労働総研ニュース:No.244-245 2010年7月・8月



目   次

2010年度定例総会方針(案)
[I]2009年度における経過報告
[II]研究所活動をめぐる情勢の特徴
[III]2010年度の事業計画
[IV]2010年度研究所活動の充実と改善
全労連・労働総研共同学習会報告
「20周年記念労働総研奨励賞」選考結果について




労働運動総合研究所2010年度定例総会方針(案)

2010年7月24日(土)14〜17時、全労連会館会議室

I.2009年度における経過報告

 労働総研は2009年12月11日、設立20周年を迎えた。労働総研はこの1年、設立20周年記念事業に取り組むと同時に、この20年の労働総研の調査・研究活動の到達点を踏まえ、全労連との「緊密な協力・共同のもとに運動の発展に積極的に寄与する調査・研究活動をすすめる」という労働総研設立の原点にもとづく調査・研究活動を今日の情勢にふさわしく発展させてきた。

1.労働総研設立20周年記念事業

 労働総研設立20周年事業として、以下の3つの取り組みをおこなった。

(1)記念シンポジウム・レセプション

 記念シンポジウム「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」を09年12月19日、全労連会館で開催した。このシンポは、08年度からすすめてきた研究所プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」の取り組みのこれまでの成果を踏まえ、このプロジェクトの研究活動をさらに立体的なものとして推進することを目的に開催した。
 シンポジウムは、牧野富夫代表理事がコーディネーターをつとめ、パネリストの柴田外志明(ダイハツ雇用問題を考える会)、ジャニック・マーニュ(共立女子大学教授)、山家悠紀夫(暮らしと経済研究室主宰)、小田川義和(全労連事務局長)の各氏が、それぞれ「トヨタ式労務管理下の労働現場」、「フランスの労働者家庭とその生活」、「働くルールの確立と日本経済」、「労働組合の課題とたたかいの展望」というテーマにもとづいて報告した。シンポジウムには90人が参加し、報告にもとづく熱心な討論がおこなわれた。シンポジウムでの報告と議論は、労働総研プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」をすすめていくうえで、重要な論点を提起するものとなった。
 シンポジウムに引き続いて、全労連会館で20周年記念レセプションが開かれ、70人が参加した。レセプションは、大須眞治事務局長の司会で進められ、最初に牧野富夫代表理事が主催者あいさつ、つづいて大黒作治全労連議長と小池晃日本共産党参議院議員が来賓のあいさつをおこなった。熊谷金道代表理事の音頭で乾杯し、和やかな懇談がおこなわれ、参加団体紹介の後、五十嵐仁大原社研所長、宮垣忠国公労連委員長、村上英吾日本大学准教授・労働総研理事がスピーチをおこなった。

(2)労働総研奨励賞

 20周年記念労働総研奨励賞表彰事業を実施した。この事業は、若手研究者の労働運動に関連する分野での研究や調査研究の今後の発展を促すことを目的に取り組まれ、若手研究者を対象とした「個人部門」、労働組合調査部などによる調査研究活動を対象とした「団体部門」の2つの部門で論文を募集した。「個人部門」10件、「団体部門」12件の応募があった。表彰事業は、労働総研の活動に若手研究者の意欲的な研究成果を結集するうえでも、また、労働組合の調査研究活動を激励するうえでも、重要な役割をはたし、今後の労働総研の活動の前進につながるものとなった。応募論文については、選考委員会(委員長・日野秀逸常任理事)の選考を経て、各部門それぞれ労働総研奨励賞1席1編(賞金30万円)、労働総研奨励賞2席2編(賞金15万円)が選ばれ、今総会で表彰される。
 表彰事業の賞金など運営資金は、会員を中心とした募金活動によってまかなわれた。

(3)『労働総研クォータリー』No.78・記念企画「《鼎談》労働総研設立の原点と労働運動の前進」

 『労働総研クォータリー』No.78(2010年春季号)では、20周年を記念して「《鼎談》労働総研設立の原点と労働運動の前進」を企画した。大黒作治全労連議長、牧野富夫、熊谷金道両代表理事が参加して、全労連運動のなかではたしてきた労働総研の調査・研究活動の役割をふり返りながら、労働総研設立の原点にもとづく活動をいっそう発展させることの重要性を浮き彫りにした。

2.研究所プロジェクト

(1)「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」プロジェクト

 シンポジウム(09年12月19日・20周年記念事業の項参照)、および公開研究会(09年9月12日・長谷川真一ILO駐日事務所所長報告、10月24日・黒田兼一明治大学教授報告)をおこななった。

(2)「21世紀労働組合の研究」プロジェクト

 本プロジェクトは、05年度に実施した全労連との共同調査「労働組合の活動実態と課題・展望」の成果を出発点として、21世紀前半における労働組合の発展方向、とくに組織拡大の可能性をさぐることを目的として、取り組まれた。その成果は、『労働総研クォータリー』No.76・77(2010年1月)に、「21世紀労働組合の研究プロジェクト」報告書としてまとめられた。
 「報告」は、(1)労働者・国民が自民党政治にかわる新しい政治の方向を模索する「過渡期」の情勢の下での労働組合運動の課題、(2)全労連20年の歴史的経験の上に立った、全労連、単産、地方組織の機能強化の方向、(3)非正規の組織化の取り組みのなかで浮き彫りにされた労働組合の組織改革の課題、(4)地域労働運動の発展方向とその課題、(5)労働者・国民の文化を創造していくうえでの労働組合の役割――などについて多面的に分析し、「過渡期」の情勢を切り開く労働組合の運動課題を明らかにするとともに、その運動を担う労働組合の組織改革についても踏み込んだ提起をしている。
 「報告」は労働組合活動家の注目を集め、この「報告」にもとづき非正規の組織化を中心とした公開研究会を9月に開催することになった。

