労働総研ニュース No.220 2008年7月



目   次

労働運動総合研究所2008年度定例総会方針(案)
I.2007年度における経過報告
II.研究所活動をめぐる情勢の特徴
III.2008年度の事業計画
IV.2008年度研究所活動の充実と改善




労働運動総合研究所2008年度定例総会方針(案)
2008年7月26日(土)14〜17時、全労連会館会議室

[I.2007年度における経過報告]

1.2007年度における経過報告の視点

 2007年度における研究所の調査研究、政策提言活動に関する経過報告は、2006年度の定例総会で決定された研究活動の新方針との関連で総括されなければならない。2007年度は2006年度に決定された「研究所活動の新方向」(「2006年度事業計画」の「研究所活動の新方向」の項参照)に基づき実施されてきた2年を目途にした調査研究活動を終了する最初の2年目に当たるからである。
 新研究活動の新方向は、以下の6つの留意点に基づいて研究所の調査研究・政策提言活動の再編・改善を確認した。
 (1) 情勢の推移・変化に対して鋭敏に反応しつつ労働組合運動が直面している調査・政策上の課題に留意した調査研究を進める。
 (2) 労働総研の主体的諸条件をリアルに認識し、限られた人的・財政的資源を効果的に活用する方法を追求する。
 (3) 労働総研の調査・研究活動は研究者と運動家が共同ですすめる事業である。
 (4) 研究計画を重視し、研究計画にふさわしい人的構成を重視する。特に青年・女性の参加を重視する。
 (5) 可能な限り研究所の会員全体に開かれた研究活動を組織化し、研究成果は会員全体に還元していく。
 (6) 限られた財政は、調査研究・政策提案活動の充実に重点的に充当していく。
 以上の6つの留意点を研究活動に具体化し、調査研究活動を以下の三類型とした。
 第一類型は、常任理事会が決定した「研究所プロジェクト」である。
 第二類型は、運動の要請にこたえて常任理事会が決定した「共同プロジェクト」である。
 第三類型は、研究所会員が常任理事会に研究計画と提出し、常任理事会の承認を得た研究計画にしたがって実施する「研究部会」である。この研究部会については、06年の新方針で、できるだけ総合化すること、研究部会は代表1人と10人前後の運営委員で構成すること、2年単位の研究計画を常任理事会に提出し、承認を得て研究活動を行うこと、研究部会活動は原則として公開とすることなどを確認している。

2.現在活動しているプロジェクト・研究部会

 新方向に基づいて、現在活動中のプロジェクト・研究部会からは、以下の通りである。

(1)第一類型「研究所プロジェクト」

 常任理事会が決定した第一類型の研究所プロジェクトとして二つが活動中である。
 一つは、大木一訓代表理事を責任者とする「21世紀労働組合の研究プロジェクト」(以下、「労働組合プロジェクト」という)である。
 二つ目は、牧野富夫代表理事を責任者とする「新自由主義的展開に対する対抗軸としての労働政策の研究共同プロジェクト」(以下、「労働政策プロジェクト」という)である。

(2)第二類型「共同プロジェクト」

 運動の要請にこたえて常任理事会が決定した「共同プロジェクト」としては、(1)天野光則常任理事を責任者とする「労働組合トップ・フォーラム」、(2)熊谷金道代表理事による「恒常的政策委員会との共同研究」がある。この他に、(3)浜岡政好常任理事を責任者とする「地域政策検討プロジェクト」と(4)金澤誠一理事を責任者とする「首都圏最低生計費調査プロジェクト」がある。
 既に活動を終了したが、「ホワイトカラー・エグゼンプション米国調査」がある。米国調査については、07年9月7日に「ホワイトカラー・エグゼンプション米国調査団報告会」を開催し、08年1月22日に『労働総研クォータリー』(No.68+69号)で『「ホワイトカラー・エグゼンプション」米国調査報告書』を提出した。

(3)第三類型「研究部会」

 研究所会員が常任理事会に研究計画と提出し、常任理事会の承認を得た研究計画にしたがって実施する「研究部会」として、現在8つが活動中である。8つの研究部会の研究成果については「労働総研アニュアル・リポート2006」(「アニュアル・リポート」(「労働総研ニュース」07年9+10月号、No.210・211)、「プロジェクト・部会代表者会議報告」(「労働総研ニュース」08年4+5月号、No.217+218)を参照していただき、この項では研究部会の実施回数について述べるにとどめる。
(1)「賃金・最低賃金問題検討研究部会」(責任者:小越洋之助常任理事、10回)
(2)「女性労働研究部会」(責任者:川口和子理事、10回)
(3)「社会保障問題研究部会」(責任者:唐鎌直義常任理事、1回)
(4)「中小企業問題研究部会」(責任者:松丸和夫理事、3回、公開3回)
(5)「労働者状態統計分析研究部会」(責任者:藤田宏理事、3回)
(6)「国際労働研究部会」(責任者:斉藤隆夫常任理事、7回)
(7)「関西圏産業労働研究部会」(責任者:丹下晴喜会員、7回)
(8)「労働運動史研究部会」(責任者:山田敬男会員、2回)

