労働総研ニュースNo.170・171号 2004年5・6月



目   次

・政治経済動向研究部会・公開研究会
・常任理事会・理事会報告他




労働総研政治経済動向研究部会公開研究会
新局面を迎えた小泉・竹中「金融改革」
――足利銀行「経営破綻」が意味するもの――

2004年4月15日
全労連会館

 天野光則(司会):政治経済動向部会の公開研究会を始めます。司会をします千葉商科大学の天野です。最初に、3人の方にご報告をいただき、休憩後、質疑・討論を行います。最後に、質疑を踏まえて、5分くらいリプライいただいて、8時30分には終了したいと思います。
 最初に、労働総研代表理事で、当研究部会の責任者でもある大木さんからご挨拶申し上げます。(拍手)

開会の挨拶

労働総研代表理事・部会責任者 大木 一訓

 大変お忙しい中、大勢の方にご参加いただきありがとうございます。当研究部会は、政治経済上の諸情勢の研究を通じて労働運動の発展に貢献したいと考えています。
 政府は、総選挙が終わった途端に、足利銀行を経営破綻に追い込みました。この問題は、一地域の経済・金融に打撃を与えるだけでなく、今後の経済・金 融や労働運動の動向に非常に大きな影響を与える問題です。労働総研はこの問題を重視し、今日ご報告されます今宮さんや藤吉さんに、地銀連の足利銀行経営破綻問題の調査団に参加してもらいました。今日は、これ以上は望めない報告者を迎えることができました。報告をもとに、参加いただいた皆さんが、この問題を深める実りある討議を期待しまして、ご挨拶といたします。(拍手)
 司会:早速、当研究部会のメンバーで、中央大学名誉教授の今宮さんからご報告をお願いします。

小泉「構造改革」の行き着く先
 ―足利銀行問題を考える―

今宮 謙二

 足銀破綻の具体的な点は、鳥畑さん、谷さんからご報告があると思いますので、私は、足利銀行問題に関わる大きな背景や金融政策の大きな流れの中で、どういう位置付けたらいいかという観点から、話を進めたいと考えます。

はじめに―3つのポイント
 足利銀行問題は、単に足利銀行だけの問題ではなく、日本のこれからの金融の動きを見る場合、非常に重要な問題を提起しています。そのポイントは3つあると思います。1つは、地方銀行の再編加速化の流れが一段と強まり、深まるだろうという点です。この背景には、来年4月に予定されているペイオフ問題があります。これが基本です。もう1つは、政府・金融庁の圧力です。3つ目は、この問題が日本経済、あるいは地域経済に、今後、非常に悪影響を及ぼしていくということです。この3つのポイントを中心にお話したいと思います。

1.足銀破綻の原因と一時国有化
 では、足銀破綻の原因は何かということです。直接的には、中央青山監査法人が監査方針を変更したからだと言われています。このような動向は監査法人の今後の方向として、注目すべき点です。その結果、足銀は、預金保険法102条第3号規定によって、特別危機管理銀行となりました。つまり、債務超過により、発行済み株式の価格はゼロ円となり、強制取得され、受け皿となる別の金融機関に売却するまでの間、一時的に国有化されました。
 経営者も退陣に追いやられ、横浜銀行から新しい頭取が来ました。いわゆる「リストラ」とはかなり違う措置をとったという特色があります。足銀の再建方針もこれまでの銀行再建とはかなり違う方向が打ち出されており、心配です。いわば、縮小再生産の形で、取引先をどんどん整理する一方で、行員の首切りも行うと同時に、運用リスクのある金融商品の開発を行うという方向を強めているという点で心配しています。

2.破綻後の動き
 破綻後の動きについては、鳥畑さんや谷さんから具体的なお話があると思います。いろいろなニュースを見て、私は、栃木県を含めた全体の動きが、非常に鈍いことを心配しています。
 私も、地銀連の現地調査に一日だけでしたが、谷さん、鳥畑さんともご一緒しました。その時、栃木県全体の動きが非常に鈍いという印象を受けました。県庁の担当者は非常に楽観的で、あまり深刻に見てない印象でした。商工会議所の方は、ほとんど関心がないという感じでした。その後の栃木県内の動きとして、公認会計士たちが監査法人のやり方に対して意見を出したとか、3月末に約60人の個人株主が被害者の会を設立したとか、4月に、オンブズマン栃木が県知事の訴訟を起こしたなどの動きもでています。栃木県の経済同友会が要望書を3月末に出しています。水口中小企業金融公庫総裁が、3月18日に栃木県を訪れ、支援の方策を協議したとの動きもあるようですが、栃木県と県議会の動きが、ハッキリしません。県自ら地域再生に取り組めという方針が具体化していないように思います。
 皆さんの手元に今日の『下野新聞』(4月15日)で、産業再生機構と県内温泉地に特化した「温泉再生ファンド」とファンド運営を行う業務支援会社を設立して、不良債権を抱える温泉地のホテル・旅館の再生をする計画が報道されていますが、こういった動きが今後どうなってくるか、注目されます。栃木県内の信用金庫は6つあったと思いますが、足利信金と小山信金の合併の動きが進んでいます。私たちは、運動にかかわる栃木県内のこうした動きを、十分キャッチしていく必要がありなす。
 受け皿金融機関としての外資の動向も話題になっています。東京スター銀行を買収した米投資会社のローンスター、新生銀行をわずか1210億円で買収し、再上場で約1兆円の利益を上げた例のリップルウッド、あおぞら銀行を買い取ったサーベラスなどが動いているというのです。国内の金融機関として、東京三菱銀行とか群馬銀行や常陽銀行などでつくる「首都圏銀行構想」などの動きも報道されています。
 もう一点、注目すべき動向として、証券業務を銀行が行うことです。すでに証券代理店として一部「自由化」されていますが、これが地方銀行の再編を一層加速化する圧力の一つになると思います。地方銀行で証券会社を子会社として持っているのは、静岡銀行と千葉銀行の2つくらいです。静岡銀行は東京三菱銀行と共同出資の子会社を作っています。今日の『日経金融新聞』(4月15日)に、メリルリンチが地方銀行に証券業務の提携という形で入り込もうとしていると報道されていましたが、このように銀行業務がより「自由化」される中で、地銀の再編が政府の圧力と違う形で進む点も、今後注目する必要があります。
 金融庁の動向も注目する必要があります。2月に、「金融検査マニュアル」が3つの柱を中心に改定されました。いろんな問題点があります。4月初旬、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針案」が出されました。これは「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」の一環として行われるというのです。私たちが、きちんと対応しなければ、地方金融機関再編の圧力手段として使われる可能性が非常に強いと思います。
 地方銀行の独自性を見ようとしている点など、評価される部分もありますが、それを私たちの力にするには、私たちの力が本当に強くなければ、やられてしまいます。4月1日から「公認会計士・監査審査会」ができました。これが金融庁の強い圧力になるのです。今後は地方銀行も大手銀行並に監査をするという方針です。繰り延べ税金資産、税効果資本に対し厳しい評価も行うのです。金融庁の美辞麗句的政策の下に鎧が見えています。こうした点を見ておく必要があります。