3.共同プロジェクト

(1)「最低生計費調査」プロジェクト

 「首都圏最低生計費調査」に続いて、全労連、全労連東北地方協議会、労働総研との共同で、監修責任者・金澤誠一佛教大学教授により、10年3月30日、「東北で働き、暮らす世帯に必要な最低生計費はいくらか〜生活実態調査、持ち物財調査、物価調査に基づく、最低生計費試算」を記者会見で発表した。最低生計費は、首都圏と東北地方では変わらず、全国一律最賃制確立の重要性を浮き彫りにする調査となった。「最低生計費調査」は、さらに、九州、愛知、静岡などに取り組みが広がり、全国一律最低賃金制確立の運動の前進に貢献するものとなっている。

(2)「地域政策検討」プロジェクト

 アンケート調査「あなたの町のすみやすさに関する調査」を全労連、地方・地域労連の協力を得て、北海道、青森、岩手、埼玉、東京、静岡、奈良、兵庫、愛媛、福岡で実施した。この調査結果にもとづき、調査該当地域労連への聞き取り調査をおこない、全労連大会に中間報告をまとめ、年内には最終報告を全労連に提出する予定で取り組みをすすめている。

(3)「労働組合トップフォーラム」

 民主党政権が誕生して初めての春闘となる2010年春闘の課題について、「鳩山政権下の連合と2010春闘」をテーマに、10年1月14日に開催した。このフォーラムには、全労連三役をはじめ単産委員長、労働総研の代表理事らが参加し、春闘をめぐる情勢について意見交換した。

4.研究所の政策発表

 2010年春闘を前に、09年11月18日、「経済危機打開のための緊急提言・内部留保を労働者と社会に還元し、内需の拡大を!」を記者会見し、発表した。記者会見では、牧野富夫代表理事が緊急提言の内容について報告した。提言は一般マスコミにも取り上げられ、社会的反響を呼び、「膨大な内部留保を社会的に還元せよ」の要求は、2010年春闘の中心課題の一つとなった。

5.研究部会

 「労働総研アニュアル・リポート2008」(「労働総研ニュース」No.234・2009年9月号掲載)を発表。
(1)賃金最賃問題検討部会(9回開催)
(2)女性労働研究部会(9回)
(3)中小企業問題研究部会(8回・うち公開5回)、「経済産業省『中小企業憲章(案)』に関するパブリックコメント」を発表(10年5月22日)
(4)国際労働研究部会(6回・うち公開1回)、全労連編「世界の労働者のたたかい2010」に協力。「インド労組センター(CITU)の話を聞く会」を全労連国際局と共催(09年9月3日)。
(5)労働時間・健康問題研究部会(9回・うち公開1回)
(6)労働者状態統計分析研究部会(2回・「国民春闘白書」編集委員会を含む)、全労連・労働総研編「2010年国民春闘白書」を発表。
(7)関西圏産業労働研究部会(4回)

6.研究活動の関連施策

(1)研究例会

 労働組合運動の直面する課題について、日ごろの労働総研の研究成果を生かし、職場・地域で生まれている疑問に答え、運動の前進に寄与するため、全労連と労働総研の合同研究会の取り組みをスタートさせ、以下の取り組みをおこなった。いずれの取り組みも、職場や地域の組合活動家から歓迎されるものとなった。
 全労連・労働総研共催公開学習会「内部留保の社会的還元を! いま何が必要か―あなたの疑問に答える」(10年2月10日)
 全労連・労働総研共催公開学習会「低迷する賃金・景気〜最賃闘争をどう発展させるか―全国一律と時給1000円以上を―」(10年6月16日)

(2)研究交流会

 10年2月9日、賃金最賃問題検討部会と女性労働研究部会が共同で、報告者に堀内光子氏(文京学院大学大学院客員教授、元ILO駐日事務所代表)を招き、「国連・ILO等の均等待遇政策・EU各国の具体化の動向について」をテーマに研究交流会を開催した。

(3)E.W.S(English Writing School)

 わが国の労働運動を中心とした情報を海外に発信するための書き手養成講座として始まったE.W.Sは、今年度も毎月2回定期的に開催した。その成果を生かして、「Rodo‐Soken Journal」の英訳をおこなっている。

(4)若手研究者研究会

 若手研究者研究会は、学生の労働組合についての意識に関するアンケート調査をおこない、その分析結果を「大学生の労働組合観について―アンケート調査から見えるもの―」(『労働総研クォータリー』No.75掲載)にまとめ、09年10月1日、研究会メンバーの小澤薫・中澤秀一・村上英吾の各氏が記者会見で発表した。マスコミや労働組合幹部からも、学生の労働組合にたいする意識が肯定的に変化しているとして注目された。