3.新方向に基づく2年間の研究活動の成果と到達点

 新研究活動方針に基づく06〜07年度の研究諸活動の成果は、研究所が全労連を初めとした日本の労働運動が直面する課題に機敏に対応した調査研究活動に積極的に取り組み、研究所の社会的認知度を高めたというところに最大の特徴があった。

(1)政策の発表

 「労働政策プロジェクト」や「共同プロジェクト」などと共同して行った以下のような政策発表は、マスコミでも大きく取り上げられ、運動の前進にとっても少なからず貢献することができた。
 06年11月8日に記者発表した「残業代11.6兆円の横取りを法認するホワイトカラー・エグゼンプション」は、ホワイトカラー・エグゼンプションが「残業代ゼロ法案」であり「過労死促進法案」であると、この制度に反対運動を進めてきた全労連をはじめとする国民世論に実態的根拠を与え、安倍内閣が法案上程を断念させる上で一定の貢献をした。また、ホワイトカラー・エグゼンプションの母国である米国へ07年3月、全労連と協力して調査団を派遣し、07年9月7日、第1次報告会を開催した。08年1月22日に正式報告書を発表した。これらのことも、法案の提出を断念させることに貢献することとなった。
 06年12月19日に記者発表した「労働政策審議会労働条件分科会『報告書』についての見解」も、日米財界が企図する解雇の金銭的解決に反対する運動を大きく激励したといえる。
 07年2月26日に記者発表した「すべての労働者に1,000円以上の最低賃金を保障せよ」は、政府の産業連関表を使って、全労連が長年にわたって運動を進めてきた全国一律最低賃金要求に、最低賃金アップが国民生活を土台にした日本経済の健全な発展をもたらすという根拠を与え、この運動を大きく激励した。
 「恒常的政策委員会」と共同して熊谷代表理事を責任者に、06年度に、(1)最低賃金政策大綱、(2)成果主義賃金批判、(3)被用者年金一元化政策、(4)公契約政策についてのディスカッション・ペーパーを作成した。07年度は、(1)世界平和労組会議ポジションペーパー、(2)外国人労働者政策大綱案、(3)最低賃金政策実施大綱案、(4)地域政策検討予備調査などの共同研究を進めている。

(2)研究の進行状況と成果の発表

 「研究所プロジェクト」のうちの「労働組合プロジェクト」は、当面、7月の全労連大会前までに研究成果として「労働組合運動の新たな発展のために」(仮題)をまとめるための準備を進めている。
 「労働政策プロジェクト」は、研究成果を3部にまとめることとし、「労働総研クォータリー」No.70から3回連続で発表していくこととしている。その後、概要版の刊行を行うことしている。
 「共同プロジェクト」としては、全労連、東京地評、埼労連、千葉労連、神奈川労連との共同で、「首都圏最低生計費調査」を、08年7月の第1次集約、12月の最終集約を目途に進めている。この調査研究は最低生計費と最低賃金制との関連を具体的に論証する上で重要な調査研究となることが期待されている。
 「地域政策検討プロジェクト」は、自公政権・政府が地域における医療・福祉・教育の切捨てを強行し、地域住民の生活基盤が破壊されている下で、住民生活を守り、発展させる地域政策を模索するものとして重要であり、中長期課題として取り組む方向で作業を続けている。
 現在、全労連、中央社保協などと共同して「社会保障のあり方検討会」(仮称)を構想中である。この会議は、福田内閣が強行する社会保障国民会議をも視野に入れて、政府・財界の社会福祉切捨て政策に対抗して国民本位の社会保障確立をめざす政策と運動を国民共同で模索することをめざそうとするものである。