3.足銀問題と小泉「構造改革」
 私は、今回の足利銀行破綻処理問題の大きな背景に、小泉「構造改革」がある点をキチッと見ておく必要があると思います。小泉「構造改革」は、すでに破綻したという評価があります。確かに破綻した一面がありますが、破綻の側面だけ見ていると小泉「構造改革」の本質を見誤る恐れがあります。小泉・竹中プランの本当のねらいは、日本のあり方、産業のあり方、金融のあり方を、アメリカの望む形に全部変えていくということです。90年代後半から、金融「ビッグバン」を強行する中で、メガバンクが生まれてきます。その後に、小泉が登場して、それらの再編、総仕上げを「構造改革」という名前で促進しているのです。その一番いい例が、新生銀行です。海外の投機集団からは、日本は金儲けの対象として、大変いいという評価を受けており、投機集団の動きが活発化しているのです。
 小泉「構造改革」を見る場合、90年代の特徴を押さえておく必要があります。90年代は、年平均わずか1%の成長率でした。長期不況の時代だと言われています。95、96年には3%近い成長率もありましたが、平均するとわずか1%で、低成長の時代と言われている70年代、80年代と比べても格段に成長率が低い10年間でした。21世紀は、成長率の数字よりも、その中身で勝負するという時代がくると、私は思いますが、成長率が高ければ景気がいいという言い方に従って言えば、90年代は長期的な不況の時代であると言ってよいと思います。
 しかし、そこだけで見ると、非常に大きな誤りが出てくると思います。大事な点は、この10年間に日本の経済の体質が大きく変わり始めてきたという点です。自民党の中からも、大手ゼネコン型・浪費型の公共投資は、日本経済の発展に役に立たないと言われ始めました。10年間、100兆円以上の緊急経済対策を行っても景気は良くならず、赤字財政と財政危機はサミット諸国中最悪になりました。90年代を通じて産業の「空洞化」が非常に深刻になり、失業者、失業率が史上最悪で高止まりし、長期的に見ると日本の経常収支の黒字幅が減ってきました。95年から公定歩合が0.5%になり、金融機能が完全に麻痺するという問題も出てきます。このように、90年代には、今までの日本経済とはかなり違う問題点がハッキリ出てきたのです。これが2つ目の特徴です。
 3つ目の特徴は、90年代を通じて、対米従属が一段と深刻になっています。95年以降、金融「ビッグバン」を強行し、金融再編成を梃子に産業再編を促進します。銀行に税金を投入して金融再編を強行します。このような日本経済・金融の対米従属の強行的推進は、実は日米軍事同盟の質的変化を反映しているのです。96年、「日米安保共同宣言」で、日米軍事同盟の「地球的規模での協力」を宣言し、97年には新ガイドライン、99年には周辺事態法、ついには、有事法制、つまり戦争法制を作り日本を「戦争をする国」へ変えていこうとしています。こういう動きと金融・産業再編はバラバラにではなく、一体的に進められているのです。
 日米軍事同盟新再編の下での政治経済問題について総括的指針を出した。それは、2000年10月に出されたいわゆる「アーミテージ報告」(アメリカ国防大学国家戦略研究所特別報告書『米国と日本―成熟したパートナーシップに向けて』)です。93年にクリントンは、「新太平洋共同宣言」で、「これからの相手は中国、アジアであり、同時に「安全保障と経済は一体化させる」と言う方針を出します。その方針をさらに具体化したのが95年です。95年は、アメリカの「円高=ドル安」政策で1ドル79円になりました。日本の財界は、アメリカの圧力に震え上がったのです。アメリカの円高圧力の結果、日米自動車合意もでき、日本財界は完全にお手上げしました。その結果、アメリカは安心して、ドル高戦略を取りました。クリントンの戦略は大いに成功したわけです。
 こうしたアメリカの圧力によって、金融、経済、軍事が一体化する、日米運命共同体の実態が作られてきました。こういう背景の中で、アメリカの意向に沿った金融再編を強行する。メガバンクもコマーシャルバンク型ではない、インベストメントタイプに再編する。その延長線上で、地銀もメガバンクの系列化に再編・統廃合していくと言うのが、小泉・竹中プランです。アメリカ言いなりに強行されている日本の経済、金融、軍事再編の総仕上げが意味するものは、イラク侵略戦争への参加でも分かるように、結局日本を平和国家から戦争国家にするために、憲法を改悪する。これが小泉「構造改革」の大きな狙いです。憲法改悪の下で日米の資本もより緊密化する。日米の軍需産業もより一体化する。
 日本の金融システムもそうです。これまでの間接金融中心から、直接金融の方向に持って行く。政治的には保守的な2大政党作りを推進する。労働組合もアメリカタイプへと、完全に骨抜きにし、弱体化させる。最近『虚妄の成果主義』という面白い本も出ていますが、成果主義賃金を導入する。教育も憲法とセットで教育基本法を骨抜きにし、国家や財界による管理支配体制を強化する。大学も第三者評価を導入して財界の支配下に置く。これはまさに日米運命共同体の姿です。
 そういった大きな構造的な変化の下で、銀行再編も強行され、足銀国有化の問題が出てきているのです。そして、足銀国有化では分からない点が非常に多いのです。栃木県の経済同友会も「破綻の経緯をちゃんと説明してくれ」という要望書を、3月25日に出しています。県民、国民にキチンと情報公開すべきです。それから、地方自治体としてはどういう責任を取るのか。こういうふうな問題も、是非とも考えてもらいたいと思います。
 終わりに今後、どのように対応すべきかという問題は、むしろ白紙にしておいて、皆さんとの討論の中で一緒に考えたいと思います。(拍手)
 司会:ありがとうございました。次に、静岡大学の鳥畑さんに報告をお願いします。

竹中プランによる金融再編
 ―地域金融機関を中心に―

鳥畑 与一

 こういう報告の機会を与えていただきましてありがとうございました。

はじめに─足利銀行破綻における問題の所在
 4月3日に栃木県の日本共産党県委員会が主催した、足利銀問題のシンポジウムがありました。私は、その時、金融版の「白い巨塔」に例えて話を始めました。つまり、大病を患って、瀕死の状態から何とか立ち直って回復に向かっていた銀行が、突然死したのです。主治医と担当医、財前と柳沢との関係のように、金融庁と監査法人がお互い責任転嫁をやっているが、問題は治療方針が正しかったのか?治療ミスがなかったのか?実験台にされたのではないのか?足利銀破綻の真相は、金融行政の問題を突き詰めていかないと見えてこないという話をしました。
 足利銀の破綻までの経緯とか経営状態の推移については、雑誌『経済』5月号に書きましたので、省略させていただきます。

