労働総研ニュースNo.192号 2006年3月



目   次

・中小企業の現状と中小企業大運動
・第3回常任理事会報告他




中小企業の現状と中小企業大運動

大木 寿

J 労働組合のあり方と社会的役割が問われている

(1)「構造改革」から10年
―労働者と中小企業の現状

1)弱肉強食の競争社会となり、貧困化と格差が拡大

 1995年以降、財界と政府による新自由主義にもとづく「構造改革」が本格化し、リストラ、経済ルールと働くルールの規制緩和・廃止によって、雇用と賃金の破壊が進み、中小企業つぶしが行われ、相対的過剰人口といわれる大量の失業者と非正規雇用がつくりだされた。非正規雇用は労働者の3割を超え、女性と24歳以下の若者は半数を占め、年収100万〜200万円という生活困難な労働者が急増した。正規雇用労働者の賃金も7年連続下げられ、小零細企業に働く労働者の賃金は極めて低い状態にさせられている。

 弱肉強食の競争社会になり、二極化して貧困化が拡大し、希望喪失の格差社会となった。大企業はリストラと大減税でバブル期を大幅に超える利益を上げ、内部蓄積を増やした。トヨタの荒木副社長は「日本経済の“失われた10年”は、トヨタにとっては“飛躍の10年”であった」と豪語したが、まさに「巨大企業栄えて、民滅ぶ」である。

2)中小企業と地域経済の状況

 この10年間、日本経済と雇用を支えてきた中小企業の状態は激変し、倒産・廃業が激増した。倒産は2001年1.9万件をピークに最近減少している。しかし、深刻度は増している。倒産形態は任意整理が90%から60%に減少し、破産が10%から40%へと急増した。そして、年平均の廃業数(個人企業と会社企業)は20万(廃業率4%)前後から25万(廃業率5%)前後に増大し、会社企業は2万(廃業率2%)前後から8万(廃業率5%)前後へと急増した。廃業率が開業率を大幅に上回る状況となった。国税庁調査では欠損企業が65%から70%へと増大した。特に、小零細企業が深刻であり、廃業予備軍が大量に存在する。中小零細企業だけでなく、農漁業も潰されてきた。

 その結果、地域経済はモノづくり、流通・商業、地域金融機関が破壊され、所得の減少で消費購買力が低下し、地域経済の疲弊と自治体財政の危機が深まった。その象徴といえるのが、地域・街の顔である商店街がシャッター通りになっていることである。

3)全労連・全国一般の職場状況

 私たちの組合の企業状況は、小泉「改革」以降、急速に厳しい状況に置かれている。2001年8月調査(149社)では、経常赤字が32%、債務超過7%、その危険あり7%と深刻な状態にあった。「合理化」提案されている職場は、賃金34%、労働条件32%、雇用19%に及んだ。1年間の倒産・閉鎖は10職場と急増した。全国の中小企業に働く労働者が倒産・閉鎖で職場を奪われたが、たたかいに立ち上がる労働者も増大し、私たちの組合では21職場724名が組合結成・加入した。

 景気が回復したといわれる2005年12月調査(143社)では、経常赤字は11%に減少した。赤字から黒字に転化した企業もあるが、深刻な状態にあった企業が倒産したことも減少の一因である。「合理化」提案されている職場は、賃金29%、労働条件17%、雇用16%あり、厳しい「合理化」とのたたかいを余儀なくされている。

 大企業と中小企業の二極化だけでなく、中小企業間でも二極化している。中小企業家同友会の「景況調査報告」(10〜12月期)では、業種別業況は依然厳しい業況となっている。製造業が改善し、次いでサービス業も改善しているが、業種によって格差が広がっている。建設業、流通・商業は停滞、悪化の状況となっている。私たちの職場も同様の状況にある。

(2)企業の社会的責任と労働組合の役割が問われている

1)問われている企業統治と企業の社会的責任

 多国籍企業によって、世界規模で競争が激化した。大企業の横暴だけでなく、不祥事、不正行為、不正事故が多発し、企業統治と企業の社会的責任、社会的責任投資が厳しく求められる時代となった。企業統治では、アメリカ、日本は株主優先だが、社会的に求められるのはヨーロッパの利害関係者重視である。企業の社会的責任は、国連が2000年に「グローバル・コンパクト」で人権、労働基準、環境などの9原則を発表し、EUは2001年に「グリーンペーパー」を発表し、国際標準機構(ISO)は2004年に、社会的責任に関する国際規格の作成を決定している。日本経団連は2004年に改訂版「企業行動憲章」を発表したが、企業の不祥事、不正行為が蔓延し、後を絶たない。

