労働総研ニュースNo.207号 2007年6月



目   次

・『資本主義の横暴に抗して―労働権と生活権を守る―』の概観
・常任理事会・理事会報告他




『資本主義の横暴に抗して―労働権と生活権を守る―』の概観
「世界の労働者のたたかい2007 世界の労働組合運動の現状調査報告第13集」

斎藤隆夫


はじめに

 全労連編集・発行の年報『世界の労働者のたたかい2007』―世界の労働組合運動の現状調査報告―第13集が発刊された。13集から、学習の友社から発売されることになった。また、本『年報』から、「世界の労働者のたたかい」をサブタイトルにして、取り上げた世界の労働者のたたかいに共通する特徴を主タイトルにした。13集のタイトルは「資本主義の横暴に抗して―労働権と生活権を守る―」である。

 本『年報』の執筆には、労働総研国際労働研究部会のメンバーが協力している。長年にわたりドイツ、オーストリア、スイスの労働運動について執筆されてこられた島崎晴哉理事が6月26日死去された。本『年報』への執筆が遺稿となった。謹んで哀悼の意を表する次第である。

 この『年報』は、日本の労働運動が直面している問題を研究するうえで、多くの示唆をあたえている。労働組合の幹部活動家はもとより、労働組合運動の発展に関心をもつ研究者には必読の文献である。

 調査の目的は、新自由主義的なグローバル化の進行のもとでアメリカの軍事的経済的覇権がつよまるなか、日本の労働者のたたかいと世界各国の労働運動の共通性を認識し、各国のたたかいの教訓を日本のたたかいに活かすことである。この要請にこたえるため、2006年中にたたかわれた世界各国の労働者と労働組合の主要な闘争事例をケース・スタディ(事例調査)のかたちで、(1)闘争課題(要求)、(2)たたかいの組織・規模・戦術、(3)それらのたたかいの到達点、についてそれぞれ調査・分析している。

 本『年報』が調査・分析している地域と国は、以下の1地域(欧州連合、EU)と40ヵ国である。

 アジア9ヵ国(日本、韓国、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、インド)

 オセアニア2ヵ国(オーストラリア、ニュージーランド)

 北米2ヵ国(米国、カナダ)

 ラテンアメリカ6ヵ国(ベネズエラ、ボリビア、コロンビア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン)

 欧州1地域・19ヵ国(欧州連合=EU、英国、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ドイツ、スイス、イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、スウェーデン、フィンランド、エストニア、リトアニア、スロベニア、チェコ、スロバキア、ポーランド)

 独立国家共同体1ヵ国(ロシア)

■政治経済の動向

 2006年の世界は、経済面では、新自由主義に基づく規制緩和、資本や人の広範な移動をもたらすグローバル化、中国・インドなどの急速な経済発展による国際競争の激化などが一層進行した。政治の面では、スウェーデンなどで中道左派政府に代わって中道右派政府が登場する一方で、南米諸国での左派政権の相次ぐ成立やイタリア・スロバキアなどでの中道左派政権の成立、ドイツにおける院内統一会派「左翼」結成、米国での民主党の選挙勝利など前進と後退がないまぜになった動きが進行している。

 こうしたなかで、世界各国の労働者はさまざまな課題に対して創意ある粘り強いたたかいを展開している。以下、いくつかの課題について特徴的なたたかいを紹介しつつ、世界の労働者のたたかいを概観する。

■賃金・労働時間等労働条件改善のたたかい

〈最賃制をめぐるたたかい〉
 多くの国で最低賃金制をめぐるたたかいがすすめられた。これまで法定最低賃金の要求が組合内で少数派にとどまつていたドイツでは、「統一サービス産業組合」組合(ver.di)の主導権のもとにDGB18回大会で圧倒的多数で法定最低賃金要求が決議され、社会民主党の合意も取り付けるに至っている。これまでは「法定最低賃金は協約自治を脅かす。組合の交渉力、組織力、実行力を損なう」というのが多数意見であったが、転換が生じたのは特にサービス部門で横行している傍若無人の賃金ダンピングの問題は協約政策によっては解決できないからというのがその主な理由であった。

 ポルトガルでは、政府と労使双方が2007〜11年の間法定最低賃金を年率約5.3%引き上げる協定に調印した。最低賃金に関する三者交渉が協定に達したのはこの国の歴史で初めてであつた。スロベニアではこれまで政・労・使の三者で決定していた最低賃金を政府が法定する動きが起こっている。これに対して組合は反対の姿勢をとっている。この他、イギリス、フランス、オーストラリア、マレーシア、中国、ベトナム、ブラジル、ポーランド、リトアニア、エストニアなどで最低賃金が引き上げられ、アメリカでも引き上げの動きが見られる。