1.足利銀行破綻の本質は何か
 足利銀行は、03年3月期決算で自己資本比率4.5%を維持し、健全行と会計監査を経て認定されていたのに、なぜわずか半年で自己資本比率をマイナス3.7%にまで下げ、1024億円の債務超過に陥り、破綻処理に追い込まれたのでしょうか。3月期決算に対する金融検査では、約233億円の債務超過と判定したにも関わらず、繰り延べ税金資産の計上が若干減額して認められました。ところが半年後の中間決算では、かろうじて自己資本比率0.9%を維持していたにも関わらず、監査法人が繰り延べ税金資産1388億円を全面否認し、経営破綻に追い込まれます。
 足利銀が今年2月に発表した「『経営に関する計画』について」の中で「なぜ足利銀は破綻したのか」についての自己総括を行っています。社団法人栃木県経済同友会が3月に出した「緊急提言書」の中でも「なぜ足利銀は破綻したのか」についての分析をしています。
 足銀の経営破綻の原因については、いろいろ言われています。バブル期に無茶苦茶に経営を拡大した報いだとか、膨大な不良債権処理を先送りにしてきた、栃木県内の企業ともたれ合いをやってきた結果だとかです。
 しかし、足銀破綻の真相はハッキリしない部分が多いのです。そこで、論点を検討して見る必要があります。
 第1点は、バブル期の放漫経営のツケとしての過大な不良債権が、隠し切れなくなって破綻したのかという問題です。足銀は、96年3月期に初めて赤字決算を計上し、99年に2000億円を超える赤字決算に追い込まれ、99年に公的資金を導入します。99年3月期に、初めて1489億円の繰り延べ税金資産の計上が認められたおかげで、巨額の不良債権処理にも関わらず、当時で4.29%の自己資本比率を達成できたのです。自己資本比率が4%を超えているということで、公的資金の導入が認められます。その前提として、地元の支援で428億円の増資を得たおかげで、00年3月期には10.1%の自己資本比率まで改善し、その後2期連続黒字決算になります。その意味で私は、「失われた10年間」、バブルの負の遺産に破綻の原因のすべてを求めるのは間違いだと思います。少なくとも公的資金の導入によって、バブルの負の遺産の処理には、一旦区切りをつけたと考えています。
 では、03年3月期決算で自己資本比率4.5%を維持していたのに、なぜわずか半年後に自己資本比率がマイナス3.7%も一気に落ち込んだのかでしょうか。もう少し遡って、01年3月期に自己資本比率9.9%を維持していたのに、わずか2年後には自己資本比率4.5%にまで経営を悪化させたのでしょうか。その点に注目したいと思います。実は02年と03年の2年間に、株価下落の減損処理で、2期合計で1672億円の損失処理を行っています。
 足銀の「『経営に関する計画』について」も、第2点目で、株式損失処理が巨額であったことを指摘しています。この2年間の業務純益は841億円、不良債権処理額は992億円です。また、当時の繰り延べ税金資産1388億円を上回る大きな金額です。では、この株価の処理損が足銀の自己資本比率低下の説明になるのでしょうか。しかし、なぜ株価下落に対して、こういう脆弱な経営体質になったのでしょうか。
 「株式等売却益」を見ますと、95年3月期から01年3月期まで、株価の売却益が2206億円あります。この間の業務純益が2944億円で、不良債権処理額が7549億円です。つまり、巨額の不良債権処理で業務純益を大きく上回る処理を行うために、足銀は一生懸命株の売却益で不良債権処理の原資捻出を繰り返してきたわけです。
 こうしたことが、小泉内閣後の株価下落が、足銀の経営を直撃する構造的要因となったと思います。ですから、業務純益を大きく上回る不良債権処理額の方に問題があると、私は理解すべきだと考えます。
 3点目に、繰り延べ税金資産に過度に依存した自己資本の脆弱性が問題であったのかという点を検討してみます。確かに最終局面で繰り延べ税金資産の計上の否定が、足銀を経営破綻に追い込んだのは事実です。しかし、そこに本質的な問題があるのでしょうか。そのことを検証する場合、次の3点を考える必要です。つまり、99年3月期には繰り延べ税金資産1489億円を計上することで、足銀は破綻を免れています。その足銀が03年9月期には、繰り延べ税金資産の計上拒否で破綻に追い込まれるという、金融行政の矛盾した流れです。
 これは、竹中プランによる政策転換が作り出した、政策転換リスクによって経営破綻に追い込まれたことを意味します。2階に上げられて梯子を外された上に、途中でゲームのルールを変えられ破綻に追い込まれたのです。金融検査で債務超過とされた03年3月期決算で繰り延べ税金資産計上を認め、企業の継続性に疑問符を提示しなかった監査法人が、債務超過ではない03年9月期決算で企業の継続性に疑問符を提示し、繰り延べ税金資産の計上を拒否した矛盾がどうして生じるのかと言えば、監査法人の監査は極めて形骸化していて、金融庁の金融検査、資産評価が絶対的なものとして前提され、銀行の自己査定、監査法人の査定はそれに追随するものでしかないというわけです。
 では、金融検査は正しく、一貫性を持っているかと言えば、極めて行き当たりばったりで、段階的に厳しくなる。継続性がない。そういった意味では、金融検査リスクによる経営破綻が大きな問題と言わなければなりません。
 では、なぜ繰り延べ税金資産がこんなに大きくなるのでしょうか。足銀の場合はコアとなる自己資本に対して186%です。これは地方銀行の平均27%を大きく上回る水準です。ここに足銀の経営内容の悪さがあったという話もあるわけですが、この問題を考えるとき、99年3月期から繰り延べ税金資産の計上を認め、不良債権処理を加速化させた行政の問題があります。金融庁の不良債権処理加速化政策と財務省の税政政策とのすり合わせができていなかった。このために、企業会計と税務会計との間のずれのために、日本の場合、繰り延べ税金資産が肥大化する構造になっていた。こうした金融行政の責任を市場規律という名目で監査法人の自立的判断に転嫁するというのは極めて無責任ですし、金融システムの安定性に対する金融当局の責任放棄になると思います。
 この意味では、足銀破綻の真の原因は、繰り延べ税金資産を計上する、しないかの問題ではなくて、それは巨額の不良債権処理に伴う付随的な問題で、真の問題は不良債権処理加速化政策にあると思います。
 4点目は、不良債権処理の先送りが足銀を経営破綻に導いたのかという問題です。確かに、93年3月期から03年3月期までに、1兆96億円の不良債権処理をやったにも関わらず、不良債権残高が減少しない。他の地銀に比べても経営を圧迫しているのは事実です。しかし、これは甘い自己査定と金融検査の結果なのでしょうか。資料を見てください。確かに不良債権残高は減っていません。なぜ減らないのか。01年に小泉内閣が誕生し、不良債権処理加速化政策を取る中で、金融検査の厳格化が導入されました。とりわけ貸出条件緩和先債権に対する厳格化が推し進められた。その直後に足銀に対して、金融検査マニュアルができてから2回目の金融検査が入りました。それに基づいて足銀は、自己査定基準を抜本的に保守化します。
 貸出条件緩和先債権を厳しく見る結果、足銀の「アニュアルレポート」によると4000億円ぐらいの不良債権が8000億円になるくらい厳しく評価したと書いてあります。どこが増えたかと言えば、要管理先債券の貸出条件緩和先、経営支援先です。金利の減免をし、貸し出し期限を延ばした企業、いわば不況で苦しんで、何とかそこで乗り越えようとしている企業を軒並み「お宅は不良債権ですよ」と言って、一気に不良債権に追い込むような自己査定をやったわけです。
 表11の「不良債権の増減要因」を金融庁が01年から出しています。これから分かるように、不良債権を処理しても処理しても、後から後から新規の不良債権が出てくるのです。なぜ出てくるかと言えば、金融検査の厳格化が第一の大きな要因です。それから不況による業況悪化です。
 03年3月で見ると、不良資産のランクが上がって改善したのは3.8兆円に過ぎません。逆に悪化してランクが下がった不良債権は13.9兆円です。金融検査の厳格化と不況の進行で、不良債権がどんどん出てくる構造が見て取れます。足銀も公的資金を入れて、経営健全化計画を金融庁に出さなければならない。小泉内閣の不良債権処理加速化政策の優等生として、それを極めて忠実に実行しなければならない立場に立たされたのです。
 01年に「足銀改造計画・プロジェクトA」がスタートします。この計画で01年度、02年度で一気に不良債権処理を進める。リストラを徹底して進める。収益力を強化する。V字回復を達成するということを挙げています。そういう方針に従って、足銀は一生懸命不良債権処理に邁進します。とりわけ直接償却を中心とした不良債権処理に取り組みます。資料に「足利銀の不良債権直接償却の推移」とありますが、98年3月期までは大体バブルの負の遺産だと思いますが、公的資金を入れた99年3月期と00年3月期は直接償却、貸出金償却は極めて少ない。ところが01年3月期以降、グーンと増えてきます。これは栃木県経済に対して、非常に大きなショックを与えました。
 表7に「栃木県経済の状態」を載せていますが、県内の企業倒産、負債額がグーンと増えています。県のGDP、消費支出、勤労者の支出や雇用水準が全国平均以上にグーンと落ち込む中で、足銀の経営基盤が一気に弱体化していく。経営が弱体化する中で、足銀の中小企業向けの貸出比率は増えています。ここに私は、足銀が直面しているジレンマ、矛盾があったと思います。
 金融庁に忠実に不良債権処理をやりたいけれども、栃木県県内における足銀の地位が高すぎる。貸出で言うと40%を超える比率です。新生銀のように不良債権を切り捨ててパッと逃げられないような構造ですから、足銀自身がどんどん経営難に追い込まれる中で、最終的には、厳しい金融検査によって、03年9月期に950億円の不良債権の追加処理に追い込まれるわけです。
 では、リスクに見合った収益を確保するビジネスモデルの転換に成功しなかった経営陣が悪いのでしょうか。取引先とのもたれ合いによって、信用コストに見合った収益力を確保できなかった経営陣が悪かったのでしょうか。経営健全化計画も度々見直されていますが、「足銀改造計画・プロジェクトA」はなぜ成功しなかったのでしょうか。この場合、米国流の投資銀行のビジネスモデルを機械的に地方銀行に当てはめることは誤りだと思います。新生銀のようなやり方を、足銀は取れなかったのです。

