労働総研ニュース No.258 2011年9月



目   次

労働運動総合研究所
アニュアル・リポート〜2010年度
2011年度定例総会報告ほか




労働運動総合研究所

アニュアル・リポート〜2010年度


「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」プロジェクト

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」

責 任 者 牧野 富夫

メンバー人数

8名(推進メンバー)

(1)明らかにしようとしている中心点
 21世紀の第一四半世紀末(2025年ごろ)までに「人間的な労働と生活」を「新たに構築」するための理論的・実践的な提言を策定すること。

(2)明らかになった論点
 めざすべきビジョンとしての「人間的な労働と生活」とは何か。その「実現の条件」は何か。これらに関する試論を、プロジェクト責任者が個人論文(たたき台)として「月刊全労連」(2011年10月号)に掲載。

(3)これから解明すべき論点
 一つは、「人間的な労働と生活」の、より踏み込んだ理論的・実践的な解明。二つは、時短をコアに「人間的な労働と生活」の条件を切り拓いていくという仮説の正当性の検討と、その具体化をめぐる詰め。三つは、作業部会の成果の集約、全体の中での位置づけ。

(4)その他
 「報告書」を2012春闘期間・「3.11」前後に発表することを決定。普及版(ブックレット)を先行して1月に発刊するための準備を開始する。

賃金・最低賃金問題研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

現代日本における賃金水準・相場形成と労働組合

責 任 者 藤田 実

メンバー人数

12名

(1)調査研究が明らかにしようとしている中心点は何か
 正規労働者の賃金水準・相場形成に関する現状把握と論点整理
 非正規労働者の賃金水準・相場形成に関する現状把握と論点整理

(2)年度期間中に明らかになった論点
 ここ数年の正規労働者の賃金抑制傾向の原因を春闘での要求設定と組合の闘い方という観点から、NTT(通信労組)、電機(電機懇)、トヨタを事例に検討してきた。その点から言えば、働かせ方における過重労働傾向は依然として強いが、成果主義についてはやや揺り戻し傾向にあり、年功的な側面を排除できていない(電機)ことが明らかになっている。ただし、中高年層の賃金抑制傾向はどの産業でも共通しており、若年層と並んで中高年層での賃金底上げが実践的にも重要である。
 また2000年代に明確になってきた賃金抑制が春闘での賃上げの低迷によることは明確であるので、春闘の再構築をどのように進めるべきかも論点になっている。
 なお今年度におこなった研究部会のテーマは次の通りである。
「賃金水準の動向の分析」「パート賃金の実態と政策課題」「電機連合の賃金政策と賃金実態」「NTTにおける賃金体系の変遷と実態」「賃金と最低賃金をめぐる現状と課題」「『春闘の歴史と展望』をめぐって」「春闘の再構築」

(3)これから解明すべき論点
 「人間らしい労働と生活」を実現していく上で、賃金水準は重要な決定要素でもあるので、正規労働者の賃金水準はどのように決められるべきか、そこでの労働組合が果たすべき役割について明確にするとともに、日本の賃金水準を決定してきた春闘の再構築についての論点整理を進めていきたい。
 同時に、女性や若年層に多い非正規労働者の低賃金水準を規定している問題についても研究を深めていきたい。

女性労働研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

ジェンダー平等への理論と運動

責 任 者 川口 和子

メンバー人数

8名

(1)調査研究が明らかにしようとしている中心点

  • 雇用における性差別、その形態、および運動の現状。
  • 背景にある財界・政府の政策、および国際的動向と、日本の今日的諸特徴。
  • 平等実現への理論上、運動上の具体的課題。

(2)年度期間中に明らかになった論点

  • 賃金の男女格差是正への国際原則について。
    • 「同一労働同一賃金」「同一価値労働同一賃金」は、国際的にも長らく同義と解釈されてきたが、性別職務分離への対応として「同一労働…」から「同一価値労働…」へ発展。「同一労働…」原則否定ではない。
    • 「同一価値…」原則万能論、および職務給化推進論には、とくに日本の場合には疑念。慎重な対応が必要。
  • 女性の過半数を占める非正規雇用、性差別と雇用形態格差について。
    • 雇用は「無期」を原則として徹底し、有期雇用は業務限定、期間限定、均等待遇原則を徹底すべき。
  • 雇用における平等実現には、時間外・休日労働の男女共通規制、とくに労働時間短縮をはじめディーセントワークの確立、育児・介護はじめ社会保障と公的福祉の充実が不可欠の土台。

