労働総研ニュースNo.173号 2004年8月



目   次

[1] 2003年度における経過報告
[2] 調査研究活動をめぐる 情勢と課題
[3] 2004年度の事業計画
[4] 研究所活動の充実と改善




労働運動総合研究所
2004年度定例総会方針

 2004年7月31日、平和と労働センター・全労連会館で開催された労働運動総合研究所2004年度定例総会で審議され、決定された方針を以下に掲載します。

 労働運動総合研究所(労働総研)は、本年12月11日で設立15周年を迎える。労働総研15年の歩みは、[付属資料]「労働総研15年の歩み」(『労働総研ニュース』04年7月号参照)でも明らかなように、「新しいナショナルセンター・全国労働組合総連合との密接な協力・共同のもとに、運動の発展に積極的に寄与する調査研究・政策活動をすすめる」(「設立趣意書」)ために奮闘してきた15年であった。

[1]2003年度における経過報告

(1)3代表理事の「自衛隊のイラク派兵に反対する」声明
 労働総研3代表理事は、04年1月3日、「自衛隊のイラク派兵に反対する」声明を発表し、会員・関係者への共同を広く呼びかけた。代表理事の声明は、創設以来初めてである。
 米英両国は、02年3月20日、国連決議を無視し、史上空前の規模で展開されたイラク戦争反対の国際世論に背を向け、イラク侵略戦争を強行した。小泉自・公政権は、米英の一片の大義もない無法・野蛮な侵略戦争をいち早く支持し、02年12月、明確な憲法違反である戦地イラクへの自衛隊派遣を強行した。この行為は、アメリカの侵略戦争に日本国民を強制動員する「戦争国家体制」づくりと連動した、戦後史の重大な転換点を画するものである。平和なくして労働運動の発展、国民生活の向上はないとの見地に立って、小泉自民党・公明党連立政権が、米国の侵略戦争に積極的に加担し、日本国憲法を破壊する自衛隊のイラク派兵を決定したことに反対して、標記の声明を発表した(『労働総研ニュース』04年新年号参照)。
 04年1月の第2回常任理事会は、3代表理事「声明」を支持すると同時に、この問題を重視して、労働総研らしく系統的に追及していくことを確認した。その成果は、『労働総研ニュース』04年新年号「米国の侵略戦争と日本の侵略戦争の歴史的な合流の構造」(儀我壮一郎)、『労働総研クォータリー』04年冬季号「小泉『改革』と『従属の経済学』」、同04年春季号「特集 戦争と平和、労働者・国民生活」などに結実され、04年春季号では、坂本修弁護士の協力で「ロング・インタビュー“せめぎ合い”の渦中で、どこに“光”を見出すか」を掲載し、500部を超える増刷を行うことができた。坂本弁護士の講演を聞いた人々からの注文が寄せられるなど、普及面でも貴重な教訓を生み出した。

(2)常任理事会活動の改善
 常任理事会開催の要件として、「過半数以上の出席を努力目標にする」という申し合わせ事項(02年10月5日)に基づき、その具体化を保障するため、事務局は日程調整を重視してきた。その結果、03年度のすべての常任理事会は、この要件を満たすことができた。企画委員会は、常任理事会の効率的で民主的な運営を保障するため、事前に練り上げた議案を提案するよう努めてきた。

(3)全労連との協力・共同の強化
 (1)組織拡大推進基金へのカンパ
 全労連は、自ら掲げた「21世紀初頭における目標と展望」を実現し、労働組合の社会的責任を果たすため、500万全労連を目指し、当面200万全労連建設のため、組織拡大推進カンパを呼びかけた。牧野富夫代表理事は、同カンパの呼びかけ人の一人となった。03年10月、熊谷金道全労連議長は「全労連OB・諸先輩、全労連運動を支えていただいている皆さんへ」、組織拡大基金カンパを呼びかけた。
 労働総研常任理事会は、今日の労働運動をめぐる情勢からしても、全労連のこの呼びかけに積極的に応じることが重要であるとして、全会員へ「全労連組織拡大基金カンパへのご協力のお願い」を呼びかけた。この代表理事・常任理事会の「お願い」に応え、多くの会員から全労連に積極的にカンパが寄せられている。2004年4月末日現在で、カンパ総額は約60万円にのぼっている。このカンパに快く応じてくださった会員と労働総研に対して、熊谷金道全労連議長から「『“仲間をふやし、明日をひらく”全労連組織拡大推進カンパ』運動へのご協力へのお礼」が寄せられた。
 この事業成功のため、労働総研は引き続き支援していく。

 (2)全労連との協議・懇談
 当研究所と全労連との協力・共同を強化・前進させるために、今期は両者の協議・懇談が4回行なわれた。その中ではとくに、当研究所創設15周年記念年事業として取り組むシンポジウム「これでいいのか日本の社会、これからどうする日本の労働運動」(仮題)を全労連と共同で開催し、それを行うための調査研究に全労連の全面的協力を得ることができた(詳細は04年度運動方針案参照)。

 (3)全労連・単産・地方労連への協力・共同
(ア) 全労連「派遣労働プロジェクト」での調査・政策検討への協力(03年7月〜)
(イ) 地銀連「足利銀行破綻・地域経済調査」への協力(03年10月〜)。2月9日、10日、地銀連の「地域金融・経済調査団」に参加し、その成果をも踏まえ、4月15日、政治経済動向研究部会の公開研究会でシンポジウム「新局面を迎えた小泉・竹中『金融改革』」を行い、60人が参加して成功した(『労働総研ニュース』04年5月、6月合併号)。このテーマは地銀連、栃木県労連などとも協力して、04年10月、宇都宮市でシンポジウムを開催するなど、引き続き追及する予定である。
(ウ) 埼労連との共同による「埼玉県における勤労者の仕事とくらしの実態調査」分析(02年5月〜03年6月)の中間報告を発表した。この成果は『労働総研ニュース』8月、9月合併号で発表の予定である。
(エ) 愛労連・愛知労働問題研究所の全面的協力による「これでいいのか日本資本主義」をテーマに名古屋市でシンポジウムを開催(03年10月)し、60人の参加で成功した(『労働総研ニュース』03年9月・10月合併号掲載)。
(オ) 話題提供型調査については、04年度の事業計画で具体化する。

(4)プロジェクト活動と政策・提言
 (1)基礎理論プロジェクト
 当該プロジェクトは、03年7月、「報告書」を常任理事会に提出し、公開研究会で討論を行った。その討論を踏まえ、補筆・修正された報告書が『労働総研クォータリー』03年夏季号に「均等待遇と賃金問題―賃金の『世帯単位から個人単位へ』をめぐる論点の整理と提言」として発表した。
 当該プロジェクト「報告書」による、この問題に関する論点整理と政策提起は、各方面で注目され、議論を呼び起こしている。それを反映し、この号に持続的に注文が寄せられている。

 (2)不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト
 当該プロジェクトは、04年7月、「報告書」を常任理事会に提出し、公開研究会で討議を行った。その討論を踏まえ、補筆・修正された報告書を『労働総研クォータリー』04年夏季号・秋季号に掲載予定である。本「報告書」での不安定就業労働者の状態を改善するための政策提言が各方面で注目され、議論を呼ぶことが期待される。

 (3)ナショナルミニマムプロジェクト
 当該プロジェクトは、基礎理論プロジェクトの終了を受け、03年度定例総会の決定に基づいて、基礎理論に理論問題を加え、幅を広げ、「ナショナルミニマム問題の理論・政策に関わる整理・検討プロジェクト」として、03年12月より調査研究を開始した。
 小泉自公政権が強行している国民生活最低基準の切り下げ・破壊攻撃の下で、21世紀日本に相応しいナショナルミニマムを確立する課題は、急務となっており、当プロジェクトの成果が期待される。