(5)産別会議記念労働図書資料室

 堀江文庫をはじめ労働図書の整理、公開に向けた準備をおこなった。

7.その他

 労働法制闘争本部・中央連絡会の事務局団体として活動に参加した。
 解放運動無名戦士の墓に、故・藤吉信博前事務局次長の合葬手続きをおこない、追悼集会に熊谷金道代表理事、大須眞治事務局長、藤田宏常任理事が参加した。

II.研究所活動をめぐる情勢の特徴

1.世界経済の現局面と平和・社会進歩への激動

(1)暗雲広がる世界経済

 2008年秋にはじまった金融・経済恐慌は、大局的にはほぼ収拾され、今日の世界経済はゆるやかな回復過程をたどっている、といわれる。しかし、先進資本主義諸国における経済活動はいぜん停滞から脱けだしていない。そればかりか最近の経済情勢の前途には、いくつもの暗雲がたちこめるようになっている。
 一つは、アメリカにおける雇用の改善が、オバマ政権の大規模な財政投入にもかかわらず遅々としてすすまないことに示されているように、この間の不況対策にたいする労働者・国民の失望と怒りが各国で増大していることである。そして、コスト削減による「雇用なき業績改善」が、やがて「二番底」の不況をまねくのではないかという不安が、人びとの間で広く共有されるようになっているという問題である。
 二つは、金融危機で打撃をうけた金融投機資本が息を吹き返し、その強欲な収奪と危険な投機活動をふたたび展開しはじめたことである。ギリシャ経済危機に見るように、かれらの標的になっているのは、あれこれの民間企業ばかりでなく、弱点をかかえる国家経済であり、EUのような経済圏でさえある。これに対しては、金融危機の再発を恐れるアメリカ政府やEU諸国が、投機資本の規制強化にむけて緊急に対策を講じつつあり、本年4月のG20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)も金融規制改革の具体化にむけて精力的な作業をすすめているが、この問題は不況対策としてもますます重要な課題となっている。
 三つには、投機資本の攻撃とも関連して、多くの国々が公的債務の削減を理由として、労働者・国民の労働・生活条件切り下げへ動きはじめたことである。公務員の削減やその賃金・労働条件切り下げ、社会保障・年金の削減、さらには労働者の解雇条件の緩和にいたるまで、これまでの「不況対策」と逆行するような政策への転換が見られるようになった。それはしばしば、政治路線の右傾化と結びついてすすんでいる。とはいえ、不況を再来させかねないこうした動きに対しては、公務員労働者をはじめとする広範な国民の反対運動が発展しており、新自由主義的な政策への回帰が簡単に許されるような状況ではない。
 四つには、恐慌後の世界経済を牽引してきた中国をはじめとする新興国の経済成長が過熱気味となり、その経済成長に対する抑制措置がとられるようになったことである。それに加えて、中国で、政府が経済成長に対応した労働者・国民の「所得倍増」政策を推進するようになり、労働者の賃上げ・待遇改善の要求とストライキ闘争がかつてない規模で発展するようになっているように、新興国における労働コストは急激に上昇している。これまでのように先進諸国の多国籍企業が、途上国への生産移転や収奪強化によって不況の損失を転嫁し、その高収益を確保しつづけるといったことは、急速に困難になりつつある。

(2)危機打開にむけ広がる平和・社会進歩の国際的流れ

 こうした情勢のなかで、日本のような「失われた数十年」に陥らないためにはどうすべきかが、世界中の共通論題になっている、というのが現状である。われわれには、それに対する答えを世界に発信する資格と責任があると言えよう。
 問題の焦点は、国家財政を通じての再分配機能を国民本位に改善・強化するだけでなく、現代資本主義の蓄積過程そのものを国民の利益にそって規制し改革していくことができるかどうかにかかっている。地球規模的な金融独占にまで肥大化した多国籍企業の蓄積方式を改革するには、諸国民の緊密な協力・共同が不可欠であり、それは容易なことではない。しかし、それが決して夢物語ではなく、現実に可能な課題であることを、われわれは最近、身をもって証明することができた。それは、NPT再検討会議の成功である。
 本年5月、ニューヨークの国連本部で開かれた核不拡散(NPT)再検討会議は、核保有国をふくめた全世界共通の目標として「核兵器廃絶」を明確に約束する場となった。核保有国の抵抗により、核抑止論を完全には払拭できなかったこと、タイムリミットを定めた拘束力のある合意とはならなかったこと、核兵器の開発・改良の停止が受け入れられなかったことなど、不十分さをもちながらも、「核兵器のない世界」が人類共通の目標として追求されることとなったのは画期的な成果である。注目されるのは、この成果を生み出す過程に多数の労働組合やNGOが参加し、将来につながる地球規模的な交流と連帯がつくりだされ、力を発揮したことである。こうした交流と連帯の輪は、経済や文化の問題をもふくめ、人類が共通して直面する諸課題の解決に今後ますます力を発揮するに違いない。

