労働総研ニュース No.221・222 2008年8・9月



目   次

・首都圏・若年単身労働者世帯の最低生計費試算中間報告の概要
・ナショナルセンターの役割と展望〜全労連20周年に寄せて〜
・2008〜09年度役員名簿
・2008年度定例総会報告他




 労働総研の熊谷金道代表理事と金澤誠一理事(佛教大学教授)は、7月18日、「首都圏・若年単身労働者世帯の最低生計費試算中間報告」を発表しました。以下の文章は記者発表用の概要です。なお、概要と全文をまとめたパンフを発行しています。また、労働総研ホームページには、「首都圏・高齢単身世帯の最低生計費試算」も含めて、全文を掲載しています。


首都圏・若年単身労働者世帯の最低生計費試算中間報告の概要

2008年7月18日
労働運動総合研究所
監修責任者 佛教大学教授 金澤誠一



 以下の文書は、4月30日の労働総研「労働組合プロジェクト」での全労連坂内議長(08.7の大会で退任、現在は全労連顧問)の講演録の概要です。


ナショナルセンターの役割と展望〜全労連20周年に寄せて〜

全労連議長 坂内 三夫


大木一訓(プロジェクト責任者)

 今日はお忙しい坂内さんがおいでくださって、普段聞かせていただけないようなお話を伺えるのではないかと大変楽しみにしております。タイトルにしたら、全労連20周年を迎えてということになるのでしょうか、あるいはナショナルセンターの役割と展望みたいな話になるのでしょうか。そのへんでお話を伺いたいなと思っております。

坂内

 実は今もって、自分が何をしにここに来ているのか、サッパリわからない、なんか提言を求めるためのプロジェクトの会議なのかなと。
 そんなところで、みなさん方から何かこのことについてお前どう思うかというようなことがあれば、そういうものにお答えをしながらお話をした方が一番いいのかなと思っていますが、それではあまり芸がないので、大木先生からお話があった全労連20周年に寄せてというか、ナショナルセンターの役割と展望みたいなことについて少ししゃべろうと思っています。ほんの少しだけ最近考えたことを申し上げたいと思っています。
 ひとつは、先生方はご承知のことですが、全労連はどういう国内外の情勢の下で結成されたのか、そのとき全労連結成に対してどういう反応があったのかということを振りかえってみたいと思っています。もうひとつは、では、その結成された全労連がこの約19年間のなかでどういう役割を果たしてきたのかということを考えてみたいと思います。それから三つ目に、19年を経て、いま全労連はナショナルセンターとしてどんな課題を抱えているのか、これは全労連の加盟組織、組合員に提起をする方針にはなかなか書けない問題ではありますが、私が日頃考えていることを、全然まとまっていませんから全部お話できるかどうかもわかりませんが、少し申し上げたいと思います。