(3)これから解明すべき論点

  • 男女賃金格差是正への一手法として、「同一価値…」による職務評価基準をどう設定するか。とくに労組の賃金闘争の課題として。
  • 厚生労働省の「男女格差是正へのガイドライン」「パートの職務評価分析マニュアル」等に、労組はどう対応するのか。
  • 性差別是正へ、法制度をどう改定するか。労基法、男女共同参画法、その他。
  • 非正規雇用の多様な形態別に、女性労働の視点から性別格差と雇用形態格差の関連の検討。

(4)その他

  • 女性労働者、労組女性部の現状、問題、課題を把握するために、全労連女性部との連携を強めたい。
  • 女性労働問題は学際的なので、他の部会との連携を強めたい。

中小企業問題研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

中小企業経営の現状と労働組合運動の発展

責 任 者 松丸 和夫

メンバー人数

12名

(1)研究経過
 当部会では、グローバル化の進展に伴う企業のアジア進出、先行き不透明のなかで中小企業が生き抜くために、また、関係単産が直面している諸問題に対処するために、計9回の研究会(うち2回は公開)を開催し、部会メンバーを中心につぎのような課題を研究して成果を共有することに努めてきた。
 研究テーマは第1に、民主党政権が打ち出した「新成長戦略」をどう見るか、中小企業の立場で政策・運動の両面を解明した。第2は、本年3〜4月に実施された一斉地方選挙にむけて「中小企業・地域経済の振興をめざす」課題と展望について、地方労連の幹部にも案内してその政策を示した(以上は公開で開催)。第3は、東日本大震災の救援・復旧をめぐって、労働組合と中小業者の取り組みを紹介し、復興策を交流しあった。
 こうした研究活動とは別に、学習の友社より中小企業労働運動についての書籍発行の要請があり、その具体化を並行して相談してきた。関係単産のなかでも、中心的な役割を果たしてきた団塊の世代が順次定年を迎えて次世代へのバトンタッチがすすんでおり、次世代を担う30歳代の組合役員・活動家向けに「中小企業労働運動の実践手引書」の発行が求められていることから、4回の討議を重ねて各々執筆活動に入った。

(2)研究発表
 2009年度以降の研究成果は、『労働総研クォータリー』2010年夏季号に「特集・経済危機下の中小企業問題」として集約することができた。発行後は書籍の普及に努め、会員・読者以外の組合役員、活動家、学生(中小企業論受講生)などへ普及した。

(3)今後の課題
 以上の研究活動を踏まえ、今後の部会運営は第1に、執筆中の『中小企業の未来を拓く―労働組合の課題と解決法』(学習の友社)を予定通り10月上旬までに発行して、2000部の普及に努めることである。第2は、前記書籍のなかでも紹介している「中小企業・地域経済の振興をめざす」取り組みや、「東日本大震災・福島原発事故で被災した中小企業・業者の事業再開と労働者の生活再建にむけて」の取り組みについて、全労連・地方労連や中小業者の運動に寄り添いつつ理論面で応援していくことに努めていきたい。

国際労働研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

2010年の世界各国の労働者のたたかい

責 任 者 斉藤 隆夫

メンバー人数

11名

(1)調査研究が明らかにしようとしている中心点
 主要各国の労働者・労働組合のたたかいの課題、規模・戦術、到達点。

(2)年度期間中に明らかになった主な論点
 ■ 欧州諸国では、ギリシャの財政危機表面化をきっかけに公務部門の人員削減・賃金凍結、社会保障削減などの緊縮財政政策がとられた。こうした政策に反対して、7回におよぶゼネストを実施したギリシャをはじめ、6つの労働団体の統一行動による6回のデモ( 参加者は3000万人 )をおこなったフランスなど各国の労働者・国民は大規模な反対運動を展開した。緊縮財政政策とのたたかいは欧州において今後しばらく継続的課題となろう。
 ■ インド、ASEANなどの新興工業国では08年以来の経済危機からいち早く脱し、高率の経済成長率を回復したが、同時に所得格差の拡大も進行しており、賃上げ・最低賃金制確立などでの労働組合の取り組み強化が求められている。そのなかで、インドでは1991年以来13回目の全国的規模のストライキが取り組まれた。今回のストは左翼系労組だけでなく与党国民会議派系の労組センター等も含めた全センター労組が共同して取り組んだたたかいである点で注目される。
 ■ 同様に新興工業国であるブラジルでは、経済成長に伴い雇用状況も改善している。ルラ革新政権の8年間で、最貧困層の所得が5倍化し、雇用全体に占める正規雇用の割合は2004年の36.1%から2008年の40.9%へと増加したなどの一連の革新的政策の積み重ねのなかでのいち早い経済回復であることが注目される。今後、より立ち入った研究が望まれる。
 ■ 中国、ベトナムなど社会主義をめざす国々でも経済成長は著しいが、所得格差の拡大も見られる。そうしたなか近代的労使関係、労働法制の整備が重要な課題になっている。