(3)研究例会・研究交流会

 以下のような研究例会・研究交流集会を開催し、いずれも成功した。
 (1) 中小企業問題研究部会と国際労働研究部会とが共同して研究例会を開催した。こうした形態での研究例会は初めての試みであった。研究例会では、フランク・デッペ氏による講演会「ドイツ労働運動の現状と危機克服の展望」(06年9月13日、「労働総研ニュース」No.198参照)をもとにした討論を通じて、困難な状況にある日独両国における労働運動が、政治革新を展望しつつ、増大する非正規労働者の組織化と最低賃金制確立のたたかいを重視しているという共通性が確認された。
 (2) 「ナショナル・ミニマム問題の理論・政策に関わる整理・検討プロジェクト」が、『労働総研クォータリー』No.62+63で『報告書』を提出したことを受けて、07年3月31日、「ナショナル・ミニマム大綱をめぐって」のシンポジウムを開催した(「労働総研ニュース」No.205+206参照)。この研究例会で、労働者・国民生活の共通の基盤として最低生計費の重要性、最低賃金制確立・最低年金保障確立・生活保護水準の引き上げ・最低工賃の保障など課題との共通性が確認された。
 (3) 07年6月7日に、労働総研・全労連・全生連・中央社保協共催のナショナル・ミニマムシンポジウムで、金澤誠一理事が基調講演し、労働総研が提起している「ナショナル・ミニマム大綱案」に基づく国民共同の運動の重要性が確認された。
 (4) 08年2月22日、労働総研・労働法制中央連絡会共催、新日本出版社協賛で、牧野代表理事をコーディネーターに、高田公子新日本婦人の会会長、生熊茂実全労連副議長(JMIU中央執行委員長)、今村幸次郎弁護士をシンポジストとするシンポジウム「労働ビッグバンの狙いは何か―それをどうはねかえすか」(「労働総研ニュース」No.215+216参照)を開催した。このシンポジウムは、牧野代表理事編著『労働ビッグバン』(新日本出版社発行)を契機に行われたものであったが、「労働政策プロジェクト」の成果を反映したものでもあった。このシンポジウムは運動の発展方向に確信を与えるものとなり、情勢を反映して120人が参加し成功した。
 (5) 08年2月15日、賃金・最賃問題検討研究部会・中小企業問題研究部会を軸にした研究交流会「最賃・中小企業の底上げに関する研究交流会」を開催した。こうした形態での研究交流会は初めての試みであった。この研究交流会では、産業連関表分析に基づき「すべての労働者に1,000円以上の最低賃金を保障せよ」の試算を行った木地孝之研究員、小越洋之助「賃金・最低賃金問題検討研究部会」責任者、藤田信好中小企業問題研究部会メンバー(全商連研究所員)の問題提起を受け議論し、1時間あたりの最低賃金1,000円以上の持つ重要性を、労働者・国民諸階層の共通課題として確認しあった。このような研究部会横断的な交流会の持つ重要性が明らかになった。
 (6) 長年の課題となっていた若手研究者の研究会活動が、08年2月22日にスタートした。この研究会には、単産幹部も参加し、設立15周年事業で全労連と共同で行った「労働組合活動の調査報告」をテキストに、現時点に立った分析・検討を進めていくことが確認された。この研究会の発展に労働総研全体として協力、支援していくことが重要になっている。

(4)発刊物

 (1) アニュアル・リポート
 研究所活動の新方向に基づき労働総研設立以来初めて「アニュアル・リポート」(「労働総研ニュース」07年9+10月号、No.210・211参照)を発行した。研究所活動の全体が俯瞰できるものとして好評であり、より充実・改善に努めることが重要である。
 (2) 「2008年国民春闘白書」
 (3) 「世界の労働者のたたかい」
 (4) 「労働総研クォータリー」
 (5) 「労働総研ニュース」
 (6) “Rodo Soken Journal”

(5)ディスカッション・ペーパー

 07年度終了後、各プロジェクト・研究部会は研究所活動の新方向に基づき、2年間の研究活動を総括して、ディスカッション・ペーパーを提出することになっている。ディスカッション・ペーパーの分量は特に制限を設けない。ディスカッション・ペーパーは、電子情報として保管し、請求に応じて事務手数料程度の実費で配布することを検討中である。

4.労働総研発展の基盤整備

(1)故神尾京子会員遺産の遺贈

 故神尾会員による労働総研にたいする遺産贈与により、研究所を東京都千代田区平河町1−9−1メゾン平河町501に移転し、これまで事務所としてきた東京都北区滝野川3−1−1ユニオンコーポ403は、(財)全労連会館と共同運営になる産別会議記念労働図書資料室として拡充を図っていくことにしている。

(2)産別会議記念労働図書資料室

 労働総研と(財)全労連会館とが協力して産別会議記念労働図書資料室の整備を共同事業として進めてきた。本資料室は、産別会議の蔵書図書・資料に労働総研資料を合流させたものであるが、今回、日本福祉大学の好意によって、堀江正規文庫を産別会議記念労働図書資料室への委託・公開契約が三者間で取り交わされたことにより資料の一層の充実が図られることとなった。このことを記念して、08年4月25日、堀江文庫お披露目の記念式典が、堀江令娘、日本福祉大学、労働総研、(財)全労連会館関係者などが出席して行われた。当図書資料室の一般公開は、当面、毎週火曜日(10時〜16時)に開館することにしている。今後、労働運動関係資料収集のセンターとしての役割を果たしていく方向で同資料室の充実をはかっていく。