全労連結成時の情勢について

 最初に全労連20年を振り返ると、19年前の全労連結成が世界的にあるいは日本の国内のどんな情勢の下で結成されたのかということを、決して忘れてはならないと私は思います。ご承知の通り、全労連ともうひとつのナショナルセンター連合は1989年11月21日、いまから18年半前の全く同じ日に日本の労働戦線の再編成にともなって結成されました。
 昨日、福岡の青年職場交流集会というのがありまして、福岡の青年たちとこれと全く同じ話をしたのですが、そしたら皆さん、1989年とはどんな年でしたかわかる人がいますかと言ったら、誰もわからないんですね。いまの20代、30代の人も、もちろん生まれてすぐですから、全くわからない。
 1989年というのはご承知のように、その年の6月に中国の天安門事件が起きて、11月9日に東西ベルリンの壁が崩壊したという年なわけですね。そして、ベルリンの壁に続いて、ポーランドに始まって、チェコスロバキア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリア、そして2年後のソ連(崩壊)につながるわけですが、当時社会主義といわれていた国々が次々に崩壊をしていく。そういう国際情勢の中で全労連が結成されたことを、この19年間の歩みを振り返るうえで、非常に私は大事なことだと思うのです。
 全労連の結成に対して、当時の財界や政府はなんと言ったか。これは全労連結成だけではありませんけれども、資本主義が勝利をした、社会主義などというものはもう死滅をしたと。そんな時代にたたかう労働組合とか、階級的ナショナルセンターなどといって全労連を結成するのは時代遅れもはなはだしいと。それで、マスコミなどは全労連が結成されたけれどもおそらく3年は持たない、その大合唱だったわけです。
 労働組合運動だけではなくて、国際的に見ても、いわゆる政治もそうですが、さまざまな運動がある意味で氷河期に入るというか、そういう時代にナショナルセンター、全労連が結成されたということを決して忘れてはいけない。だから今日まで続いている全労連シフトとか差別、例えば、中央労働委員会の労働者委員をすべて連合が独占して全労連に一人も渡さないとか、当時で言えば、ILOという国際労働機関総会への代表派遣に全労連を一人も加えないとか、200いくつあった労働組合代表が参加する政府の各種審議会へも一人も入れないというようなシフトが続いてきた背景には、やっぱりそういうナショナルセンター結成の時代背景が一つはあったということです。
 これは、私の場合も、熊谷さんもずいぶん言われたとおり、なんでこの全労連は10数年もたって中労委委員の一人も取れないのだと盛んに批判されるというか言われますけども、それはそういう時代背景のもとでの労働戦線統一で結成された連合と財界・政府の固い意思統一があったわけで、それが今日までつながってきたということがあるように私は思います。ですから、全労連20周年を振り返るときに、全労連の活動がどうであったかというだけでなく、どういう情勢、時代背景の下で結成されたかということをよく捉えて、それとどうたたかってきたかということを振り返る必要があるのではないかという感想を私は思っております。

全労連が果たした役割

 それから、二つ目の19年のたたかいを通じて全労連はどういう役割を果たしたのか。連合が公称800万人、全労連が公称134万人で結成をされました。政府や財界の全労連シフトは大変なものがありましたけども、政党支持問題や路線問題などで総評単産のなかで排除されていた労働者が非常に大きな勇気を持って労働組合運動に立ち上がってきました。そして、全労連結成によって、確かに私は少数組合であっても資本に対して敢然とたたかう労働者に対して激励を与えて、さまざまな思想差別、賃金差別などの争議を前進させてきた。たとえ労働組合として、全労連に入っていない組合であっても、そういう労働者とも連帯をして、資本のどんな横暴にも屈しないでたたかうという点で言うと、全労連結成は非常に大きな役割を果たしたのではないかと思っています。現にさまざまな争議がありましたけれど非常に困難だといわれてきた争議が全労連結成によってたたかいが前進して、電力争議や日立争議等などが解決するということが相次いだということは、そのひとつの証だと思います。
 それからもう一つは、確かに労働戦線の再編以降は、日本の社会は大企業の一人勝ちという状況が賃金の面でも雇用の面でも続いてきたわけです。しかし、もし、1989年の11月21日に全労連が結成されていなかったら、日本の労働組合運動はどうなっていただろうかと。また、連合は何を目的として結成をされたのかということを考えると、こんな程度ではおそらく済まなかったのではなかろうかと思います。賃金についてもそうですが、国際競争力を口実に賃金水準をアジア水準並みに下げようという動きはずっと強まってきたのですけども、全労連があるがゆえに、また、連合も自粛要求をしたり、要求を出さなかったり、いろんなことがありますけれども資本の攻撃に全面的に屈服するわけにはいかないという側面があったのではないか。労働法制もさまざまな改悪がなされてきましたけれども、やはり全労連があるということが連合をして政府や財界の労働法制改悪に全面的に踏み込むわけにはいかなかった側面があったと思います。
 そういう意味で、私は全労連結成の歴史的意義というのは誰も否定できないと思っております。

