるという立場に立ち、コンビニの全国画一の商品展開に反対してきたことです。結成総会で目的を確認しましたが、その一つに、「中小業者・住民と共同し、地域経済振興に貢献します」と掲げました。
 やがて、全国の商店街から「コンビニ出店歓迎」の声が上がるようになっていきました。商店街の賑わいを取り戻すために消費者を呼び込むコンビニを迎える道への変化でした。
 全体として競争激化が進むなかでコンビニ本部も店舗の差別化、個性ある店舗づくりを重視せざるを得ない事態になり、コンビニ店の「商品の独自仕入れ」を容認するとか、地域の大学や高校と連携して地域の特産物を原材料にした「地域限定商品の開発」事例が生まれるようになりました。やや古い事例ですが、東京のあるオーナーが豆腐を本部から仕入れるのではなく、昔ながらの製法で作られる地域の豆腐屋さんから仕入れることを考え、豆腐商業組合とも話し合って商談が成立しました。しかし、本部は「ダメ」という回答で、一時は断念しましたが従業員が「やろう」と言います。それに励まされ強行しました。その豆腐は消費者に喜ばれ、毎日完売という結果です。ある日、本部の副社長が来てその豆腐を指さし、「これは認めていませんからね」と言いましたが、それ以上の措置はありませんでした。黙認です。黙認は成果です。別の埼玉県の店で、近くに墓があり、店の前を墓参りの人がよく通ります。そこで「花」を売りたいと思いつき、本部に申請しました。本部は「いいのではないか」と意外にもあっさり認めました。オーナーは花卉相場や花束作りの勉強もして利益に貢献する商品になりました。
 立地条件に適した商品を独自に仕入れることを本部が認める事例が広がっています。地域の様々な中小事業者がコンビニと連携・共同することで双方が新たな活路を切り開き、地域振興に貢献する道を探求する動きが現実化していることは新たな希望です。

7.コンビニ問題の解決の方向と展望

 消費者・国民の支持共感を得るということとコンビニ加盟店の経営、人権を守るということ、コンビニ事業に関係するあらゆる労働者の要求を統一的に追求する立場が重要です。コンビニオーナーのエゴと捉えられては真の解決には至らないことは言うまでもありません。これは容易なことではないと思いますが、消費者意識も大きく変化しており、新たな条件が生まれていることも注目すべきだと思います。20年前は24時間営業を称賛する声が圧倒的でした。しかし、2019年の各種調査では「24時間営業の必要はない」という声が60%から80%に達しています。500平方メートル内に4店も5店もコンビニがある必要はないという声も珍しくありません。コンビニが無いよりあった方が良いという消費者からも、その有り方に批判の目を向ける現在です。
 コンビニ問題を一時期繰り返し放映していたテレビは次第に番組から姿を消しつつあります。一部の新聞は引き続き問題を深める企画をしていますが、例外的です。マスメディアに期待をかけるわけにはいきません。
 5月に全労連の役員のみなさんと私たちの会の役員の懇談会が開かれました。そこで、コンビニ問題解決の運動を共同して取り組むことが合意されました。これは初めてのことです。初めてだから意義があるのではなく、粘り強く運動し続ける土台が作られたという意味で画期的意義を持つものだと確信します。
 加盟店の組織が継続・発展することが不可欠であることは言うまでもない事ですが、容易ではないのが実情です。それは、フランチャイズ契約には「契約期間」(コンビニの場合は10年。セブンイレブンの旧契約では15年)がある事です。契約期間が終了すると、契約期間の延長または再契約の交渉という事になります。契約の成立には双方の合意が必要です。加盟店が再契約を希望しても本部が拒否すれば契約終了になります。これが本部方針に従順に従わせる「武器」の役割を果たしています。契約更新を不当に拒絶する例も珍しくありません。この点のルールもありません。更新拒絶は不当だと提訴した例もあります。勝利判決の例はなく、労働運動に見られる「職場復帰」は望めません。高額の賠償金を獲得した「和解」が良い方の事例です。
 いま、東大阪市のセブンイレブン加盟店オーナーが時短営業を強行して話題になっています。20年以上前なら「強制的な契約解除」措置が実行されたかもしれません。私たちの会が誕生した以降は、コンビニ本部は社会的批判を浴びる暴挙をしなくなりました。無理をしなくても「契約期間の終了」を待てば合法的に本部の意に添わない加盟店を排除することが可能というわけです。実際に、フランチャイズ・コンビニの問題点を追及するオーナーの多くは再契約されず、この業界から去っていきました。
 逆に、加盟店は契約期間終了を機に「辞めたい」と主張しても本部があれこれの優遇支援措置を提示して、契約延長を強要する例もあります。しかし、その約束が実行されたのは短期間で、結局、損害が増える例が多いのが実態です。
 この「契約期間」の存在はフランチャイズ加盟店組織の活動の継承・蓄積を困難にする要因です。その意味でも、契約更改時のルールの確立と、労働組合や中小企業団体その他の人々との共同が極めて重要だと思います。いま、その可能性が生まれた時代だと思います。
 6月7日、日本共産党国会議員団は、「加盟店の営業と権利を守り、コンビニ業界の健全な発展をはかるため、コンビニ・フランチャイズ法の制定を」と題する緊急提言を発表しました。その内容は加盟店の要求をくみ上げたものであるとともに、消費者の意識の変化にも対応していると思います。勿論、実際に法制化するに当たってはいくつか検討課題があると考えられますが、社会問題となった流れを風化させないためにも意義があります。各界の議論を起こす、様々な運動を具体化していきたいものです。

