労働総研ニュースNo.176号 2004年11月



目   次

・転機の米労働運動
・10月の事務局日誌・研究活動




転機の米労働運動

岡田則男

 米国の労働運動がいま大きな転換点に差しかかっている。米労働組合総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)の加盟組合の指導的な人々の間で、今後の労働運動のありかたをめぐる論議が始まっている。これが歴史的な「改革」への道を開くことになるのか、あるいはAFL-CIO内の一部の有力労組指導部の何らかの思惑にもとづくものか、まだ判断できないが、労資協調主義の総本山のような存在で米国の対外干渉・侵略政策への協力もふくめ、国際的な労働運動において否定的な役割をはたしたAFL-CIOで労働組合運動の低迷を打破したいという提案と議論が起きていることは注目してよいと思う。
 労働運動の改革論議はすでに二年近く前からはじまっていたが、ブッシュ再選を阻止できなかった2004年大統領選挙直後に、一気に表面化した。選挙から一週間余り後の11月10日、首都ワシントンのホワイトハウスに近いAFL-CIO本部では執行評議会が開かれ、選挙での「敗北」をふまえ、これからの運動をどうするかについて意見が交わされ、有力労組からは労働組合運動の改革が提案されたことが新聞などで大きく報道されたからだった。

2004年選挙と労働組合運動

 ことしの米国の大統領選挙は、予想どおりの大接戦になり、共和党の現職大統領ジョージ・W・ブッシュが再選された。労働運動が一致して支援した民主党のジョン・ケリー候補(上院議員)は有権者投票で350万票もの差で敗れた。民主党はそのうえ、連邦議会の上下両院でブッシュ与党・共和党の前進を許した。下院選挙では民主党の下院議員団長だったトム・ダシュレが敗れる波乱が起きた。二大政党制のもとでこれまで民主党の応援団だったAFL-CIOを中心とする労働運動には、計り知れないショックを与えたにちがいない。
 この選挙では、少なくとも外部からみるかぎり、現職のブッシュには不利な条件、挑戦者にとっては有利な材料がそろっていた。まずは、イラク戦争。最大の口実とされた「大量破壊兵器」がウソだったことを米政権も認めざるをえなくなるなど、大義なき侵略であることが暴かれ、「主要な戦闘終結」宣言後も米軍の死者が増えつづけたこと。国内政治でも、金持ち優遇の減税政策、雇用問題の深刻化、社会保障年金制度の改悪計画、時間外労働賃金支払い制度の改悪など、ブッシュ政策は評判が悪かった。
 AFL-CIOをふくめ多くの労働組合がブッシュ再選阻止で結束し、民主党のケリー候補を支持して活動したのだった。AFL-CIOは1億5000万ドル(160億円)という膨大な資金を投入し、20万人以上のボランティアを組織し、宣伝、個別訪問、電話作戦などをおこなったそうだ。
 それでも勝てなかったのだ。労働組合運動の力がいかに低下したか、思い知らされた選挙だったわけだ。しかも、ブッシュが再選されたことによって、これから予想される国民切り捨て政策のいっそうの推進、そしてイラク戦争の継続といかにたたかっていくか、労働組合は新しい道の模索を余儀なくされている。

SEIUからの改革提案

 前述の11月10日のAFL-CIO執行評議会は、選挙後のこうした新しい事態にたって、長期にわたる労働組合運動の低迷を打破していくための提案を「変革委員会」で検討しその結果を来年2月に執行評議会に提言するという段取りをきめた。討論の詳細は明らかでない。
 160万人を擁するAFL-CIO最大の加盟組合であるサービス労働組合(SEIU)のアンドルー・スターン議長は、主要労組に書簡を送り労働運動の抜本的改革をめざす提案を明らかにしていたが、この執行評議会の後の記者会見で、自分たちの提案が労働運動強化の方針として採用されなければ、AFL-CIOからの脱退も辞さないとの強硬姿勢を明らかにしたと伝えられる。同氏は、執行評議会では労働組合員の減少や賃金闘争で労働組合が力を失っていること、多くの労働者が健康保険や年金を失っていることなどの問題について発言しないことに苛立ちを表明した、とニューヨークタイムズは報じた。
 スターン氏の提案は、労働組合の勢力を増大方向に転じさせるために次のような課題を提起した。

