労働総研ニュースNo.338 2018年5月



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「副業・兼業」促進政策について 兵頭 淳史
安倍「社会保障改悪」と労働組合の課題 公文 昭夫




「副業・兼業」促進政策について

兵頭 淳史

 目下議論の的となっている安倍「働き方改革」のなかで、「高度プロフェッショナル」制など労働時間規制に関する政策に比べると注目度は低いものの、実はそれに劣らぬ目玉となっているのが、正規雇用労働者を対象とした「副業・兼業」の促進政策である。フルタイムの労働者のなかにも副業・兼業に関心をもつ者が存在するのは事実であるし、副業・兼業を一律に禁止するような就業規則は、労働者個人の企業外での生活に対する「不当な介入」にも見えることから、これは「高プロ」など労働時間規制撤廃政策に比べれば、一見「合理的」な政策にもみえる。
 しかし、副業・兼業への従事がさらなる長時間労働をもたらし、労働者の健康やワーク・ライフ・バランスがいっそう損なわれることは理の当然である。そもそも、既に副業・兼業に従事している労働者の多くは、不十分な所得を補填するためにやむなくそうしているのであり、主たる勤務先である1企業において、十分な賃金が支払われ、十分な所得が保障されるなら、仕事以外の生活時間を削ってまで「副業」に精を出す必要はないわけである。ということは、「副業・兼業の促進」とは、実は企業側にとってのみ都合のよい賃金抑制・引き下げ策に他ならない。
 「働き方改革」における労働時間規制緩和・撤廃政策を批判し、逆に労働時間規制を強化することは喫緊の課題である。しかし、労働時間規制の本質が、あくまで個々の使用者(雇主)に対する「働かせ方」の規制である以上、それだけでは労働者が「副業・兼業」へと追い込まれることによる労働時間増大は阻止しえない。安倍「働き方改革」に対抗し、働き方と労働者生活に本当の意味での改善をもたらすためには、労働時間規制・最低賃金・均等待遇といったワークルールの強化もさることながら、安倍政権の経済政策下で実質賃金の目減りに苦しむ(それゆえ「副業・兼業」に誘導される)正規雇用労働者など、現行の最賃水準に比べれば相対的には高い賃金で働く労働者の賃金を、労働組合の力を通じていっそう高い水準へ引上げる課題もまた決して等閑視されてはならないのである*。
 *本稿で取り上げた点を含め、安倍「働き方改革」をめぐる論点については、拙稿「『働き方改革』論争の盲点」(『法学館憲法研究所報』18号、2018年4月)で詳しく考察しているので、参照されたい。

(ひょうどう あつし・会員・専修大学教授)

安倍「社会保障改悪」と労働組合の課題

公文 昭夫

安倍政治の「新たな国創り」のねらい

 1月から2月にかけて、日本全土はかつてない寒波に襲われ、北陸地方をはじめとして死傷者の出る雪害事故、自動車事故、食品不足など国民生活への被害が多発した。それにしても「お寒い」のは自然ばかりではない。今年1月に始まった安倍政権の通常国会は、まさに国民生活総破壊政治の暴走で、超大寒の「国難」を予想させる悪政の加速、拡大・強化を示すものとなっている。
 安倍首相は、国会冒頭の施政方針演説で「新たな国創り」を宣言し、そのため「生産性革命」「人づくり革命」「働き方改革」「全世代型社会保障改革」などを実施すると豪語した。
 まったくあきれかえるほど調子のよい美辞麗句の乱発だが、その中身たるや「生産性革命」、「働き方改革」などは、大企業への減税や企業優遇の規制緩和であり、400兆円を超える内部留保、大企業の儲けを、さらに上積みするための残業代ゼロ、長時間労働の強要である。一方、「全世代型社会保障改革」は、あたかも高齢者だけが厚遇されているかのような虚偽の印象をばらまきながら、制度全体の予算削減、後退を狙うという悪質な政策、「全世代」社会保障改悪を意図するものとなっている。そして、この「新たな国創り」の結語が、安全保障強化を口実とした本格的「9条改憲」、すなわち安保法制「戦争法」、「共謀罪」などの総仕上げとしての「海外で戦争する国づくり」ということになる。

