労働総研ニュースNo.284 2013年11月号



目   次

 「第三の開国」(TPP)と「痛みを伴う改革」 山中 敏裕
 限定正社員制度と解雇規制緩和 萬井 隆令
 研究部会報告他




「第三の開国」(TPP)と「痛みを伴う改革」

山中 敏裕

 菅民主党内閣首相(当時、以下同じ)は、2010年10月、所信表明演説で、TPP交渉への参加検討を表明し、11月には関係国との協議を閣議決定し、APECのCEOサミットで協議開始を表明した。11年の年頭所感と国会所信表明では「第三の開国」との位置づけで「平成の開国」を連発したが、「第三の開国」は菅首相のオリジナルではない。同じ言葉が日本経団連「活力と魅力溢れる日本をめざして」(03年)にある。「痛みを伴う改革」と構図は同じである。

 小泉首相が「痛み」を連発したのは記憶に新しいが、この源流は経団連「1990年代の日本経済の展望と課題」(91年)にある。「思い切った規制緩和」、「市場メカニズムを最大限活用」、雇用でも「市場原理の一層の導入」とされ、「様々な痛みを分かち合う」と言われた。これが当の経団連会長を座長とする経済改革研究会「平岩レポート」に盛り込まれ(93年)、経済的規制は「原則自由・例外規制」、社会的規制は「簡素なもの」とされ、「過渡的な痛み」が言われる。これを受け、細川非自民内閣首相は、94年2月に「規制緩和推進計画」策定を閣議決定し、3月には「痛みを伴う」と国会答弁。10月には村山社会党首班内閣首相が「痛み」を答弁し、橋本自民党内閣に継承されていく。初代「規制緩和推進計画」閣議決定の前年、94年秋には、米国政府、経団連、日経連が要望書を日本政府に提出した。米国政府の年次改革要望書は恒例化し、米国政府と財界の意向を受けて「痛み」が連発された。

 TPPは秘密交渉と言われるが、目指される完成形態は明らかである。APECビジネス諮問委員会(ABAC)は、04年以来、APECにFTAAP構築を積極提言している。その核としてTPP(P4)が選ばれ、RCEPが参加拡大範囲とされる。ABAC日本支援協議会には経団連などが名を連ね、経団連は早くからFTAAPを求め、FTAAP構築は既に閣議決定されている(09年12月)。多国籍企業による柔軟な最適地展開を可能とする広大な市場原理主義的市場の構築が目指され、TPPはグローバル化した市場原理主義的構造改革の一環である。これを先取りして、抜本的な規制改革が進められようとしている。こんなものを許せば、労働者の被害は甚大である。対抗軸は「農業対その他産業」や「米国の国益対日本の国益」ではない。「多国籍企業対99%」である。

(やまなか としひろ・会員・日本大学准教授)

限定正社員制度と解雇規制緩和

萬井 隆令

 安倍内閣誕生以降、労働規制緩和の好機到来とばかり、財界は経団連4月16日『労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制』、同7月24日『今後の労働者派遣制度のあり方について』など、はしゃぎ過ぎと思われるほど、様々な提案を行っている。

 政府はそれと併行して、規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)、経済再生本部(本部長・安倍晋三)−産業競争力会議(企業経営者10人で構成)、内閣官房・地域活性化統合本部などを設置し、規制改革会議は6月5日には『規制改革に関する答申−経済再生への突破口−』、同雇用ワーキング・グループ(座長・鶴光太郎慶応大教授…専門委員=労働法研究者・島田陽一早稲田大教授、水町勇一郎東京大教授)は報告(以下、『WG報告』という)を発表した。

 安倍首相は4月2日、田村厚労相に「成熟産業から成長産業へ『失業なき円滑な労働移動』を図る。このため、雇用支援施策に関して、行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策シフトを具体化すること」、その一つとして「職種や労働時間等を限定した『多様な正社員』のモデルを確立」せよ、と指示した。それは、厚労省の下に設けられた「多様な形態による正社員」に関する研究会が重ねてきた議論をまとめ、僅か5日前に公表した報告(以下、『報告』という)にある限定正社員制度の具体化を指している。