2.日本の金融危機と足銀の破綻
 地場産業、地域の中小企業を経営基盤とする足銀としては、今の金融行政の枠組は、足銀が切り捨てることのできない部分を否定する中身だったと考えます。では、足銀を破綻に追い込んだ金融行政のどこに問題があるのでしょうか。この問題は、日本の金融危機、とりわけ地域金融機関の危機はバブル発生と崩壊後のみならず、90年代後半以降の「構造改革」路線の下での金融再編成の中で見る必要があると思います。
 端的に言えば、日本型金融システムをアメリカ型の直接金融システムに変えるという考え方です。日本はキャッチアップ時代からフロントランナー時代に入ったのだから、従来型の時代遅れの間接金融からフロントランナー型の直接金融中心のアメリカ型の金融システムに変えるべきである。その際、リスク管理が大切である。バンク・ベースド・フィナンシャルシステムからマーケット・ベースド・フィナンシャルシステムへの「構造改革」推進という金融政策の大きな流れがあるのです。
 こうした流れの中で金融自由化路線があり、日米円ドル委員会後の自由化があり、日本版金融ビッグバンがあるのです。そういう金融「構造改革」を一気に進めるために公的資金をドンドン入れて不良債権を処理し、それを契機に金融再編を進める。行政的にアメリカ型の金融システムへの転換を一気に進めるのが竹中プランの本質です。
 この推進力は、グローバル市場で競争する独占的な大企業、大銀行の経済的要求です。このような「構造改革」を進める中で、市場中心の金融システムを中心とした監督体制の「構造改革」も同時に進めています。旧大蔵省の護送船団金融行政を否定し、市場原理に基づく金融行政へ転換し、金融監督庁の創設、自己資本規制に基づく早期是正措置、ペイオフの実施などを矢継ぎ早に打ち出していますが、しかし自己資本規制やペイオフの実施など、市場原理に基づく金融行政がうまく機能するかというと、機能しないのです。
 機能しないにも関わらずその政策を推し進めるのは、一体誰の要求なのでしょうか。これは投機的なマネーゲームを繰り返す国際的な機関投資家を中心とする要求です。この投資家の利益になる金融インフラの再構築の要求なのです。機関投資家の資産残高が、世界で35兆ドル、その6割以上がアメリカの機関投資家です。投資家本位とか市場の声といった場合、その評価基準はアメリカの投資家の論理になるのです。先ほど小泉内閣の政策が破綻しているというお話がありましたが、それは誰にとって破綻しているのかと言えば、日本国民から見れば破綻しているということで、その政策を推進している側から見れば破綻でもなんでもなく、うまくいっていると言うことです。彼らからすれば、日本国民や日本経済が犠牲になるなどということはどうでもいいのです。新生銀行のように大儲けすれば、投資家の論理から見れば成功以外の何物でもないのです。
 彼らの論理は、国境を越えた個別のマネーゲームの失敗が、金融システム全体の破綻に追い込まないような枠組み作りを、金融行政はやってくれればいいというのです。アメリカ中心の金融のグローバリゼーションを進めれば、最初は痛みが伴うけどそのうち良くなると言うのです。アメリカを中心とするグローバルな金融世界は、アメリカの投資銀行を頂点として作られています。つまり、アメリカの金融機関のリスクの受け皿の役割を、日本の金融機関に担わせようとしているのです。
 レジメに、「日米経済体制の非対称性・従属性」と書きましたが、アメリカ流の金融システムがアメリカでうまくいっているから、日本が真似してうまくいくかと言えば、そうはなりません。逆に、ストレートに日本を犠牲にするような仕組みの中に入っていくことになるのです。
 こういう投資家本位のアメリカ流の金融システムの世界では、いろんな価値観がひっくり返ってしまいます。例えば、貸出条件緩和先債権が不良債権になってしまうのです。なぜでしょうか。間接金融、リレーションシップ・バンキング中心の世界では、景気循環に伴って柔軟に貸出条件を緩和できるのは、リレーションシップ・バンキングの優れた点です。その事によって景気変動のショックを和らげる事ができる。企業の収益力に見合った金利設定ができるわけです。ところが直接金融の世界では、それは損失の先送りになってしまう。リスクに見合ったリターン確保、リスクが増大したらその分金利を上乗せするのが当たり前ということになります。そうすると、不況期で収益力が低下すればするほど高い金利、換言すれば一番弱った時に一番重い荷物を背負わせる仕組みが合理的な世界になってしまうのです。このようにアメリカ流の金融の世界では、それまで日本経済の中であたりまえな事が全部非合理である逆さまの世界になってしまうのです。
 最後に、アメリカ流の金融システムは本当に正しいのかと言うことに触れたいと思います。ジョセフ・スティグリッツの最新作『人間が幸福になる経済とは何か』が出版されましたが、その中で「金融の支配が世界を不幸にした」という言い方をしています。アメリカ流の直接金融の支配、市場原理に基づく企業評価、リスク評価は欠陥が極めて大きいということが、近年のいろいろな研究業績で明らかにされてきました。それは、極めて短期的な、現瞬間の評価ですから、長い目で見ると景気循環の変動に応じた長期的な正確なリスク評価がでません。市場によるリスク評価は、数字にできることしか評価できないのです。
 本当の意味での企業評価は、リレーションシップ・バンキングの中で、企業が長い取引の中でのみ提供するような情報も含めて評価することが必要です。そういった部分は市場では評価できません。情報生産における市場の限界を克服する上で、銀行のリレーションシップ・バンキングによる情報生産は極めて優れていると考えます。アメリカFRBのある理事のレポートで、そういう市場の限界を克服する現代の金融技術の最も優れたひとつがリレーションシップ・バンキングだと評価しています。そうした意味で、アメリカ流の金融システム、監督手法を機械的に日本に持ち込むのは、一体それが誰の利益になるのか、足銀破綻問題の本質をしっかりと解明し、小泉・竹中金融行政の暴走をどのようにして止めるかを議論することがきわめて重要であると考えます。(拍手)
司会:続いて地銀連の谷委員長にご報告いただきたいと思います。

小泉・竹中「金融改革」と地方銀行再編

谷 一明

はじめに
 私は、銀行で働きだして40年になりますが、いまぐらい政府の金融政策に翻弄されている時代はなかったのではないかと思っています。いま地域金融機関はリレバンの集中改善に取り組まされています。その矢先に、今国会で「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」、いわゆる特措法が出されて、新たな不安を与えています。金融庁が新たな政策を打ち出すたびに、地域の金融機関だけでなく、すべての金融機関が振り回されていると思います。翻弄されているのは銀行経営者だけではなく、金融機関の利用者である預金者や融資先、それから解雇・リストラで犠牲になる従業員など、非常に多くの方々です。
 私たちが働いている地銀はいま64行あります。去年の10月7日、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムを出しなさいと言われ、626の地域金融機関が計画書を金融庁に出しました。金融庁が発表したリレバンの集計には、「埼玉りそな」が入っていますから、地銀65とカウントされ、第二地銀が51行、信金が321、信組が189です。
 わが国の大手銀行は5つのグループに集約されましたが、地銀や第二地銀も、今年の10月に「西日本シティ」が設立されるとか、最近の「関東つくば」、「九州しんわホールディングス」など統合・合併が進んでいます。信用金庫や信用組合も、98年の早期是正措置の導入を境に、非常に多くの整理淘汰がされました。資料を見ていただくとわかるのですが、98年3月と03年3月を比較すると、都市銀行は2減って7行、信託銀行は1増えて8行、長期信用銀行は1減って2行、地方銀行は増減なしで64行、第二地銀は12減って51行、信用金庫は80減って321行、信用金庫は162減って189行、つまり、898の金融機関が642に減りました。256行が再編淘汰されました。参考に「業態別の人員推移」を見ると、都市銀行は839店舗減、2万8327人減、地銀は329店舗減、2万2657人減、第二地銀は1010店舗減、2万4561人減となっています。数字は正規労働者の数ですから、パートさんや嘱託、派遣社員の方々を含めると、膨大な数の金融労働者が整理されているのです。私も地銀に働いておりますのでよくわかるのですが、金融労働者は、凄まじい「合理化」の中で働いている現状があります。