〈賃上げ闘争〉
 ドイツ、イタリア、オランダ等では長い賃金抑制の期間を経て賃金購買力回復のため粘り強い労働協約更新のたたかいが取り組まれた。特にオランダでは、過去2年間組合は政府の賃金抑制政策に協力してきたが、経済実績の好調と失業率の低下の下で、組合員の不満を受けて賃上げ要求に転じたものだった。2005年大きな注目をあびたニューヨークの市営交通労働者のストライキは今年に入って、健康保険料の労働者負担導入という負担増を伴いながらも、一定の賃上げを定めた協定締結に至った。

 イタリアでは、過去数年間経営危機にあつたフィアットが業績回復を見せるなか、企業補足協約による賃金引上げのたたかいが取り組まれた。結果は今後3年間で賃金を倍増するというかなり大幅な賃上げであった。その他約5,000人の不安定雇用労働者の安定化措置が定められたことも注目される。ロシアでは米煙草会社フイリップ・モリスや米フォードの工場で賃上げのためのストライキが起こった。背景にはロシ年ア経済の好調で外国企業の賃金が必ずしも高くなく、企業本国の労働条件との格差への不満があるといわれている。

〈労働時間をめぐる闘争〉
 労働時間問題では、経営者による工場の海外移転攻勢のもとで労働時間延長の譲歩を余儀なくされているドイツで、2006年たたかわれた公共部門労働協約改定紛争は使用者側の大幅な労時間延長の主張を、14年ぶりといわれる14週3ヵ月にわたるストライキで阻止したたたかいが注目される。EUでは、3年近く議論されてきた「オプトアウト」(EU労働時間指令による週労働時間の上限である48時間を超えて労働者を働かせることを、労働者の同意を条件として認める指令適用除外規定)廃止がイギリスの強い反対で先送りになった。

■解雇制限・不安定雇用規制のたたかい

〈CPE撤廃闘争〉
 フランスでは「初採用契約法」(CPE)(26歳以下の若者の採用を促すために企業の社会保険負担を3年間免除する一方通常2〜3ヵ月の見習い期間を2年間としこの間の解雇を自由とする)の撤廃を求めるたたかいがかってない規模で広がった。労働者と学生が結束して闘争をすすめ、数次に及ぶ全国的な統一行動を成功させて労働法典の根幹の変更を許さなかったことは特筆に価する。統一行動の規模は最高時には300万人に達した。

〈非正規雇用規制のたたかい〉
 スペインでは、06年5月9日、04年に発足した社会労働党政府と2大労組ナショナル・センターおよび使用者団体連盟が労働市場改革に関する協定に調印した。協定の主な内容は有期雇用乱用の規制(2年以上有期契約を2回以上繰り返す形で雇われ、同じポストで働いている労働者は30ヵ月以内に無期雇用労働者にすることを義務付ける)などである。ドイツでは、DGB協約委員会が2つの人材遣企業連合とのあいだで長期の交渉の末、最低労働基準についての協約を獲得し、ベルギーではテレワーク全国団体協約が実施に移された。

 一方、社民党政府から中道右派政府に変わったスウェーデンでは季節雇用の再導入、臨時雇用の可能期間の14ヵ月から24ヵ月への延長など労働市場柔軟化政策への転換姿勢が伺われる。また韓国では、民主労総の7回にわたる全国ストにもかかわらず、「非正規職法」が成立した。この法は短期雇用と人材会社からの派遣期間をそれぞれ最長2年に限定し、それを超える場合「無期限勤労契約者」にすること等を定めているが、組合は雇用期間が2年以内の非正規職はいつでも解雇できる、派遣労働が可能になる範囲が拡大されるとして反対していたのである。

〈解雇・人減らし反対闘争〉
 解雇や人員削減に反対するたたかいは多くの国で起こっている。米国の自動車部品メーカー大手のデルファイでは、GMからの単価切り下げ要求に対応するため人員削減・一部の工場の閉鎖を提案したが、UAWが反対を表明しつつも草の根的な運動を組織しない中、企業への譲歩に抵抗するグループ「連帯の戦士」は各地で集会を開いている。ドイツでは金属部門のほか金融部門(ドイツ銀行等)でも雇用削減紛争が起こっているが、フォルクスワーゲンでは22時間におよぶマラソン交渉の結果、賃上げなしの労働時間の延長とひきかえに雇用確保の協定に達した。一方、同社はベルギーにもつフォスト工場では4,000人の解雇を発表し、ベルギー3大労組はストライキで抗議した。フランスでも人員削減をめぐる労使交渉は急増している。