2.歴史的転機にたつ日本の政治・経済

(1)格差と貧困の増大と国民の怒り

 いま“格差と貧困”がこの国を覆っている。極度の“不安社会”になっている。国民とくに若者が希望を失っている。自殺・凶悪犯罪・心の病などの増加は、その反映である。このような社会に暗転させた直接・最大の原因は、90年代半ば以降の財界とアメリカのための新自由主義的「構造改革」である。これが“雇用破壊”も引き起こした。雇用破壊が“不安社会”の根底にある。また、財界・政府の「構造改革」提起の背後には戦後一貫して続く「財界とアメリカ優先の政治」がある。「構造改革」の矛盾はすでに05年前後から“格差と貧困”の増大として顕著であった。これに08年秋のリーマンショックによる危機が雇用とくらしを直撃し、国民の不満・怒りは頂点に達していた。

(2)自公政権の終焉と民主党政権

 こうした情勢下で09年の総選挙がおこなわれた。「生活第一」を急遽アピールした野党第一党の民主党が大量の票を獲得し、自公政権は倒され、政権交代が実現した。民主党中心の鳩山政権誕生に対する国民の期待は当初大きかった。だがその政権も、「構造改革」がつくりだした矛盾の一部の手直しを図るポーズをとるだけで、自公政権と同様にアメリカと財界本位の政治を引き継ぎ、結局、沖縄の米軍基地問題をめぐる混迷や「政治とカネ」の問題で崩壊した。鳩山政権に対する国民の期待は裏切られ、事態はいっそう混沌とするに至った。菅政権へと衣替えしたいまも基本は変わらない。
 「構造改革」の矛盾が激化するなかで、発足した政権が1年ともたず次々と崩壊するという政治の激動が続いている。

(3)日本経済と国民生活の危機の根底にある「構造改革」

 さまざまな問題を抱えつつも高度成長期以来「中流社会」ともいわれてきた日本社会を暗転させたのは、やはり「構造改革」である。財界と政府は、バブル崩壊後の経済の長期停滞(「失われた10年」)とアメリカ主導のグローバリゼーションを過度に強調し、これへの対応だとして「国際競争力強化」を理由に「構造改革」を強行した。それは「規制緩和」と「小さな政府」という「悪魔の二本の手」を駆使し、労働法制の骨抜きや社会保障の削減・改悪などを通じて労働者・国民に“格差と貧困”をおしつけた。
 このような「構造改革」が、内需をいっそう冷え込ませ、アメリカを中心とする外需依存経済を増幅させた。この矛盾がリーマンショックで露呈し、日本経済を危機的状況に陥れただけではない。大企業は、そのリーマンショックを口実に派遣切りや賃下げなど労働者への犠牲転嫁に狂奔した。これが「年越し派遣村」に象徴される深刻な雇用破壊現象を惹起するに至った。この雇用破壊・雇用不安の増大が今日の“社会不安の基底”をなしていることを再度強調しておく。

(4)新しい政治への国民的模索と「人間的な労働と生活の実現」

 解決を迫られている課題は多い。なかでも「人間的な労働と生活の新たな構築」が喫緊の課題である。「人間的な労働と生活」の実現なしに個々人の幸せも社会の安定もない。労働者が人間的に働き生活するために必要な共通要件は「経済的ゆとり」「時間的ゆとり」「心身の健康」である。
 ところが「構造改革」でそれらが著しく侵害されてきた。国民・労働者は、「構造改革」がつくりだした矛盾、とりわけ「格差と貧困」への怒りを強め、それに変わる新しい政治を求めて、その方向を模索・探求している。
 この課題追求においても決定的に重要なのは、その実現のための運動の強化である。労働運動のはたす役割は決定的に重要になっている。

3.労働組合運動をめぐる情勢――新たな発展の可能性と課題

(1)たちあがる青年や非正規労働者、労働組合への関心も

 一昨年の「派遣村」を契機に、労働者を使い捨ての消耗品扱いする派遣労働のあり方と自動車や電機をはじめとした大企業の横暴が大きな社会問題となった。それは派遣法など労働諸法制の「規制緩和」と社会保障切り捨ての「小さな政府」の追求などを柱に自公政権が強引に進めた新自由主義的「構造改革」路線批判の世論をひろげ、自公政権を終焉させる国民的な力をひきだすことにもつながった。
 同時にそれは、その渦中に置かれている青年や非正規労働者のなかに積極的な変化をうみだし、「自己責任論」を乗り越え、格差と貧困の広がりを社会全体の問題としてとらえるようになった。これを改革するたたかいに自らが立ち上がり、社会的連帯の諸行動への参加や労働組合に結集する青年・非正規労働者を全国各地で広げている。5月に開催された青年大集会や全労連非正規センターの交流集会の広がりと成功はその一端を具体的に示すものである。また、労働総研・若手研究者研究会の調査によっても、未来を担う学生のなかに労働組合への関心や加入意思が広がっていることが明らかにされている。青年や非正規労働者の中に広がる社会的・政治的自覚の高まりは社会運動発展への新たな可能性を示すものである。