 以上、06年度定例総会で確認した研究所活動の新方向との関連で、07年度の調査研究・政策提言活動の経過を報告してきたが、06年度、07年度2年度にわたる研究所の調査研究・政策提言活動は、全体として、情勢が求める調査研究・政策提言活動に積極的、能動的に取り組み、ホワイトカラー・エグゼンプション政策の記者発表に象徴されるように、政策発表を契機に研究所の社会的評価を高めたことである。同時に、研究所の調査研究・政策提言活動が社会的に評価された運動上の基礎として、研究所設立の原点である、国民生活の向上に資するともに、全労連運動との密接な協力共同があることを銘記しておく必要がある。

[II.研究所活動をめぐる情勢の特徴]

1.国際的に明らかになった米国型資本主義の限界

金融自由化・規制緩和路線の破綻
 1970年代から「カジノ資本主義」の様相をあらわにしてきた米国型資本主義は、サブプライム・ローンの暴発に典型的に見られるように、世界の大多数の国民の利益に反することがあきらかになった。ブッシュによるイラク戦争の根拠のなさ、ドルの価値の低下などでアメリカ経済の世界経済における位置の相対的に低下などアメリカによる一極支配の体制がゆらぐ中で、ヘッジファンドの活動領域が金融市場だけでなく原油や穀物など商品市場などへも資金運用の場をひろげ、世界中の国民生活の基盤により直接的に影響を与えるようになってきている。
 そうした中で、07年のドイツでのG7、08年の東京でのG7などははじめとする各種の国際会議でもヘッジファンドの規制について議論せざるをえない状況になっている。

原油価格暴騰問題
 ヘッジファンドは、石油価格を暴騰させ、世界の国民の生活を直撃し、ヘッジファンドの動きと諸国民の仕事と生活の安定とが衝突し、米国型資本主義が人類を幸福にしないことが明白となっている。
 石油価格の暴騰は、直接的には交通・運輸業や漁業、農業などに原料高となって影響しているばかりか、世界でも日本でも国民の日常生活を脅かし、原油値上げの犠牲転嫁に反対するトラック労働者や漁民などの怒りのたたかいが世界各地に広がっている。
 08年6月22日に36の産油国と消費国、7国際機関と2石油企業による会合は、共同声明で「すべての関係者が国際石油市場の安定のために協調して行動する」ことや「ファンドについての動向把握など、金融市場の透明性と規制を改善する必要がある」と、投機の規制を打ち出している。同時に、温暖化防止のためにも石油大量消費型の経済・社会の見直しが重要になっている。

温暖化防止など地球環境問題
 地球温暖化防止など環境問題が人類共通の課題として世界的に大きな争点となっているが、現在の経済構造を地球環境と調和する方向に改善し、そのための技術発展の追求を国際的な大きな共通課題とすることが必要となっている。これに対して、具体的数値目標を掲げることや経済構造を改革するのを避けて、先進国のエゴを開発途上国などに押しつけ、排出権取引などを金融業の儲けの手段としていくような動きも出ている。
 途上国の経済・社会の発展を保障しつつ、日本など先進国の政府や財界・大企業が、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済・社会からの転換にむけて、その責任と役割を発揮することが求められている。同時に、国民・市民としての労働者や労働組合の積極的な役割発揮も重要になっている。

世界的な食糧危機の急浮上
 オーストラリアの干ばつや世界各地の異常気象に加えて、中国・インドなどの食糧需要の増加などを直接の契機に急浮上した世界的な食糧危機は、アメリカ、ブラジルなどを中心に進める石油代替のバイオエタノールの問題、ヘッジファンドなどの食糧を投機の手段とする動きなどにより、一層深刻なものにされている。このような事態は、アメリカのアグリビジネスの利益拡大を推し進める食糧戦略のもつ問題点を明白にした。もはや、食糧は買いたい時にいつでも買えるという前提は崩された。貿易政策で、アメリカの路線を忠実に守り、食糧自給を軽視してきた日本は、これまでの農業・食糧政策の大幅な見直しを迫られている。大国の横暴な貿易政策のつけは、アフリカ、アジアなどの最貧国の飢餓問題に精鋭的にあらわれている。
 国内でも、数次にわたる小麦価格の引き上げなど、食糧危機は国民のフトコロを直撃し、今日の食糧問題の元凶が政府の農業政策にあることが国民に分かりやすく明らかになりつつある。