(3)部会にとっての今後の課題
 全体として部会メンバーの高齢化がすすみ、新しい執筆者の探索が必要になっている。

労働時間・健康問題研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

ディーセント・ワークの実現に向けて

責 任 者 西村 直樹

メンバー人数

8名

(1)調査研究が明らかにしようとした課題
 部会は2010年9月1日から2011年7月19日まで、9回行なった。
 第1回部会では牧野プロジェクト作業のために、時間的ゆとり作業部会→西村、心身の健康作業部会→佐々木があたることを確認。牧野プロジェクト推進チームから、日野秀逸常任理事が1月14日の第4回部会以降、参加されている。この間、いの健福地先生と法学者西谷先生のディーセントワークに関する2つの著書の読後交流などもおこなった。
 昨年度の末(2010年6月)に、全労連・いのちと健康を守る全国センター・労働総研労働時間・健康問題研究部会の3者で現在の局面における労働時間短縮のための基本的政策合意ができた。この内容は、若干の補強をして「労働総研クオータリー」第82号(2011年春季号)に西村が「研究部会動向」の欄に『新たな労働時間短縮・健康を守る大運動を展望して』と題して発表した。補強点の1つは成績主義賃金がもたらしている「自主的」ただ働きが広がっている事実の指摘、ワーク・ライフ・バランス論の、日本政府と財界のゴマカシに対して、世界的規模では男女均等政策の一環として推進されていること、われわれの立場は世界的視野でこの課題に取り組むべきであろうという補強である。ほかに「学習の友」誌のディーセントワーク特集号、労働時間短縮闘争特集号、いの健センター誌などに、部会メンバーが執筆している。

(2)これからの課題
 東日本大震災・大津波・原発事故以降、労働総研が4月22日に、全労連が5月20日に提言を発表したが、そこで謳われた大幅な労働時間短縮、年次有給休暇完全取得、長時間過密労働排除などの呼びかけの実現をめざす運動がこれからの課題となる。健康問題では、4月20日付で日本学術会議労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会の報告「労働・雇用と安全衛生に関わるシステムの再構築を−働く人の健康で安寧な生活を確保するために−」が発表されている。学術会議の先生方の杞憂や心配を追い風に、健康問題での労働組合の取り組みをもっと大胆にとりあげていく労働組合運動の強化が必要だと考えている。