 『WG報告』も「なぜ『人が動く』ことが必要なのか」から説き起こし、同制度を人を動かす3本柱の第一に据えている。

 早晩、労働政策審議会の議題にのせられ、公式な法案作成が始まると見られる。

1. 限定正社員制度とは何か

 (1) 限定正社員とは

 『報告』らがいう「多様」である現状とは、職務、勤務地、労働時間(残業)が特定されていない正社員のほかに、それを限定し、職務内容の異なる配転はない、勤務地が異なり転勤を伴う配転はない、時間外労働は予定しない等の正社員(限定正社員)も混在している状態を指している。

 かつて日経連の1995年『新時代における「日本的経営」』は労働者を3つに区分し、

 (1) 長期蓄積能力活用型−正社員
 (2) 高度専門能力活用型−有期雇用(3〜5年、更新あり)
 (3) 雇用柔軟型−契約社員・嘱託、パート、派遣など

に分けた。それは企業組織の再編成と併行しつつ着実に実行され、当時労働者全体の20%程度であった非正規労働者(契約社員・嘱託、パート、アルバイト、派遣)は今や38.2%にまで増えている。非正規労働者の大半が有期契約で働いている。

 好況期と言われた2005〜07年の3年間に正規労働者は270万人減少し、非正規労働者が210万人増加した。過去5年間の転職者は、正規から非正規へが40.3%、逆に非正規から正規になったのは24.2%。非正規による正規代替が進行し、正規労働者の雇用も不安定化していることに注目する必要がある。

 従来、日本の雇用慣行としては正規社員についてみると、職種・業務(ジョブ)を特定して労働契約を結ぶことは多くはなく、ジョブを特定する場合の多くが非正規社員であった。しかし現実には、1985年男女雇用機会均等法制定を期に拡大したコース制の下で、職務を基幹業務とする総合職と事務補助とする一般職ができたが、一般職では職務内容の異なる配転や転勤は予定されていない者も存在する。その人達が、限定正社員に移行するとなれば、かつて日経連が正社員として位置づけていたものを、正社員と限定正社員に分け、労働者を4つに区分することになる。制度が導入されると、企業は少数の正社員、かなりの数の限定正社員、契約更新による長期の有期雇用者、そして非正規労働者という4層構造になる可能性がある。

 女性労働者の57.5%は非正規であるが、正社員でもコース制の場合、女性の多くが一般職である。正規・非正規の区分でも、また正規の中でも女性差別問題が潜んでいる。

 (2) 限定正社員制度の位置付け

 『報告』等は、現在の職種、勤務地、労働時間などに限定がある正社員を限定正社員と呼び、正社員を純粋な正社員と限定正社員に区分けしていくことを提案し、正社員が限定正社員に転換することはワーク・ライフ・バランスの実現の一つの手段となる、と薦めている。同制度の導入は「ワーク・ライフ・バランスなどの観点から多様な働き方の実現につながる可能性があるほか、企業にとっても、従業員のモチベーションの向上や人材の確保・定着を通じた生産性の向上が期待できる」と位置付けられ、企業に対して同制度の導入を推奨する。規制改革会議はそのための雇用ルールの整備を提言するが、そのための具体的な法改正までは提案しているわけではなく、実現策は当面は企業に委ねている。

 (ア) 正社員にとって…誤った認識の流布

 「ワーク・ライフ・バランス」という言葉は「仕事と生活の調和」と直訳してみても意味がはっきりしない。労働者の長時間労働の実情も、それが一つの要因となって家事、育児の負担が女性に偏っている現実も周知のことである。したがって、それは正社員から転勤や残業のない身分になり、今のような家事や育児、ましてや地域や社会の活動には参加できないような生活を脱し、人が活きいきと働き、家庭でも地域でも充実した人生を送ることを目指そうということを意味している(と理解されることを提唱者は望んでいる)ようで、それ自体には誰も異存はない。

 だが、実際に何をどうするのかとなると曖昧である。純粋な正社員といっても実際には異職種への配転や転勤はそれほど多くはないから、限定正社員に移行することのメリットは、現実には残業が減り、休日を休日として利用できる程度のことが想定できるに過ぎない。

 限定正社員についての論議の陰には、漠然としてではあれ相変わらず、純粋な正社員は雇用は安定しているが、勤務地、職務内容についてだけでなく、労働時間(時間外労働)についてまでも経営者の指示には従わなければならない、という認識がある。『報告』は、「週49時間以上働く者が約3割(週60時間以上…が約1割)」という現状を知りながら、それを批判するでもなく、当然であるかのように「残業を前提とした…」正社員といい、むしろ、そのような認識を意図的に広めようとしている。