1.金融混乱の発端はバブル崩壊
 私たち金融の労働組合は、金融施策や金融の状況を議論し、その時々に関係省庁や各協会に必要な交渉や要請を行ってきました。金融機関の破綻や合併などの混乱を見る場合、少し歴史的に見る必要があるように思います。銀行にとって金利問題は非常に重要なファクターですが、85年の「プラザ合意」からゼロ金利に至る日本の金融政策の経緯を見ても、日本の金融政策が実にアメリカ言いなりに進められてきたこと、そのことが日本の経済と銀行を危なくしてきました。
 85年、ニューヨークのプラザホテルで開かれた5カ国蔵相会議で協調利下げが合意され極端な低金利施策が始まりました。そして、公定歩合は、86年1月30日に4.5になり、86年3月10日に4.05、4月21日に3.5、11月1日に3.0、2月23日に2.5と、わずか1年間に4回下がります。これが「プラザ合意」の結果です。ここからバブルが膨らみ始めるわけです。土地の価格で言えば、87年に2倍に、88年には3倍になり、91年には、ついに3.5倍になってしまいました。これと連動して、国内銀行総貸出額は186兆円から443兆円へと、2.4倍に膨らみました。これが91年初頭に大暴落し、バブルが崩壊します。
 多額の不良債権を抱えた銀行は、不良債権の処理を保有有価証券の益出しで繕ってきました。だから、ほとんどの銀行は、もう益出しするものがなくなりました。その結果、銀行の経営基盤が脆弱になっているというのは、鳥畑先生のご指摘の通りです。
 その後10年以上不況が続いているわけです。93年10月、99年1月、02年1月の三つの谷を越えながら、全体として不況は進行し新たな不良債権にみまわれながら現在を迎えているのです。私たちが、不良債権処理の問題で最初に大議論をしたのは96年の住専処理です。その後、山一証券が潰れ、北海道拓殖銀行が潰れるという流れの中で、金融庁(当時は大蔵省)が金融関連法をドンドン出してきました。
 96年11月、金融ビッグバンの前兆になる「わが国金融システムの改革」を橋本首相が出し、98年10月、「金融再生法」が施行され、11月に「金融早期健全化法」が施行されます。98年3月から00年10月にかけて、いわゆる「金融ビッグバン関連4法」が施行され、12月1日に関連法の整備に関する法律が施行されました。こういう流れの中で、01年4月、小泉政権が「緊急経済対策」、いわゆる不良債権の最終処理に向けたスケジュールを明示します。この時期から大変なことが起こってくるのです。
 皆さんも記憶に新しいと思いますが、01年6月に出された「骨太の方針」がその後の日本経済のシナリオを決める大きな入り口になったと、私は思っています。「骨太の方針」の1章に「構造改革と経済の活性化」というのがあり、その中に日本経済再生のシナリオとして「技術革新と創造的破壊を通して、効率性の低い部門から、効率性や社会ニーズの高い成長部門へ人と資本を移動することにより経済成長を生み出す」と書いてあります。いわゆる小泉路線・竹中プランと言われる部分です。それに基づいて、不良債権を2〜3年で処理をする指示を出したことが、今日の金融機関を金融庁の強い監視下に置くことになったと思います。

2.金融マニュアルと金融関連法に関して
 次に、私たち銀行で仕事をするものにとって、「金融検査マニュアル」が仕事のベースになるのですが、これの改定に関して少し見ておきたいと思います。私たちは、金融検査のやり方が、都市銀行など主要行と地域金融機関が同じというのはおかしいと、再三、金融庁や地方の財務事務所に申し入れを行ってきました。その中で、02年4月、「金融検査マニュアル別冊・中小企業編」が公表されました。しかし、3ヵ月後の7月に、「地域金融機関を中心とした合併を促進する施策」が発表されました。今年2月に「金融検査マニュアル別冊・中小企業編」の改定がされました。そして、今国会に「金融機関の機能強化のための特別措置に関する法案」が、いま上程されています。いつも飴と鞭がセットで出されているように見えます。
 今回の特措法案のフロー図に次のようになことが書かれています。「デフレの長期化で地域経済の活性化が重要であるが、貸出債権の不良債権化が起きるから、金融機関は企業再生や不良債権問題への対応、リスク対応のため、体力を高める必要があるので、国が金融機関に資本を出してやるから、3月までに手を上げなさい」と言うのです。この枠は、平成16年度は2兆円を見ています。
 このことが国会で議論されている矢先に『週刊文春』に「危ない金融機関の一覧表」が報道されました。12の銀行、49の信金、29の信組です。
 2兆円を投入する金融機関のリストが、週刊誌に流れたということで、新たな不安と動揺が起こっています。はじめに申し上げたように、まさに金融庁の施策によって日本の金融機関は翻弄されているのです。本当に、こういうことは許すことができません。こういうことをやられては、金融機関は、まともな融資ができません。地銀連、銀行労連、全信労の金融三単産は先日も、金融庁に申し入れをしました。