 また、地域経済の活性化、雇用拡大、産業発展に中小企業の存在は欠かせないとして、2000年に「欧州小企業憲章」とOECDの「中小企業政策憲章」を採択しました。中小企業家同友会は日本版「中小企業憲章」をつくる運動を進めているが、「構造改革」の対抗軸として、労働組合をはじめ国民的な運動にしていくことが求められている。

2)労働組合の社会的役割が求められている

 利害関係者重視の企業統治と企業の社会的責任を果たさせていく上で、労働組合のあり方と役割は決定的に重要である。労働組合はこの10年間の「構造改革」でその基盤を崩され、組織率は19%を切った。2003年の連合評価委員会報告は、「労働運動が足元から崩壊しかねない事態」に陥っていると警告したが、労働組合を再生するために、労働組合の社会的役割が求められている。労働組合は、職場と地域で、非正規も含めすべての労働者と国民の共感と支持を得る要求で大きな連帯・共同をつくり、運動を進めること、要求実現運動と結合した組織拡大運動が求められている。

 そして、労働組合は働くルールと経済のルールを守らせ、新たにつくり、大企業を民主的に規制する必要がある。全国的な運動による「上からの規制」(法制度)、労働組合による「中からの規制」、地域運動による「下からの規制」の規制が必要である。

K 全労連・全国一般の中小企業大運動

(1)中小企業労働運動の発展

1)組織破壊と「合理化」攻撃に対抗してきた中小企業労働運動

 全国一般労働組合は圧倒的に中小企業に働く労働者で組織されている。結成以来、激しい組織破壊攻撃、財界・政府の政策による厳しい「合理化」攻撃とのたたかいの連続であった。そのために、職場組織の半数が少数組織となっている。

 1970年代以降、階級的民主的な中小企業労働運動は中小企業の二面性(労働者の搾取、大企業による収奪)の観点から、「一面闘争・一面共闘(或いは協力)」の方針をとるようになり、実践に踏み出してきた。私の出身である全国一般神奈川地本も挑戦し、それまでの理論・政策や実践に学び、発展させたるためにシリーズ『日本の労働組合運動4=経済民主主義運動』(1985年大月書店)の「経済の民主化と中小企業労組の新たな課題」の著者相田利雄法政大学教授を講師に学習会を行い、方針と実践に役立たせた。

2)「最低賃金と中小企業の二大運動」と「たたかう提案型の運動」

 1989年に全労連結成と同時に全労連・全国一般が結成された。これまでの中小企業労働運動の到達点を踏まえ、実践的な基本方針と政策をつくり、実践を進めてきた。1992年に、基本方針「中小企業における闘いの基本方向」と、その実践のための政策「企業を丸ごとつかむ企業分析」、「多数派をめざす基本方針」を決定し、1994年に全労連・全国一般の基本戦略と位置付けた「最低賃金と中小企業の二大運動」を決定した。中小企業に働く労働者の賃金・労働条件の抜本的改善と雇用・職場を守るために、生活できる最低賃金と国民生活の最低保障の軸となる全国一律最低賃金制確立をめざす「最低賃金大運動」、大企業の民主的規制と、中小企業と地域経済の振興をめざす「中小企業大運動」の二大運動である。学習・討論を深め、1996年より本格的に実践を開始し、「構造改革」により賃金破壊と解雇、倒産の激増が必至になるので、1997年に政策「解雇も倒産もさせないたたかいの進め方」、2001年以降の小泉「改革」に対して政策「たたかう提案型の進め方」を決定し、職場と地域で実践してきた。