〈サービス指令をめぐるたたかい〉
 EUレベルでは、「サービス指令」をめぐるたたかいが欧州労連によって取り組まれた。欧州委員会が出した原案は全てのサービスを対象とした域内移動の自由化法で、サービス提供者は一部の例外を除き、原産加盟国の国内規定のみに拘束されるとしていた。欧州労連の2度にわたる全欧規模の反対運動を背景として欧州議会が修正意見を採択した結果、委員会は母国法主義条項を削除するとともに、臨時労働者の派遣業を適用対象から除外するなどの修正をおこなった。

 日本でも、日亜化学工業で、JMIUが団体交渉で請負労働者1,600人を直接雇用させるなど画期的なたたかいが広まりつつある。

■社会保障・福祉国家擁護のたたかい

〈社会保障改善のたたかい〉
 ベルギーでは、約200万人にかかわる社会給付の引き上げなど社会保障の改善が実現した。06年9月、労使は次のような内容の政府提案に同意した。最低ランクの年金および障害手当ての2%アップ、低い給付を受けている失業者の社会給付の6%引き上げ、低所得家族の手当て引き上げなど。ドイツでは、10月、大連立政権の社会・労働政策に抗議する大規模な集会・デモが行われた。抗議行動の批判の中心は付加価値税の引き上げ、年金支給年齢の65歳から67歳への引き上げなどであった。スウェーデンでは新政権は失業保険に関する政府負担の減額と失業保険給付の従前所得80%から70%への引き下げを計画し、すべての組合の反対に直面している。

〈年金改悪反対闘争〉
 イギリスでは、地方公務員が年金改革に反対して大規模な24時間ストを行った。参加者は100万人以上。公務員の年金支給年齢が60歳のままであるのは民間の65歳に比べて不公平だという理由で公務員も65歳に引き上げることを政府は計画したが、前年国家公務員についてはストの構えの前に提案を引っ込めていた。財源の違う地方公務員について今年同様の提案がなされ、反対に出会ったのである。結局、現役労働者については現行制度を維持し、新規採用者のみ修正されることとで紛争は終結した。

 イタリアでは、4月に発足した中道左派政権との交渉の結果、低所得層向け減税、高所得者への所得税率アップ、ベルルスコーニ前政権のもとでストップしていた公務員賃金の引き上げなどが実現した。組合の要求していた衰退傾向にある産業部門の再興のための投資助成なども新年度予算に盛り込まれた。

■移民・外国人労働者のたたかい

 アメリカではメーデーの日、ヒスパニック系移民が主導して、ロサンゼルスで100万人が集まったほか、シカゴ、ニューヨークなど各地で数十万人規模のデモ・集会が開かれた。不法移民の取り締まり強化の法案に反対する行動であった。フィンランドでは、アケル造船会社の労働者が外国人下請け労働者の低賃金と悪労働条件に抗議してストライキを行った。フィリピンやスロバキアでは医師・看護師など専門的労働者が高賃金を求めて国外に出国し、国内の労働者不足を引き起こす状況が問題となっている。

 日本でも全労連が研修生・実習生をはじめとした外国人労働者の要求実現と組織化のため、「外国人労働者連絡会」、「派遣・請負労働者連絡会(準備会)」を発足させているのは注目される。

■労働基本権擁護・労使関係改善のたたかい

〈団交権・組合加入権をめぐるたたかい〉
 アメリカでは、労働組合に加入して団体交渉権をだれが行使できるかが争われた。労使関係委員会(NLRB)は看護師、建設労働者、ジャーナリスト、テレビ従業員などは監督者であり、労働組合に加入する権利を持たないとする見解を示し、物議をかもした。労働組合はこぞって反対し数日間の抗議行動を組織したが、委員会は最終的にこの見解を変えなかった。この年、アメリカの組合役員選出選挙の実施申請数は前年比で25.6%減少した。これはひとつには、選挙方式ではなくカードチェック方式(労働者の過半数の署名による)で申請させる事業所が増えたためとみられている。