軍拡・社会保障総改悪予算の特徴

 こうした安倍政権の政治姿勢は、国民生活に直接深いかかわりあいを持つ国家予算に反映されている。すでに強行突破で成立させられた2018年度予算(17年度補正予算を含めて)から実態を見ておきたい。
まず、本年度国家予算の特徴は、大きくみて3つある。この点は、安倍政権発足以来、予算編成の基調として共通している。
 第一が、政権発足以来、6年連続で増額されてきている「軍事費」の突出である。今年度の軍事費の額は5兆1911億円。前年度比で660億円、1.3%の増となっている。そのなかには、「敵基地攻撃能力」保持につながる長距離巡航ミサイル経費として21億6000万円が計上されている。まさに、憲法で保障されているはずの「専守防衛」など、どこ吹く風の逸脱行為である。このほか、基地機能強化の米軍再編経費も前年度比で150億円増の2161億円。このほか、さまざまな軍事兵器の購入がある。その大半が、「トランプ・ファースト」のアメリカ軍需産業の儲けに直結し、日米共同での世界の平和を脅かす構図となっている。
 第二の特徴が、これまた6年連続増額を続けている大型公共事業を主軸とした大企業優遇措置である。東京外環道など効率的な「物流ネットワーク」の強化と称する住民の反対を無視したさまざまな道路整備(三大都市圏環状道路など)の実施。2020年東京五輪の成功のためと称する空港整備。住民からは騒音被害や落下物の事故、危険拡大に批判が出ているのも無視されている。このほか、整備新幹線の費用など大部分が大型ゼネコン、大企業への奉仕を重点とした予算となっている。そのうえ、大企業、富裕層優遇となる法人実効税率のさらなる引き下げ。賃上げ、設備投資などでの法人税率減税などの措置が実施されることになっている。
 限られた国家予算のなかで、どこかが増額されれば、どこかが削られることになる。それが第三の特徴となる社会保障予算の全分野にまたがる削減である。全分野という意味は、安倍政権の社会保障予算編成の指針が、問答無用で社会保障予算の「自然増」、すなわち、法律に照らして当然自動的に増えるべき金額をはじめから機械的、「算術的計算」で減らすことを決めているということである。まさに、憲法25条の基本的、「平和的生存権」の思想を無視した暴挙だが、安倍政権のもとでは、その金額を5000億円と決め、それ以上の自然増は認めないとしている。このため、18年度予算では、編成時、すでに1300億円の自動的削減、切り捨てが決められていた。こうした自然増抑制の手法で安倍政権は、6年間で1.6兆円の社会保障削減を強行してきた。