新自由主義に抗する新たな流れ
 これらの事実は、新自由主義の破綻と資本主義経済の限界をあらわにするもので、米国型資本主義の枠を超えた、新しい経済の枠組みが必要であることを明白にしてきている。
 ILOは、04年の「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会」報告において、グローバル化が世界に「格差と貧困」を広げており、その規制とルール確立の必要性を提言したが、今年6月には「公正なグローバル化に向けた社会正義宣言」を採択した。これは、その実践的課題として「ディーセント・ワークをすべての人へ」を宣言するものであった。
 中南米諸国では、米国の自由主義政策のおしつけによる国民生活破壊に抗して、自主的な経済発展を追求する政府が多数を占めるようになり、韓国でも、牛肉の輸入解禁をめぐって、大規模なデモが繰り返され、政府の米国への言いなりの政策へ批判が高まっている。
 わが国においても「格差と貧困」「ワーキングプア」が社会問題となり、その矛盾が最も集中している非正規・青年労働者自身によるたたかいがマスコミの支援も得ながら各地で広がり、不払い残業や日雇い派遣、名ばかり管理職などを社会問題化させ、さらには後期高齢者医療制度への国民の怒りが政府・与党を追い込むなど、新自由主義的な構造改革・規制緩和への国民諸階層の反撃のたたかいが本格化してきている。

2.日本国内における「潮目の変化」と運動の前進

明白になった新自由主義的な政策の限界
 日本の政治経済情勢も、1.に示した情勢と密接に関連している。これまで自公政権は、アメリカの言いなりに新自由主義的・規制緩和の政策を強引に推し進めてきた。小泉・安倍政権でその動きは露骨になり、なかでも安倍政権は、憲法の「改正」で新自由主義的な政策を完成させる政策をとってきた。教育基本法の「改正」、国民投票法の制定などを国民多数の反対を押し切って進めてきた。
 労働法についても規制緩和を推し進め、財界の意向を露骨に反映する形で「ホワイトカラー・エクゼンプション」をうちだした。全労連をはじめとする労働組合は「残業代ゼロ法案」として、強烈な反対闘争を行い、ついに政府は引っ込める結果となった。これには労働総研も「11兆円の残業代強奪」の実態を具体的な推計を行って社会的に明らかにし、少なくない貢献をした。
 小泉自公政権以来の新自由主義的な経済政策は、大企業の利益拡大を至上命題として労働者や国民に労働諸法制や社会保障の連続的改悪と増税を押しつけてきた。その結果、OECDからも日本が他の先進国には例を見ないスピードで「格差と貧困」が急速に拡大、その背景には低賃金の非正規労働者の増大と所得再分配機能の後退があると指摘されるような社会をつくりあげ、新自由主義的な構造改革路線の限界と反国民的な本質を国民に分かりやすく明らかにした。
 こうして迎えた07年7月の参議院選挙は、自公与党が議席を後退させ、野党が過半数を上回るという結果となった。これは、「消えた年金記録」問題への国民の怒りに加えて、自公政権がこれまで強引に続けてきた新自由主義的な「構造改革・規制緩和」政策が「貧困と格差」を拡大し、「ワーキングプア」を生み出したことへの労働者・国民の強い反撃を意味するものであった。
 福田政権はこの状況を踏まえて、これまでの「構造改革」路線や政権運営の手法に一定の「修正」をせざるを得なくなってきている。この結果、派遣問題をはじめ労働者・国民の切実な要求が国政の問題として浮上するような、いわゆる「潮目の変化」と言われる状況が起きている。

「潮目の変化」をより大きな変化・転換とする労働運動の役割
 しかし、福田政権は「後期高齢者医療制度」廃止など国民の切実な要求には背を向け、衆院での与党3分の2を武器に「再議決ありき」で悪法成立をゴリ押し、消費税増税を「決断の時」などと言いはじめている。また、民主党は時に与党と対決しつつも、与党との水面下の協議で軍事利用に道を開く「宇宙基本法」や天下り禁止や労働基本権問題を明確にしない「国家公務員改革基本法」の成立に手を貸し、参院で可決した野党共同の「後期高齢者医療制度廃止法案」を衆院では審議拒否するなど、与党を論戦で追い詰めきれない弱点を持っている。したがって、この「潮目の変化」といわれる変化を単なる政治手法の手直しレベルに留めてしまうか、日本の政治・経済の根本的な転換につなげるかは、今後の国民諸階層の主体的な運動、労働運動の役割発揮にかかわっている。
 全労連はわが国の経済・社会の国民本位への転換に向け、「21世紀初頭の目標と展望」を提言し、その実現に向けてねばり強いたたかいを展開し、着実に社会的存在感を高めてきている。また、全労連は石播や東芝など大企業による労働者への思想・組合差別とたたかう争議解決に貢献し、トヨタ関連企業などの「偽装派遣」を社会問題化するなど、大企業の横暴とも真正面からたたかい、要求と運動を前進させている。非正規労働者の実態を社会的に明らかにし、国政上の問題にまで押し上げ、多くの具体的な要求実現を獲得してきている。
 新自由主義的な雇用・労働政策のアキレス腱ともいうべき日雇い派遣廃止など、非正規労働者の運動をさらに持続的で強力な社会的運動に発展させていくうえで、全労連などとの協力と共同・連帯は欠かせない。「非正規雇用労働者全国センター」(仮称、08年3月19日準備会・発足集会)の取り組みの開始はそうした方向への大きな一歩であり、活動の具体化が大きく期待される。
 同時に、現在の「潮目の変化」を国民本位の経済や政治への転換などより大きな変化に発展させるために最も重要なことは、すべての労働者と国民の生活改善・社会保障拡充、増税反対など切実な要求前進に向けた運動を政治革新の運動とも固く結合して強化すると同時に、「一致する要求」での広範な労働組合・国民諸階層との共同を発展させるために労働者・労働組合が全国各地で組織の総力を発揮することである。