3.地域金融機関の役割と金融施策
 私たちは、地域金融機関の役割を考えると、今ほど地域経済との関係で危機的状況にある時はないと痛感しています。こうした時期に、金融労働組合がどういう役割を果たさなければならないのか、そのことが社会的にも求められていると考えています。
 金融三単産が先の金融庁申し入れにあたって一致した見解から述べますと、この流れの背景に来年4月のペイオフ全面解禁があると思います。そういう意味では、地域金融機関の合併・再編が、経営効率を確保していく上で、ある一定以上の規模が要求されているという面もあるかも知れません。しかし、地域金融機関にとっての生命線は、地元経済、地域企業、地域住民とどのように密着した、役に立つ金融経営を展開していくかと言うことが決定的であって、その面が失われると地域金融機関は存立基盤そのものを失うことになるのです。地域金融機関の地域密着の面が失われると、経営がダメになると言う見解は、各界からも出されています。
 現に、合併した地域金融機関は、合併効果を即に出すため、人員削減、賃下げ、店舗の統廃合などリストラをドンドンやります。こういうことで地域の金融機関が地域に貢献できているのかと言えば、まったく逆だと思います。例えば、自己資本比率を高めることに主眼を置きますと、利益は上げるが、苦労して奮闘している地域企業には金を貸さない、貸し剥がしをする経営となり、地域経済・経営にとっては逆行する流れになります。
 昨年11月に栃木県の足利銀行が、りそな銀行に続いて一時国有化され、全国の地方銀行に大きな衝撃を与えました。足銀は再建を期して、地元の企業や自治体、個人から、727億円もの資金協力を受け、再建途上にありました。地銀連は、12月12日地銀協と懇談をしたのですが、同協会機関誌の8月号に、足銀の日向野頭取が「やっと先が見えてきた」と書いています。そういう矢先の9月からの金融庁検査で潰されたわけです。鳥畑先生が狙い撃ちされたと言われましたが、それが足銀破綻の実態だと思います。
 現時点では、セーフティネットの効果もあって、地域経済に対する特別な混乱は起きていいないと思います。しかし、6月の株主総会が終わり、不良債権処理が本格的に動き出した時には大変な状態になると思います。足銀の再建計画の中で出されているのは、りそな方式の賃金30%削減と人員削減、リストラです。従業員の生活権は侵害されています。足銀は優先株の公募を2回やり、行員もかなり持たされています。保有株が無価値になり、行員さんはコツコツと貯めていたお金で足銀を救うために買った株がゼロ円になってしまったわけです。最近では、現地の株主さん達の動きも色々出てきていることが報じられています。
 足銀の国有化、破綻のさせ方は、到底認めることはできません。政府の金融施策が本当にこれで良いのかという問い掛けを、国民的な規模で行う必要があると思います。
 もともと地域金融機関は、地域経済と深く結びついてしか経営を行えないのです。いま金融庁は、一生懸命リレバンと言っていますが、地域金融機関の労働者からすれば、リレーションシップバンキングというのは今更という施策です。地域金融機関に働く者は、それで仕事をしてきました。金融検査を受ける場合、債権の評価をどうするかが問題になります。企業の健全性は、キャッシュフロー見るだけでは分かりません。お客さんが、借りた金をどのように返すかと言うことでは、私たちはそこの事業所を、十分知っているのです。だから、この企業の債権は返済してもらえるという評価をするのですが、検査に来た人は、不良債権であるから処理をしろと言うわけです。私たちはリレバンで仕事をしているのだけれど、検査に来る人にはそういう思想はないのでマニュアル通り検査をする。ここに大きな落差が出てくるのです。こういう中で、結果的に貸し渋りとか貸し剥がしの原因になるような、自己資本比率を中心とした経営の流れが生まれてきていると思います。
 2つ目に、この金融庁の検査マニュアルの問題点です。マニュアルの「中小企業編」には、中小企業にとってマイナスにならないことも書いてあります。ところが足銀で起こったことは、収益還元法による担保評価というまったく違う切り口で検査が行われ足銀の評価と大きな乖離がでました。この点からも、地域経済の実情にあったマニュアル作りが必要だと私は思います。
 3つ目に、これも金融庁への申し入れの項目の中にもあるのですが、債務者基準の区分について中小企業を育成する観点に立って、抜本的に見直す必要があると思います。それから、金融検査にあたっては、担保評価や会計基準などに一貫性を持たせて欲しい。鳥畑先生も基準が「くるくる変わるから振り回される」と話されましたが、まさにその通りです。

4.地域経済の再生に関して
 最後に、これから先の話になりますが、実質国有化される銀行が生まれて、足銀はその一つですが、将来の営業譲渡先として、地域経済に責任を持つ金融機関として、外資系ファンドなどには売るなということを、私たち地銀に働く労働者としては、大いに声を上げたいと思っています。金融庁にもそう言う申し入れをしております。会場で配りました下野新聞のコピーは、温泉特化のファンドが設立されたという記事ですが、よくよく読んでみると、なかなか微妙な内容です。ホテル関係の資金支援をして、業務支援会社が経営を管理するということになりますと、設立された業務支援会社はホテルを乗っ取るような中身になるのではないかと思われます。いずれにしても、足銀の破綻を契機として、地方金融機関と地域経済との関係を、住民の目線で掘り下げていく上でも、足銀と地域経済の関連を十分注意していく必要があると思います。
 約束の時間になりましたが、栃木の現地の問題に触れたいと思います。私も栃木に先生方と一緒にうかがって、現地の方々といろんな話をしました。地銀連は栃木県労連の方々とも協力して、金融相談窓口活動を3月から6月まで行います。その意味では、運動は緒についたばかりです。現地の意向を大いに吸収しながら、足銀を潰す方法に我々は異議がある。「こんな潰し方がある」ということを、現地の皆さんと一緒になって、全国へ訴えて行きたいと思います。
 2つ目は、金融庁から送り込まれた池田頭取が、本当に地域経済のためにやっていくと再建計画に書いてあるわけですから、本気でそれに取り組んでいただく。これは、足銀が今まで県内の4割以上のお客さんに融資をしてきた責任ですし、地域経済をキチッと守るという立場を持たせることが大事だと思います。足銀の国有化が、りそなと違う形でやられたことも、キチンと見ておく必要があると思います。
 皆さんのご意見も受け止め、地域金融機関が地域再生に密接に関わって行くためにどのような役割を果たすべきかが、私のテーマですが、まだそこまで辿りついていませんので、大いに議論しなければならないと思います。(拍手)