18年度自然増抑制のポイント

 18年度の自然増抑制による社会保障予算削減の大きな柱は、医療労働者(介護関連労働者にも連動)の賃金、労働条件、そして患者への医療サービスなどに深い関わり合いをもつ「診療報酬引き下げ」である。引き下げの率は1.19%となっている。病院経営関係者からは、この結果、医療経営に深刻な打撃になり、地域の医療崩壊を加速させることになるという声があがっている。経営の悪化は、必然的に医療労働者の賃金、労働条件の悪化、医療サービス内容の低下につながってくる。「介護報酬」は、今回0.54%の微増となっているが、前回(15年度)過去最大規模の引き下げの結果、深刻な打撃が加えられており、介護施設などの事業所閉鎖が連続している。それどころか、「自主・自助・共助」の思想にもとづく、要介護1・2の受給者の介護保険からの追い出し、利用料の値上げなどサービス悪化の改悪が予定される始末である。
 予算削減のもう一つの柱が、社会保障の「最後の砦」といわれる「生活保護基準」の削減、引き下げである。後でも触れるが、安倍政権下では、すでに13年から15年までの3年間で生活保護基準が6%引き下げられている。
 18年度予算では、「生活扶助費」をさらに今年10月から3年間かけて段階的に5%引き下げるというのである。その被害は、生活扶助を受けている世帯の70%に及ぶことになる。厚生労働省の見込みでは、金額にして18年度15億円、20年度までの3年間に160億円の減額になるとしている。権力をカサにきた「弱い者いじめ」の典型であり、格差と貧困のさらなる拡大のステップとなる。
 軍事費のなかには、航空トラブルの代名詞になるほど事故を頻発している軍用機「オスプレイ」の購入費「4機、393億円」がある。半分の2機にすれば約200億円。生活扶助費の削減を中止してなお、おつりがくる勘定である。人殺しのための予算と弱い立場の人助けのための予算と、どちらが大切か。子どもにだってわかる理屈だ。
時を同じくして、アメリカのトランプ政権が2月12日に2018年度の国家予算案(予算教書)を議会に提出している。予算案の最大の特徴は、「米軍の再建推進・国防費78兆円に拡大・2年連続で2桁台の伸び率」(「毎日」2月14日)というものだ。軍事費の伸びと財政赤字拡大の裏側で、社会保障費など国民生活改善の予算は、2年連続での大幅切り捨てという結果になっている。省庁別での予算増減率が、この実態を端的に物語っている。
 すなわち、軍拡の軸となる国防総省(13%増)、これと連動する国土安全保障省(8%増)にたいして厚生省(21%減)、教育省(10%減)、環境保護局(34%減)となっている。スケールの違いはあるが、安倍政権の「新たな国創り」予算と「ウリ」二つである。

安倍・社会保障制度改悪の全容

 安倍「改憲」の大本命が、戦争放棄、戦力不保持を決めている「9条」にあることは周知の事実だが、同時にそれとウラ・オモテの「25条」に直接連動していることを抑えておく必要がある。戦争は人間のいのちを奪うだけではない。べらぼうにカネがかかる。その予算確保のために、予算額の大きい社会保障が狙われる。
 ご承知のように「25条」は、第一項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記し、第二項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」としている。すなわち、日本に住むすべての労働者、国民には人間らしく生きていく権利(平和的生存権)があり、それを守り、発展させていく責任(社会的使命)が「国」(政府・自治体)にはあるということだ。軍拡・軍事費の拡大、大企業奉仕のための公共事業の予算確保のために、生存権保障の権利や国の責任を放棄することなど、とうていあってはならないことなのである。こうした社会保障の基本理念の「解体」、事実上の「25条改憲」の具体化が急ピッチで進行している。
 安倍政治の下で、今、日本の社会保障は具体的にどう変わり、どう変わろうとしているのか。まず、リタイアした職場OBの老後生活の唯一の支え、そして現役労働者の将来の生活保障の基礎となる「年金」をみてみよう。
 改悪点のポイントは、@ただでさえ生活困難な年金額を3年間(13年〜15年)で3.4%引き下げた。さらに、マクロ経済スライド制で切り下げていく。A厚生年金、共済年金、国民年金の保険料を毎年自動的に値上げ(17年まで。この値上げは小泉内閣が04年に決定。これを引き継いで実施)、B積立金運用のギャンブル化の促進である。とくに、積立金運用のギャンブル化は悪質であると同時に、将来の年金財政を崩壊に導く危険をはらんでいる。今の日本の年金財政方式は、世界でも数少ない「積立方式」を採用している。今日、それは日米の大企業、資産家に奉仕する形で推移してきている。それでも、安倍内閣が誕生するまでは、積立金運用の中心を、利子は低いが安定的な「国債」においてきた。それを14年10月から日米の株式での運用を全積立金の半分(24%から50%)に拡大したのである。その結果、すでに報道されているように、15年度には5.3兆円、16年度には5.2兆円の損失を計上する結果を生んでいる。「株が上がればとりもどせる」などという無責任な言い訳は通用しない。
 「いのちと健康」を守るための「医療制度」では、@70〜74歳の患者窓口負担が1割から2割に引き上げられた。A入院患者の給食費の値上げ、B紹介状なしで大病院で受診したら保険による負担の上に、別個の定額負担が上乗せされる。C国保の保険料値上げ――などが実施されている。国保の実施主体の都道府県化が、さらにそれを促進することになる。
 さらに、「介護保険制度」では、一定所得以上(所得160万円以上)の人たちの利用料が1割から2割に引き上げ、A特別養護老人ホームなど施設入所者の食費、ベッド代の値上げ、B要支援1・2の訪問介護とディサービスを介護保険から外す、C特別養護老人ホームの入所対象を要介護3以上とするなど、際限のない負担増と給付内容の引き下げが進行している。
 社会保障制度の「最後の砦」といわれる「生活保護」も例外ではない。前述したように、安倍政権下の13年から15年までの3年間で生活保護基準が6%も削減された。さらに住宅扶助、冬季加算も生活扶助と合わせて切り下げられている。
 こうした政治の進行が、現役の労働者をはじめ多くの国民の貧困と格差の拡大に拍車をかけている。「下流老人」「老後破産」などという言葉が氾濫しているが、老後だけではない。まさに、「一億総破産」が現実化しようとしている。