 05年、組合の大規模な反対運動にもかかわらず、国際自由労連が「先進国での労働者の権利侵害としては最悪のもの」と批判した「ワークチョイス─新職場関係制度」法(団体交渉対象事項の制限、中小企業での不当解雇保護の廃止等。詳細は06年版参照)が制定されたオーストラリアでは、今年も大規模な抗議行動が行われた。しかし、参加者は昨年の最大規模時に比べると約半分となり、オーストラリア労働組合評議会(ATUC)書記長が「われわれに残された実際的な戦略は選挙闘争だ」とのべる状況にいたっている。

〈組合否認、活動家の殺害〉
 フィリピントヨタの自主的組合未承認・弾圧問題では、今年改めて組合承認の投票が行われ、会社側は軍隊まで動員し、解雇した組合活動家らを排除し第二組合承認を目論んだが、同労組も過半数を獲得できず成功していない。

 コロンビアでは依然として世界でもっともおおくの労働組合運動活動家が殺害されている。2006年には72人が殺害された。対象になるのは公務員関係の組合活動家が多い。政府が国際通貨基金の政策を受け入れて構造調整を進めているため、これに反対する公務員が政府や右翼武装グループから攻撃されているものである。例えば、この年のはじめ、政府が進めている郵便事業民営化に反対した郵便労働組合の委員長リバス氏が殺人の脅迫を受けた。組合は政府、郵便当局に対し氏の生命の安全を守るよう要求した。

 オランダでは、ファッション・スポーツ用品小売業で繊維部門経営者協会は2大労組連合を交渉から排除し、少数派組合との交渉で団体協約を結んだ。観測者によれば、団体協約制度が崩れはじめているようだ。

〈産別組織の改編〉
 韓国では、企業別組合から産業別組合への組織改編が一層進んでいる。韓国で企業別組合が根付いたのは、軍事独裁政権がたたかう労組の出現を阻止するため複数組合を禁止したこと、その後80年には産別労組そのものを禁止したためである。その後87年産別労組禁止条項が廃止されるなかで、民主労総は正規職の利益が優先されがちな企業別組合から産別組合に変わることで非正規職の待遇改善が可能になるとしてこの方向を追求してきていた。06年末で民主労総に加盟する産業別組合は27労組で、全組合員のうち75.6%が産業別労組所属となった。

 ポーランドやエストニアでは情報協議に関するEU指令を実施するための法が成立した。エストニアでは組合はこの法を労働組合と職場委員の地位の弱体化をねらったものとみて、反対運動を繰り広げた。ポーランドでも組合は反対の姿勢をとった。

■資源国有化・工場占拠のたたかい

 ラテンアメリカでは、相次いで革新政権が誕生しているが、その多くは貧困と格差の解消のため資源の国有化や経済の自主的発展を追及している。そのなかで組合運動として注目されるのはベネズエラやアルゼンチンで展開されている「工場占拠・自主管理」のたたかいである。

 ベネズエラでは「占拠・共同管理企業革命労働者戦線」(FRETECO)が結成され、産業をいっそう接収し国有化をはかることおよびそれを労働者の管理の下に置くことを目標として政府に予算を要求している。アルゼンチンでは、2000年代はじめの経済危機のもとで倒産した多くの企業で労働者が工場を占拠して自主管理で経営を再建する運動が続いている。これまでのところ一万人を超える職をつくりだしたといわれている。

■イラク戦争反対のたたかい

 米国のさまざまな労働組合が作る労働者反戦運動(USLAW)は中間選挙での共和党の大敗を受けてさらに活気づいている。この運動に参加する組合の積極的なイニシアチブは、戦争の問題を正面から提起することを恐れるリーダー達の傾向を克服して、AFL-CIO大会でイラク戦争反対決議を採択するに至った。イギリスでも労働党のアメリカ追随への批判が高まっている。

■社会主義をめざす国での労働者のたたかい

 中国では、総工会が労働者の権利擁護という労働組合本来の取り組みを強めつつある。06年に目立ったのは先ず農村からの出稼ぎ労働者の職場と生活の権利を守り、彼らを労組に組織する活動であった。炭鉱や建設現場では80〜90%が出稼ぎ労働者であるが、彼らは過酷な労働と低賃金を強いられ、しかも賃金不払いなどの権利侵害も多発していた。こうしたなかで、総工会は「出稼ぎ労働者は困難あれば労組へ」のスローガンを掲げ、未払い賃金問題の解決など支援活動を展開している。

 外資企業の労組作りにも尽力している。アメリカの巨大スーパーチェーン「ウォルマート」は中国で現在62店舗を設けているが、総工会の強い要求を受け入れ、7月福建省晋江の店舗で初めて労組が結成されて以来、9月末までにすべての店舗で労組が結成された。