質疑応答


 司会:質疑応答に入ります。ご報告いただいた3人の方に対して、ご意見、ご質問等出してください。
 桜田:阪南大学の桜田です。鳥畑さんに質問です。不良債権の直接償却で、00年3月期が7億円、01年3月期が369億円です。01年3月期の369億円は、部分直接償却を直接償却にカウントしているのではないですか。
 鳥畑:貸出金償却の項目で、決算の数字では部分直接償却についての言及はありません。
 大木:谷さんの報告で、各銀行の増減が、地銀だけはア0の増減なっています。その理由を説明してください。
 谷:地銀の場合、地方自治体などへの融資が8.9から10.0に増えています。都市銀行の場合は1.8から1.7に減っています。第二地銀の場合は3.2から4.6に増えています。これは、地域の金融機関に対する依存度が非常に高く、地域金融機関が公共性を持っているということが一つあるのではないでしょうか。もう一つは、地銀の経営基盤が一定程度安定していると言えます。第1回目の統合が昭和初期に一度され、1県に多いところで3行ぐらいです。少ない県は地銀が1行、第二地銀が1行です。
 地域金融機関で働いて思うのですが、地銀はその地位から逃げられない仕組みが非常にきついのです。だから、経営者は慎重な経営をしているという側面もあると思います。
 すべてがそうとは言い切れませんが、バブルの時も、慎重な態度を取った金融機関が多かったと思います。地銀の経営者の中には、地域金融機関という思想があるというのです。そういうことに極端に資金を流すことに対する抵抗感があり、躊躇すると言います。それも地銀がバブルに巻き込まれなかった背景の一つにあると思います。地域によって違うと思いますが、地場産業との取引が厚く、不動産融資に不得手という部分が結構あるんです。その辺が総合的に、現状64行がずっと保たれている背景ではないかと思います。
 吉川:千葉商科大学の吉川です。鳥畑さんにお教え願いたいのですが、日本の金融システムがアメリカ型に再編成されていくと言うご指摘は、正しいと思いますが、「米国中心のグローバル経済における日米経済関係の非対称性(従属性)」という点で、最近のアメリカの通貨戦略に組み込まれた円相場の変動と日本の為替介入との関連をご説明願います。
 鳥畑:金融ビッグバン以降、日系金融機関は、投資銀行業務における「競争格差」によって、米系金融機関のリスクの受け皿となっています。80年代、日本の銀行は資産で言えば世界に冠たる地位を得ました。それは競争力が強いから資産規模が大きくなったのではないのです。投資銀行業務の世界では、競争力がないから資産規模が膨れ上がるという関係です。アメリカの銀行は資産をオフバランス化して、BIS規制の関係で自己資産を圧縮していく。資産売却の受け皿として日系金融機関を位置付ける。国際金融市場で一番儲かる部分はアメリカの投資銀行が持って行って、資産=信用リスクを引き受けるのは日本、要するに競争力がないからリスクの多い部分だけを抱え込むということです。デリバティブ取引の世界も同じだと思います。
 通貨戦略の場合も、プラザ合意が典型的ですが、アメリカの高金利・ドル高戦略の限界をアメリカ本位で解決するためのソフトランディングとしてドル安に持っていく受け皿作りです。その政策の中でドル資産が下落する。当時、米国国際経済研究所のマリスは、「受け皿を提供できる通貨と市場は、日本とドイツしかない」と著書の中で書いています。その流れの中で円が国際通貨化され、マネーゲームの有力な道具になっていく中で、日本の円相場が非常に乱高下する。不安定化し、投機の対象になることによって、地場産業が衰退するという問題も含めて、色々な影響が日本経済を直撃するのです。結論的に言えば、アメリカを中心としたグローバルな世界の中で、アメリカの真似をしただけでは、2匹目のドジョウはいないということです。(笑)
 山田:地銀連の山田です。今宮先生にお尋ねしたいのですが、足銀破綻後の動向の中で、栃木県内全体の動きが鈍いよと感じられたという話でしたが、例えばどのようであれば理想で、鈍いと思わないのでしょうか。
 坂本:地銀連の坂本です。私も今宮先生と一緒に栃木県内を歩かせていただきました。栃木県内の反応をどう評価するかと言う点で、東京におられる先生方と、私達の違いはあるという感想を持っています。それは、どういうことかと言えば、金融労働者の運動が右傾化させられた歴史も反映して、全国的に非常に弱いということが一つあります。谷委員長が報告したように、96年から始まる金融ビッグバン以降の経過を見ても、例えば大蔵省が、鳥畑先生流に言えば「間違った方針」を出すと、1日でその方針は全国すべての金融機関に広がります。
 私は、96年から委員長やりまして、去年、谷委員長と交代しましたが、その間、地方金融機関の実態を無視した中央からの「通達行政」はおかしいと、大蔵省にも経営者にも問題点を指摘してきました。政府の間違った金融行政を跳ね返し、中小企業や地域経済の振興に役立つ金融政策を実現する上で、金融労働組合が色々な団体との協力・共同もまだまだ弱いと思います。栃木県の場合もそれが影響していると思います。
 それでも、県当局の担当者と私は2回懇談しましたが、最初の時と先生と一緒した時の対応は、かなり変わってきていました。4月3日、日本共産党が足銀破綻問題でシンポジウムを宇都宮で開きまして、私も鳥畑先生と参加し、発言もしましたが、参加されていた中小企業の社長さんが、「増資に協力した足銀の株が3千万程パーになり、嫌気がさして自民党をやめた」と言われていましたが、そういう点では、栃木も変わりつつあると思っています。今日こういう形で先生方も含めて議論する中身を、全国的に発信していくことは、労働運動を進める側から見て、非常に大切だと思います。これが、今宮先生の発言についての私の感想です。
 今宮:私は、727億円の増資に応えた人々の怒りが湧き上がり、それが一丸となって栃木県全体に広がっていくのではないかと、ある程度期待していたのです。ところが意外と県全体も平穏に見えますし、被害者の会やオンブズ栃木等の動きもバラバラのような感じがしました。足銀の労働組合の動き、県全体の組合の動き等、聞こえてきませんから、私は新聞を読みながら、そこら辺がどうなっているのかと、不満の感想をもっているのです。
 鳥畑:その点で、私も簡単に話します。4月3日栃木に行って、インターネットでも下野新聞等を見ている範囲での感想ですが、今は息を潜めて見つめている状態ではないかと思います。3月期決算の自己査定が終わり、この結果が6月くらいに揃います。それをめがけて、栃木県経済同友会が緊急提言を出して「とにかく無茶なことをやってくれるな」と言い、温泉であれば地域ごと救ってくれと言っているように、必死の働きかけをしている状況です。厳しい結果が出ると、皆が薄々気付きはじめているし、倒産も出始めています。出資がゼロになったことに対しては、もの凄く怒っていると思いますが、怒りのぶつけ先がわからない。金融庁の責任が問えない仕組みになっているのです。その怒りは屈折した表現となっていると思います。そうした中で、地元の公認会計士の方とお話する機会があったのですが、全国でこの部分に発言して文句を言っているのは栃木県の公認会計士だけです。日本公認会計士協会に対して質問状を送り、働きかけている結果、公認会計士協会も、調査をやり、レポート出すところまで動いているわけです。金融庁に対する運動はこれからではないでしょうか。
 今宮:それから、県庁での話でも出ましたが、栃木県のGDPは意外といいと言うことも影響していると思います。03年の税収の伸びは全国で2位ですから、県庁などでは安心感がある。1位が神奈川で、3位が大阪です。実態は、栃木に進出しているキャノン、ブリヂストン、日産等の大企業の業績と県内の中小企業、労働者、県民との間での二極化現象が金融の問題でも生まれているという点も注目しておく必要があります。
 桜田:鳥畑さんの言われたことは、ものすごく大事だと思います。不良債権が実際どうなっているのかは、ディスクロージャーでわからないんです。自己査定の定義と金融再生法の定義とリスク管理債権の定義が全部違いますから。だから、不良債権処理が足銀で進んだのか、進まなかったのかについて、手がかりはほとんどないのです。01年3月期の数字を取り上げて、貸出金償却ですか、それとも部分直接償却ですかと質問しました。鳥畑さんはこれは貸出金償却として計上されていると言われました。だからこの年にそれだけの金額を全部処分したんです。前年度に7億円という数字があるから、ここで一旦バブルの整理は終わった。そして、その次に新たに発生した部分の償却を進めてきたんだと言うお話でしたが、金融庁のルールブックから言いますと、実際の金額は金融庁と足銀の担当者しか解りません。
 もう一つは、金融庁の責任、金融庁が行った検査結果を検証する術がまったくないんです。唯一残されているのは、行政手続法における考え方しかないという意見を、私は持っています。少し意見的な質問で言うと、例えば金融行政は、全国一律でないといかんわけです。北海道についてはルールAで行きます。九州はルールBで行きます。東京はルールCで行きますと言う話は、通用しません。
 貸倒引当金の基準を一律に設定することはできないんです。これは、企業会計の専門家の常識です。ところが、金融庁は、99年1月、任意通達、後で告示と言っていますが、その中で破綻権利先債権は10%、要管理債券は15%を目安とするとしました。その後の、自己査定結果を見ると過剰償却に他ならなかった。貸倒引当金の基準を一律に設定できないにも関わらず、実際には目安しか言えないのに、それを金科玉条として基準のように指導する。ですから、金融行政の責任を追及する上で、こういう行政手続き上の問題をハッキリさせていかないと、金融行政の判断ミス、裁量権の逸脱が見えないと思います。私は、不動信金の裁判を通じて、そのことを日々感じているところです。
 金融検査マニュアルについても発言させてください。我々の場合もそうですが、栃木県の公認会計士協会が日本公認会計士協会に対してさまざまな疑問を提起する。あるいは金融庁に対してさまざまな意見を言う。そうすることによって、金融検査マニュアルは、そういう意見を全部取り入れた形で、改定が進んでいる側面があるんです。金融検査で金融庁がガッと締め上げる側面と、金融庁に対して異議を申し立てる、「やっぱおかしいじゃないか、間違っている」と言うことを通じて局面を少し少し打開して行く、この二面的を見ておく必要があると思います。