(5)研究部会活動のあり方検討委員会
 当委員会は、03年度定例総会の決定に基づき、当研究所の調査研究活動、プロジェクト・研究部会の成果と問題点を検討し、必要な改善・改革を常任理事会に提案することを目的に設置され、現在検討活動をすすめている。
 04年3月には、「『調査研究活動のあり方』検討委員会中間報告」を、常任理事会に提案し、討議の上一部修正して、プロジェクト・研究部会代表者会議で発表し、討議した(『労働総研ニュース』04年3月・4月合併号参照)。

(6)プロジェクト・研究部会活動
 プロジェクトおよび研究部会の活動状況は以下の通りである。
 (a)不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト(5回、内1回は公開研究会)。(b)基礎理論・理論問題プロジェクト(ナショナルミニマム問題プロジェクト、5回)。
 (1)賃金・最低賃金問題研究部会(6回)、(2)労働時間問題研究部会(9回)、(3)青年問題研究部会(7回、内公開研究会1回)、(4)女性労働研究部会(8回)、(5)中小企業問題研究部会(6回、内公開研究会2回)、(6)国際労働研究部会(10回、内1回公開研究会)、(7)政治経済動向研究部会(4回、内1回公開研究会)、(8)関西圏産業労働研究部会(5回)、(9)労働運動史研究部会(4回)

(7)研究例会・公開研究会
 研究例会として、「これでいいのか日本資本主義」シンポジウムを、愛労連・愛知労働問題研究所の全面的な協力により、03年10月、名古屋市で開催し、60人の参加で成功した。
 公開研究部会のテーマは以下の通りである。
 青年問題研究部会:「青年の運動の現状をどうとらえ、何を課題としているのか」
 中小企業問題研究部会:(1)「今日の中小企業問題と労働運動」、(2)「自治体における地域経済振興のとりくみ」
 国際労働研究部会:「変わる韓国」
 政治経済動向研究部会:「新局面を迎えた小泉・竹中『金融改革』」

(8)出版活動
 03年度は、研究所編による出版物は発行できなかったが、全労連との共同編集あるいは編集に協力して、以下の出版物を刊行した。
(1) 全労連・労働総研共同編集『2004年国民春闘白書―時代の転換期にふさわしい生活改善を―』(03年12月、学習の友社刊)。従来、別冊で発行されてきた全労連編『検証・大企業の連結内部留保―ビクトリーマップ』は、『国民春闘白書』と合体し、タイトルも「大企業の内部留保」に改めた。『春闘白書』の発行日が12月に戻ったことや、情勢を反映して、増刷を行った。
  (2) 全労連編『世界の労働者のたたかい2004―世界の労働組合運動の現状調査報告第10集』(04年4月刊)は、国際労働研究部会の協力で、発刊10周年を迎えることができた。10周年記念に相応しく、巻頭に熊谷全労連議長の「発刊にあたって」を掲載し、全労連が取り組んでいる組織化問題、共通して攻撃がかけられている年金・社会保障問題への反撃、および掲載国の労働組合組織率とストライキ統計を掲載した。版型もB5版からA4版に変更し、読みやすく改善した。

(9)財政執行
 代表理事・事務局は、常任理事会・理事会およびプロジェクト・研究部会の協力をえて、交通費を含む諸会議費の節減、出版・印刷費の削減等、節約を行った。同時に、団体会員・個人会員の協力による会費納入状況の改善もあり、03年度財政方針で決定された、「事務職員退職金積み立て基金」の具体化を行い、創設15周年記念年行事費の一部を確保するなど、今後の当研究所の調査研究・政策提言活動を発展させる上で、一定の条件改善を進めた。

 

[2]調査研究活動をめぐる情勢と課題

(1)内外情勢の全体的特徴
 参議院選挙の結果は、日本の国内情勢が重大で複雑な、流動的局面をむかえたことを明らかにした。それは、一方では、小泉自公政権の反動的な諸政策に対し、国民の大半がきびしく批判するようになったことを示した。しかし、他方ではそれは、わが国が直面している危機の深さやそこからの脱却の方向について、国民が十分な情報や自覚が得られないでいること、また、有権者の多くが政治への不信と絶望から自らの意思表示さえ放棄する状況が続いていることを示した。支配層は、国民の批判にもかかわらず、依然としてその危険で反動的な諸政策を民主党をもまきこんで強行しようとしており、その政策が日本国民との間で、またアジア、中東をはじめとする国際世論との間で、ますます矛盾を激化させていくことになるのは避けられない。日本の進路を左右する政治情勢に大きな影響力を行使するうえでも、要求の一致にもとづいてたたかう自主的大衆的な労働組合運動の果たす役割は、いっそう重要となった。今回の参議院選挙が、真の革新へ向けての出発点となるかどうかは、今後の労働運動をはじめとする大衆的諸運動の前進如何にかかっているといえよう。

 小泉自公内閣が強行しようとする憲法9条破壊を軸とした憲法改悪策動と、それを許さず、憲法の平和的・民主的原則を全面的に実現させていくための国民共同の強化との、緊迫した闘争の展開が、今後の内外情勢の特徴を規定する最大の要因となっていることがますます鮮明になってきた。
 小泉内閣は、異常なまでの対米従属と大企業の利益最優先政策を猛烈なスピード強行し、アメリカが引き起こす侵略戦争への自衛隊の参戦、アメリカ防衛計画に呼応した6兆円規模とも言われるミサイル防衛(MD)体制構築開始、大企業の利潤拡大を保障するための労働基準法等の連続・抜本改悪による労働者の生活と権利破壊、未曾有の大量解雇・人減らし・リストラ「合理化」推進支援、大企業減税と消費税による国民収奪、医療・年金・社会福祉の大改悪を強行してきた。対米従属・大企業利益優先・国民の生活と権利破壊政策の結果、財政破綻は、サミット国中最悪の累計1000兆円にものぼる長期債務が象徴しているように深刻である。小泉内閣はこうした矛盾を反動的に打開するため、憲法破壊と国民生活破壊攻撃を強めている。
 異常なまでの対米追随路線の矛盾と破綻は、ますます明白になっている。
 イラク戦争の泥沼化とその過程で発覚した囚人虐待、情報操作問題等を通じて、ブッシュ政権は内外の批判の的となり、深刻な打撃をうけている。ブッシュを支持し参戦してきた国々の政権も、強い批判にさらされ、政権交代や政策修正を余儀なくされてきている。アメリカの支配体制は、アラブ世界をはじめ世界中で弱体化し、根底から揺るがされつつある。そうしたなかで日本の小泉首相は、イラク主権譲渡後の多国籍軍参加を独断的にいち早く表明するなど、ブッシュ支持一辺倒の姿勢をいっそう鮮明に打ち出している。
 今日のアメリカ支配層は、日本を自らの世界支配を補強する支柱とすべく、憲法改悪をふくむ日本社会の抜本的反動再編を早急に実現するよう要求している。自民党・公明党連立政権は、民主党をもまきこみ、参議院選挙後の選挙の「空白」を活用して、アメリカの要求に応える政治的経済的「改革」を一気に実施していこうと準備を進めつつある。二期目を迎えた奥田財界も、政治献金や政党評価をテコに議会支配を策しつつ、アメリカ追随の露骨な小泉政権支持と消費税大幅引き上げなどの「改革」を押し進めようとしている。
 だが、小泉自公政権の支持基盤は弱体化し縮小してきており、その政権維持手段となってきた各種のマヌーバー(策略)にも底割れが生ずるようになっている。年金法改悪に対する国民の反発の強さに見るように、小泉「改革」に対する国民の批判は、従来をはるかに上回る規模と激しさで表面化しつつある。
 支配層の意図する「静かなる平成反革命」がいっそう困難な状況に直面するなかで、自公政権は、イラク人質事件で露呈したような、首相官邸、マスコミ、公安警察、創価学会を総動員しての、ファッショ的な国民(とくに民主勢力)攻撃を、その政策強行の手段とするようになってきている。