(うえだ ただよし・全国FC加盟店協会事務局長)

研究部会報告

女性労働研究部会(5月23日)
 山川菊栄の「婦人の特殊要求」および日本労働組合評議会における「婦人部論争」を中心に結成初期の労働組合における婦人労働問題について中嶋晴代さんが報告した。当時の無産政党幹部の理解がないなかで、1920年代に山川菊栄が主張した「婦人の特殊要求」の先駆性、また、評議会の「婦人部評議会テーゼ」の採択とその後の「労働組合婦人部論争」の意義、それから100年近くを経た今日の労働組合における女性の要求や女性部の位置づけなどについて論議した。ジェンダー平等への動きはすすんできたが、いまなお課題は多い。
労働時間健康問題研究部会(5月24日)
 『安倍「働き方改革」関連法の施行とその後の展開』をテーマに、岩橋祐治氏(全労連副議長・いの健全国センター事務局長)が報告。@「働き方改革」関連法の施行では、雇用対策法が労働施策総合推進法に、労働時間法制の「大改正」、雇用形態による「不合理な待遇差」の禁止。A入管法の改定、ハラスメント対策の強化と、今後の課題として「企画業務型労働制」の拡大、「解雇の金銭救済制度」の創設、雇用によらない働き方、副業・兼業の普及と労働者保護、賃金などの労働債権消滅時効を説明。B19春闘での「新36協定キャンペーン」(要求実現と組織拡大の結合戦略)などの状況と特徴を紹介。C「働き方改革」関連法に関わる長時間・過密労働の是正、過労死過労自死の一掃、同一賃金同一労働・均等待遇の実現、実効あるハラスメント規制と「8時間働いたら帰れる、普通に暮らせる」当たり前の職場と社会の実現を強調。「働き方改革」関連法の今後の取り組み、36協定調査活動、組織拡大・次世代育成、地域労働運動の強化などが討論された。

6月の研究活動

6月16日 雇用問題研究会
  20日 労働組合研究部会
  24日 賃金最賃問題研究部会
  27日 女性労働研究部会

6月の事務局日誌

6月8日 労教協総会へメッセージ
  19日 労働法制中連事務局団体会議
  27日 2018年度会計監査