  • 雇用のウォルマート化(低賃金・医療保険などの手当ての削減など、雇用の海外流出、労働者の組織化の妨害など)をやめさせる運動、とそのなかでのAFL-CIOの中心的役割。
  • すべての労働者に質の高い健康保険を保障するための全国キャンペーンの先頭にたつ。
  • 労働者の労働組合加入の自由を保障する。
  • 21世紀にふさわしい全国労組の再編で、産業別の労働組合組織を統合・整理する。
  • 政治行動を強化し、労働者の生活改善に必要な立法をかちとる。
  • 地方の労働組合運動の強化。
  • 労働組合員の多様性を尊重する。
  • 経済のグローバル化に対応して労働運動でも他の国、地域の運動との協力を広げる。

 スターン氏はまた、現在AFL-CIOを構成している労働組合全国組織を現在の約60組合から20以下に整理統合すること、労働組合結成のためにAFL-CIOの年間予算1億1800万ドルのうち2500万ドルをウォルマートなどでの労働組合づくりに投入することなどを提案している。

「5人組」の提案

 今回のSEIU議長の提案は、2年ほど前、AFL-CIO加盟組織を含む5つの労働組合がAFL-CIO中心の労働組合運動の大幅な再編を提唱したことからはじまる。
 5人は、SEIUのスターン議長のほか、7月に合併したホテル・レストラン労働組合(HERE)と服飾縫製労働組合(UNITE)、建設労働組合(レイバラーズ)、大工労働組合(カーペンターズ)の各議長。カーペンターズが2年ほど前にAFL-CIOを脱退しているほかは、AFL-CIOの有力な構成員である。
 1995年以来スウィーニー指導部下でAFL-CIOが進めた組織拡大が成功しておらず、それどころかいっそう組織人員が減少傾向にあることから、「改革」を主張したものだ。その最大の趣旨は、小さな労働組合組織をどんどん合併させて数個の大組織に再編するとともに、AFL-CIO内の「健康・安全」「教育」「公民権・人権」などの部局を縮小あるいは廃止し、現在のAFL-CIOの組織化局を「戦略的成長局」とするなどを内容としている。
 SEIUのスティーブン・ラーナーは、2002年12月に「労働運動の再編・再建への三つの措置」という提案を起草し、現在の労働組合の状況について、問題意識を整理した。

  • 現在の労働組合運動の危機は、個々の組合が取り組んでどうなるというものではない。それほど深刻だ。
  • 民間部門の組織化が労働運動生き残りのカギである。
  • 組織化のための新しい原則の確立が必要である。
  • 労働組合運動の構造に問題あり。どうしたら、組織がよくできるか。組織を二倍、三倍に増やしたら何ができるか。
  • 組合を産業別、部門別に再編することによって、何百万人もの未組織の組織化をはかる。

 ただ、AFL-CIO内で提起するのではなく、いきなり公開討論的なことをはじめたのが特徴で、これには批判もあった。また、来年7月におこなわれるAFL-CIO大会にむけて、ポスト・スウィーニー体制をねらった動きであるという見方もあった。
 また、サービス産業で組合員を増やしているSEIUのこうした提案にたいして、機械工連合会(マチーニスツ)など製造業の労働組合からは反発が起きている。

AFL-CIOの組織勢力

 AFL-CIOは約60の労働組合組織(産業別団体)からなる。地方(州)でそれぞれの地評があるが、独立性をもち、AFL-CIOの方針に縛られない。加盟組合の組合員は現在約1,300万といわれる。現在の議長はSEIUの議長だったジョン・スウィーニー氏。組合組織率は多くの分野で低下し続けており、製造部門では、未組織労働者が1,000万人もいる。組織率の低下に対応するために、従来の産業分野をこえた組織合併がすすんでいる。AFL-CIO加盟組織は、1979年に108あったのが、現在では66に減っている。

 20万人以上の組合員を擁する労働組合組織は以下のとおりである。

SEIU サービス労組 1,272千人 9.7%
AFSCME 地方公務員 1,258 9.6
IBT チームスター 1,222 9.3
UFCW 食品・商業 1,135 8.6
AFT 教員 1,858 6.5
UAW 自動車 1,737 5.6
IBEW 電気 1,670 5.1
CWA 通信 1,626 4.8
IAM 機械・航空 1,452 3.4
USWA 鉄鋼 1,445 3.4
LIUNA 建設 1,306 2.3
IUOE 機械技師 1,281 2.1
PACE 製紙・化学 1,273 2.1
APWU 郵便 1,271 2.1
HERE ホテル レストラン 1,238 1.8
UA 職人 1,220 1.7
NALC 郵便配達 1,210 1.6
UNITE 縫製   1.6
(StephenLrerner:"Three Stepsto Reorganizing and Rebuilding the Labor Movement"より)