(2)職場の“たたかう提案型”運動

1)労働者犠牲でなく、まともな経営に変える

 中小経営者の大多数は労働者犠牲で生き残りや利益拡大を図る。中小企業の場合は、経営の現状と将来に不安を持ち、「何とかならないか」と思う労働者と管理職が増え、経営陣の中にも増えている。中小企業は資本力も経営能力も大企業と比べて貧弱であり、雇用と生活を守るために「労働者の知恵と力を存分に発揮できる職場」にしていくことが必要である。職場の“たたかう提案型”運動は経営者に協力する「労使協調」とはまったく違う。みんなで企業実態を把握・分析し、労働者犠牲ではなくまともな経営に変える「経営改善(改革)提案」を作成し、たたかいによって圧倒的な労働者の支持を得て、まともな経営と要求を実現する運動である。また、運動を通して多数派を形成し、組合員を増やすことにある。たたかう提案型運動は中小企業だけでなく、大企業でも実践し、特に生協や民医連などの「民主的」経営は労働組合の果たす役割が決定的に重要と位置付けた。

2)「社長ダメ論、経営オマカセ論」の克服で実践

 組合は「経営が悪いのは社長がダメだから」、社長は「組合が会社をダメにしている」とダメ論が出る。組合は「経営は経営者が考えること」、社長は「組合は経営に口を出すな」と双方に「経営オマカセ論」がある。私たちは社長ダメ論と経営オマカセ論を克服し、たたかう提案型の運動を進めた。

3)実践例の紹介

 【F職場】大企業系列の子会社で、20代の青年が中心になって稼働日数が増加する「交替制勤務の変更」に反対し、職場労働者の過半数で組合を結成した。組合は4直3交替制に反対し、「これまでの3直3交替制で1班2人体制から1班3人体制に変更し、生産効率のアップをめざす」という提案をし、会社に認めさせた。その結果、生産は前年比136%となり、会社の目標であった前年比132%を上回った。4直3交替制を導入した親会社の系列会社の生産は前年比96%という結果となり、組合の「労働者犠牲に頼らない生産効率のアップ」という提案が間違っていなかったことを証明した。この「合理化」を許さぬ活動を背景に春闘がたたかわれ、正社員とパート・契約社員の賃上げ、半日有休の取得、パート・臨時の生理休暇取得、駐車場の舗装整備、作業服・作業帽の無償貸与、労働安全衛生委員会の設置、大規模な作業変更の情報開示と事前協議、積極的な改善提案を採用する努力など、組合結成以来の要求を実現した。

 【プラコー】組合員は従業員数48人中3人で他組合がある。2年間、赤字を理由に賃上げゼロで一時金も少額であったが、会社が1.6億円も利益をあげたので22,000円の賃上げ要求をし、他組合も昨年を4千円上回る15,000円の要求をした。しかし、経営者はゼロ回答に固執した。組合は企業分析をし、経営改善提案を会社に提出し、宣伝した。提案について管理職や労働者が「その通りだ」と答え、他組合に共闘を申し入れたが「思うところは同じだができない」と回答してきた。ところが、提案の反響に驚いた会社は、11,637円4.96%の回答し、経営者は「今後もおおいに提案してもらいたい。すべて実行できないかもしれないが真摯に受けとめている」と語った。

 【明星食品】上場企業。組合員は従業員数400人中23人で他組合がある。会社は人件費削減のために、労働条件切り下げの提案をしてきた。組合は企業分析を行い、経営改善提案で「会社は利益をあげ続けており、借入金も少なく、優良企業である。労働条件の切り下げの理由がない。問題は無駄な販売費にある」と指摘し、労働者に宣伝した。この提案は職場で大反響を呼び、他組合からも「是非、懇談をしたい」との申し入れがあり、その事を宣伝すると、会社は労働条件切り下げを撤回し、賃上げと一時金も世間水準を上回る額を獲得した。

 【昭和ゴム】上場企業。従業員数190人で多数組合。会社は連続的な赤字で債務超過に陥り、銀行は土地売却・人員削減のリストラを求めてきた。組合は親会社と銀行に対するたたかいを開始し、支援共闘会議を結成して争議並のたたかいを進め、親会社から社長を派遣させ、経営改善のたたかいを進めてきた。ところが親会社が「投資ファンド」に株を売り渡した。組合は投資ファンド出身の社長退陣のたたかいを進め、社長を交代させた。しかし、ハゲタカファンドによって会社が食い物にされ、累積欠損が27億円となり、銀行が融資を拒否してきた。親会社と金融機関、金融庁に対するたたかいを強化し、中小企業金融公庫の融資を実現し、銀行も「労使で再建案をつくれば融資を検討」と回答した。労使の企業再建検討委員会で再建案をつくり、銀行に融資させ、黒字化を実現し、賃上げや一時金を実現させた。