 国民との矛盾増大は、経済面でも底深く進行している。日本経済は一定の景気回復を示し、「デフレからの脱却」が取り沙汰されているが、それはなお「構造的不況」から脱してはおらず、参議院選挙後、とくにアメリカ大統領選挙後、ふたたび景気後退に見舞われる可能性が高い。今日の「景気回復」は、高成長する中国への輸出増に助けられている他、相当部分をアメリカの危険な経済拡張策に依存しているからである。また、小泉政権は参議院選挙後に、中小企業や金融機関の大規模なリストラを予定しているからである。
 中国経済の発展、拡大EUの誕生、インド、ブラジルをふくむBRICsの興隆など、世界経済はすでにアメリカ中心の経済から急速に転換してきている。日本経団連は「東アジア自由経済圏」確立を提起し、中国市場を狙っており、日本経済の実態も、アメリカに代わり中国が第一の貿易相手国となるなど、すでに質的変化を見せつつある。だが日本の財界・自公政権はアメリカ中心の経済戦略に固執し、相変わらずそこに自らの支配体制の「危機打開の道」を見いだそうとしており、世界経済発展の流れから取り残されつつある。
 大企業が史上最高の増益に沸くなか、職場や地域では、産業事故の多発、過労死や過労自殺、自殺に象徴されるように、産業の荒廃と「空洞化」が、その底知れぬ姿を見せるに至っている。「モノづくり」の現場の声は、繰り返されるリストラや海外生産移転によって、日本経済の依拠する工業生産力や地域経済が消失つつあると訴えている。
 以上の内外情勢の全体的特徴を、当研究所の調査研究活動との関連を意識しつつ、いくつかの分野に焦点をしぼって再確認しておきたい。

(2)主要な運動課題
(1)憲法破壊攻撃への反撃
 自公政権は、憲法の平和的民主的5原則(国民主権・国家主権、反戦・恒久平和、基本的人権、議会制民主主義、地方自治)に対する全面的な破壊攻撃を、猛烈なスピードで強行してきている。その攻撃は、次のような点で労働者・国民との矛盾・対立を、さらには国際的な矛盾を、深刻化させている。9条違反のアメリカ侵略戦争への参戦、それを保障する有事関連法制・戦争法整備による「戦争国家体制」の構築と国家統制の強化、企業・自治体の戦争協力義務化、労働者・国民の思想・信条・表現・政治活動の自由および基本的人権の侵害、教育基本法改悪による「愛国主義」教育の強要、など。なかでも憲法破壊とのたたかいの最大の焦点となっているのが、9条の改悪問題であることは言うまでもない。
 日米支配層が強行する憲法9条破壊を軸とした憲法改悪策動を推進する上で、日本のマスコミが果たしている否定的役割を重視する必要がある。読売新聞の憲法改悪推進キャンペーンは極端な例であるとはいえない。「制定されてから50年も経てば憲法といえども時代に合わなくなるのは当然」という「常識論」を前面に出し、「憲法改定は時代の流れ」であるかのように世論を誘導するマスコミは、国民の側からの憲法改悪反対運動の動向を一切報道しないといっても過言ではない。ノーベル賞作家大江健三郎氏等著名な9人が、憲法改悪反対の一点での国民的運動を呼びかけた「9条の会」についても無視(benign neglect)を決め込んでいる。こうしたマスコミの否定的役割を跳ね返していく上でも、国民共同を早急に強めていくことが求められていると言えよう。
 すでに小泉自公政権は、憲法改悪への具体的政治日程を掲げ、マスコミを総動員し、民主党はもちろん社民党をも「憲法改定論議」の土俵に引き込むことによって、直面する矛盾や対立を反動的に突破しようとしている。
 これに対して、「9条の会」発足に見るように国民の側の危機意識も急速に高まってきており、憲法改悪阻止を最大の国民的課題として位置づけてたたかっている全労連など労働者のたたかいも、盛り上がりを見せつつある。憲法改悪反対で保守層をふくむ広範な人々との共同を追求すること、憲法を労働とくらしに活かす調査研究を前進させることが、改めて強く求められている。

(2)金融・財政政策による国民的収奪への反撃
 商品価格の総額表示への切り替えに見るように、消費税の二ケタ税率への地ならしは着々とすすめられている。消費税の大幅引き上げは、一方での大衆課税拡大(年金・失業給付への課税)と、他方での法人税率切り下げなど大企業・高額所得者優遇税制の強化をともないながら、財源の中心を消費税に切り換えていく政策として展開されている。
 来年4月のペイオフ(預金の払い戻し保証額を、元本1000万円とその利子までとする措置)解禁を前に、政府は、昨年の足利銀行への公的資金注入や最近のUFJ銀行にたいする厳しい赤字査定に続き、参議院選挙後には本格的な金融再編に乗り出そうとしている。とくに6月の国会会期末ぎりぎりに成立した金融機能強化特別措置法によって、政府は、金融庁による資産査定厳格化をテコに地域金融機関を公的資金申請に追い込み、その整理・淘汰を推進しようとしており、それは地域経済や中小企業経営に大きな打撃をあたえるものになろうとしている。
 また、本年10月以降の新紙幣発行を機会に国民の金融資産に対する把握・監視をつよめるとともに、「郵政民営化」、退職金の金融商品化、金融一体課税の導入などによって、国民の金融資産をハゲタカ・ファンドの支配する金融投機市場に大規模に導き入れようとする政策も推進されている。
 さらに、地方財政の切り捨てをすすめる「三位一体改革」では、04年度から3年間で約4兆円の国庫補助負担金を廃止・削減し、その7割は福祉・教育関係予算の切り捨てによって捻出させるという政策を強行している。それは、都市部における「都市再生プロジェクト」「民間都市開発投資促進」の政策や「経済特区」政策とともに、地域住民を大収奪する政策となっている。
 これらの金融・財政政策は、労働者・国民にはきわめて分かりにくく、それへの反撃も不十分なものに留まりがちである。しかし、国民生活へのその影響はますます大きなものになろうとしている。国家的リストラとのたたかいを官民一体で前進させるためにも、これらの攻撃をわかりやすく分析し、反撃への条件を明らかにすることが、切実に求められている。