社会保障理念の常識に背反

 「社会保障とは何か」「どうあるべきか」という基本的考え方、理念は、日本の場合、戦後確立された日本国憲法25条を基軸として明らかにされている。
 その理念は、前にも述べたように、25条第一項で、まず「すべての国民」が対象となり、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するものとしている。そして、第二項では、「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の社会的義務、責務をうたっている。さらに、憲法は、この基本的な権利(生存権)などすべての権利について第97条で「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と指摘している。
 この憲法の規定にたいして、安倍政権の社会保障にたいする理念はどうなっているのか。2013年に成立させられた「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」の第2条では、「社会保障制度の基本的な考え方」として、次のように述べている。まず、第1として「自助・共助及び公助が最も適切に組みあわされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じて、その実現を支援していくこと」を強調する。憲法の規定する国民の権利(基本的人権)、国の社会的責任を完全に否定し、自己責任を基調とする戦前の「相互・助け合い」思想で社会保障を組み立て直すという発想である。以下、第2点として「給付の重点化と効率化で負担の増大を抑制し、持続可能なものとする」、第3点では、「国民の負担(保険料)の適正化」をうたい、第4点で「主要な財源には消費税を充てる」としめくくっている。
 そこから、ひたすら社会保障予算を削減する制度改悪が企てられ、実施されてきた。まさに明白な「憲法違反」、25条の理念の抹殺である。
 紙数の関係もあり簡略に述べるが、歴史的にみると、こうした社会保障理念の解体は、1980年代初頭の中曽根内閣による「臨調・行政改革・軍拡」の政治からスタートしている。アメリカのレーガン政権と協調し、日本をアメリカの「不沈空母」とすると豪語して、突出して軍事費拡大を実現し、その裏側で社会保障の予算削減、制度改悪を強行した。臨調答申は、日本型福祉社会の理念として「自助・相互扶助」を基調とし、制度運営の「民活・民営化」の促進をうたうという、その後の小泉9条・25条解体の政治、今日の安倍政治へと連動する道筋をつくったといえよう。