 しかし、純粋な正社員といっても一様ではない。労働契約によって職種が一定範囲に特定されている場合がある。一般企業が研究所を有している場合の研究員、航空会社のパイロット・客室乗務員、鉄道会社の機関士・保線職など、大学の教員、放送事業の記者・アナウンサー等々、幾らでも例はある。そのような労働者は職務内容は限定されており、同じ企業内だからといって他の職種に転換することは考えられてはいない。

 また労働時間については決して無制約ではなく、それどころか、労働時間、休憩・休日などには法律による厳格な規制がある。時間外労働については、基本となる法定労働時間との関わりで特にきめ細かな規制が行われ、36協定と本人の同意が条件とされる(日立製作所事件・最1小判平3.11.28<労働判例594号>は労働協約、就業規則による義務付けがあり、合理的な理由がある場合は個人の同意は不要とするが、学説上の支持は少ない)。だからこそ、財界は別にホワイトカラー・エグゼンプションを求めるのだが。

 (イ) 非正規労働者にとって…特に効果なし

 『報告』等は、同制度の導入は非正規労働者にとって正規への転換の機会を拡大する可能性があると述べる。もっとも、純粋な正社員とするほどハードルが高くなく、女性にとっても「正社員転転換の機会を拡大する可能性を持つ」と言及する程度でしかないが。

 以前から、非正規の正社員化は企業への忠誠心を醸成し、勤務実績が上がり、勤続期間も長くなって技術の伝承に良い影響を与える等々とメリットが指摘されてきた。だが現実には、正社員の非正規化は進行したが、非正規社員の正社員化はほとんど進まなかった。

 仮に、非正規労働者に職種や勤務地が限定されている条件で期間の定めのない契約で働く正社員化への道が開かれるとすれば、彼らは通常は無期契約による安定した立場を強く希望しているから、労働条件が少しばかり劣っていても有期契約には勝るものに写り、多くは限定正社員への転換に応じることになろう。

 もっとも、上述のようなメリットを期待するのであれば、一般の正社員にすればよいのであって、限定正社員にすることに結びつける必要も必然性もない。そもそも、従来、そのようなメリットと非正規で雇用することのメリットを比較衡量しながら後者を優先して非正規雇用を拡大し続けてきた企業が、今、急に雇用方針を変更するとも考え難い。『報告』等を書いた人達はそのような疑問も持たないのか、これまでの推移を振り返ることもなく、空想で綺麗事を述べただけではないか。

 (ウ) 「多様な形態の正社員」にとって…低い労働条件と雇用保障の削減

 (ア)でみたような、職務内容が特定されつつ企業内で重要な位置を占める社員は、むしろ、企業内ではエリート的存在であった。論議の対象となっているいわゆる限定正社員とは意識されてはいない。今、限定正社員として想定されているのは、いずれかといえばそれとは対極にある、勤務地、職務内容が限定されていて企業への貢献度が低いイメージの労働者である。雇用機会均等法制定後の、総合職に対する一般職の変形である。現在の議論は、従来の労務政策から見て、限定正社員と呼ぶ劣位の労働者層を創り出し、それへ移行させる効果をもつものとみられる。

 ちなみに、『報告』等は、限定正社員の定義は明確でないにもかかわらず、不思議なことに、労働条件は純粋な正社員のそれと比較して低いことを、暗黙だが当然の前提としている。だが、それは、合理的な理由がない限り有期と無期で労働条件に差をつけてはならないという労働契約法20条の趣旨とのバランスから考えても、およそ受け容れられない「前提」である。

 また、労働条件が低いことが前提であるとすれば、限定正社員制度に疑問視や反発を招きかねない。そこで、純粋な正社員との「均等・均衡を考慮することが望ましい」と付け加える。だが、正に「隠すよりは顕るる」で、そのような付記があること自体が、労働条件は低いことを当然視・黙認する姿勢を示唆している。「均等」ではなく「均等・均衡」と幅を持たせ、それらは「考慮」の対象でしかなく、さらにその「考慮」も「望ましい」にとどまり、最終的には企業任せにしているのであるから。