(3)労働者の権利破壊への反撃
 財界や自公政権が今日すすめている労働法制の見直しは、社会政策の諸原則を根底から覆すような、きわめてドラスティックなものである。そのことは、次のような諸点にも示されている。
ア) 財界が、ホワイトカラー・エグゼンプション(事務・営業・技術系労働者について労働時間規制を適用除外とすること)や金銭賠償方式による解雇制度の、早期導入を要求していること。
イ) 本年3月解禁になったばかりの工場ラインにおける派遣労働者活用が、瞬く間に広がり、それを機に現業労働者の非正規化が格段に進展しつつあること。
ウ) 「春闘」の「春討」への転換をすすめるなかで、団体交渉や労働協約の空洞化が急速におしすすめられ、「会社派労働組合」の一段の労使一体化がすすんでいること。
エ) 人事院が、06年度から国家公務員の定期昇給を廃止して、能力・成果主義への転換を図る方針を明らかにしたこと。また自治体労働者への成果査定による労働者分断の動きも現れていること。
オ) 労働相談や個別争議が激増するなかで、新設された労働審判制度を活用しての、その「早期解決」が図られようとしていること。
カ) 財界が提唱する外国人労働力の導入にむけて、具体的な検討がすすめられていること。
キ) 小泉自公政権が強行する憲法破壊策動と呼応して、司法の反動化が進んでいること。例えば、JR採用差別問題は地労委、中労委で救済命令が出され、ILOが5度にわたって国の責任による早期解決を勧告しているにも関わらず、03年12月22日、最高裁判所は、憲法や労組法上の従来の判例・学説を覆して、国鉄改革法を盾に「JRに使用者責任なし」、新規採用の場合には組合活動歴を理由とする採用差別は不当労働行為に当たらないという、許し難い判決を3対2という僅差で強行したこと。
ク) 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(いわゆる骨太方針04)が、従来の雇用失業対策とは異質の「若者自立・挑戦プラン」強化や労働移動円滑化の政策を打ち出したこと。トライアル雇用などと称して、企業忠誠度を採用基準にした、良質で安価な若年労働力の雇用管理・解雇自由制度を拡大し始めていること。
ケ) 厚生労働省の外郭研究機関などから、「雇用と自営・ボランティアとの中間領域での多様な就業実態」、「雇用多様化時代の労使関係」、「外部人材の活用拡大と新しい課題」、さらには「社会法における『労働者』概念」などの報告書を次々と出し、規制改革・民間開放推進会議や各種審議会などでの「従来の社会政策の枠組みにとらわれない」議論を促進している(そこでは、21世紀の変化する労働環境のなかで、いかに経営権を「回復」「確立」するかが主要な関心事となっている)こと。
コ) そうした議論との関連で、労災保険の民営化や労働契約法制の制定も問題となっていること。
 これに対して全労連・春闘共闘を中心とする労働組合運動は、ア)職場における労働基準・労働安全衛生基準を確立するたたかいや「企業通信簿」運動、イ)賃下げに反転攻勢をかける賃金、最低賃金制、公契約・リビングウェッジ、パート均等待遇などの運動、ウ)非正規労働者の要求と組織を発展させる運動、などを展開しており、また、エ)国家的リストラによる雇用差別を受けたJR1047名問題の解決は、全労連・建交労や国労などの運動も反映して、ILOが最高裁判決以降にも、6度目の国の責任による早期解決を勧告していることにも象徴されるように、国際的にもこの問題が支持されている。さらに、オ)労働者・労働組合の運動が目指すべき労働改革の中期的な目標を、「展望と課題」として労働者・国民に分かりやすくアピールしながら、たたかいを発展させている。
 しかし、支配層の攻勢に反撃していくためには、要求と運動と組織の発展ばかりでなく、専門的な調査研究と活動家集団が必要である。労働審判法が成立し、労働審判委員会だけでも500名前後の労働者側推薦の労働審判員が必要とされる状況のもとで、この分野での立ち後れの克服は、喫緊の課題となっている。

(4)新しい共同の広がり

 以上に見てきた日米支配層の攻撃に対して、日本の労働組合運動は全体としてはまだ有効な反撃を組織できずにいる。しかし、たたかいのなかでは、すでに労働組合の再生を目指す運動の新たな広がりが見られるようになっており、働くルール確立を目指す共同、組織拡大を目指す新たな取り組み、労働組合の弱点を克服する新たな挑戦、などもはじまっている。たとえば、次のような前進や挑戦をあげることができる。
a) 未組織や連合職場の労働者が労働相談にアクセスし、労働組合に入って要求を実現するケースが急増している。(事例:大企業の工場閉鎖・全員解雇に自治体・地域ぐるみで反撃、人権侵害・無法行為にフリーターが組合を結成、民間移管の公務職場で臨時職員やパートを組織化、など)。
  b) 大企業の職場でも憲法や労基法を活用した勝利が相次いでいる。日立争議の最高裁敗訴事件をふくむ一括勝利和解。憲法は職場に適用されないという三菱樹脂事件最高裁判決(72年)を覆した関西電力人権・賃金差別事件の勝利。サービス残業一掃の運動で行政を動かし、愛知県経協に悲鳴をあげさせた闘い、など。
  c) 「事実上の」全労連と連合の共同も進んだ。その力もあって、労基法に解雇制限の条項を入れさせる「逆転勝利」をかちとった。

(5)国民の最低生活保障・社会保障基準
 破壊とのたたかい
 国民生活は「長期不況」のもとで絶対的な貧困化を経験してきた。今日なおその過程は終息していない。失業水準は高止まりし、就職難は改善されず、常用雇用や現金給与総額は減少する一方である。消費支出、小売業販売、旅行取扱状況など冷え込んだままであり、中小企業への銀行貸出は減りつづけ、地域経済を担ってきた小零細業者の廃業にも歯止めがかかっていない。小泉政権の「構造改革」は、その国民のうえに、社会保障改悪と庶民増税による3億円以上もの負担増を押しつけてきた。その結果は、自己破産や生活保護世帯の増加に拍車がかかり、住宅ローンの延滞が広がり、国民年金などの「制度空洞化」が爆発的に進行し、経済的理由による自殺を増加させることとなっている。国民生活は明らかに底割れしている。
 戦後日本の生活保障体系が重大な危機に直面しているにもかかわらず、社会科学の諸分野における調査研究活動は立ち遅れている。それを早急に克服し、国民の立場に立った科学的・批判的調査研究、政策提起を含む社会的反撃・行動を強化する努力が急がれる。
 だが、史上最悪の年金改悪強行は、次のことを明らかにした。ア)国民の老後の生活保障は大きく後退し剥奪された。イ)改悪年金制度は、生活保障制度というよりも一種の徴税機構としての性格をもつようになった。ウ)改悪は、年金基金を勝手に横流しし費消している高級官僚の特権を守るため、また、その莫大な資金を国際投機資本の運用に委ねるために行われた。エ)「100年安心」の年金制度構築に責任を負っている者は、自民・公明連立政権には誰もいない。
 支配層は年金制度の改悪にとどまらず、介護保険、高齢者医療、生活保護制度の見直しをも進めている。政府は、社会保障制度全般の見直しを進める政財労学の協議機関を設置し、07年までに消費税増税を財源とする「社会保障構造改革」を実施するとしている。
 一連の攻撃に対して労働運動は、改悪年金法の施行中止と年金制度改革論議のやり直しを要求するとともに、最低保障年金の確立、現行の給付水準維持、消費税増税反対、年金一元化反対、等をかかげてたたかっている。

(6)「行財政改革」による自治体
 リストラとのたたかい
 自治体リストラの実態はあまり知られておらず、調査研究や政策活動も立ち後れている。
 規制緩和と一体となった行財政改革をテコとして、東京都をはじめ、いま全国各地で、自治体の公的機能を破壊するすさまじいリストラ旋風が吹き荒れている。幼稚園・保育園の一元化、保育園・図書館・児童館・学校給食、高齢者施設などの民間委託、介護サービスや学童保育の切り捨て、民間による公共施設の管理・運営、公立病院・福祉施設などへの民間企業の参入、等々が、人件費の削減を最大の目的として推進されており、それは広範な住民の生活不安を引き起こしている。
 労働組合運動は、行財政改革による住民サービス切り捨ての実態を知らせながら、地域での住民の広い共同を発展させ、具体的な地域住民の要求でリストラを跳ね返していくたたかいをすすめている。だが、当局の「改革」プランに対抗して、労働組合が自らの自治体発展プランを提示し、広範な住民の要求を一つに結集してたたかっている所は、まだ多くない。

(7)教育基本法改悪・大学・研究の自主的
 民主的基盤の破壊攻撃とそれへの反撃
 憲法改悪・9条破壊攻撃と連動して、「戦争をする国家」に忠誠を誓う人材教育の策動が、教育基本法の抜本的改悪を軸にすすめられている。国立大学・国立研究機関、公立大学・公立研究機関の独立行政法人化のもとで、およそ学問・研究の自由とは相容れない、民間大企業並みの経済効率主義・業績主義・実績主義が導入され、第三者評価が義務付けられた。その行き着く先がどこであるかは、石原慎太郎東京都知事が、卒業式で「日の丸」に起立して「君が代」を歌わなかった子どもがいたらその担任を処罰するとしたり、都立4大学の教授会や学生などに諮ることなく、管理者権限で一方的に既存教育機関を統廃合して「首都大学東京」を新設する、といったファッショ的暴挙に出ていることを見ても、明らかであろう。
 これら教育、学問・研究に対する攻撃に対しては、国民共同の「教育基本法ネットワーク」や「都立大学を考える都民の会」あるいは「大学評価学会」の結成など、自主的で民主的な運動が盛り上がりはじめている。将来の労働者・国民を育てる学校・大学のあり方は、労働者・国民のくらしや、日本と世界の平和と民主主義の行方を左右する問題であり、労働運動の前進を図るうえでも、きわめて重要な問題である。大学所属の研究者を多数擁する本研究所にとっても、こうした教育・大学・研究機関の問題への取り組み強化は、避けて通れない課題である。