 【民医連・西淀病院】ユニオンショップ制で組合員530名。経営が危機的な状況になった。組合は以前から理事会に経営改善の骨子案を示し、経営改善を求めたがしなかった。組合役員は「理事会総退陣」の意見もあったが「理事会ダメ論」を克服して、倒産させないたたかいを進める決意を固め、すべての職場で経営の問題点と改善点を出し合う討議を進め、地域の「健康友の会」の役員の支援もお願いした。組合は臨時大会を開催して、理事会の経営責任を明確にした上で、労働組合主導による赤字克服・経営再建を進めることを決定した。また、定昇を凍結し、一時金は前年度分を確保する方針を決めた。組合と大阪民医連対策本部と理事会による経営再建のたたかいが始まった。組合は全職場で経営改善の運動を進め、連日その取り組みを伝えるニュースと職場毎のニュースを発行し、職員と患者、友の会会員に伝えた。さらに、職員と友の会役員が一緒になって、会員8,700世帯の内4,000軒を訪問し、病院に対する意見や要望を聴き、出資金の支援をお願いをした。これらの努力が実を結び、3億3千万円の利益を達成し、2年分の定期昇給を実現した。しかし、連続的な医療改悪によって、その後も苦闘を強いられている。

 【中央精機】工場閉鎖に反対して、管理職が先頭になり、多数の労働者を結集して組合を結成した。会社は「閉鎖は強行しない」と確約したが、なし崩し的に閉鎖を進めようとした。組合は企業分析をし、「業界平均の3倍もの利益を上げているが、問題点をさらにすればさらに良い企業になる。利益を生み出す源である工場の存続強化こそ会社発展の保障であり、閉鎖は会社をダメにする」とする経営改善提案を会社に提出し、支援共闘会議も結成して本社に対するたたかいを進めた。社長は「ご指摘の通り」と表明した。しかし、オーナーは閉鎖強行を主張したが、取締役会は工場存続を決定した。ところが株の48%を保有するオーナーが怒り、会長と社長の解任を求めたが、株主総会はオーナーの解任要求を否決した。賃金と一時金は世間水準を上回る内容を実現した。

(3)地域の中小企業大運動

1)大企業の横暴規制と中小企業・地域経済の振興をめざす

 中小企業は日本経済と地域経済、雇用の支え手として重要な役割を果たしてきた。しかし、その中小企業が潰され、中小企業を取り巻く環境は極めて深刻な状態となっている。そのために、雇用と賃金・労働条件は厳しい状態となっている。それをもたらしている要因は「構造改革」による規制緩和、海外への生産移転による空洞化と逆輸入による価格破壊、金融機関による貸し渋り・貸しはがし、消費税や外形標準課税などの増税にある。中小企業と労働者を苦しめている原因は、大企業と銀行、政府と自治体の政策にある。中小企業に働く労働者の雇用安定と拡大、賃金・労働条件の抜本的な改善のために、その基盤となる中小企業の経営安定と振興が必要である。そのために、私たちは大企業の横暴規制と中小企業・地域経済振興の運動を進めてきた。

2)大型店の規制を求める運動

 私たちは、大型店の規制緩和以降、大型店規制と商店街振興の運動を生協労連と地方労連、全商連、商店街振興会や住民団体と共同して進めてきた。労働組合としても大型店と政府・自治体に対する運動を強化してきた。特に、宮城一般は継続的に大型店による元旦初売り反対、大型店の出店反対の運動を仙台市内の商店街と共同して進めた。商店街訪問や商店街振興会役員との懇談を積み重ね、元旦初売り問題や大型店出店問題で宮城県や仙台市に働きかけ、自治体決議や国への意見書採択をあげ、一定の規制を実現してきた。商店街振興会の理事長が労働組合の新聞に連帯のメッセージを寄せてくれ、対談に登場もしてもらうなど労働組合に対する信頼と期待が強まった。

 福島県は2005年10月に全国で初めて、大型店規制の「まちづくり条例」を制定し、政府も市内の空洞化が深刻になっていることを踏まえ、大型店の出店規制の方向を打ち出し、全国の自治体で大型店の出店規制の動きが広がりはじめている。