3.情勢にふさわしい調査研究など研究課題

 以上の研究所をめぐる情勢分析の結果、2008年度における研究所の調査研究・政策提言活動として、以下のような研究領域における研究活動が必要となろう。

(1)大企業の高蓄積と労働者階級の貧困化問題

 国際競争力の強化を口実とした大企業の雇用戦略は、非正規雇用の拡大で人件費コストを切りつめ企業利益の拡大をはかるものである。これに対応して、政府は労働法制の規制緩和を推し進めてきた。雇用の多様化が推し進められた結果、派遣、請負、契約などの非正規雇用が増大し、低賃金で無権利な労働者が増え続け、労働者の長期にわたる賃金抑制を中心に国民諸階層の状態悪化が進んできた。それらに加えて食糧と石油価格をはじめとした物価高騰など、労働者や国民の仕事と生活の問題はかつてない深刻な状態となっている。青年の貧困化につけ込む自衛隊員の募集までが横行している。
 国民生活の困窮は国内市場の狭隘化となり、大企業はますます外需と軍需への依存を深めている。こうした外需依存・軍需依存の企業体質を脱皮して、労働者と国民の生活水準の向上・安定をはかりつつ、内需による資本蓄積を実現する経済体制の実現が重要になっている。
 外需と軍需依存による資本蓄積のあり方を変え、日本の優れた技術を継承し発展させていく展望を明らかにし、国民生活の安定を実現していくことが必要となっている。このように労働者・国民の生活困窮状態を打破する筋道を解明し、運動のめざす方向を明らかにしていくことが求められている。

(2)派遣問題の早期解決と労働のあり方などについて

 非正規労働者は雇用が不安定で、そのため低賃金・無権利の状態に置かれている。非正規労働者をそうした状況から脱皮できる道筋を明らかにしていくことが重要である。
 その中でも派遣労働の問題は大きい。財界は、「派遣労働法」の規制を避けるために、偽装請負という違法行為を行ってきた。この偽装請負に対して、大企業などで働く各地の労働者がそれを告発する運動に立ち上がった。08年4月に大阪高裁は、偽装請負を告発した吉岡力さんを解雇した松下を断罪する判決を下した。こうした成果を勝ち取ることができたのは偽装請負を告発する運動の高揚と、その運動に対する世論の支持があったためであった。派遣による不安定な雇用を克服するには、現行「派遣事業法」を「派遣労働者保護法」に抜本改正し、派遣期間を過ぎた労働者を「期間の定めのない」直接雇用とすることであり、その実現が非正規労働者の仕事と生活の安定には欠かせない課題となっている。また、ピンハネ、労働力レンタルなど派遣会社の違法行為が後を絶たない日雇い派遣廃止、登録型派遣の原則禁止など、当面する問題へ対処する方法を具体的な運動との関連で明らかにしていかなければならない。派遣労働については、(1)派遣労働者の生活と権利を守る。(2)派遣労働はあくまでも特殊専門分野でかつ臨時的・一時的なものに限定するという当初の原則で、派遣労働の当面の解決と根本的な解決の道筋を解明することが必要となっている。
 派遣労働問題以外にも、「名ばかり管理職」の問題、残業代の不払いの問題、QCへの賃金不払いの問題など、多様な労働者の権利侵害が起こってきていたが、告発する運動の活発化の結果、これまで隠されていた事実が次々明らかにされ、解決に向けた方向が出てきている。
 こうした課題ばかりでなく、正規労働者を中心に深刻化するメンタルヘルス問題や長時間・過密労働と過労死・過労自殺等々に対し、「人間の尊厳」を守り「人間らしく働く」という視点から、労働時間短縮や労働のあり方、24時間社会の見直しなどについて、地球温暖化の防止という視点も重ね合わせながら積極的な政策提起をおこなっていくことが求められている。