(3)労働運動の要請に応える労働総研の役割
 わが国の労働問題関係の研究所は、一般に、財政難やスタッフ不足の悩みを抱えるなかで、社会変化への機敏で柔軟な対応ができないでいることが多い。労働総研も、財政難をはじめとする多くの悩みを抱えている。困難の大きさは、他の研究機関とは比べものにならないかも知れない。だが、労働総研は他の研究機関にはない強みをもっている。
 第一に、労働総研は、全労連をはじめとする労働運動との深いつながりを日常的に確保している。労働者・労働組合の直面している問題状況を、直接確認しながら調査研究をすすめることができる。
 第二に、労働総研の研究活動には、さまざまな分野の300名余以上にのぼる研究者や、広範な産業・地域の運動家が参加し、共に肩を並べて調査研究活動に従事している。そこでは、他に類を見ない、学際的、理論的、実践的な研究と討論が発展している。
 第三に、労働総研の活動のなかでは、労働者階級の立場に立った、なにものをも恐れない、科学的批判的な精神が貫かれている。学問研究や調査研究活動に対する抑圧が強まっている今日、気兼ねなく自由に議論し調査研究できる労働総研の場は、きわめて貴重なものとなっている。
 これらの利点を生かして、すべての会員が自主的意欲的に研究所の諸活動に参加していくならば、また、さらに会員を大幅に拡大して研究所の主体的力量を高めていくならば、そこからは従来にも増して、調査研究の注目すべき成果が生み出されてくるに違いない。
 これからの労働総研は、従来以上に労働者の生活内容や全労連をはじめとする労働運動の実態に深く立ち入り、労働者・労働組合が抱えている問題を共に直視し共に悩みながら、全国民的な視点で検討し、困難打開の方向を探っていく必要がある。
 労働者・勤労者の仕事・生活の基盤は、その基礎部分までが崩壊寸前の状況に置かれている。労働と生活の根底部分の安定化は緊急の課題となっている。こうした状況打開のための現状分析や打開のための政策提起の探求が求められている。研究所は、その分析・政策策定のための資料や方法を提供し、勤労者や労働組合と協力・共同して現状打開策を見いだすための努力を行う必要がある。
 国民生活の破壊は、その経済的な部分だけではなく、広く社会構造の深部にまで達している。問題はコミュニケーションの破壊、人間として威信の破壊にまで広がっており、青年の生きがいや高齢者のこころの拠り所の問題などをふくめ、全体として安心・安全の社会を構築していくことが要請されている。21世紀の人権をより豊かにいっそう高度に発展させていく視点から、国民生活の創造的発展をめざす調査研究が求められている。
 労働運動などの国民的な運動についても、要求の正当性だけでなく、要求の仕方、要求実現の仕方について、広く国民的な合意を得られるような政策検討を意識的に練り上げていく努力が求められている。三菱自動車の大規模リコール隠し、新日鐵、ブリヂストン、エクソンモービルや出光興産などの大規模災害を防止する上でも、労働者の生活と権利、働くルール確立の問題と企業の社会的責任の問題とも関連づけて、分析研究し、政策提言していくことが求められている。そうした視点から、労働組合のあり方についても、問題を提起し、研究・討議を深めていく必要がある。
 職場や地域における労働組合の運動形態や組織形態についても、具体的な労働者状態から出発し、運動と組織の実際の経験を土台として、現場で活動している人々とともに前進への展望を切り開いていくことが重要となろう。この点でも、労働総研の役割は大きい。
 以上のように、労働総研は、今日の国民生活と労働運動が直面する喫緊の諸課題について、広範な労働者・国民の要請に応える調査研究・政策活動や支援活動を発展させていかねばならない。その活動は、日本社会の革新に大きく貢献するものとなろう。

 

[3]2004年度の事業計画

(1)設立15周年年記念行事
 労働総研は、今年12月11日、創設15周年を迎える。これは全労連をはじめ、団体会員、個人会員をはじめとする労働総研への日頃からの支援と協力の賜物である。労働総研は、その設立以来の事業をさらに質的に発展させる一つの契機として、04年度定例総会から05年度定例総会までの間を「設立15周年記念事業年」とし、以下のような記念行事を行うこととする。

 (1)記念シンポジウム
 05年5月に、記念シンポジウム「これでいいのか日本の社会、これからどうする日本の労働運動」(仮題)を、全労連と共同して開催する。
 このシンポジウムは、異常な日本社会の政治経済を告発するに止まらず、労働者・労働組合を先頭とする国民的共同の力でどう日本社会を革新していくか、そのためにも、労働組合運動の活性化をどう実現していくかを、事実と経験に則してリアルに提起し、労働者・国民による広範な討論の出発点にしようとするものである。それは、全労連の「21世紀初頭の目標と展望」を実現していくたたかいや、500万全労連(当面は200万)をめざす「未組織の組織化」運動とも深く結びつき、労働者・国民の未来への希望に灯をともす事業として位置づけられる。
 「記念シンポジウム」の準備をすすめるに当たっては、全労連と共同で、単産・単組、地方・地域、職場における調査等も行う。そして「シンポジュウム」が、広範な組合員および幹部・活動家の「英知」の結節点になると同時に、全労連が提起している当面200万全労連を実現するための取り組みにも積極的に寄与するものとなるよう、意識的な努力をしていく。

 (2)シンポジウムの成功を支える調査について
 「記念シンポジウム」を成功させるために、以下のような調査を行う。調査を成功させるため、労働総研と全労連とで調査の企画・立案・推進のためのプロジェクトチームを組織する。調査の具体化にあたっては、300余の労働総研個人会員と単産・単組、地方・地域組織との協力・共同を緊密にする方向で取り組む。調査項目の詳細は、プロジェクトチームによって具体化されるが、たとえば以下のようなことが想定されよう。
 職場・地域、地方・地域組織、単産・単組は、労働組合運動を前進させる上で、これまでにどのような積極的経験が生み出されているか、その「成功」の要因となったのは何か、今なにが前進の障害となっているか、その障害を克服するために、どのような努力を行っているか、未組織労働者を含め職場の労働者は労働組合をどのように見ているか、労働組合は年間を通じてどのような活動を行っているか、組合員の組合活動への結集状態はどうか、今一番切実に必要だと思う運動・政策課題は何か、どのような条件の下で組織拡大は成功したか、どのような条件の下で組織防衛に失敗したか、「21世紀初頭の目標と展望」、500万全労連、200万全労連の実現の課題について、どのような討議を行ったか、21世紀にふさわしい労働組合の強化をはかるうえで、一番大切だと考えている事は何か、などの大量調査と、ケーススタディーを通じて、労働組合の運動の強化・発展の条件・要因を、リアルに浮き彫りにしていく。
 このように、労働組合自らが行った調査に基づいた、運動論、要求政策論の探求は、「連合評価委員会報告」とは違った、活力ある組織拡大の基本方向と展望を明確にすることになると確信する。

 (3)記念出版・記念行事
(ア) 「創立15周年記念シンポジウム」とその成功のために実施した調査結果を分析した書籍を、設立15周年を記念する出版物として発刊する。
  (イ) 創立15周年記念行事の一環として、ドイツ、フランス、イタリア等における職場の交渉権、および企業の社会的責任と労働運動を中心テーマとした調査団を、参加者を募集し、派遣を検討する。派遣時期は04年12月から05年2月までの間で調整する。この調査研究の成果を、創立15周年記念出版として発刊する。