(2)各地に広がる非正規・未組織労働者の組織化

 派遣など非正規労働者自身による組合結成や一人でも加入できる産別組織や地域労組、○○ユニオンへの結集など、労働運動の発展の可能性を示す新たな出来事が大企業や全国の地方・地域に広がっている。非正規労働者の組織化問題をめぐって、一部のメディアなどに、個人加盟のユニオン運動を評価するあまりに既存の企業別・産業別労働組合の活動を「本工・正規労働者中心主義」とやや否定的(消極的)に、時にはこれらを対立的にとらえる意見が散見される。重要なことは、全労連や産別・地方組織など既存の労働組合の全国各地でのリストラ「合理化」や派遣切りを許さないたたかい、労働相談活動などの存在が、企業の横暴にさらされている労働者のたたかいを激励し、組織化を促進していることである。しかし、組織化がすすみつつあるとはいえ、正規・非正規を問わず圧倒的多数の労働者がいまだ未組織の状態に置かれており、非正規の組織化もまだ緒についたばかりである。現在の状況で重要なことは、あらゆる産業・地域にいる膨大な未組織労働者を労働組合に結集することをすべての労働組合が最重点課題として組織ぐるみの運動を追求すること。そのためにもすべての労働者を視野に入れた地域で目に見える運動を全国各地で展開することであり、大切なことは、非正規労働者の組織化戦略などは組織論先行ではなく運動の積み重ねと一体で議論を深めることである。

(3)渦巻く要求、重要さを増す全労連の責任と役割

 格差と貧困の広がりは、労働者のみならず個人消費の落ち込みや大企業のコスト削減を強要されている中小・零細企業、大型店の進出で将来展望が見出せない地場商工業者、輸入自由化のもとでの農漁業従事者等々、国民諸階層全体の問題として、個人消費を縮小させ、日本経済の矛盾・後退をより深刻にしている。この状態を改善するには、背景にある大企業の横暴やこれを支える「構造改革」路線とのたたかいが不可欠である。しかし民主党政権は「構造改革」路線から脱却せず、国民の要求に背を向け、財界・大企業から強く要求されている法人税の引き下げ、消費税増税に道を開こうとしている。沖縄県民の切実な願いである普天間基地撤去問題でも、これまでの自民党政治の枠組みから抜けだそうとしていない。
 いま問われているのは、新たな政治状況を生みだした労働者・国民自身の政治革新への引き続く運動の強化である。労資一体の大企業労組を中心とした右翼潮流が、民主党政権の支持母体として、極めて問題の多い派遣法「改正案」や普天間基地問題をめぐる日米合意にも異議を唱えていないもとで、「構造改革」路線に反対し、大企業の横暴の民主的規制を要求し、米軍基地撤去などを結成以来一貫して追求している全労連運動の責任と役割はこれまで以上に重要になっている。

(4)全国統一行動を軸に国民春闘再構築の追求を

 労働組合にとって今日的に不可避の課題となっているのが、賃金闘争・春闘の再構築をどう本格的に追求するかということである。国際競争力の強化を口実とした賃下げ・雇用破壊、さらには右翼潮流・大企業労組の賃金自粛路線により、外需依存で増大する企業利益を尻目に労働者の賃金水準は97年をピークに下落の一途をたどり、労働者の生活破壊と同時に個人消費(国内需要)の落ち込みによる日本経済の矛盾を深刻にしている。
 賃上げ・雇用者所得の拡大は国内需要の拡大、国内産業と日本経済の安定的な発展の土台を支えるものであり、社会的にも大きな大義をもっている。しかし、財界・大企業の徹底した賃金抑制攻撃と大企業労組などが賃上げ自粛の立場に立っているもとで、このたたかいを前進させるためには、賃金闘争を労使関係で徹底的に追求しつつも、たたかいをその枠内にとどめている限りその展望を大きく切り開くことはできない。産別や地方の運動を土台にナショナルセンター規模での全国統一闘争を運動の基軸として、賃金闘争と国民生活全体の改善、中小企業の経営基盤改善や地域経済を守り国民本位の日本経済をめざす諸課題とも結合した広範な労働組合や民主諸団体との連帯・共同を追求し、圧倒的多数の労働者・国民の支持を獲得する運動として展開することが求められている。それは、多国籍化した大企業の利益優先の外需依存型から、労働者・国民の生活と雇用確保、社会保障の拡充を優先させ、国内産業と内需重視型の日本経済への政策転換を求める、政治変革の運動としても渦巻く国民諸階層の切実な要求を前面に、国民的運動として追求することが重要になっている。

4.激動の情勢と労働総研の今年度の調査研究課題

 国内外情勢、労働運動をめぐる情勢分析でも明らかなように、いま、わが国の政治・経済は、新自由主義的「構造改革」の害悪が劇的な形で噴出し、歴史的な激動の時代を迎えている。自民党政治にかわる新しい社会にすすむ道筋を示すことが喫緊の課題であり、それに応えることが労働運動の大きな課題となっている。その要請に本研究所として積極的に貢献していくことが求められている。
 本研究所は、設立以来一貫して労働者を中心とする国民諸階層の仕事と生活の困難の根源がなんであるかについて調査研究を進めてきた。そして、今日、国民生活の困難が極端にまで深化させられた直接の原因が90年代後半以降強行されてきた新自由主義的「構造改革」路線にあることも明らかにしてきた。今日、もはや多くの国民がこの状況から抜け出すことを選択している以上、新しいルールある経済社会を創り出す方策を具体的に実現可能なものとして提示することが差し迫った課題となっている。