AFL-CIOの対外活動の問題

 AFL-CIOは、米国の労働運動のナショナルセンターであるが、日本では、まさしく労資協調主義の権化として知られているし、ベトナム侵略戦争を支持し、チリのクーデターで一役を買うなどの暗い過去も忘れられない歴史である。最近でも米英を中心とするイラク侵略戦争・占領にたいしては明確な反対を表明することなく、米政府に協力している。ベネズエラにたいしては、チャベス大統領打倒のクーデターを引き起こした労働組合を資金面もふくめて支援してきたことで、内外からの批判をあびた。対外政策、国際活動では、AFL-CIO指導部はアプローチに変化はあるものの過去の悪習を断ち切れないところがある。その一方で、これに反対する組合があらわれていることが注目される。
 スウィーニー議長就任以前の暗い過去は、どこまで清算されたのか。この問題については、SEIU議長の運動改革提案は言及していないし、全国レベルでの議論はないが、地方的には、これまでの政府協力型の活動への批判が出てきていることが注目される。

イラク戦争にたいする態度

 ブッシュ政権の対イラク侵略戦争にたいしてAFL-CIOは明確な反対を表明していない。
 イラク開戦直前の2003年2月28日には定例の執行評議会で「いま戦争をすることに反対する」という趣旨の決議を採択し、イラク問題では広範な連合を構築し、国連の支持を得てイラクの武装解除をおこなうべきだと主張した。「いまの時点では」という限定的な反対だったことがわかる。これは、イラク攻撃に反対する世論が高まっていたことを無視するわけにはいかなかったのだろう。だがそれ以上に、次の年の大統領選挙対策上、この問題でもブッシュ政権との対決軸を明確にする必要があったと見るべきだろう。
 しかし、2003年3月に戦争が始まるや、スウィーニーAFL-CIO議長は、イラク戦争の米軍支持を明確に支持した(3月20日)。同議長の声明は、イラクのフセイン政権は残虐な独裁政権だと非難して、ブッシュと調子をあわせた。反戦の立場を表明しないばかりか、戦争についてのコメントさえしなくなった。テロをみずから糾弾し、なくす道を提起するのではなく、ブッシュに任せてしまっているからだ。これは、戦争反対の労働運動グループとして活動をはじめたUSLAWに参加する労働組合とは対照的だった。同年8月にシカゴで開かれた執行評議会でAFL-CIOは、イラク、アフガニスタン、中東紛争など、米外交政策で焦眉の問題について態度表明するのを避けた。会議後の記者会見で政治担当初期は、「2004年の大統領選挙でブッシュを落選させることに最も大きな力を注ぐというのがAFL-CIOの立場だ」と説明した。AFL-CIOの活動はもっぱら国内問題を取り上げるというのだった。
 以降、AFL-CIOは、イラクで米兵の死者が増大するなかでも沈黙を続けた。「AFL-CIOは中立を維持しているのだ」と説明する加盟組合のリーダーもいる。
 だが、AFL-CIOはイラクにかんして、反対の声をあげないばかりか、積極的に米政府の占領、干渉政策を支持してきたのだ。米国が「民主主義を広げる」という大義名分をかかげて対外干渉をおこない、米国の多国籍企業の進出・支配に有利な「国づくりを助ける」ために80年代に設立した「国家民主化基金」(NED)などから資金を受け取ってブッシュのイラク政策にそった活動をやっている。ことし3月、バルハーバー(フロリダ州)で開かれたAFL-CIO執行評議会がイラクに労働組合をつくる決議をしたのもその一環である。
 じつは、イラク戦争をめぐるAFL-CIOのこうした対応は、AFL-CIOがその対外活動・国際活動にかんするかぎり、基本政策が95年以前のカークランド、その前のミーニー会長の時代と変わっていないことを示している。