 (4)地域金融・経済・雇用シンポジウム
 足利銀行経営破綻問題と地域金融・経済・雇用をめぐるシンポジウムを、今秋、栃木県宇都宮市で、全労連、栃木県労連、地銀連などとの共催で開催する。

(2)プロジェクト研究の課題と目標
(ア) 記念シンポジウムおよびそのための調査を、設立15周年記念プロジェクトに位置づけ、予算措置を行う。
  (イ) 「基礎理論・理論問題プロジェクト」=「ナショナルミニマム問題整理・検討プロジェクト」は、年金改悪、生活保護基準切り下げ、地域最賃切り下げ、失業保険改悪など、労働者・国民生活の最低限規制が、次々に攻撃を受けている現状に照らして、その取りまとめは、緊急の課題となっており、05年度7月を目途に報告をまとめる方向で努力する。

(3)研究部会活動の課題と目標
(1)賃金・最賃問題研究部会
 1)成果主義賃金の検討と対策(継続)
  *財界の賃金体系政策の最近の変化の解明
  *大企業等における導入事例とそこでの矛盾・問題点の解明
  *公共部門における賃金の成果主義化について
  *運動の側における対応の現状と課題
 2)日本における横断賃率の検討(継続)
  *年齢別横断賃率・職種別横断賃率の評価
  *職業訓練・公的資格と賃率問題
  *労働組合の政策課題
 3)最低賃金制の現状分析と政策課題(継続)
  *現行最賃制の実態、その変貌について
  *全国一律最低賃金制をめぐる政策課題(その水準、生計費指標、市場賃金との関連、地域格差問題をどうするかなど)
  *最低賃金制と公契約条例(リビングウェッジ)との関係
  *ナショナルミニマム問題との関連における論点(生活保護基準、最低保障年金等)
 4)賃金の均等待遇をめぐる論点整理
  *均等待遇政策と「均衡処遇」政策
  *均等待遇政策と賃率問題
  *短時間正社員、地域限定社員をどう評価するか
 5)賃金闘争の混迷、その展望に関して
  *春闘の歴史と実態の検証。ベア方式、上げ幅春闘の現状、人事院勧告の「崩壊」などについて
  *財界の賃金政策の変容について
  *地域・中小企業における春闘のあり方と課題
  *非正規雇用の賃金闘争における課題
  *春闘と地域経済再建の課題との関連
  *賃金(闘争)と社会保障(闘争)との関連について(労働力再生産費の社会化の今日的課題)
 6)以上の諸課題と関連した国際比較研究

(2)社会保障研究部会
 部会が早急に取り組まなければならない課題は、生活保護制度の改悪をはじめ山積している。
 情勢としての社会保障問題だけではなく、日本の社会保障制度をどのように再構築するか、根本的な方向性を考えなければならない。部会の英知を結集して、政策提案型の研究を進める。

(3)労働時間問題研究部会
 『労働時間短縮と人間らしい働き方を取り戻す大運動へ(仮題)』の執筆要綱が完成したので、それに基づき、わが国での労働時間短縮闘争の国民的な反転攻勢へのエネルギーを鼓舞する執筆の完成を目指す。

(4)女性労働研究部会
1)当部会は、以下を中心に女性労働の現状、諸特徴について、引き続き主な産業の聞き取り調査を含め検討する。
ア) 政府・財界および個別企業の新たな女性「活用」戦略の動向。
  イ) 政府・財界および個別企業の「ワーク・ライフ・バランス」施策。
  ウ) 成果主義管理や不安定就労増加等による、「間接的性差別」の現状。
  エ) 派遣、請負、テレワーク等の女性の不安定就業の実態。
  オ) 労働組合の女性労働に関わる運動、取り組み。
2)併せて、女性労働に関する諸文献について研究する。

(5)中小企業問題研究部会
1) 今年度は、『中小企業問題と労働運動』(仮称)の書籍発行に全力をあげる。この間の研究によって、企業の社会的責任(CSR)論や下請二法の活用について新たな知見を得たので、部会出版物の構成を若干練り直した。今期は、各章の分担責任者を中心にした補充調査・研究と並行しながら、執筆論文原稿の集団的討議による編集作業に専念する。部会の前回の業績『中小企業の労働組合運動』1996年から10年近く経過することになるが、遅くとも次期年次総会までに単行本として刊行する。
  2) 書籍の執筆・編集活動と並行しながら、各時期にクローズアップされる中小企業問題に関わる緊急課題を受け止め、中小企業に関わる労働組合運動そして全労連との協力関係を発展させるよう努力する。産業空洞化、非正規雇用の拡大、大企業による下請いじめなど、実態の解明を進めながらその成果を会員に還元できるようにする。

(6)国際労働研究部会
1) 研究会
 月例の研究会を一層充実させる。そのため年間の長期的プランに基づいて研究会を行うとともに、部会員以外の研究者にもお願いしてより広く深い研究成果を吸収するよう努める。
  2) 全労連編『世界の労働者のたたかい―世界の労働組合の現状報告』への執筆協力
 全労連編『世界の労働者のたたかい―世界の労働組合の現状報告』を一層水準の高い、充実したものにする。そのため上記研究会を充実させるとともに、執筆者間の連絡調整を強める。
 以上の活動を、わが国労働組合運動の当面する重要課題と労働総研の重点的研究課題を意識しつつ行う。

(7)政治経済動向研究部会
 労働者・国民が情勢との関連で解決を迫られている諸問題について、1)日本の産業や地域経済が今日直面している危機的状況を構造的に解明し、労働組合運動を中心に、広範な勤労諸階層との協力・共同にと、共同提言・改革の条件解明等、独自な研究課題を進めるとともに、2)「春闘白書」や他のプロジェクト・研究部会の研究成果との有機的連関を強め、情勢分析を系統的に深めていく。できるだけオープンな形で研究会を開催していく。

(8)関西圏産業労働研究部会
 今後の方向性としては、発表機会を捉えて、本研究会の討論をふまえた各個人の研究成果を個人論文として発表していくことを目指す。個人論文の積み重ねをふまえて、出版企画実現のめどをつけたい。また、労働者との協力関係を再構築して、関西圏での賃金問題の実態分析の準備もすすめたい。

(9)労働運動史研究部会
 産別会議と統一労組懇関連の幹部への聞き取り調査を開始する。引き続き、聞き取り調査対象の選定を進める。
 聞き取り調査対象者の活動歴、及びその該当時期の政治経済情勢や労働運動の特長を明らかにするための文献調査・研究、資料の収集を進める。
 聞き取り対象者毎のヒヤリングのためのポイント等を明確にした、質問要綱等を作成する。

(4)出版・広報事業
 (1)『労働総研クォータリー』、『労働総研ニュース』、“Rodo-Soken Journal”など、3種類の定期刊行物の企画・編集を充実させ、読者拡大と労働総研の存在と役割を、労働運動をはじめ社会的にアピールする。
 (2)研究例会、公開研究会はもとより、魅力ある労働総研の活動内容をつうじて、労働組合幹部・活動家、研究者の労働総研への広範な参加を呼びかける。
 (3)常任理事会は、出版企画・編集上で積極的な役割をはたし、プロジェクト・研究部会等の研究内容の検討および研究成果を取りまとめた出版物を発刊する。
 (4)全労連との共同編集による『2004年国民春闘白書』は、学習テキストして利用しやすくなったと評価されて、増刷することができた。編集委員会を早期に立ち上げ、より内容を実践的なものとして練り上げ、現場の要求に応えるように改善する。
 (5)全労連編『世界の労働者のたたかい2005―世界の労働組合の現状調査報告』(第11集)への執筆に協力し、内容の充実をはかる。
 (6)必要に応じた政策提言を発表する。発表媒体は印刷物だけでなく、可能な限り労働総研のホームページをも活用する。