全労連の課題

 それから、三つ目の問題ですが、そういう中でたたかってきた全労連に今、改善しなければならないどういう課題があるのかについて思いつくことをいくつかあげてみたいと思うのです。
 ひとつは基本路線と政策の問題でいろいろあると思います。もちろん、基本路線に問題があるわけではないのですが、どうも全労連は基本路線に忠実すぎて、その現実的運用をするという点で言うとどうも不器用さが残されているのではないかなと思います。全労連の基本路線というのは、言うまでもなく、行動綱領に掲げた資本からの独立、政党からの独立、一致する要求での統一行動という労働運動の初歩的原則を大切にすることにあります。また、全労連の掲げる政策っていうのは哲学的で階級的で全く間違いはないと思うのですが、ではこの19年間、本当に広範の労働者の共感を呼んで、実際に運動を組織すると、大きな運動が組織できたのかという点でどうだったかというと私は政策の選択にあまりにも幅がなさすぎたのではないかと思うのです。
 その代表的な例は1990年ぐらいから始まった賃金要求論争に表れたと思うのです。私が全労連に来たのが1998年ですが、99年から始まったのです。当時、全労連の賃金要求というのは、生計費原則による大幅賃上げ要求を掲げていて、その根拠は当時70万から80万人、多いときには100万人くらいに、一人ひとりの労働者の要求アンケートをとって、その要求アンケートで労働者はいったいどのくらいの賃金、賃上げを要求しているかを集計して、その結果が常に3万円をこえているという状況のなかで、全労連は3万円とか3万5千円以上の大幅賃上げ要求をしていた。
 それは賃金論としては正しいかもしれないけども春闘というのは、春に労働組合の要求を掲げて、使用者にその要求を提出して、実現を目指す全国的な統一闘争なわけで、一年一年、賃金要求がどこまで実現したかという総括をしなくてはならないものであって、理論的に正しい要求を掲げてさえいればそれでいいというものではないのではないか。
 98年当時というのは、バブルがはじけて、連合が自粛要求どころかナショナルセンターとしての要求も掲げないという状況があるなかで、ナショナルセンターが果たすべき役割、賃金闘争において果たすべき役割というのは労働者の賃金の最低賃金を規制することではないかというような議論をして、これは熊谷さんもそういう主張に立ちましたし、国分さんもそういう主張に立ちました。もちろん私もそうですが。そういうのを大会で打ち出したのは99年の大会だと思います。ところが、最初の大会でこれが否決される事態が起きるわけですね。日経新聞が大きく報道したことがありますけども。3万5千円以上の大幅賃上げ要求にかわって、誰でも1万円とか時給100円以上とかいう最低賃金要求と底上げ要求にナショナルセンターの賃金要求を切りかえる。これは加盟組織に大変な混乱を与えたと私は思います。混乱を与えた反面、春闘における賃金要求とは何か。労働組合の要求とはどうあるべきかという議論も巻き起こしたという点で大変良かったと思っています。しかし、加盟組織や組合員の中にはずっと大幅賃上げ要求でたたかってきたのが、いきなり、ある年からそれが1万円の底上げ要求に変わるという点で大変な戸惑いもあったと思います。
 つまり、それまで掲げてきた要求が正しいとすれば、その要求、その時々の情勢に応じて要求も見直して、どういう要求とどういう運動をすれば、広範な労働者や国民を結集して要求が前進するかという視点になかなか立たないで、何が正しいのかと、理論的にということを要求の決定の物差しにするという傾向があるのではないかなと思います。それは雇用の問題でもあるいは社会保障の問題でもそうですけれども、本来どうあるべきか、理論的にどうあるべきかを追求するがあまり、やや価値観が硬直してですね。全労連の要求といえば、なにも見なくても分かるようなそういうものになりがちでないかなと思います。