 ところが戦争がはじまり、「主要な戦闘終結宣言」(2003年5月)がおこなわれても、なお、米軍の犠牲者がるなか、イラクからの米軍撤退、占領反対を叫ぶ労働組合が増えていったがAFL-CIO傘下の有力労働組合のあいだでも、イラク戦争反対の声が大きくなった。
 サービス労組(SEIU 160万人)は2004年6月22日の全国大会で、イラク占領反対を決議し、商業マスメディアも注目し報道した。
 地方公務員労組(AFSCME 120万人)沖仲仕組合(ILWU 6万人)がブッシュ政権の先制攻撃侵略戦争を非難し、米軍のイラクからの撤退を要求したのにつづき、通信労組(CWA 70万人)が8月31日に採択。アメリカ郵政労組(27万人)、郵便労者国際労組(5万人)も、戦争・占領反対を表明した。
 CWAの全国大会(8月31日)では、ほとんど全会一致で戦争反対決議が採択された。決議は、ブッシュ政権の単独行動主義による戦争、先制攻撃を批判している。決議案に撤兵要求は盛り込まれていなかったが討論では、ブッシュ政権の先制攻撃戦略によって米国の安全が低下したことを指摘し、米軍を無事に帰国させるよう求める修正が提案された。すると50人もの代議員が代議員席のマイクロフォンの前に並び、修正案支持の発言をしたという。採択された決議は「アメリカは、多様な信条をもつ自由な国民は平和のうちに自らを統治することができる、という理念を追求して生まれた」というパラグラフではじまる。そして、戦争をやめて、米国を安全にするための手だてのために金をつかうことを提案している。
 このほか、カリフォルニア、ワシントン、メリーランド・DC(合計300万人)のAFL-CIO地評が戦争反対を明確にした。とくにカリフォルニアだけで、全米のAFL-CIO組合員の六分の一を占める。
 これらの動きは米国の労働運動史上あるいは政治史上きわめて興味深い出来事である。
 AFL-CIOがベトナム戦争やその後の米国の干渉(戦争)を支持してきた歴史はよく知られている。AFL-CIOは、たんに労資協調路線などという生易しいものではなく、大政翼賛会的存在であったからだ。ソ連・東欧の激変、いわゆる冷戦終結まで、米国の労働組合運動の大部分は、国の外交政策に異を唱え、あるいは反対するなどということはなかった。AFL-CIOがベトナム侵略戦争を支持したことは周知の通りである。その基本は、反共の「大義」であった。それがいま、AFL-CIO傘下の労働組合をふくめて、ブッシュのイラク戦争に反対していることに注目したい。
 まず、なぜ、これらの労働組合がイラク戦争反対、米軍の撤退を公然と要求するようになったのだろうか。
 SEIUのエリジオ・メディーナ副議長は次のようにのべている。
 「労働者は米国の外交政策をきわめて憂慮している。自分たちの子どもが派兵されて死ぬ、移民の子どもが多い。この問題にとりくむ必要がある。ブッシュ政権は、大量破壊兵器を理由に戦争を推進した。しかし大量破壊兵器はなかった。われわれの大会代議員はそのことを知っている。サダム・フセインは9/11と関係があったといったが、そういう関係はなかった。これもみんな知っている。政府は人々に、米軍は楽勝だといった。もちろん、これもちがう。労働者はとくに米国の孤立を憂慮している。彼らは、アメリカは民主主義的価値観にもとづく国として見てもらいたいと思っている。それがいま、アメリカはいじめっこだと見られていることを憂慮している。代議員の一部は、この戦争は石油の戦争だ、民主主義のための戦争ではない。これを理由に戦争をするのは正しくない。彼らはブッシュ政権の動機におおいに疑念をもっている」