 この他、企業が従業員を雇用する際の労働契約締結率の向上に努めている。

 同じく「社会主義指向の市場経済」体制をとるベトナムでは、日系企業を含む外資系企業でストライキの急増が見られる。2000〜05年までの年間平均スト発生件数が100件程度であったのに対し、06年には上半期だけで303件に達している。その背景には労働者数の急増と人権侵害・違法行為や暴力を伴いつつ行われる資本主義的搾取の強化がある。これらのストの9割以上は「違法」扱いされるという現行労働法のあり方も問題視され、06年11月修正がなされた。

■国際労働組合総連合(ITUC)の結成

 06年11月、オーストリアのウィーンで「国際労働組合総連合」(ITUC)が結成された。154ヵ国、307ナショナル・センターを結集する労働組合運動の新しい国際組織が誕生したのである(組合員1億6,800万人)。

 新組織には国際自由労連と国際労連がそれぞれ組織を解散し移行するとともに、これまで国際組織に加わっていなかったフランスCGTなど8ヵ国、8ナショナル・センターが参加した。戦後の冷戦期にイデオロギー的対立から分裂し、今日に至っていた国際労働組合組織が、経済のグローバル化が労働問題にも大きな影響を与える状況のもとで、統一への大きな一歩を踏み出したと言いうる。

 初代書記長に選出されたガイ・ライダー(前国際自由労連書記長)は、“グローバル化を万人に受け入れられる人間的なものにするためにルールを変える”との趣旨の決意を述べたといわれている。
 
『世界の労働者のたたかい―2007』の執筆者は、
以下の労働総研・国際労働研究部会メンバーである(あいうえお順)。

岩田幸雄 (全労連副議長)
岡田則男 (会員、ジャーナリスト)
面川 誠 (会員、ジャーナリスト)
加藤益雄 (会員、全労連国民運動局)
木暮雅夫 (理事、日本大学教授)
小森良夫 (会員、国際労働問題研究者)
斎藤隆夫 (常任理事、群馬大学教授)
坂本満枝 (会員、国際労働問題研究者)
猿田正機 (会員、中京大学教授)
島崎晴哉 (理事、中央大学名誉教授)
平井潤一 (会員、国際問題研究者)
藤吉信博 (労働総研事務局次長)
布施恵輔 (会員、全労連国際局長)
三浦一夫 (会員、ジャーナリスト)
宮前忠夫 (会員、国際労働問題研究者)
(学習の友社発売、定価=1,300円)

(さいとう たかお・国際労働研究部会責任者)

労働総研2006年度 第5回常任理事会報告

 労働総研2006年度第5回常任理事会は、07年6月2日午前11時から午後1時まで、牧野富夫代表理事の司会で、全労連会館で開催された。

 報告事項:藤吉信博事務局次長より、1)産業別組合記念・労働図書資料室について、2)神尾京子著作集の発行について、3)千代田区平河町事務所お披露目について、4)調査政策学校について、5)若手研究者との懇談について、6)法人化問題について、7)編集企画について、8)企画委員会・事務局活動について、9)プロジェクト・研究部会活動について、などの報告事項が報告され、討論の結果、承認された。

 協議事項:入会の承認について、事務局次長より提案があり、討議の結果、承認された。

 2007年度定例総会議案について、大須眞治事務局長より、第一議題=2006年度の経過報告、第二議題=1)研究所活動をめぐる情勢の特徴について、および2)07年度の事業計画について、などが提案された。討議は「研究所活動をめぐる情勢の特徴について」を中心に行われた。討議の主要な論点は以下の通りである。

 米国の覇権主義の矛盾を鮮明に分析する。日米支配層の内部矛盾は課題・運動論の中で分析する。資本蓄積構造の変化との関係で経済情勢の分析を深める。労働ビッグバンの問題は憲法改悪・戦後レジュームの転換の問題と関連付けて分析する。株主資本主義は労働者への分配が削減されるというような問題だけではなく、労働の否定につながる資本の寄生性・不朽性の問題である。

 解雇の金銭解決、ホワイトカラー・エグゼンプション、団結権の否定、労働契約法制など支配層の攻撃、労働法制の改悪は、正規労働者と非正規労働者の格差是正、ワークライフバランス論で、分断・対立を促進している。労働ビッグバンの本質は、労働者保護法制を解体して、労働力の流動化・多様化を極限まで安い労働力の大量創出、賃金・労働条件の劣化、上と下からの規制排除、労働運動の規制にある。労働ビッグバンの概念規定が必要ではないか。成果主義賃金による賃金・所得削減と増税・社会福祉関連の負担増などが生活破壊を促進している。