3)中小企業の実態を知り、共同を追求

 私たちはまず、地域の中小企業の実態を知り、経営者の国と自治体への要望、労働組合に対する意見と要望を聞こうと中小企業訪問を行うことにした。アンケート調査と政府宛要請書(大企業の横暴規制と中小企業・地域経済振興の要求)で訪問して懇談し、要請書への賛同をお願いしてきた。この4年間は小泉首相宛の「景気回復を求める要請書」(下記資料「2006年版」参照)に取り組んできた。はじめは、門前払いされるのではとの懸念があったがほとんどが面談してくれた。さらに、中小企業団体と業界団体の役員との懇談を重視し、経営状況と政策・要求、「景気回復の要請内容」、公契約と最低賃金・均等待遇について意見交換をしてきた。私たちは地方労連や地域労連とも共同して、これまで17,000件を訪問した。多くの中小企業家と団体役員は、労働組合が中小企業や地域経済の振興で運動していることに「驚き、賛同」してくれた。「景気回復を求める要請書」は訪問した企業のほとんどが賛同してくれ、署名捺印してくれる企業は2割となっている。また、中小企業団体の役員に地域経済の冷え込みに危機感を持ち、最低賃金引き上げが必要という認識が広がりはじめた。また、業界団体の役員は自治体が発注・委託する価格が競争入札で大幅に削減され、経営が困難になっているために、まともな仕事をし、まともな賃金が払えるような公契約が必要であり、生活できる最低賃金にすることが必要という認識が広がりはじめた。

 訪問活動に参加した組合役員と組合員は、地域の中小企業の実態と中小企業家の要求と変化を知り、中小企業大運動に対する確信を深めてきた。しかし、持続的に取り組んでいる地方組織もあるが、マンネリに陥る状況がある。「構造改革」の対抗軸として、中小企業と地域経済振興、再生の運動を発展させることが求められている。地方労連と地域労連、自治労連、全商連などの中小企業団体、住民団体などが連携を強めて、地域からの幅広い共同を進めなくてはならない。その中で全労連・全国一般の果たすべき役割を明確にして、中小企業大運動の発展方向を検討しなければならない。

(小論は、2006年1月22日、労働総研中小企業研究部会公開研究会での報告に、当日の討論を考慮して加筆したものである)

(おおき ひさし・会員・全労連・全国一般労働組合中央執行委員長)

【資料】

景気回復を求める要請書

内閣総理大臣 小泉純一郎 殿

【要請趣旨】

 一握りの大企業だけが利益を大幅に増大させています。しかし、これは徹底した従業員と人件費の削減、中小企業たたきなどのコスト削減によるものです。そのため、中小企業の廃業・倒産と失業が高い水準で推移し、国民所得も下がりつづけています。

 こうした状況のもとで、政府は大企業優遇を続けながら、労働者と中小企業には負担を求めています。小泉首相は「小さな政府」などと言って、公的サービスを民間大企業に投げ出し、営利の対象にしようとしています。また、国庫補助負担金廃止と地方交付税削減の「三位一体改革」で、公的サービス・医療・福祉の利用者負担増や中小企業・地域振興予算の削減が進み、深刻な事態を招くことは明らかです。さらに、中小企業が金融面で不安を抱えているなかで、税金が投入されてバブル期並みの利益を上げている都市銀行は、不当な選別融資を強めています。政府系金融機関の統廃合は、安定した中小企業向け融資をますます厳しくします。政府と金融機関の責任は重大です。こうしたことでは、国民の7割が働いている中小企業の状況は改善せず、景気も回復しません。

 国民のふところを暖めつつ将来不安をなくし、中小企業を元気にしてこそ、本当の意味で景気が回復し、財政再建の道筋もつくことになります。つきましては、下記事項の実施を強く要請いたします。

【要請事項】

  1. 中小企業対策予算を抜本的に増額し、施策の充実をはかること。
  2. 中小企業への官公需発注を大幅に増額すること。また、中小企業の適正な利益と労務費を保障するために、入札制度の改革を行なうこと。
  3. 消費税の税率を3%に戻すこと。また、大型公共事業や大企業優遇税制など税の集め方と使い方を根本的に改めて、所得税増税と「三位一体改革」をやめること。
  4. 優越的地位の乱用防止や下請取引の適正化など、公正な取引条件確立のために独占禁止法、下請二法の抜本的な改正と大企業への監督・指導を強めること。
  5. 金融機関に中小企業向け融資の促進を指導し、金融先物商品購入を条件にした融資や選別融資など、銀行による「優越的地位の濫用」を厳しく取り締まること。また、政府系金融の統廃合はやめること。さらに、地域への円滑な資金提供や利用者利便のために、金融機関の活動を評価し、公表するシステムをつくること。