対外干渉の継続と批判

 AFL-CIOは本部内に「連帯センター」を維持しているが、その活動には、NEDとUSAID(米国際開発援助局)の予算から年に1500万ドル、日本円にして15億円から16億円を受け取っているという。
 ただ、いわゆる「冷戦」時代とくらべて、「連帯」「支援」の内容が変わっている。1973年のチリクーデターへの関与、1980年代を中心にしたエルサルバドルの超保守勢力への支援に代表されるような、労働運動や民主主義を求める運動への弾圧に直接手を貸すというものではなく、それぞれの国の労働者の現状、要求を一定反映したものになっている。
 これは、スウィーニー現議長が就任して以来の変化だ。じっさい、スウィーニーはSEIU議長のときに、政府の直接的な干渉へのかかわりに異を唱えていた。スウィーニーはAFL-CIOの新指導部の国際局長にバーバラ・シェイラーという女性を抜擢した。旧カークランド指導部下のスタッフを次第に排除し、若くて組織活動の経験のある人と入れ替えた。
 対外干渉のためにつくられていたいくつかの本部機構を整理して「連帯センター」をつくり、バングラデシュ、フィリピン、ブルガリア、パラグアイなどの国に事務所をおき、それぞれの国で、労働者を組合にどう組織するか、団体交渉はどうやっておなうかなど、労働者の権利増進のための助言をしたり教育をしたりしている。とくに、多国籍企業が超低賃金で途上国の労働者をしぼりとっているとか児童労働をさせているとかいって問題を取り上げはじめた。
 とはいえ、国務省予算から出る資金を受け取って、米政府の対外干渉政策に手を貸すような対外活動はつづいているが、これに異をとなえる地方組織があらわれた。これはAFL-CIOの歴史のなかでも画期的なことではないかと思われる。
 しかし、覇権主義といおうか、大国主義といおうか、干渉主義は治っていなかった。それがいちばん端的に現れたのは、ベネズエラのクーデター勢力を支援したことだった。
 東西冷戦といわれる時代が終わり、AFL-CIOの指導部が1995年に交代したあとも、イラクにたいする米国政府の外交政策目標に沿った干渉的活動を、あたりまえのようにおこなう体制が、いまなお残っているのである。
 AFL-CIOの自由労働運動開発研究所(AIFLD)という機構をつかってチリ、ブラジルなどへの干渉をおこなったことは知られているが、いまでも、そうした活動は終わっていないということだ。スウィーニーは、1995年に議長に就任し、そのすぐあとにそれまでの労働組合ルートをつうじた干渉の地域別機構を一つにまとめてアメリカ国際労働連帯センターなるものをつくった(ACILS)。ベネズエラにおいては、チャベス政権打倒をめざすベネズエラの労働組合(CTV)にAFL-CIOがNEDの枠で(の金をつかって)資金提供を含む干渉をおこなってきたことが今や公然の秘密となっている。
 これにたいしことし3月20日、カリフォルニア教員連盟(AFL-CIO加盟)の年次大会で、AFL-CIO指導部はNEDから資金を受け取るべきでないとの決議を採択した。同決議は次のようにのべた。
 「AFL-CIO指導部は、その連帯センターを通じて、イラクでの活動のための資金としてNEDに300万ドルから500万ドルを申請すると発表した。そもそもILO条約は各国の労働者はみずからを代表する労働組合を選ぶ権利を有しているとしている。しかるに、NEDの資金を受けてイラクにおける連帯活動をおこなうというのは、イラクの内部問題に干渉して米国の外交政策目的をすすめようとするものであるとみられてしまう。このため、カリフォルニア教員連盟は、自主、独立。自決というILO条約に明記された諸原則を支持することをあらためて確認する」。
 カリフォルニアのAFL-CIOはことし7月の大会でAFL-CIO指導部の外交方針を痛烈に批判し、占領を止めるよう要求した。これまで民主的に選ばれた政府さえも干渉して打倒するために使われてきたNEDのいかがわしい歴史を指摘し、AFL-CIOはNEDとの関係を絶つべきだとしている。カリフォルニアAFL-CIOは、250万人を擁する大所帯であることを考えると、これは重要な発展ではないだろうか。
 しかしスウィーニー指導部は、NEDそのものへの支持を表明している。NEDの創設メンバーの一つとして、世界の民主主義を推進する活動に参加してきたことを誇りとする、と彼はNED20周年記念の集まりで挨拶した。具体的に、イラク再建の支援について米政府を後押しする考えを明確にのべている(2003年11月6日)。
 米国の労働運動、とりわけAFL-CIOがこのような対外活動から脱却するのは、不可能ではないにしても、まだまだ時間がかかりそうである。

(おかだのりお)


10月の事務局日誌

10月 1日 国民春闘白書編集委員会
5日 第1回編集委員会
12日 自交総連第27回定期大会へのメッセージ
16日 山梨県労第16回定期大会へのメッセージ
30日 全労連・派遣・請負問題を考える交流集会

10月の研究活動

10月 8日 賃金最賃問題研究部会─賃金問題をめぐる論争
12日 労働時間問題研究部会─出版書の検討
16日 政治経済動向研究部会─最近の労働行政の特徴と問題点
19日 女性労働研究部会─連合の「均等法改正要求と取り組み目(案)」を中心に
23日 基礎理論・理論問題プロジェクト─ナショナルミニマム問題の整理と検討
29日 国際労働研究部会(公開)─曲がり角に来たアメリカの労働運動