 重大な問題は、限定正社員の雇用に関しては解雇規制の緩和が想定されていることである。

2. 限定正社員についての解雇規制緩和

 経団連は公然と、職務や勤務地が消滅すれば契約は終了すると労働協約や就業規則に定めれば、「解雇権濫用法理がそのままあたらないことを法定すべき」だと提言している。

 (1) 解雇法制の全体的な緩和傾向

 解雇の金銭的解決制度の検討も併行して進められている。同制度によって、裁判所で違法な解雇であったと判断された場合でも金銭で労働契約を解消できることになれば、勢い、企業は杜撰な理由でも解雇することになろうし、裁判における解雇に「合理的理由」があるかについての審理も等閑なものになる危険性が大きい。全体としての雇用の不安定化、流動化の状況の下で、解雇の脅威がより拡大する事態になりかねない。

 (2) 限定正社員制度と解雇規制

 (ア) 限定正社員の解雇規制−緩和の基調

 安倍・労働規制緩和の基調は、現状は「正社員に対する使用者の雇用保障責任が、諸外国と比較して厳しい…若年者の募集を抑制したり、事業活動の柔軟性確保の支障の一つとなっている」と捉え、「多様な視点を持った労働者が貢献する経営を促進する」といいつつ、雇用の流動化を図ることである。

 「雇用の流動化」は労働者が適職を求め、それが得られる企業・場所へ自発的に移動して行くことだけで起こるわけではない。むしろ、企業が「過剰」とみた労働者を解雇し、労働者は否応なく別の職を探さざるを得ない形で起こる公算が大きい。

 先輩労働者の長い権利闘争によって、解雇する場合には社会的に合理的と認められるだけの相当の理由が必要であるという解雇法理(労働契約法16条)が確立された。だが、経団連のようにはっきりとは言わないまでも、限定正社員の場合は、その解雇法理の適用は除外され、限定された勤務地、職種、労働時間制の要素が消滅した場合には、解雇は自由に認められることが想定されている。

 『報告』も一応は、直ちに解雇可能と考えるのではなく、限定正社員についても純粋な正社員に対する雇用の安定確保の「取組との均衡が図られるよう最大限の努力をすることが求められている」と述べている。ここでも労働条件の場合と同様、「均衡」「努力」「望ましい」であり、解雇法理は除外されないとしても、相当程度、緩和されることを容認する姿勢である。

 『WG報告』は限定正社員についても解雇権濫用法理は適用される、と明言する。だが、すぐ続けて、過去には純粋な正社員についてとは異なる判例もある、その「基本的な考え方を整理」して労使および司法のコンセンサスを形成することが重要だ、と指摘する。要するに、純粋な正社員の場合よりも緩やかな解雇基準で良い、と示唆している。

 結局、限定正社員制度を構想している人々は、企業内の組織統合や業務の変更などによって限定正社員が担当してきた業務がなくなる場合、職種・業務が特定されており配置転換は問題とならないから、それだけで合理的な解雇理由となる、と理解している。しかし、その根拠については何の説明もない。

 (イ) 限定正社員と解雇法理

 限定正社員であれ、契約社員、臨時職員、パートといった非正規労働者であれ、企業は労働者の労働権を尊重することを一般的に義務付けられている。

 企業が一部の部門を別会社に譲渡することがある。営業譲渡は法的には特定承継であり、契約書で譲渡の対象として明記されたものだけが譲受企業に承継される。譲渡される部門で働いてきた労働者はいわば限定正社員にあたり、彼らにとっては元の企業との関係では従来の職場も職務も消滅するが、契約書に承継が明記されなかったからといって、直ちに解雇が認められるわけではない。労働権保障の趣旨に立ち、労働者を承継すべきだとする見解も多く発表されてきた。

 また、2000年の商法改正により会社分割という手法が認められた際、同時に、会社分割に伴う労働契約承継法が制定され、労働者の雇用継続を当然の前提としつつ、分割される会社への承継の在り方が定められた。

 要するに、営業譲渡、会社分割その他の理由により、労働者の従来の職務や事業場が無くなる場合でも、使用者は雇用保障に務めるべきことは労働法上、当然の要請である。

 限定正社員の場合は、1企業内のことであり企業組織の再編による承継問題とは様相は異なる。だが、業務や勤務地は労働契約において特定しているわけだが、企業が一方的な経営判断によって当該業務や勤務地を無くすることとしたのであり、何の落ち度もなく就労してきた労働者を、それだけで解雇し得るわけがない。