(1)ナショナル・ミニマムを土台とした「ルールある経済社会」

 本年、本研究所が取り組む研究所プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」は、そうした情勢が求める課題に正面からこたえる取り組みとなる。これまで研究所の研究成果を総結集してこの課題に取り組む。
 この課題を推進するためにまず必要なのは、90年代後半以降、「労働と生活」の劣化が著しくエスカレートする中で、(1)「格差と貧困の増大」に象徴される社会の「労働と生活」の“現状”を深く分析することであり、(2)その直接・最大の“原因”を多面的・具体的に究明することである。その上で「人間的な労働と生活の新たな構築」をめざす方向を明らかにすることでなければならない。
 その際、「構造改革」によって生まれている国民・労働者の切実な要求を実現するという基本的見地から、当面する要求実現の方向とともに、労働者の労働と生活、健康が守られるルールある経済社会のあるべき方向を打ち出すことが課題になっている。そのためにも、国民・労働者の実態についての調査・分析が大切になる。このとりくみが、日本の外需依存の脆弱な経済体質を克服し、内需主導の日本経済に転換し、日本経済の健全な発展につながることも明確にする必要がある。
 めざす方向は具体的でなければならないし、実現可能でなければならない。国民生活の困難が階層的・重層的である以上、格差構造の最底辺の状況の改善、国民生活の岩盤の強化は最優先の課題としてとりあげられなければならない。第1の課題は国民が共同してめざすべき社会像の明確化――ナショナル・ミニマムを土台とした人間的な労働と生活の新たな構築であろう。

(2)EUやILOなど国際的到達点もふまえ

 めざすべき社会の具体化のために必要な第2の課題は、現状の分析調査、各種資料の収集・研究であろう。さらに日本は、EUなどの先進諸国と比べて「社会的なルール」の立ち遅れが深刻である。EUの経験やILOなど国際条約などの先進例に学ぶべき点は多い。日本で「人間的な労働と生活」が保障される「ルールある経済社会」を実現するうえで制度の現状を詳細に検討し、調査して、これらのルールを、ヨーロッパなどとの歴史の違い、生活習慣などの違いを十分に考慮して日本にふさわしい形で具体化する必要がある。ILOが提起している「ディーセントワーク」との関係で、「人間的な労働と生活」についての論点を整理することも課題となろう。

(3)大企業の強蓄積の方式と労働運動

 第3の課題としては、大企業の強蓄積と労働者の状態悪化の実態分析が必要となろう。日本経済は、90年以降GDPの伸びが横ばい、低落傾向にあり、労働者の賃金が低下するなど、国民・労働者の苦難が増大している。その根源に大企業の異常な蓄積方式がある。諸外国では考えられない労資べったりの異常な労使関係、成果主義管理にもとづく個別労務管理、非正規労働者の大量活用による低賃金構造の再編、雇用・失業問題の悪化など、大企業の横暴な労働者支配のもとで、労働力の再生産すら脅かされるなど、「労働と生活」が危機的状況に陥っている。「人間的な労働と生活」の新たな構築をはかるためにも、労働運動がはたすべき役割は何か、そのことを解明するためにも、労働者・国民が等しく共同して自主的に豊かな社会を作る力を取り戻し、大企業の強欲な資本蓄積方式の実態を洗い出し、これを変えさせる方向を打ち出すことは喫緊の課題となっている。

(4)新自由主義的イデオロギーとのたたかい

 民主党政権は、アメリカと財界本位の政治を引き継ぐだけでなく、新たな装いをまといながら、「構造改革」を推進している。そのために、独立行政法人の「事業仕分」や社会保険庁職員の不当解雇、地域主権改革などに象徴されるように、公務員バッシングをテコとしながら、「官から民へ」「小さな政府」などの新自由主義的イデオロギーをふりまいている。「構造改革」路線に終止符をうつためにも、これらのイデオロギー攻撃を重視し、打破することが求められている。

III.2010年度の事業計画

 09年の総選挙で、国民は自民党政治から決別する意思表示を行った。自民党政治に変わる、日本の政治経済がすすむべき道を明らかにすることが焦眉の課題となっており、労働総研の研究活動もその課題に対応することを意識した事業活動を展開する。
 労働総研は昨年、設立20周年を迎えたが、本年度の事業活動をすすめるにあたって設立時の原則を改めて確認しておくことが重要であろう。それを次の4点にまとめ確認する。
(1)労働運動の直面する課題に積極的に応える政策提言
(2)労働総研の研究活動・政策提言の成果をいかしての労働運動への貢献
(3)プロジェクト研究など労働総研の研究成果の社会的普及
(4)労働総研の知的財産、会員の力をいかした調査活動の重視