 これからはさまざまなことを研究しなくてはいけないけれども、労働組合の要求のあり方について、労働総研のみなさんとも相談をしながら研究していく必要があるのではと思っています。
 例えば、最近でも、昨年の全労連の評議委員会以降に貧困撲滅の国民的な運動をずっと叫び続けてきたのですが、全労連の要求政策というのはあまり具体的ではないんですね。たとえば、貧困撲滅対策に今どういう政策が有効で、その政策を実現させるためにはどれだけの財源が必要で、その財源はどうやったら生み出せるのかまでなかなかまだ踏み込めていません。しかし、今日の政治状況、社会状況の中では要求はそこまできめ細かく作成していく必要があると思います。
 例えば、財源問題でいいますと、いろんな本を読みますと出てくるのですが、全労連の方針には出てこないのです。財源問題でいえばこの10年間で、資本金10億円以上の企業の利益は約18兆円も増えている。しかし、その資本金10億円以上の企業が払った税金は1兆6千億円しか増えていないということが政府のさまざまな統計をとってもわかるわけです。法人税が最初40%だったのが30%まで下がっていますし、連結決算制度とかあるいは減価償却制度もさまざまな法律の改正によって、利益が増えても税金を払わなくても済む制度にずっと変えられてきたわけですけども。こういう問題を具体的明らかにして、財源問題を論じていく必要があるだろう。法人税を元に戻すだけで7兆円ぐらい新しい財源が生まれるわけです。貧困問題をそういうものと結びつけて、要求政策を掲げていくことが今後は必要になってくるのではないかなと思います。
 貧困問題というのは、政府の政策や予算が具体化されれば直ちに効果が表れる問題だと思うのです。例えば、今、政府の若者雇用対策予算は761億円ですよね。これを10倍に増やすとすると6850億円の財源があれば増やせる。現在の中小企業対策予算は1522億円ですけども、これを10倍にすれば相当のことができるわけですが、1兆4千億円あればできる。農民が大変だ、酪農家が大変だというから、米価や牛乳の生産価格を5%政府が拠出して引上げようとすると1兆5千億円ぐらいあればそれができるわけですね。あるいはこの貧困化を作り出している生活保護の老齢加算や母子加算の廃止をやめて、元に戻すと、必要な財源は490億円ぐらいあればできるわけです。子どもの医療費を中学校まで無料にするといっても、1900億円ぐらいでできる。いろんなことがありますが7兆円という国の財源があれば、相当な貧困対策が実行できると思います。
 ところが、そこまで踏み込んだ全労連の要求政策になかなかなってない。出てくる方針は、大企業の横暴を規制して労働者国民に利益を還元せよという、そこで留まるのです。そこからさらに踏み込んだ要求政策にしていかなければいけない。そこに踏み出す勇気を、まだなかなか持っていないのではないかな、全労連の政策問題ではそんなことを感じております。
 それからもう一つは、全労連の組織構成と組織運営の問題があるのではないかと思います。これもご承知のように、全労連と連合の組織構成は違っておりまして、全労連の場合には産業別労働組合(単産)と47都道府県の地方組織を対等平等の加盟組織としてナショナルセンター全労連を構成している。連合の場合には地方組織は全国単産の地方組織を中心に構成され、連合の加盟組合ではなくて、下部組織という位置づけですから。私は、今日の時代として、単産と地方組織を対等平等の加盟組織として位置づけて車の両輪としたという組織形態を選択したのは、大変先駆的なものがあると思っております。しかし、ここから先をどうするのかについては、なかなか議論が進んでいないのです。