 2006年  月  日
  (団体・法人名及び住所)
  (代表者名)            印


第3回常任理事会報告

 労働総研05年度第3回常任理事会は、06年2月18日13時30分から17時まで、労働総研2階会議室において、牧野富夫代表理事の司会で開催された。

 冒頭研究会で、牧野氏より「大学『改革』について」の報告と問題提起があり、それをめぐって討議された。

J 報告事項

 藤吉信博事務局次長が以下を報告した。

1)  設立15周年記念行事関連:(1)全労連との共同調査「労働組合の活動実態と課題と展望」の進捗状況、(2)日本大学経済学部7号館講堂で開催した「シンポジウム:労働政策の新自由主義的展開へのわれわれの対抗軸を考える」と日本大学経済学部本館で開催した記念レセプションについて。
2)  出版物関連:(1)『2006年国民春闘白書』の増刷、(2)『世界の労働者のたたかい 2006』の4月中旬刊行、(3)『労働総研クォータリー』等、編集の進捗状況。
3)  協力・共同団体関連:(1)年金者組合が第2次案の最低保障年金政策完成をもとに開催する4月シンポジウムの協力団体要請、(2)1月23日、労働法制中央連絡会事務局会議への出席、(3)2月20日、全労連「もうひとつの日本闘争本部」懇談会への出席。
4) 事務局とプロジェクト・研究部会の活動。
以上の各事項について、討議し、了承された。

K 協議事項

1)  入会者の承認申請について、藤吉事務局次長が提案し、審議の結果、承認された。
2)  「研究所活動のあり方検討委員会の報告」について、大木一訓代表理事が提案し、審議の結果、プロジェクト・研究部会代表者会議に提案することが確認された。
3)  プロジェクト・研究部会代表者会議の開催について、大須眞治事務局長が提案し、審議の結果、議事日程および議題を確認した。
4)  ナショナル・ミニマム問題プロジェクトについて、浜岡政好常任理事が提案し、プロジェクト・研究部会代表者会議で提案し、討議することが確認された。
5)  編集企画について、藤田実常任理事より提案があり、審議の結果を踏まえて具体化することが確認された。

1-2月の事務局日誌

1月10日 全労連新春旗開き
11日 全労連会館役職員新年会
13日 通信労組新春旗開き
14日 埼労連旗開き
17日 国民春闘共闘単産地方代表者会議(牧野代表理事講演)
21日 拡大事務局会議
25日 自交総連第28回中央委員会へメッセージ
27日 研究所活動のあり方検討委員会
2月3日 労働法制中央連絡会事務局団体会議
13日 拡大事務局会議
18日

第3回常任理事会
全教第23回定期大会へメッセージ

20日 全運輸第46回中央委員会へメッセージ

1-2月の研究活動

1月13日 賃金最賃問題研究部会―同一価値労働同一賃金問題について
21日 政治経済動向研究部会―「小さな政府」論をめぐって
25日 女性労働研究部会―女性労働問題理論の発展について
2月6日 中小企業問題研究部会―中小企業の現状と「中小企業大運動」について
18日 関西圏産業労働研究部会―「京都府下における人材派遣事業所調査報告」
20日 労働運動史研究部会―ヒアリング
23日 国際労働研究部会―「世界の労働者のたたかい」について
27日 女性労働研究部会―磯野富士子「婦人解放論の混迷」について
28日 労働時間問題研究部会―原稿の補強と整理の検討


訂正とお詫び

「労働総研ニュース」2006年新年号の大木論文4頁右欄下から7行目〜3行目の表現を以下のように訂正し、お詫びいたします。

「将来世代国際財団と将来世代総合研究所(これらの団体には、京セラの稲盛和夫が主宰する盛和塾が人材を出し、笹川財団が財政支援をしている)が協同主催で公共哲学共同研究会を組織し」を「将来世代国際財団と将来世代総合研究所が協同主催で公共哲学共同研究会(将来世代国際財団からの財政的支援をうけている)を組織し」に訂正