1.研究所プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」

 本プロジェクトは労働総研が総力を結集してすすめる調査・研究活動である。これまで労働総研は労働者を中心に国民諸階層の仕事と生活の調査研究を行なってきた。その研究成果を基に国民諸階層が抱えている課題を打開する道筋を明らかにすることが必要になっている。これに応えることが本プロジェクトの目的である。
 本プロジェクトがふまえる研究成果の主なものは、(1)「ナショナル・ミニマム問題の理論・政策に関わる整理・検討プロジェクト」報告(2006年)、(2)「新自由主義的展開に対する対抗軸としての労働政策研究プロジェクト」報告(2008年)、(3)「21世紀労働組合の研究プロジェクト」報告(2009年)であり、これらに加えて、社会保障のあり方についての研究成果、さらにEUの教訓を実態に即して調査し取り入れることも必要となる。
 今後の作業としては、(1)経済的ゆとり、(2)時間的ゆとり、(3)心身の健康を横糸に、プロジェクト研究の柱を明確にして、それぞれ作業部会(仮称)をもうけ分担する体制を整え、2011年度定例総会での研究成果発表をめざす。

2.共同プロジェクト

(1)「地域政策検討」プロジェクト

 地域の労働組合が活動と地域の課題について、(1)労働組合の課題を地域でどのように具体化しているか、(2)地域の課題をどのよう労働組合の課題にしていくかという視点で明らかにし、運動の教訓を明確にする。
 具体的な作業手順として、(1)「住みやすさ調査」(全国11地点で2257票回収済み、5月30日現在)により地域の特性を析出し、(2)一定の分析条件を満たした地域について聞き取り調査を行う。(3)アンケート調査の結果分析と聞き取り調査結果を総合し地域労働運動の教訓を引き出す。

(2)「組合員モニター調査」(仮称)

 全労連と労働総研が連携して、組合員意識調査を機動的に実施するとともに、恒常的に取り組む体制を確立する。これにより、一層科学的な運動方針・政策づくりに寄与することを目的とする。

(3)「労働組合トップフォーラム」

 全労連と労働総研で共通する問題意識に基づいて、適切な時期、適切な課題で開催する。そのために常任理事会、事務局が積極的な役割を果たす。

3.研究部会

 本年度は、新しい研究部会として発足させる。各研究部会と常任理事会との連絡を密にして、研究所プロジェクトを中心として調査研究活動がおこなわれるようにし、研究例会や研究交流会の活発化に努める。

4.研究例会

 労働運動の直面する課題について、現場の悩みや理論的な困難を打開するために労働総研と全労連が共同しておこなう学習研究会とし、常任理事会が中心になって推進する。

5.研究交流会

 プロジェクト研究と研究部会、研究部会間の研究交流をすすめるとともに、直面する労働運動の課題についての民主団体や他の研究所との課題別研究交流の展開にも努めていく。

6.E.W.S(English Writing School)

 国際的に研究成果を積極的に発信できるよう、外国語(英語)能力を維持向上させるためのライティング教室をいっそう強化する。

7.若手研究者研究会

 活動方針としては、労働総研の研究者と労働組合の若手が交流しながら、若年労働者の組織化に向けた課題を明らかにするための調査・研究を行う。
 具体的な活動内容は、大学生の組合イメージに関するアンケートについては、調査票の改善を図りながら引き続き実施していくとともに、加入意向だけでなく、若年労働者の組織化につながる調査・研究に発展させるための予備調査をおこなう。
 なお、研究会の名称の変更を検討する。現在ある案としては「若者の仕事とくらし研究会」がある。

8.大企業問題研究会

 大企業の労働者支配の実態を明らかにすることをとおして、大企業労働組合の階級的民主的強化の条件を生きた現実のなかから探り、日本の労働組合運動の発展方向を探求する。
 名古屋地域を中心に研究活動をおこなうことも検討する。

9.研究成果の発表・出版・広報事業

 「労働総研ブックレット」の刊行をおこなう。発売は出版社に委託することとする。発売の委託によって発行が営利中心にならないよう、労働総研としては、刊行委員会を設置して企画や内容の充実をはかり、運動現場の意見も機敏に反映するようにし、研究所の研究成果の積極的な発信に努める。発売元との契約を締結するにあたっては、常任理事会で検討し、すすめていく。
 『労働総研クォータリー』も発売を出版社に委託することとし、宣伝・広報の展開により、会員以外への普及を強化して労働総研の存在感を高める。
 「労働総研ニュース」は定期的な発行に努めるとともに、紙面の改善により会員相互の情報交換の活発化を図る。
 「労働総研ジャーナル」は年3回発行することを基本とし、日本の労働運動の情報を国際的に発信していく。

10.産別会議記念労働図書資料室

 (財)全労連会館との共同で、図書資料室として有効に活用できるよう協力する。

IV.2010年度研究所活動の充実と改善

1.会員拡大

 労働総研のシンポジウム・公開研究会や出版物の普及などを通して会員の拡大を図る。

2.読者拡大

 『労働総研クォータリー』の普及体制の変更で広範な宣伝ができるようになるのを契機に、より広範な普及を行なう。

3.地方会員の活動参加

 労働総研のシンポジウムや公開研究会への参加を呼びかけるとともに、「労働総研ニュース」などへの寄稿により、会員相互の交流の活発化を図る。

4.事務局体制の強化

 ボランティアの力も活かして、従来の事務局活動を強化するとともに、事務局として「組合員モニター調査」(仮称)や「労働総研ブックレット」刊行委員会、「労働総研ジャーナル」編集スタッフ会議などの円滑な運営のために支援する体制を強める。