 実は2年ぐらい前、国立社会保障人口問題研究所が2050年の日本の人口推計っていうものを発表して大変話題を呼びましたけども、あれによりますと日本の人口は年々減少して、今から42年後の2050年には9000万人を割り込むだろうと。それから、特に深刻なのは15歳から64歳までの生産年齢人口が、今は8622万人ぐらいだと思うんですが、これが5千万人を割り込むだろうと。原因は言うまでもなく少子化なわけですけれども。その国の出生率が2.08を割るとその国の人口は減少すると言われる。日本の出生率は1.26まで落ちているわけですから、相当な政策を実施しても人口減は避けられないということがあると思います。そういう時代認識とか人口が減ってくってことは日本の企業の生産活動がどうなるかということ、あるいは、税金がどうなるかとか、教育がどうなるかとか、医療などがどうなるかなど、すべてに影響を与える大問題だと思います。
 私は労働組合もその方向に向かってさまざまに変わっていかざるを得ないのではないかと思います。相当な手立てを打っても、日本の人口が膨れ上がっていくことはかなり厳しいだろうと思います。そうすると、人口減、特に生産人口年齢が急激に減少していくというなかで、労働組合運動に何が起きるのかということをいっぺん論じてみる必要がある。
 私は、日本の人口が9千万人を割って、生産年齢人口が5千万人を割るというような時代のなかで、いったい誰がこの日本の労働組合運動の中心を担うだろうかということを普段よく考えるのですけれども、自動車も電機も鉄鋼も現在の大企業の労働組合は、そういう少子化という時代背景とともに、やがてその役割を失っていくだろうと。おそらくそれに代わって、地域を拠点にして一人ひとりの労働者が自覚的に結集する新しい団結形態の労働組合が、日本の労働組合運動の中心になっていくだろうと。それは42年後の話ではなくて、もうすぐそこまで来ていて、間もなくそういう時代が始まるのではないかと思います。ご承知のように、現に日本の自動車の生産台数、国内販売台数が急激に落ち込んでいる。中国、インドなど(の市場)を当てにせざるを得ないわけですね。そんな少子化の社会で電機や自動車や鉄鋼という産業が発展するわけがないわけで、それに変わる新しい産業が生まれてくると思います。そういう時代認識を持っていく必要がある。
 だとすると、私は全労連が産業別労働組合と地方組織を対等平等で結成したという先駆性は非常に大きなものがあったけども、もう一歩進んで、もっと地方や地域組織というものをナショナルセンターの軸に据えていくような組織論というのを今から議論しなければいけないのではないかと思います。誤解を恐れずに言うと、例えば、ナショナルセンターは47都道府県で結成して、それにすべての産業別労働組合が結集して、それをナショナルセンターと都道府県組織というものに整備をするということはできないのか。産業別労働組合は産業別労働組合として、別の形で全労連の補助組織としてもっと大胆な分野別に再整備をしていくというようなことができないのか。
 全労連の場合には価値観の硬直性があって、連合はこの19年間の中でさまざまな組織再編をしてきましたけども、全労連で組織の変更があったのは建設一般と運輸一般と全動労が合併した建交労と、2年位前の地銀連、銀行労連、全信労が統一した金融労連の結成以外はないわけです。しかし、全労連のなかには交通運輸の労働組合で言えば、建交労のほかに、自交総連があったり、検数労連があったり、さまざまな組合がまだあるし、金融、マスコミもさまざまだし、医労連と福祉保育労はいったいどうするんだっていう話もあります。そういう21世紀の時代認識を考えた組織論というものに大胆に踏み出せないという弱点を、全労連は持っているのではないかなという感じが私はしています。