 使用者には労働契約で合意した業務や勤務地における就労を保障する契約上の責任がある。契約上は合意の範囲外への配置転換などは命じ得ないが、新たな業務や勤務地への移動を提案するなど、雇用保障の責任を果たす必要がある。労働者の解雇が従来の業務などを消滅させる経営判断にすべて委ねられる、それが直ちに解雇の合理的理由となると考えるべきではない。

 そのような視点から見るとき、限定正社員制度は解雇規制の緩和に自然に直結する性格のものではないにもかかわらず、あたかもそうであるかのように、『報告』や『WG報告』は労働権尊重義務を蔑ろにする考え方、思考の操作・誘導に挑んでいると見るべきである。

 3. おわりに

 限定正社員を法律上どう定義するのか、その解雇に関わって具体的にどのように規定するのか、明かではない。

 9月19日、規制改革会議は限定正社員制度の導入に「特段の規制はない」と指摘し、(1)労働条件明示と(2)人事処遇の在り方は労使間の自主的決定に委ねられることを強調している。新たな立法の措置も検討しつつ、就業規則と労働契約による手法、つまり労働者も合意している解雇理由として扱うことを先行させることを想定しているとも推測される。となると、労働組合および労働者の対応が重要な意味を持つことになる。それとともに、法理論上、労使合意に対する法理論による制約、労使自治の限界という問題になっていく可能性がある。

 政府や財界は、行き過ぎた雇用維持によって企業には過剰な労働者がいるとか、労働者が成長産業へ移動することが不可欠だと強調し、労働力の流動化肯定と労働権軽視への思想誘導を盛んに試みている。既に、雇用調整助成金を削り、労働移動支援助成金を大幅に増額している。失業者も多く、労働者が余っているといいながら、何故、長時間労働が続くのか。労働者も望ましい転職の機会があれば厭わない筈だが、失業と求職状態を作りだして無理やり移動させ、労働者をモノとでも考えているのか。そういった、極く常識的な疑問の眼をもって、安倍内閣の雇用政策や様々な提言を監視し、批判する必要がある。

(よろい たかよし・常任理事・龍谷大学名誉教授)

研究部会報告

・女性労働研究部会(9月11日)

 労働とジェンダー平等にかかわるブックレットの作成について検討した。「劣悪な労働実態が、ジェンダー差別を利用してつくられ、男性にもひろげられてきたこと」「男女すべての労働者にディーセント・ワークを実現するためにはジェンダー平等が不可欠であり、労働組合がジェンダー平等問題を重視することが重要である」ことがわかるようなものにすることをめざすこととし、具体的な内容の骨子案について論議した。

・労働組合研究部会(9月14日)

 1955年から89年まで総評書記局で活動した公文昭夫氏から「体感・総評労働運動の光と陰」と題して報告を受け、質疑を行った。報告は、(1)総評労働運動・体感前史(高知の海員組合分会と日教組高知支部情宣部の経験)、(2)55年春闘発足・「春闘・健保で明け、基地反対で走り、米価で暮れる」・総評労働運動「事始め」、(3)総評労働運動の「よき遺産と」評価されるもの、(4)総評労働運動の危機・衰退、解体へむけての流れをどうみるか―のレジュメに沿って行われた。質疑・討論では、(1)指導体制の変遷とその特色、(2)総評の社会保障闘争をめぐって、(3)労働戦線の再編と総評の対応などが主な論点となった。

・社会保障研究部会(9月19日)

 中央社会保障推進協議会の山口一秀事務局長をお招きして、中央社保協第57回全国総会運動方針から総会文書「『税と社会保障の一体改革』撤回、『社会保障制度改革推進法』を廃止し、権利としての社会保障の確立を」についてご報告をいただき、社保協運動の実情や生活保護世帯の現実などについて討論を行った。

10月の研究活動

10月10日 中小企業問題研究部会(公開)
   12日 大企業問題研究会
   19日 経済分析研究会
       労働組合研究部会
   23日 女性労働研究部会
   24日 国際労働研究部会
       インド・マルチスズキ調査団報告会

10月の事務局日誌

10月16日 自交総連大会へメッセージ
   17日 労働法制中央連絡会総会
   19日 全労連非正規センター総会
   25日 春闘共闘総会
   26日 第1回常任理事会
       労働総研クォータリー編集委員会