社会保障改悪を阻止し、制度改革をかちとる労働者・労働組合の運動の中心課題

 今さら言うまでもないことだが、日本の社会保障制度がカバーする範囲の最大の規模を有するのは「雇用労働者」である。2016年の総務省「労働力調査」によると、労働力人口総数は6648万人。うち80%の5381万人が雇用労働者である。よく知られているように、年々雇用労働者のなかの非正規労働者が増加し、2016年には、雇用労働者のうち2016万人、約38%を占めている(2018年「国民春闘白書」、学習の友社)。こうした動向はさまざまな社会保障制度の枠内での格差拡大に連動している。
 雇用労働者の生活は、こどもたちなど家族をふくめて病気やけがなどの医療保障(健康保険、国保など)、失業、老後、障害などの保障(年金、介護、雇用保険など)、労働災害保障(労災補償保険)、さらには生活保護などさまざまな社会福祉制度、環境衛生保護などでカバーされる建前になっている。すなわち、全国民中、最大多数が、社会保障制度の中核なのである。したがって、自らの生活を守り、発展させるには、賃金、労働条件の改善と合わせて社会保障制度の改革・改善が必然的に運動の中心課題でなければならない。当然のことだが、この課題は全国民の共通の課題である。したがって、全労連、中立関連労組などが一体となって取り組んでいる「国民春闘」の運動と成果が軸となる。
 同時に、もう一つ重要なことは、社会保障の在り方、基本理念である25条が、世界の常識だということである。
 戦後開かれた1948年12月10日の国際連合第3回総会で採択された「世界人権宣言」では、22条で「何人も社会の一員として、社会保障を受ける権利を有する」と宣言し、23条では「何人も労働するものは、自己および自己の家族に対して、人間の尊厳に値する生活を保障しなければならない」とし、さらに25条では「何人も衣食住、医療および必要な社会的水準を享有する権利を有し、かつ失業、能力喪失、配偶者の喪失、老齢または不可抗力によるその他の喪失の場合に保障を受ける権利を有する」と規定している。
 こうした「政・労・資」の「人権宣言」と並行して世界の労働者・労働組合の代表が集う国際的な社会保障会議が開かれ、53年には「社会保障綱領」、61年には「社会保障憲章」を採択している。この二つの文献では世界人権宣言、25条に示されている「平和的生存権保障」とあわせて、戦争反対、軍拡ストップ、「世界平和」の要求を提唱し、全世界の労働運動の中心的課題として「大砲かバターか」の選択を迫るものとなっている。「社会保障憲章」の冒頭では、社会保障の原理として「真の社会保障制度は、自分の労働で生活している人、働くことのできない人、一時的または永久的に労働能力を失った人のすべて、およびその家族構成員に本人による何らの財政負担なしに、法律で保障された基本的な社会的権利を承認することを土台としなければならない」と人権宣言、日本国憲法25条から、さらに一歩踏み込んだ提唱をし、全世界の労働者・労働組合に協力、共同のたたかいをアピールしている。すなわち社会保障運動は基本的に全世界の労働者・労働組合の共通の課題なのである。
 安倍政治に終止符をうつ労働者・労働組合の当面、そしてこれからの運動の中心的課題は、「9条を守ることこそ、25条を光り輝かせることになる」ことを提起し、中央の「国民春闘」、地方、地域の春闘共闘での中心的運動の課題にすること。同時に、社会保障推進協議会、関係市民団体共闘への協力、共同の輪を広げること。そして、なによりも様々な考え方の違いをのりこえて、すべてのナショナルセンターの協力、共同が重要である。さらに、幅広い野党共闘を通じて、国、自治体の政治へと反映させていくことをセットにした運動の組織、発展を進めるべきだと思う。
 そのための幅広い教育宣伝、それを可能にする25条に反する社会保障の実態調査、先進的な欧米諸国の社会保障の優れた面をアピールするなど、学習・調査の計画的実施、それにもとづいた大量宣伝が強められる必要がある。
 最後に、憲法25条の基本的性格についてふれておきたい。憲法の構成からみても、25条の平和的生存権保障は、国民のすべての「生活権保障」の総則的規定と考えるべきである。すなわち25条を基点として26条(教育権)、27条(勤労権)、28条(団結権を軸とした労働権)、29条(財産権)の基本が規定される。
 したがって労働者・労働組合の社会保障運動は、25条を基軸とする国民生活全般の改革をもとめる重要な運動であることを大きくアピールしていくべきだろう。

(くもん てるお・会員、社会保障研究部会)