5.顧問・研究員との意見交換会の開催

 労働総研は20年の歴史を持つようになり、設立当初の経験・教訓を意識的に継承・発展することが必要になり、顧問・研究員の制度を活用していく。


全労連・労働総研共同学習会

「低迷する賃金・景気〜最賃闘争をどう発展させるのか」開催

 全労連・労働総研共同学習会「低迷する賃金・景気〜最賃闘争をどう発展させるのか」を、2010年6月16日午後6時30分から、全労連会館2Fホールで開催しました。参加者は約70人でした。
 最初に大木寿全労連副議長(全労連・全国一般委員長)が開会あいさつ、続いて、3人の講師が報告しました。
 木地孝之労働総研研究員は、日本経済低迷の最大の要因は賃金の低下による「家計消費」需要の停滞にあると指摘、最賃1000円の実現は、家計消費の増加につながり、日本経済再生への一歩になると強調しました。
 小越洋之助常任理事(国学院大学教授)は、全労連と労働総研がおこなった最低生計費調査によって、生活費の地域格差がないことが明らかになったことにふれながら、全国一律最賃制を確立することの意義とその展望について報告しました。
 伊藤圭一全労連調査局長は、イギリスでは、全国一律最賃制が99年に導入されて以降、最低賃金は1.6倍になったが、中小企業の倒産も増えていないし、失業者も増えていない、それどころか中小企業における雇用が増大していると指摘、最賃を引き上げると雇用が減るという財界・大企業のでたらめないい分を批判しました。

2009年度第1回理事会報告

 2009年度第1回理事会は、2010年5月29日13時30分〜17時、全労連会館会議室にて開催された。冒頭、大須眞治事務局長が第1回理事会は規約第30条の規定を満たしており、会議は有効に成立していることを宣言した後、大木一訓代表理事の議長で議事は進められた。
 藤田宏常任理事より、2010年度定例総会方針案の、2009年度の経過報告、研究所活動をめぐる情勢の特徴について、事務局長より、2010年度の事業計画、研究所活動の充実と改善について、それぞれ提案された。
 討論がおこなわれ、理事会での討議を踏まえて、常任理事会において整理して完成させることが確認された。

2009年度第6回常任理事会報告

 2009年度第6回常任理事会は、2010年6月12日13時30分〜17時、全労連会館会議室にて、熊谷金道代表理事の司会で行われた。

I 報告事項

 藤田宏常任理事より、「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」プロジェクト、「地域政策検討」プロジェクトの進行状況、全労連・労働総研共同学習会、および人事委員会についてなどが報告され、了承された。

II 協議事項

1)大須眞治事務局長より、入会の申請が報告され、承認された。
2)日野秀逸常任理事(労働総研奨励賞選考委員長)より、選考委員会の報告がされ、承認された。
3)事務局長および藤田宏常任理事より第1回理事会での討論をふまえて文章化された2010年度定例総会方針案が提案され、討議をおこない、討議に基づいた文書修正を行うことを確認した。また、定例総会までの日程、および当日のスケジュールが提案され、承認された。

「20周年記念労働総研奨励賞」選考結果について

 労働総研は、設立20周年を記念して、若手研究者の労働運動に関連する分野での研究や調査研究の今後の発展を促すことを目的に、「20周年記念労働総研奨励賞」表彰事業を行い、論文を募集しました。
 応募された、「個人部門」10編、「団体部門」12編の中から、選考委員会(委員長・日野秀逸常任理事・東北大学名誉教授)の厳正な選考を経て、以下の受賞論文を決定しました(敬称略・2席の順番はエントリー順)。

(1)個人部門

・1席(1編)
 伊藤 大一(大阪経済大学経済学部講師)「請負労働者組合運動における既存労働組合の影響」
・2席(2編)
 久保友美恵(立命館大学大学院)「労働力導入としての研修・技能実習制度」
 柴田 徹平(中央大学大学院)「建設業一人親方の労働時間と収入」

(2)団体部門

・1席(1編)
全労連東北地方協議会・全労連・労働総研「東北で働き、暮らす世帯に必要な最低生計費はいくらか―生活実態調査、持ち物財調査、物価調査に基づく、最低生計費試算」
・2席(2編)
労働総研・若手研究者研究会「大学生の労働組合観について―アンケート調査から見えるもの―」
青森県労連調査政策部「青森県の労働者・県民の状態から見た地方組織県労連の課題」

 なお、7月24日開催の2010年度労働総研定例総会にて、表彰式を行ないます。また、受賞論文は、『労働総研クォータリー』No.80(2010年秋季号)に掲載いたします。

「20周年記念労働総研奨励賞」選考委員(敬称略)

委員長 日野 秀逸
・個人部門 小越洋之助  原冨  悟  古屋 孝夫
・団体部門 天野 光則  生熊 茂実  伍賀 一道

6月の研究活動

6月5日 「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」プロジェクト推進チーム
8日 賃金・最賃問題検討部会
16日 全労連・労働総研共同学習会「低迷する賃金・景気〜最賃闘争をどう発展させるか」
18日 中小企業問題研究部会
若手研究者研究会
25日 労働時間・健康問題研究部会
29日 女性労働研究部会

 

6月の事務局日誌

6月5日 労働総研奨励賞選考委員会
12日 第6回常任理事会