労働組合研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

労働組合運動の現状と再生・強化の展望
―組織問題を中心に

責 任 者 小林 宏康

メンバー人数

16名

(1)調査研究が明らかにしようとしている中心点は何か
 テーマの通りだが、さしあたり「現状と問題点」の解明を重点としてきた。

(2)年度期間中に明らかになった論点、3)これから解明すべき論点
 (1) 1〜4回は「現状認識・問題意識の共有」をテーマとした。「現在」を知ることは、「過去」を総括し、「未来」を展望することと不可分で、ある国の労働組合運動総体をどう観るか(評価の方法・基準)や、「労働組合とは」という問いにどう答えるかで現状認識は異なる。思ったより厄介な作業で、短い文章で整理できる段階ではない。作業課題、論点の整理はある程度できたか? a 企業別組合を基本単位とする日本の労働組合の運動と組織をどう捉えるか、b「労働戦線再編」後の20年をどう見るか。c 今世紀に入っての「非正規労働者の組織化」の現状と展望と「既成労組」の強化・改革の視点でどう捉えるか、など。
 事実を踏まえた的確な「現状認識」と「問題意識」の明瞭化は引き続くテーマ。
 (2) 5〜8回は、比較研究の視点から、ドイツ、韓国(公開研究会)、イタリア、アメリカの労働組合をとりあげた。予測したことだが、日本で流布してきた「欧米の労使関係・労働組合」像には、修正が必要と思われる。例えば、a 企業・事業所に交渉権を持つ組合組織を持つ国は少なくない、b 産業別組合と個別企業の交渉・労働協約が増えている、c 「年功的昇給」がある国は少なくない、d ナショナルセンター、産業別労働組合、ローカルセンター、企業・職場組織のあり方、相互関係は欧米でも実に多様であり、e日本的労使関係・労働組合の「特異性」という概念は検証・再定義を必要とする、f 労働組合運動のありようはその国の政治=「民主主義」のありようと深く関連する―等々の論点が浮かび上がってきたように思う。
 比較研究は、引き続き継続し、a アジアの労働組合、フランス、北欧の労使関係・労働組合、b 産業別労働組合と職場・企業における組合組織との相互関係、ナショナルセンター、ローカルセンターの役割(調整、指導、交渉)、未組織労働者の組織化―などについてとりあげたい。
 (3) 6月から日本の「単産研究」(産業別の組織と運動の強化を中心に)に入っている。全自運―運輸一般に続き、国公共闘―国公労連をとりあげたが、全金―JMIU、医労協―医労連など、とりあげたい単産は多い。単産を対象にアンケート調査や聞き取りをする予定で、作業部会で検討する。組織・運動論を中心とした先行研究の検証と関連して、6,70年代の鉄鋼労連、私鉄総連、公労協単産などもとりあげたい。大企業研究会との共同研究会ができたらとも考えている。単産研究の対象をどうしぼるかが問題。8月に、「単産調査」を中心に、作業部会を開き、今後の「単産研究」の計画を具体化する。

(4)その他
 当研究会では、報告や討論の要点記録をメンバーに公開してきた(遅れ気味だが)。
 ごく簡単でよいから、労働総研の主要な会議、研究会についても「何が議論されているか」わかるような記録を参照できる体制がとられれば、各研究部会にとっても、個々の会員にとっても有益であろうと思う。

労働者状態統計分析研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

労働者状態にかかわる統計資料と内部留保の分析とそれにもとづく政策提言

責 任 者 藤田 宏

メンバー人数

12名

(1)調査研究が明らかにしようとしている中心点は何か
 労働総研と全労連が共同編集している『国民春闘白書』の内容充実を図ることが、本研究部会の第一義的課題である。本研究部会は、『国民春闘白書』を、春闘に役立つ統計データブックとして一層の充実をはかるために、部会メンバーは、年間を通して、日本経済、労働者家計と賃金、雇用、働くルール確立などの資料を収集している。その成果は、『国民春闘白書』に生かされ、全体として関係者から歓迎されている。
 『白書』の編集にかかわって本研究部会が力を集中しているのは、(1)労働者状態にかかわる統計の全体的分析、(2)企業の内部留保・企業分析と日本経済のマクロ的な研究を進め、その成果を春闘に向けた政策提言としてまとめることである。
 そのためには、系統的に各種データの充実にいっそうの努力を払うと同時に、内部留保と各種統計データを活用しての産業連関をもちいてのさまざまな試算結果を含め、春闘の論戦をリードする提言を重視していくことにしたい。

(2)年度期間中に明らかになった論点
 ▽『国民春闘白書』2011年版では、大企業の内部留保についての歴史的分析をおこなうなかで、日本経済停滞の要因の一つが、大企業の異常な内部留保のため込みであることを解明し、内部留保を労働者の賃上げ、労働条件の改善のために活用することが内需重視・生活改善型の日本経済に転換するうえで、不可欠の課題になっていることを明らかにした。その成果は、「労働総研提言・働くものの待遇改善こそデフレ打開の鍵」としてまとめ、春闘の論戦をリードする力になった。
 ▽内部留保の活用をめぐって、それが不可能であるかのような宣伝が行われているもとで、「内部留保のいくつかの議論について」を労働総研ホームページに掲載。内部留保の活用ができることを具体的に明らかにした。

(3)これから解明すべき論点
 労働時間や賃金など、日本の労働条件の国際比較について、単なる制度・ルールの比較にとどまらず、それをどのように労働者が活用しているかという点にまで踏み込んだ解明をすることによって、日本の労働者が実感を持って、自らの要求に大義があることを自覚し、働くルール確立の運動に取り組むことができるような調査・研究を進めることを目的に、労働総研仏英調査団に参加した。その成果を研究所プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」に反映させる。