 牧野議長より、討論で出された積極的な意見を反映して、国民生活破壊が強行され貧困と格差が拡大に対する対抗軸とするような、ナショナル・ミニマム、最低賃金確立など、人間宣言的な文言を加えて方針案を完成させるようにしたい、またこの常任理事会の討議のポイントを含めて、理事会への方針案を提案する、とのまとめの発言があり、承認された。

労働総研2006年度 第1回理事会報告

 第1回理事会は、6月2日午後2時から4時まで開催された。冒頭、藤吉信博事務局次長が第1回理事会は規約第30条の規定を満たしており、会議は有効に成立していることを宣言した後、牧野富夫代表理事を議長に選出し、議事は進められた。

 大須眞治事務局長より、2007年度定例総会議案の、第一議題=2006年度の経過報告、第二議題=1)研究所活動をめぐる情勢の特徴、および2)07年度の事業計画について、などが、常任理事会での討議のポイントの紹介を含め提案された。

 常任理事会の討議に付け加えられた理事会での新たな討論のポイントは以下の通りである。

 最賃以下の多数の非正規労働者が存在するが、その水準以下で外国人労働者が働かされている。労基法以下の二番底、三番底と底なしの劣悪な労働条件を規制することが重要である。生活保護基準が破壊され、生存権・基本的人権が否定されているが、人権裁判も全国で起こされている。こうしたナショナル・ミニマム確立、生活改善を求める国民的運動と最賃・労働条件を引き上げるたたかいが連携を強めるべきである。安倍自公政権の対米従属の軍事・政治・経済路線と靖国派の第二次大戦・侵略戦争美化路線は、アジアだけでなく、米国との間でも深刻な矛盾をつくり出している。財界の中にも憲法改悪に反対する動きがあることに注目すべきである。

 牧野議長は、常任理事会と理事会での討議を踏まえて、研究所をめぐる情勢分析を、1)政治経済情勢、2)労働ビッグバンに見るような反労働者的攻撃の特徴、3)研究所の調査研究の課題に整理して完成させることを提案し、確認された。

5−6月の事務局日誌

5月1日 メーデー
8日 日本福祉大図書館堀江文庫訪問(大木・藤吉)
16日 全倉運学習会(藤吉)
18日 調査政策学校打ち合わせ
第8回企画委員会
事務所お披露目
6月2日 第5回常任理事会
第1回理事会
16日 第9回企画委員会
21日 憲法をくらしに生かす国民共同交流集会(熊谷)
22日 事務局会議
23日 第4回編集委員会
第6回常任理事会

5−6月の研究活動

5月7日 賃金最賃問題検討部会―成果主義賃金の特徴と新たな問題状況
27日 「21世紀労働組合研究」プロジェクト
28日 労働運動史研究部会―平田哲男「レットパージの史的究明」を読む
29日 女性労働研究部会―労働基準監督の現場から見たこの間の労働行政と労働者の実態
6月7日 全労連・労働総研・全生連・中央社保協共催「6.7ナショナル・ミニマムシンポジウム」
9日 関西圏産業労働研究部会
11日 賃金最賃問題検討部会―損保における成果主義の動向・背景と対応
22日 労働者状態統計分析研究部会―統計から見た貧困と格差の10年
25日 「21世紀労働組合研究」プロジェクト─最近の労働組合論をめぐる一動向について

─2007年度定例総会延期のお知らせ─

 6月23日の第6回常任理事会で、2007年度定例総会の開催日程について討議した結果、9月8日(土)に延期することを決定しましたので、お知らせします。

 労働総研常任理事会は、2007年度定例総会日程を7月28日に予定して諸種の準備を進めてきました。しかし、安倍自公政権が、重要法案と位置付けた社会保険庁解体・民営化法案と年金時効特例法案や国家公務員法改悪案(天上がり自由化法案)を強行採決するために、国会会期を延長し、参議院選投票日を7月29日と決定したため、7月28日の定例総会を延期することにいたしました。

 新たに決定した定例総会の日程と場所は、次のとおりです。


1)日 時:9月8日(土)午後2時から5時(予定)
2)場 所:全労連会館3階306会議室

  *次号ニュースに総会議案と招請状を掲載します。