 さらに突っ込んでいうと、最近、全労協系でシニア・ユニオンというのが結成されて、組合員は数十人しかいないんですが、盛んにマスコミに登場します。社会保険庁の非正規の労働組合が結成されましたけれども全労連ではありませんでした。それから、暫定税率が動いたときも、ガソリンスタンドに全国をひとつにつなぐユニオンが作られましたけどもこれも全労連ではありませんでした。残念ながら全労連は社会性、話題性がある問題にすぐさまそれに手をつけて、みんなの力を寄せ合って、組合結成に走るというふうになかなかいかない。伝統的な労働組合の結成方法のように、まずみんなで議論して誰も反対しない範囲の組織論で組織をしていくというやり方からなかなか抜け切れていないという問題があるように思います。
 全く何も準備しないでの話となりましたが、いつかまた別の機会にきちんとまとめて報告できるようにしたいと思います。
 最近本屋さんに行って、ものすごく驚くのですけども、小林多喜二の蟹工船と党生活者の文庫本が置いてあったり、一緒に運動している湯浅誠君が反貧困の本を出すとその新書がバッと並んだり、雨宮処凛さんや堤未果さんの本があったり、残念ながら労働総研の先生の本がまだまだ足りないと思うんですけども。本屋に行くと今の格差と貧困とかを扱った本が、ほんとにたくさん並んでいますね。あれは、売れるから置いてあるんで、おそらく本屋も商売になるんでしょうね。なんか時代が変わってきたのではないかなという感じがします。
 それから、40年前に作られた奴隷工場っていう映画があって、これはいまもJMIUの組合がある日本ロールの職場を舞台にした映画です。再上映がこの間亀戸であって、青年も中年も含めて非常にたくさんの労働者が集まってきて、観て、感動して感想を寄せ合うとかですね、そういう状況があると思います。「かあべぇ」の映画もそうでしたし、「日本の青空」の大沢監督がなんか賞もらいましたが、ああいうのに非常にたくさん人が集まってくるとか。
 それから世界的な動きでしょうか、マルクスがブームになっていて、イギリスの国営放送のBBCが過去1千年の間で最も偉大な思想家は誰かというアンケートを国際的にとったらダントツの1位がマルクスで、2位がアインシュタインだったとかですね。これはもう数年前の話ですけども、アメリカのワシントンポストの論説にクリントン政権時代の商務副長官をやっていたロスコフが「次のマルクスが歩いている」っていう論説を書いて、資本主義は過去200年の歴史を通じて、社会における富の分配をどう達成するかというこの命題についに結論を出せなかったと、逆にアメリカ式の資本主義が世界に広がれば広がるほど格差と貧困が拡大していった。いったいこの答えはどこにあるのかと。やがて、世界のどこかで次のマルクスが現れるに違いない。われわれは次のマルクスが現れる場所も、彼の具体的なやり方もわからないけれども、やがて何処かで誰かがアメリカ式の新自由主義とかアメリカ式の資本主義にかわる新しい代案を持って、次のマルクスが登場するであろうってことがワシントンポストの論説に載ったわけですね。さまざまなことを含めて少し時代が変わってきているなっていう感じを受けております。
 そういう時代のなかで、労働総研の先生方がこういうプロジェクトを作って、労働組合運動に対する新しい提言を出していただくっていうのが、全労連にとって大変良いことなので、われわれも現役の一人として、(報告書が)出る頃に現役かどうかは別にして、非常に大切なことですので、この通り参加させていただけたらありがたいなと思っております。