(4)その他
 『国民春闘白書』の執筆はもちろん、『労働総研クォータリー』、労働総研ブックレットなどに研究成果を発表することを意識的に追求する。

関西圏産業労働研究部会

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

現代資本主義と不安定就労問題

責 任 者 丹下 晴喜

メンバー人数

9名

 2010年度、関西圏産業労働研究部会は、計6回研究会を行い、11本の報告について検討をおこなった。

(1)今年度の研究会で取り組んだこと
 関西圏産業労働研究部会では、(1)現代資本主義を批判し、今後の経済社会の在り方を展望するための既存の研究成果の検討、(2)若手研究者の養成を目的とした大学院生への報告機会の提供という二つの課題を念頭に研究会をおこなってきた。今年度開催できた研究会は以下のとおりである。
 (1)2010年5月29日 a.「アスモ社における外国人従業員の入植過程および労働過程」 b.「宮本太郎『生活保障』を読む」。(2)7月10日 a.「新自由主義とはなにか―D.ハーヴェイの検討」 b.「関西私立O大学における派遣労働者直接雇用化とO大学労働組合の対応」。(3)9月25日 a.「電器産業工場組合の臨時工 X社K工場とX社T工場の事例」 b.「静岡西部地域の自動車部品メーカー・アスモ社における日系人労働者」。(4)11月20日 a.「ジャック・アタリ『金融危機後の世界』を読む」 b.「大阪における若者の貧困問題」。(5)2011年1月22日 a.「書評:橘木俊詔・浦川邦夫『日本の貧困研究』」 b.「書評:三好正巳編『増補版 現代日本の労働政策』」。(6)4月23日 a.「2011年春闘をどうみるか」。

(2)年度期間中に明らかになった論点
 毎回の研究会では多様な側面にわたって議論が行われたが、まず(1)a,(2)b,(3)ab,(4)b,(6)aの報告からは現代資本主義のもとでの非正規雇用の現状と増加の背景がそれぞれの事例にしたがって明らかになった。
 また(5)abについては、現代資本主義のもとで増大する非正規雇用を捉える方法について議論がなされた。
 さらに残りの(1)b,(2)a,(4)a,の検討をつうじては、労働者階級内部における中間的な階層―これはケインズ主義的現代資本主義のもとである程度の状態改善を実現した階層―の崩壊=条件悪化が生じているということ、にもかかわらずこれらの階層が政治的には無党派浮遊層の中心となっており、みずからの条件悪化をもたらす政策を受容していることなどが明らかになった。また、このような現状を前提に、日本およびヨーロッパ各国について、どのような政策提案が検討されているのかについても明らかとなった。

(3)これから解明すべき論点
 これから解明すべき論点としては、まず労働者階級の貧困化をその内部構成別に明らかにすることが必要である。このためにはこの研究会で取り組んできた非正規雇用増大の現状と背景などについてさらに深めるとともに、これまで比較的安定的であるとされた正規雇用の貧困化について新たに検討していくことが必要であると思われる。
 さらによりましな経済社会を検討するうえで、海外、特にヨーロッパの資本主義の到達点、労働制度や社会保障制度の現状を批判的に検討していくことが必要である。
 次年度についても、以上のような問題意識を念頭に研究会を進めたいと思う。

英語ライティング教室

年度中に取り組んだ調査研究テーマ

読んでわかる英文を書くための基礎研究

責 任 者 岡田 則男

メンバー人数

12名

 英語で海外に発信する能力を、全労連の運動としてもつために2005年3月より毎月2回のペースで継続して開いており、参加者も増えた。毎回出される和文英訳の課題の「宿題」に熱心に取り組み、教室での批評・研究をつうじて、英語文を書くうえでの基本を学び確実に上達している。扱う材料は、労働運動にかぎらず、政治、経済、福祉、外交などあらゆる分野の、論評、インタビュー、エッセーなど幅広い。また、英文を書く力をつけるうえで欠かせない「英語を読む」力を向上させること、和文英訳において重要な日本語文を正確に、深くとらえて読むことの重要性を学んでいる。これらをつうじて、海外に正確に、わかりやすく伝えるための和文英訳を研究している。

(2010年9月から2011年7月までの1年間に扱った主な和文英訳課題文)