 

[4]研究所活動の充実と改善

(1)研究所活動のあり方についての検討課題
 設立15周年を契機に、当研究所の調査研究活動、政策提起の能力を情勢の要請に応えて発展させることが求められている。
 03年度定例総会で確認された「研究部会活動のあり方検討委員会」は、「中間報告」を03年度第4回常任理事会に提出し、04年3月に開催したプロジェクト・研究部会代表者会議で討論した(『労働総研ニュース』No.168・169、04年3・4月合併号参照)。「研究所活動のあり方検討委員会」の活動をさらに具体的に発展させ、04年度3月(05年3月)に予定のプロジェクト・研究部会代表者会議で一定の結論を出し、05年度定例総会で具体化する方向で、検討を進める。

(2)会員拡大
 04年度定例総会時の個人会員数は、高齢会員の死亡・退会などがあったものの、新会員の増加で、5名増となった。団体会員数は3団体会員の増となった。
 設立15周年記念年に相応しい規模で、団体会員はもとより、個人会員拡大の意識的な拡大する取り組みを強める。

(3)読者拡大
 『労働総研クォータリー』は、04年春季号(No.54)特集「戦争と平和、労働者・国民生活」の「ロング・インタビュー=坂本修弁護士に聞く=“せめぎ合い”の渦中で、どこに“光”を見出すか」の例に見られるように、筆者の協力を得るなどの努力を尽くせば、特集によって大きな反響を呼び、単発的ではあるが注文の増加がある。単発読者が定期読者になってもらえるよう、企画・編集を魅力ある内容に充実し、定期読者の拡大に努力する。

(4)地方会員の活動参加
 地方会員が研究所の調査研究活動に参加できやすくするための検討については、研究部会のあり方についての検討の項でもふれたが、設立15周年記念年に取り組まれる全労連と共同して行う、調査への協力・参加を具体化する。今後、中央・地方における各種公的委員会・審議会へ、労働者側委員とともに、公益委員として参加することが予想される。それへの対応も準備しなければならない。

(5)事務局の体制強化
 労働総研の調査研究活動を機能的・効率的に推進する上で、総会の決定を具体化し、代表理事・常任理事会の適切な指導と援助のもとで活動する事務局の役割は重要である。事務局機能の効率的な運営をおこなうため、02年度から実施している、状況に応じた代表理事をふくむ拡大事務局会議の開催と事務局会議の定例化を定着させ、設立15周年に相応しい事務局体制の強化をはかる。特に、15年間にわたって積上げられてきた申し合わせ事項を含む規定・規程集を完備する。


2003年度 第7回常任理事会報告

 労働総研2003年度第7回常任理事会は、平和と労働センター・全労連会館3階会議室において、2004年7月31日正午より午後1時まで、牧野富夫代表理事の司会で行われた。入会承認事項について藤吉信博事務局次長が報告し、承認された。
 第2回理事会に提出する「2004年度定例総会方針案」について、大須眞治事務局長より、第1回理事会および『労働総研ニュース』で「方針案」を発表して以降、事務局に寄せられた意見などをも反映した「補強・修正案」が提案され、討議の結果、第2回理事会の意見をも取り入れて、2004年度定例総会に提案することが確認された。
 次いで、大須事務局長より、2003年度会計報告案が報告され、討議の結果、第2回理事会に報告し、了承を得た上で、2004年度定例総会に提出することが確認された。引き続き、大須眞治事務局長より2004年度予算案が提案され、討議の結果、第2回理事会に提案し、了承を得た上で、2004年度定例総会に提出することが確認された。
 次いで、大木一訓代表理事より、2004年度〜2005年度役員選考について提案があり、討議の結果、第2回理事会に諮り、了承を得た上で、2004年度定例総会に提案することが了承された。
 第7回常任理事会で確認された「修正・補強案」(頁数・行数は『労働総研ニュース』No.172)
 (1)4頁右欄[2]の(1)の1行目後ろから4字目、「最大で複」を「重大で複」に修正。
 (2)7頁左欄下から5行目のエ)項に新たに挿入。以下項目はエ)はエ)→オ)、オ)→カ)と繰り下がる。
 エ)人事院が、06年度から国家公務員の定期昇給を廃止して、能力・成果主義への転換を図る方針を明らかにしたこと。また自治体労働者への成果査定による労働者分断の動きも現れていること。
 (3)7頁右欄1行目から10行目までを全文削除し、以下のように修正する。
 キ)小泉自公政権が強行する憲法改悪策動と呼応して、司法の反動化が進んでいること。例えば、JR採用差別問題は地労委、中労委で救済命令が出され、ILOが5度にわたって国の責任による早期解決を勧告しているにも関わらず、03年12月22日、最高裁判所は、憲法や労組法上の従来の判例・学説を覆して、国鉄改革法を盾に「JRに使用者責任なし」、新規採用の場合には組合活動歴を理由とする採用差別は不当労働行為には当たらないという、許し難い判決を3対2という僅差で強行したこと。
 (4)8頁左欄1行目から4行目を全行削除し、以下のように補強する。
 …は、全労連・建交労や国労などの運動も反映して、ILOが最高裁判決以降にも、6度目の国の責任による早期解決を勧告していることにも象徴されるように、国際的にもこの問題が支持されている、さらに、…
 (5)8頁左欄上から8行目から13行目までを全文削除し、以下の修正文と差し替える。
 しかし、支配層の攻勢に反撃していくためには、要求と運動と組織の発展ばかりでなく、専門的な調査研究と活動家集団が必要である。労働審判法が成立し、労働審判委員会だけでも500名前後の労働者側推薦の労働審判員が必要とされる状況のもとで、この分野での立ち遅れの克服は、喫緊の課題となっている。


2003年度 第2回理事会報告

 労働総研2003年度第2回理事会は、平和と労働センター・全労連会館3階会議室において、2004年7月31日午後1時半より2時半まで開催された。
 会議開催にあたり、大須眞治事務局長が開会を宣言した。
 大江洸代表理事が司会を兼ね、第1回理事会での議長選出問題に瑕疵があったが、議事は有効であり、確認をお願いしたいと挨拶を行った後、牧野富夫代表理事を議長に選出し、議事は進められた。
 大須眞治事務局長より、2004年度方針案について、「修正・補強案」を中心に報告され、討議の結果、以下の修正案を付加して、総会に提案する「修正・補強案」を確認した。
 次いで、大須事務局長より、2003年度会計報告案が報告され、討議の結果、総会に提出することが確認された。引き続き、大須眞治事務局長より2004年度予算案が提案され、討議の結果、総会に提案することが確認された。
 次いで、大木一訓代表理事より、2004年度〜2005年度役員選考について提案があり、討議の結果、総会に提案することが了承された。
 第2回理事会で常任理事会確認の「修正・補強案」に付加された「修正・補強案」(頁数・行数は『労働総研ニュース』No.172)
 (6)5頁左欄上から8行目「1000兆円にのぼる借金」を「1000兆円にのぼる長期債務」に修正。
 (7)5頁右欄下から5行目「は、産業事故」の後ろに「や過労死、過労自殺、自殺」を挿入。
 (8)6頁右欄(2)金融・財政政策による国民的収奪への反撃の項5行目「大企業・資産家」を「大企業・高額所得者」に修正。
 (9)8頁右欄下から16行目から19行目までを全文削除して以下の文章に修正。
 戦後日本の生活保障体系が重大な危機に直面しているにもかかわらず、社会科学の諸分野における調査研究活動は立ち遅れている。それを早急に克服し、国民の立場に立った科学的・批判的調査研究、政策提起を含む社会的反撃・行動を強化する努力が急がれる。