大木

どうもありがとうございました。

2008〜09年度役員名簿

代=代表理事・常=常任理事

〈理事〉
  相澤 與一(高崎健康福祉大学教授)
常 天野 光則(千葉商科大学教授)
  一ノ瀬秀文(大阪市大名誉教授)
常 井上  久(全労連事務局次長)
  上田 誠吉(弁護士)
  内山  昭(立命館大教授)
  宇和川 邁(労働問題研究者)
  江口 英一(中央大名誉教授)
代 大木 一訓(日本福祉大名誉教授)
常 大須 眞治(中央大教授)
  岡野 孝信(日本医労連)
  岡部 勘市(国公労連)
  小川 政亮(日本社会事業大名誉教授)
常 小越洋之助(國學院大教授)
  鬼丸 朋子(桜美林大准教授)
  角瀬 保雄(法政大名誉教授)
  上条 貞夫(弁護士)
  金澤 誠一(佛教大教授)
  金田  豊(労働問題研究者)
常 唐鎌 直義(専修大教授)
  川口 和子(女性労働問題研究者)
  儀我壮一郎(大阪市大名誉教授)
  木元進一郎(明治大名誉教授)
代 熊谷 金道(元全労連議長)
  黒田 兼一(明治大教授)
常 伍賀 一道(金沢大教授)
  木暮 雅夫(日本大教授)
常 小林 宏康(労働者教育協会)
常 齊藤 園生(弁護士)
常 斎藤 隆夫(群馬大名誉教授)
  桜井  徹(日本大教授)
常 佐藤 幸樹(全労連幹事)
  塩田庄兵衛(都立大・立命館大名誉教授)
  下山 房雄(九州大名誉教授)
  清山  玲(茨城大教授)
  芹沢 寿良(高知短大名誉教授)
  高木 督夫(法政大名誉教授)
  田口 美雄(自治労連)
  竹内 真一(明治学院大名誉教授)
  辻岡 靖仁(労働者教育協会)
  永山 利和(日本大教授)
  西村 直樹(金属労研事務室長)
  長谷川正安(名古屋大名誉教授)
常 浜岡 政好(佛教大教授)
  浜林 正夫(一橋大名誉教授)
常 日野 秀逸(東北大教授)
  藤田  宏(労働問題研究者)
常 藤田  実(桜美林大教授)
常 藤吉 信博(労働総研)
代 牧野 富夫(日本大名誉教授)
  松丸 和夫(中央大教授)
  村上 英吾(日本大准教授)
  八幡 一秀(中央大教授)
  吉田 敬一(駒沢大教授)
  吉田 健一(弁護士)
常 萬井 隆令(龍谷大教授)

〈監事〉
  谷江 武士(名城大教授)
  渡辺 正道(全労連事務局次長)

〈顧問〉
  内山  昂(元国公労連委員長)
  黒川 俊雄(慶応大名誉教授)
  戸木田嘉久(立命館大名誉教授)

〈事務局長〉
  大須 眞治

〈事務局次長〉
  藤吉 信博

2008年度定例総会報告

1.2008年7月26日、東京都文京区湯島2-4-4の平和と労働センター・全労連会館において、労働運動総合研究所2008年度定例総会は開催された。

2.午後2時、大須眞治事務局長が、規約第22条により本総会は有効に成立しているとして、開会を宣言した。続いて、事務局長が議長の選出を諮ったところ、全会一致で儀我壮一郎理事を議長に選出した。

3.儀我議長は、規約第25条の規定により、議事録署名人の選任を諮った。その結果、議長及び川口和子理事、金田豊理事の2名を選出した。議案の審議に先立ちこの1年に逝去された大江洸顧問・前代表理事、小森良夫会員への哀悼の意を表し、出席者全員で黙祷をささげ、引き続き、熊谷金道代表理事が主催者挨拶をおこなった。
 次いで、前日新しく全労連の議長に就任した大黒作治全労連議長が来賓挨拶をおこなった。

4.第1号議案「2007年度における経過報告案」について事務局長より提案され、討議の結果、全員異議なく承認された。
 第2号議案「2007年度会計報告」について事務局長より、また、第3号議案「2007年度監査報告」について、渡辺正道監事により報告され、討議の結果、全員異議なく承認された。

5.続いて、第4号議案「2008年度方針案」の「研究所をめぐる情勢の特徴」、「2008年度事業計画」および「研究所活動の充実と改善」について事務局長より提案された。

6.審議において、以下の論点が討議された。

(1)社会保障闘争と総合的社会保障政策の重要性について
 政府は、社会保障国民会議などを通して社会保障制度の手直しを提案してくる可能性がある。そのような状況に積極的に対処していくために、政策づくりを強化する必要があるとの提起がされ、全労連も要求政策の具体化、拡充を打ち出しており、労働総研も共同プロジェクトの一つとして具体化することを方針にしている。

(2)中小企業の活性化と経営危機突破の共同の取り組みと中小企業問題研究部会の取り組みについて
 石油価格問題で全労連と全商連の共同研究が行われ、石油価格高騰下での中小機企業の実態が明らかにされていることが報告された。