物価が恒常的に下落する「デフレ」の本当の原因は、…(「しんぶん赤旗」)
いまから65年前、敗戦を境に日本の放送は大きく変わった。(「しんぶん赤旗」)
都心にある日本有数のホテルの中に老舗の料亭が店を出しています。屋内とは思えない立派な和風玄関もあり、まるで別世界です(「しんぶん赤旗」潮流)
チリ銅山救出劇だった。(東京新聞 筆洗)
社説「日米首脳会談 同盟『進化』の礎を築け」にはとても失望させられました(東京新聞 投書)
いま日本は、年金、後期高齢者医療制度、ガソリン税、道路特定財源問題等、小泉時代のつけが回ってきてとんでもないことに(辻井喬「憲法に活かす思想の言葉」より)
なにか大きな失敗をしでかしたあとは、ああ二度とあのような失敗をしないようにしようと思う。(『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』「あとがき」より)
90年ほど前、イギリスの政治家が次のように論じました。“自由な、規模の大きい国で、政党なしにやってきた国はない。(「しんぶん赤旗」潮流)
日本がTPP(環太平洋連携協定)に参加して農業の自由化がすすめば、年間10兆円程度の農業生産額の4割も失われ、食糧自給率は13%になるとの農水省の試算があります(TPP参加 異議あり 兵庫県篠山市長 酒井隆明さん)
政府は、相変わらず「日米同盟第一」「アメリカの核抑止力が必要」と言い続けています(2010年を振り返って−高草木博日本原水協事務局長)
「何のための政権交代だったのか」――民主党への期待は、幻滅から怒りへと変わっています(日本共産党のいっせい地方選挙政策アピールより)
「北方領土返還要求全国大会」が開かれました(「しんぶん赤旗」)
自動車や電機など主要企業労組が経営側に要求書を提出した。焦点は一時金(ボーナス)の増額という。(東京新聞)
東京都知事選で革新都政をつくる会の小池あきら氏に期待する文化人、アピールを発表(「しんぶん赤旗」)
日本の政治では、ここ数年、短命内閣が続いています(不破哲三『時代の証言』より)
音楽家も委託形式も「労働者」(「しんぶん赤旗」)
東京電力福島第1原発で起きた最悪の事故。“安全神話”のもとで推進されてきた原発の危険性が現実になりました。(「しんぶん赤旗」)
首相が国民にメッセージを発する方法は多岐にわたる。(東京新聞)
矢臼別自衛隊演習場内に住み続けた川瀬氾二さん(「しんぶん赤旗」潮流)
「母と子どもが安心して住める世の中をつくるために、お母さんの力を結集しましょう」(「しんぶん赤旗」潮流)
カタルーニャ国際賞授賞式での村上春樹のスピーチが大きなニュースになった(東京新聞)
東大工学部原子力工学科卒業生にも、原発推進に異を唱えた人がいる。(東京新聞)