(3)社会保障の問題:後期高齢者医療制度の問題

 福田首相は「社会保障国民会議」を立ち上げ、国民に信頼される社会保障をスローガンに社会保障体系の検討を行うことを言明した。「持続可能な制度」を打ち出し、保険料負担と給付を直接的に関連づけて、政府の負担を回避する制度を構築しようとするものである。
 その典型の1つが後期高齢者医療制度である。これは、最も病気になりやすく、医療サービスを最も必要する人だけを集めた制度で、保険料と医療サービスを直接に関連付け、医療サービスの充実を求めるなら保険料を多く払え、負担を少なくするなら、そこそこの医療サービスで我慢しろというものである。制度発足以降、負担増に対する国民の批判は急速に拡大し、政府は修正せざるをえない状況に追い込まれている。しかし、その対処方法は一部の負担軽減措置で済ませ制度の根本に触れないままにしようとしている。制度の根本まで追求し、制度のあり方を追求する研究が必要とされる。
 年金制度については、全額税負担制度を打ち出し、これにより消費税率の引き上げを合理化しようとしている。国民に年金の充実か、消費税の引き上げかの選択を迫ろうとしているのである。
 労働総研もこうした社会保障をめぐる動きを意識しながら、全労連、中央社保協とも相談をしながら、国民共同の社会保障政策を調査研究するプロジェクトの立ち上げを準備している。そこでの社会保障問題は財源問題にまで踏み込んだ検討が必要とされる。それは今日の財政運営の根本に迫る性格をもつものとなるであろう。労働総研・全労連・中央社保協などが協力して「社会保障のあり方検討会」(仮称)の設立を行うことが緊急な課題となっている。

(4)国民経済基盤の破壊攻撃とナショナル・ミニマム実現の問題

 労働者状態の悪化は、国民生活全体の窮乏化と切り離しては論じられない。年収200万円以下の労働者が1,000万人を超える状況で、改めて憲法25条がすべての国民に保障している「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現していくことが切実な課題となっている。
 1時間当たりの最低賃金1,000円以上の実現は緊急課題である。それは、最低保障年金や生活保護基準、最低工賃、農産物価格保障などの引上げなど、国民諸階層の最低生計費保障要求と密接に関連している。ナショナル・ミニマム確立の問題は、労働者・国民諸階層の最低生計費の調査研究と結びつけて深化させる必要がある。
 ナショナル・ミニマムを実現していく課題は、すぐれて地域住民の生活基盤を確立していく課題と関連している。地域で働き、営業し、生活している人すべてを対象に、すべての人に共通する仕事や生活の基盤を強化し、「住み続けられる地域」を追求する課題は、今日の国民生活の問題の深刻化の実情からして重要である。賃金や社会保障の問題に加えて、とりわけ雇用保障は重要な課題となっている。
 自公政権・財界は、道州制の問題をにらみながら、三位一体改革と結びつけて、自治体の合併、住民の福祉・医療・教育切り捨て政策を推進している。地球温暖化問題とも関連して、農業危機が世界的に深刻化し、農産物の自給化が改めて脚光を浴びている。地域政策を考えていく上で、中小零細企業の経営基盤の底上げと同時に、農業の再生をも視野に入れた研究が必要である。

(5)当面の中心課題「なくせ貧困、戦争反対」を国民共同の運動

 今日のような劣悪な国民生活の状態を告発する視点は、すべて憲法の中にある。憲法が保障した国民の健康で文化的な生活、勤労する権利と義務そして平和の問題などは憲法を守り、憲法をくらしと職場に活かす課題そのものである。
 いまこそ25条・9条を中心とした憲法擁護の国民的共同の追求を重視しなければならない。とりわけ、老齢加算や母子加算が廃止されその給付水準の引き下げが画策されている生活保護の改悪を阻止し、文字通り憲法25条が活き、生存権が保障される制度とするため、全国各地の「生存権裁判」への支援を強化すること、ワーキングプアを生み出している非正規労働者の低賃金や労働条件の改善、均等待遇をめざす運動との連帯・共同が重要になっている。また、日本の憲法とりわけ第9条が世界平和に果たしている役割の重要性を世界にアピールし、国際的な連帯を実現していくことが必要となっている。国民生活を顧みず、アメリカに追随して戦争を起こそうとする者にとって日本国憲法ほどやっかいなものはない。そういう人々が現行憲法の改悪を意図するのである。名古屋高裁の自衛隊のイラク派兵違憲判決は憲法守る運動で貴重な礎石となった。それにもかかわらず政府は、恒久法によって、政府の判断のみで海外派兵が可能となる道を開く策動を強めている。したがって、これに反対すると同時に、改憲策動の背景にある日米安保体制と日米軍事一体化、在日米軍基地の再編強化、経済の軍需化などに反対する国民的な共同の追求も重要になっている。

[III.2008年度の事業計画]