(3)ワークライフバランスについて
 ワークライフバランス論について、労働総研の認識は最近の状況を反映していないとの問題提起がされ、これについて真のワークライフバランスの必要性についてはクォータリーの「労働政策プロジェクト報告」でもふれており、真のワークライフバランスにとって最も重要なのは、8時間労働制であり、労働運動が長らく掲げてきたこの言葉の重要性を今こそ強調すべきであろう。

(4)今日の思想攻撃の特徴について
 ホワイトカラー・エグゼンプションやワークライフバランス論などカタカナ用語を使って思想攻撃されるものも多いので、慎重に扱うことが必要との指摘もなされた。

(5)労働時間と人間らしい労働と生活の研究について
 本年度研究所プロジェクトの課題は「人間的な労働と生活の新たな構築をめざしてー」でありこれは真のワークライフバランスの実現をめざすものであり、新しい労働と生活のあり方構築していく時代になっている。

(6)労働者の健康問題と正規・非正規雇用の問題について
 非正規労働者の健康問題は大きく、各地で調査が進んできている。

(7)総会の報告のあり方について
 総会報告はもっと詳しくすべきとの問題提起がされた。個人の発言内容まで広報するのは問題との指摘もある。
 など延べ12人が発言した。審議の中で出された意見は、常任理事会で具体化のための検討をおこなうことが確認され、「2008年度方針案」は全員一致で承認された。

5.続いて、第5号議案「2008年度予算案」について、事務局長より提案され、討議の結果、全員一致で異議なく承認された。

6.次に、藤田実常任理事より、2008年度〜2009年度の新役員名簿が提案され、討議の結果、全員異議なく承認された。

7.総会は一時休憩し、新理事会が開かれ、理事の互選により、新代表理事および新常任理事が選出された。代表理事によって大須常任理事が事務局長に、藤吉信博常任理事が事務局次長に任命されたのち、総会が再開され、牧野富夫代表理事より、新理事会の互選の結果、および事務局長、事務局次長任命について報告された。

8.次に、総会における決議事項がすべて終了したので、儀我議長より議長解任の挨拶がおこなわれた。

9.続いて、大木一訓代表理事より、閉会の挨拶がおこなわれた。 

10.以上で、2008年度定例総会の全日程は終了した。閉会は午後5時10分であった。

 なお、閉会後懇親会が、大黒全労連議長の乾杯で始まり、なごやかにおこなわれた。

5〜7月の事務局日誌


5月10日 労働者教育協会総会へメッセージ
23日 第7回企画委員会
6月14日 第4回常任理事会・第1回理事会
21日 第8回企画委員会
28日 第5回常任理事会
7月11日 会計監査
13日 全印総連大会へメッセージ
18日 事務局会議
23日 全労連大会あいさつ
26日

第6回常任理事会・第2回理事会
2008年度定例総会

29日 日本医労連定期大会へメッセージ
30日 労働法制闘争本部・中央連絡会合同会議
31日〜8月1日 世界平和労組会議

5〜7月の研究活動


5月13日 賃金最賃問題検討部会
22日 女性労働研究部会
29日 国際労働研究部会
6月1日 地域政策プロジェクト調査
9日 労働者状態統計分析研究部会
10日 賃金最賃問題検討部会
21日 労働組合プロジェクト
23日 女性労働研究部会
7月5日 労働組合プロジェクト
7日 地域政策プロジェクト
10日 国際労働研究部会
18日 首都圏最低生計費調査記者発表
19日 女性労働研究部会

労働総研研究交流会案内

賃金最賃問題検討部会・女性労働研究部会

テーマ:

日本における市場賃金の実態と課題―均等待遇の前提条件の解明
「女性労働と均等待遇をめぐって」

報告者: 上田裕子氏
日 時: 10月14日(火)午後6時〜
場 所: 全労連会館3階304・5会議室
地図