 国際的コミュニケーションで「わかる文章」が書けることをめざし引き続き言語的基礎能力の学習を重視したい。

2011年度定例総会報告

 2011年7月23日、東京都文京区・全労連会館において、労働運動総合研究所2011年度定例総会は開催された。
 午後2時、大須眞治事務局長が、規約第22条により本総会は有効に成立しているとして、開会を宣言した。
 事務局長が議長に金田豊理事を、議事録署名人に議長及び天野光則理事、辻岡靖仁理事の2名を諮り、全員異議なく選出した。
 議案の審議に先立ち、この1年に逝去された会員への哀悼の意を表し、出席者全員で黙祷をささげた。続いて、小越洋之助代表理事が主催者挨拶をおこなった。次いで、全労連議長である大黒作治様から来賓挨拶をいただいた。
 「2010年度における経過報告」について藤田宏事務局次長より報告され、次いで「2010年度会計報告」について事務局長より、また、「2010年度監査報告」について、渡辺正道監事より報告された。
 経過報告については、2点の補強意見があった。1つは、労働総研ホームページに掲載されている「内部留保をめぐるいくつかの議論について」を研究所の政策発表に盛り込むこと、労働総研提言のなかで使われている産業連関表にもとづく試算については、産業ごとの波及効果をできるだけ省略せずに記載するようにすべきという意見である。これらの意見を経過報告に補強することとし、これらの案件については、全員異議なく承認された。
 続いて、「2011年度方針案」の「研究所をめぐる情勢の特徴」が、事務局次長より提案された。次いで「2011年度事業計画」および「研究所活動の充実と改善」について事務局長より提案された。
 続いて、「2011年度予算案」が、事務局長より提案された。
 討論の最初に、研究所プロジェクトについての報告を牧野富夫代表理事がおこなった。報告では、プロジェクトの目的と意義、そのポイントが明らかにされ、「2012年春闘」時の発表をめざして提言の作業をすすめることが提起された。
 討論では、研究所プロジェクトについて、発表の時期などをめぐって議論がかわされるとともに、「研究所活動をめぐる情勢の特徴」案を深め、補強する立場から活発な議論が展開された。その主な論点は、以下のとおり。
 (1)第2章「新自由主義的構造改革と労働者・国民との矛盾の激化」については、全体として「貧困の絶対的増大」がすすんでいるという見地で見る必要がある。
 (2)第2章4項「打開の道を模索する労働運動」については、労働時間の短縮が課題になっていることを明記すべきである。
 (3)第1章「東日本大震災と日本社会」について、「東日本大震災」と「福島原発事故」を“3.11”ということばでくくるのには賛成できない。原発事故の被害はいまも広がっており、資料の公開が十分でないことから、どうして解決すべきかわからないという未知の部分もあり、地震・大津波と性格が異なる。
 このほか、他の労働問題研究所の動向を把握することの重要性、自治体労働者の震災復興の取り組みと公務労働のあり方、派遣・非正規労働者の権利を守るための政策提起の必要性など、労働総研の活動強化に関わる意見が出された。
 「研究所情勢をめぐる特徴」について出された意見は企画委員会で検討し、方針に反映することとし、「2011年度方針案」と「2011年度予算案」は全員一致で承認された。
 次に、総会における決議事項がすべて終了したので、金田議長より議長解任の挨拶がおこなわれた。最後に、熊谷金道代表理事より、閉会の挨拶がおこなわれた。
 以上で、2011年度定例総会の全日程は終了した。閉会は午後5時であった。
 なお、閉会後、懇親会がなごやかにおこなわれた。

2010年度第7回常任理事会報告

 2010年度第7回常任理事会は、全労連会館で、2011年7月23日午前11時から正午まで、熊谷金道代表理事の司会で行われた。

I 報告事項

 藤田宏事務局次長より、前回常任理事会以降の企画委員会・事務局活動、研究活動、またブックレット・クォータリーについてなどが報告され、了承された。

II 協議事項

1)大須眞治事務局長より、入会の申請が報告され、承認された。
2)牧野富夫代表理事より、研究所プロジェクトについて提案がされ、協議のうえ承認をされた。
3)事務局長および事務局次長より、2011年度定例総会方針案、「2010年度会計報告」「2011年度 予算案」について報告・提案され、理事会・総会に提案することが確認された。
4)事務局長より第2回理事会および2011年度定例総会の進行と役割分担について提案され、承認された。

2010年度第2回理事会報告

 2010年度第2回理事会は、2011年7月23日午後1時から2時まで、全労連会館にて開催された。冒頭、大須眞治事務局長が第2回理事会は規約第30条の規定を満たしており、会議は有効に成立していることを宣言した後、熊谷金道代表理事の議長で議事は進められた。
 事務局長および藤田宏事務局次長より、2011年度定例総会に提案する議題が提案された。討議の結果、各議題を2011年度定例総会に提案することが確認された。

7・8月の研究活動

7月7日 中小企業問題研究部会
11日 労働組合研究部会
19日 労働時間・健康問題研究部会
研究所プロジェクト心身の健康作業部会
27日 国際労働研究部会
29日 女性労働研究部会
8月2日 賃金・最賃問題検討部会
3日 研究所プロジェクト時間的ゆとり作業部会
4日 中小企業問題研究部会
30日 研究所プロジェクト推進チーム

7・8月の事務局日誌

7月5日 2010年度監査
7日 JAL国民支援共闘会議総会
9日 JMIU大会へメッセージ
全印総連大会へメッセージ
21〜22日 全労連評議員会
23日 2010年度第7回常任理事会
2010年度第2回理事会
2011年度定例総会
27日 医労連大会へメッセージ
28日 春闘白書編集委員会
8月19日 「教育のつどい2011」へメッセージ
20日 三多摩労連20周年記念会
21日 自治労連大会へメッセージ
25日 国公労連大会へメッセージ
26日 「労働総研クォータリー」編集委員会
27日 全労連・全国一般大会へメッセージ
建交労大会へメッセージ
30日 春闘白書編集委員会・執筆者会議