1.プロジェクト・研究部会の課題
――調査研究活動活性化のための関連施策との関連で

(1)研究所プロジェクト

〈テーマ〉―「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」―

 今日の状況の特徴は、これまで続いてきた米国型資本主義の問題やそれに無批判に追従する政策をとり続けてきた自公政権の問題が噴出し、労働者・国民の仕事や生活のあらゆる部面のその問題点があらわれ、その原因がどこにあるかも明らかになってきているということにある。このような状況の下で、今日ある大きな問題を克服した後にめざす社会像を何らかの形で示すことが求められ、それを実現する道筋を明らかにできる研究が求められている。

〈研究の進め方〉

 この研究テーマは、大きな視野を必要とする研究であり、研究の仕方や進め方にもいろいろな工夫が必要となる。当面、研究の準備段階を設定する。
 このプロジェクト研究はこれまでの2つの研究所プロジェクトの研究成果を基礎にして、それを継承・発展させるものであるので、まず、それらの研究成果を広く研究所として確認する。
 また、この課題は、労働総研だけの力ではなしえないものでもあるので、いろいろな研究所や運動団体の研究成果を集約してみることが必要となる。
 これらの準備段階を経て、本格的な研究体制により総合的・体系的な研究をめざす。

〈研究の責任者〉

 牧野富夫代表理事が責任者となる。

(2)共同プロジェクト

 「労働組合トップフォーラム」、「首都圏最低生計費調査」、「地域政策検討プロジェクト」はすでに発足し、活動を開始している。これらついてはその充実・発展を図る。
 「社会保障のあり方検討会」(仮称)はまだ発足していないプロジェクトであるが、課題の重要性、緊急性から早急な発足と、多面的・総合的な活動が可能な組織にしていくことが求められている。

(3)研究部会

 2006年の定例総会で、研究所活動の新方向を決定し、2年間をめどとした研究計画にもとづく研究活動を行ってきた。本総会は、新方向を決定してから2年目にあたり、新しい研究部会として、研究活動を開始する。これまでの2年間の研究活動の到達点を確認しつつ新しい研究部会での研究活動の発展をはかる。

2.研究活動の関連施策

(1)研究例会

 運動が要請する課題について、シンポジウムを含め、年度中2回程度の研究例会に積極的に取り組む。当研究所の研究成果を広く社会的に還元する。

(2)研究交流会

 研究部会間の相互交流を促進するために、研究部会間に共通する課題での研究交流会を積極的に推進する。研究活動の新方向以後の研究部会での研究成果についての交流をはかり、研究部会活動の一層の発展を期す。

(3)E.W.S(English Writing School)

 わが国の労働運動を中心にした情報を海外に発信するための書き手養成講座として始まったE.W.Sを引き続きすすめていく。

(4)若手研究者研究会

 08年スタートした研究会の発展に労働総研全体として協力、支援していくことを重要なことと位置づけ、積極的に推進する。

(5)研究成果の発表・出版・広報事業

 (1) ディスカッション・ペーパー
 (2) アニュアル・リポート
 (3) 「2009年国民春闘白書」
 (4) 「世界の労働者のたたかい 2009」
 (5) 「労働総研クォータリー」
 (6) 「労働総研ニュース」
 (7) “Rodo-Soken Journal”
 (8) ホームページ

3.20周年記念事業の検討

 2009年12月11日に設立20周年を迎える。これは全労連をはじめ、団体会員、個人会員をはじめとする労働総研への日頃からの支援と協力の賜物である。20周年を迎える全労連の記念事業との連携を考慮しながら準備を進める。

[IV.2008年度研究所活動の充実と改善]

1.研究所活動の充実

 研究所活動を充実させるために、運動の要請に積極的にこたえた研究所活動をすすめる。研究所の調査研究・政策活動の全労連との緊密な協力・共同を強化する。

2.会員拡大

 会員の高齢化が進む中で、若手会員の参加の努力をつづけている。これまでも若手会員の拡大に努力してきたが、研鑚の場としても魅力ある研究所活動に努めるなどして、会員拡大に積極的にとりくむことが強く求められる。
 会員から会員になってもらえる研究者を推薦してもらうなど、会員拡大に取り組む。

3.読者拡大

 『労働総研クォータリー』は、特集によって大きな反響を呼んでいる。企画・編集を魅力ある内容に充実し、定期読者や会員の増加につながるよう努力する。

4.地方会員の活動参加

 ひきつづき、地方会員が研究所活動に参加しやすくするための検討をしていく。今後、中央・地方における各種公的委員会・審議会、労働者側委員などの公益委員として参加が予想される。それへの対応も準備しなければならない。

5.事務局体制の強化

 労働総研の調査研究活動を機能的・効率的に推進する上で、総会・理事会の決定を具体化し、代表理事・常任理事会の適切な指導と援助のもとで活動する事務局の役割は重要である。事務局機能の効率的な運営をおこなうため、状況に応じた企画委員会、代表理事をふくむ拡大事務局会議の開催と事務局会議の定例化を定着させるとともに、機動的な対応も含めた事務局体制の強化を検討する。