2004年度 定例総会報告

 2004年7月31日、東京都文京区湯島2-4-4の平和と労働センター・全労連会館において、労働運動総合研究所2004年度定例総会は、午後2時半より開催された。最初に、大須眞治事務局長が、開会を宣言した。
 次いで、大須眞治事務局長が、儀我壮一郎理事を議長に推薦し、満場の拍手で儀我壮一郎理事が議長に就任した。儀我壮一郎議長は「規約第25条の規定により、議事録署名人として議長及び金田豊常任理事と川口和子理事を議事録署名人とする」ことを諮り、拍手で承認された。議事の審議に先立ち大江洸代表理事が、今年は労働総研設立15周年を迎え、記念行事として、シンポジウム「これでいいのか日本の社会、これからどうする日本の労働運動」を成功させるため、全労連と共同で労働組合の実態調査をも行い、日本労働運動の再生のための調査研究活動での役割を微力ながら発揮したいと、主催者挨拶を行った。
 次いで、坂内三夫全労連事務局長が要旨次のような来賓挨拶を行った。
 全労連は、今年結成して15年を迎える。全労連の今大会の討論の特徴は危機感あふれるものであった。昭和22年から25年生まれの、いわゆる団塊の世代が2007年から大量に定年を迎える。それを上回る組織拡大が喫緊の課題となっている。今大会は組織拡大推進基金に基づいて12名の全労連オルグが活動を開始する大会ともなった。また、今大会は、憲法改悪に反対するたたかい、選挙制度改悪とマスコミの果たしている悪い役割、大企業の横暴に対して、職場の内外でどうたたかうかなど、困難を主体的に克服していくための斬新で積極的な討議が行われた。
 今大会に、はじめて、アジアを中心とする外国代表、8カ国、2国際組織から15人を招待した。外国代表は整然とした大会運営に驚いていた。国際労連の代表は大会を熱心に傍聴していたが、これには国際労働運動の動きを反映していると思う。国際自由労連と国際労連の合併の動きがあるが、アジアの国際労連は国際自由労連への吸収合併に賛成していない。この動向に注目したい。
 JMIUは3つのなぜを提起している。(1)なぜ、会社を退職すると同時に組合も脱退するのか、(2)なぜ、管理職になると組合を脱退するのか、(3)なぜ、倒産で職場(会社)がなくなると支部を解散するのか。全労連としても、これらの問題を実践的に解明し、組織拡大運動にもつなげたいと考えている。
 今後とも、労働総研の協力を期待する。

 「労働総研は15周年行事の一つとして、単産、地方・地域の職場実態調査を踏まえた新たなシンポジウム・『これでいいのか日本の社会、これからどうする日本の労働運動』(仮題)を計画している。シンポジウムが日本社会の政治・経済上の諸問題を告発するにとどまらず、全労連が『21世紀初頭の目標と展望』で提起した新たな社会の方向を模索し、労働者・労働組合を軸とした国民共同の力で変革していく運動強化に寄与するものとなるよう単産・地方の協力で成功させる。」(全労連第21回定期大会方針の第8章9節)

 来賓挨拶の後、第1号議案「2003年度における活動経過」について藤吉信博事務局次長より提案され、全員異議なく承認された。
 次に、第2号議案「2003年度会計報告」について大須眞治事務局長より、また、第3号議案「2003年度監査報告」について、監事の委任により、儀我壮一郎議長より報告され、全員異議なく承認した。
 続いて、第4号議案「2004年度の定例総会方針」の内「調査研究活動をめぐる情勢と課題」について、大木一訓代表理事より「修正・補強」を含めて提案された。参議院選挙結果をどのように評価するかは重要な問題である。選挙結果の労働運動読みが重要だ。アメリカ言いなりに9条破壊・憲法改悪攻撃を進める自公連立与党と与党と憲法改悪を競い合う民主党とで、国会議席の9割を占めている。戦後史の重大な転機にあるが、国民との矛盾は激化している。情勢の中心点は9条・憲法にある。「9条の会」の運動はきわめて重要である。労働総研はどのような役割を果たすのか。
 労働総研の調査研究活動のなかでも金融問題も重視してきた。足利銀行破綻問題では地銀連と共同で調査を行い、公開研究会で討議してきたが、UFJの経営破綻をめぐって東京三菱、三井住友を巻き込んだ金融大再編問題を引き起こしている。労働組合、中小企業団体とも連携して、運動論的政策論を提起する必要がある。
 「方針案」発表以降、JR採用差別問題の記述は事実誤認がありショックを受けた等の意見もいただき、常任理事会、理事会でも議論し、「修正・補強案」を提案(第2回理事会報告参照のこと)する。
 次いで、「2004年度の事業計画」および「研究諸活動の充実と改善」について、大須眞治事務局長より提案された。
 2004年度事業の中心は15周年記念行事である。記念シンポジウムを成功させるために行う労働組合の現状と今後の活動方向に関する実態調査は、全労連の全面的協力で行われる。それに基づく運動論、要求政策論の探求は、労働組合内部から運動の点検と再構築を目指すものであり、連合評価委員会が学識者によって労働組合の外から労働組合活動を評価したものと、決定的に異なった、活力あるものとなるであろうし、そうなるよう努力したい。
 両提起を受けた審議では、延べ16名が発言した(その他3名の文書発言)。
 ・生活保障体系が重大な危機に直面しているにもかかわらず、それに反撃する研究分野の社会的活動はなおこれからであるという問題提起は重要であり、労働総研がそうした調査研究活動で大いに奮闘していくことが強く求められている。・政府・財界の攻撃にたいして、数字的な見通しを含めて、具体的な政策を提起していく必要がある。・国民生活破壊攻撃は、生活権や労働権、交通権などの破壊攻撃と結びついている。
 ・国民生活破壊攻撃は税収奪・税制、財政と密接に関連している。・研究部会は、社会保障、介護、年金、消費税などとも関連させ、作業していく必要がある。
 ・研究部会の活動にとって、運動の側からドシドシ注文を出して欲しい。その問題にしぼった実践的で重点的な研究活動を進めたい。・現実の動きは速い。労働総研として機敏に対応するためには、例えば、横串の部会を考えるなど、部会のあり方の検討も必要になっている。
 ・15周年記念行事で行う労働組合の実態調査では、今後の発展方向を解明する場合、職場を基礎にという労働組合運動の原点の問題と、企業主義的な職場の問題点とをリアルに調査研究する必要があるのではないか。
 ・『労働総研ニュース』は公開研究会で何をしたかの報道だけでなく、今後の公開研究会の日程など労働総研の予定を早めに報道(予告)して欲しい。
 こうした発言の具体化については常任理事会で検討をおこなうことを確認して、第4号議案は、全員一致で承認された。
 続いて、第5号議案「2004年度予算案」について、(1)諸経費を節約して、(2)特別会計15周年記念事業積立金を取り崩し、15周年記念行事を行い、全体として調査研究活動費を前年度よりも増額させたなど、大須眞治事務局長より提案され、全員一致で承認された。
 次に、2004年度〜2005年度役員人事について、牧野富夫代表理事より提案され、全員一致で承認された。
 総会は、一時休憩し、新役員の互選により、代表理事に大木一訓、大江洸、牧野富夫の3氏を選出し、常任理事を選出したのち、16時25分、総会を再開し、新役員を代表して大木一訓代表理事が挨拶を行った。挨拶の中で、15周年を迎える労働総研は、設立の原点に立ち返り、民主的で効率的な運営と、全会員の英知の結集に最大限努力し、全労連との連携をさまざまな次元で強化し、情勢が求める研究所活動の社会的使命を果たすため努力したい、総会で出された貴重な意見については常任理事会でその具体的な手立てを講じることなどを強調した。
 以上で、2004年度定例総会のすべての議事を終了したので、儀我壮一郎議長より議長解任の挨拶が行われ、17時30分に閉会した。