討 論


 司会:今宮さんの栃木県内の動きが少し鈍いのではないかという発言を契機に、どのように対応していくか言う議論に入っていっていますので、ご報告に対する質問は終わりにして、現状をどういう見るか、今後どう対応していくかに焦点を移しながら、話を深めていきたいと思います。
 金融庁の責任をどう追及するかの問題を巡ってご意見が出ているわけですが、この点で、実務に関わっておられる方のご意見をいただき、研究者サイドのところでも、こういう点をもっと突っ込んでいったらどうかと言うご意見を出してもらって、ご議論いただければと思います。
 大木:桜田さんが言われた「金融庁の行政手続き上の問題にしていくしか解決の方法はないのではないか」という点で、法制度的な条件はあるのですか。実際に訴訟を起こして一定の成果を上げた経験はありますか。
 桜田:今やりつつあるところです。不動信金の出資金返還訴訟の弁護団のお手伝いをしていて、どこで勝つのかというのが問題なんです。検査マニュアルにしても、償却の問題についても、行政庁の解釈で如何様にでもなるというのは、行政基準たりうるのかを焦点に、深めていくべきだと言うのが、今の議論の到達点です。実際裁判で今後どう言う展開になるかわ分かりませんが。
 大木:私がいつも不思議に思うのは、鳥畑さんや今宮さんに伺いたいのですが、日本の金融機関は、お上の行政指導に絶対的な服従をするのでしょうか。そうしたことは、法治国家でもなんでもないと思います。以前から監督機能に頭が上がらないなということがあったにしても、最近のそれは異常だと思います。今度の足銀を契機に、新しく、勝手に公的資金を注入できる体制を作ろうというのは、イラクの問題になぞらえて言えば、先制攻撃権を政府の側が一方的に確保するようなものでしょう。何の法的な担保もなしに、一方的に押し通してくということは、民主的な国家の政策でも何でもないと思います。そんなことが許されていいのか。どうして金融機関は黙っているのか不思議でなりません。そういう点はどうなんでしょうね。
 鳥畑:もともとは、銀行法には禁止規定がないんです。何々してはならないという条文は一切ない。だから銀行は、法律上ではやりたい放題だったんです。それを大蔵行政でがんじがらめにしてきたのです。だから、大蔵省に責任を問えば「それは銀行の責任だ」と言い、銀行に責任を問えば「それは大蔵省の責任だ」と言うのです。こういうもたれあいの関係が、昭和2年の銀行法の形成以来ずっと続いてきたわけです。
 生沢:協同金融研究会の生沢です。信用維持が目的であれば預金保険法102条が適用できるわけです。船橋信用金庫は地元の知事をはじめ市長等も、皆な残してくれと言ったにも関わらず、金融庁が「このままでは地域の信用が維持できない」と言って強制的に合併させたわけです。信用金庫法上は「合併は総会で決めなければならない」となっているにも関わらず、地裁の許可を取れば認められるという形で、法律の抜け道を用意しているのです。金融庁は、「信用維持」を金科玉条にしさえすれば、国民は黙っていると思っています。銀行の経営者は、金融庁の報復を常に恐れていますし、処分権が怖いのです。だから、金融庁への絶対服従が生まれるのです。
 鳥畑:98年4月から早期是正措置が導入され、8%以上が健全で、債務超過に突入したと金融庁が認定したら、営業停止の権限を持ったわけです。自己資本比率、資産評価が正しいのかどうかの判断権は、自己査定の枠組にあるけれども、金融庁が最終的な判断権をもっている状態ですから、事実上否定されるのです。
 生沢:もともと行政の基準は4%(国内)と8%(国際)です。にも関わらず、現在実際にやられていることは、信用金庫は4%じゃ認めません。6%以上ないとダメです。足銀だってそうでしょう。不良債権に手心を加えたら、自己資本比率は簡単に変わります。オンブズマン栃木が県の資金を入れたことはけしからんと言っていますが、アメリカでもコミュニティーバンクはそうですが、日本でも第二地銀の福島銀行では地域に資金を入れてもらって何とか生きているわけです。地域に密着した金融機関であればある程、地域としては資金を入れていかなければならない。新東京銀行とは別に、地域で維持していくことが必要だと思いますが、オンブズマン栃木のように「自治体が資金を入れるのはけしからん」と言うことになれば、第2、第3の足銀が出てきた時に、地方自治体としては支援しにくくなると思いますが、オンブズマン栃木の行為をどう評価したらいいんでしょうかね。
 鳥畑:栃木で聞いた話では、栃木県内のオンブズマンは、3つくらいあるそうです。オンブズマン栃木は、民主党系の立場で発言しているようです。もっと早めに徹底的に債権処理をして、潰すとこは潰しておけば良かったのに、いろいろな手心加えて延命させたから被害が広がったという意見のようです。そういった中に行政も関わったから、行政も責任はあるといった枠組みの中で議論されている。オンブズマン栃木の言っていることと、栃木の民主党議員の言っていることとは、底流で似ているという感じです。
 私自身は、預金保険法102条の3の適用で出資がゼロになったと言うことは、これからの地域の金融機関を支える意味で大きなマイナスになると思います。本来、自己資本比率規制が機能するのは、景気のいい時にたっぷり自己資本を貯めておいて、不況の時にそのショックをたっぷりある貯金で乗り切るシステムです。そうすれば貸し渋りしなくても乗り切れる。これが本来の趣旨なんです。ところが日本の場合には、最悪のタイミングで自己資本比率の規制強化、つまりバブルが弾けて不良債権となって、不況の体力のない中で強化するから、どんどん不況を深刻化させる逆効果です。これは国際的にもかなり認識が広がっている問題です。不況期に地域の金融機関が増資をするというのは、極めて限られるんです。大手の金融機関でもそう簡単に、不況期には増資できない。地域金融機関はなおさらそうです。そうした状況の中で、地元の県民も含めて一生懸命支えようとしたのです。その支えようとしたことが問題だと言われると、もう地元の人たちは支えようがなくなります。ちょっと経営が悪くなると、坂道を転げ落ちるように、誰も支えない。これは地域の金融を非常に不安定化させる暴挙だと思います。オンブズマン栃木は、敵を間違えているように感じます。
 司会:小泉構造改革の問題点について色々ご意見もあると思いますが、先程から今の事態にどう対応していくか、運動をどう広げていく等の点を深めていただきたいと思います。
 坂本:今、地方自治体の合併が問題となっています。それの問題を考える場合、地域金融の問題や地域経済の問題の関わりで、地方の文化を守る、地域金融機関を守る、地域経済を守ると言うこと等も視野に入れた議論が必要ではないかと考えています。また、今後の地域経済のあり方を考える場合、第3セクターの問題とも関わって、先生方に問題提起をもお願いしたいと考えています。
 司会:最後に、皆さんから出されましたご意見などを踏まえながら、この問題で今後どのように対応すべきかについて、お考えのあるところをご発言いただきたいと思います。今宮さんからお願いします。
 今宮:皆さんのご意見を聞いて、考えたいと思っていますと冒頭言いましたが、今日の報告や意見を聞きまして、政府、金融庁の責任を問い詰めていくかが、私は基本だと思います。先程から色々問題提起されましたが、金融庁のあり方が日本国民全体の生活を守るという上から言って、どこに問題があるかという責任問題を突き詰めていく作業が、どうしても必要であると、第1に感じます。
 第2番目には、それと同じように、地方自治体が県の経済を守る、県の金融を守る責任を放棄してはいけないと思います。そうした観点から見ますと、栃木県のやり方は非常に手ぬるいと思います。先程いろいろお話がありましたように、県民の生活、県内の中小企業の経営に対する県の責任も明確に追求していくべきです。もちろん、県を敵に回すという意味ではありません。県のあり方を取り囲むような形で、県の責任をキチッとしていくことが、非常に大事だと思います。
 第3番目には、皆さんの言っていることとまったく同じですが、地方銀行が生きていくということは、銀行だけが生きていくだけでは意味がないわけです。地元経済の発展があってこそ地元の金融機関が発展するのです。竹中プランのように、インベストメントの仕事ばかりやって銀行が儲かるということではなく、地元の経済の発展こそが地元の金融機関、地方銀行の発展の原点である。この原点をキチッとわきまえておくことが、大事だと思います。
 第4番目は、大銀行も地方銀行も、その社会的責任をどう果たしていくかという問題です。預金者も取引先も、銀行の社会的責任を突き詰めて行く。そしてこれは銀行だけの問題ではなく、我々自身の問題でもあると思います。その点では、まず銀行は情報公開をきちんとやることが必要です。率直な情報公開をしてこそ本当に県民の信頼も得ることができるのです。
 最後に、銀行で働く人がたいへんな犠牲になります。もちろん取引先も犠牲になります。こうした色々な犠牲になる人々を、県民が本当に支え合うことと一体化した県民運動に盛り上げていくにはどうしたらいいのか。形態や手段も考えて見る必要もあると思います。アメリカのコミュニティバンクの例ではありませんけど、県民が地域の地方銀行を育成するという観点から、中小企業同友会の金融アセスメント法とも関連しますが、県民の要求と一体化するような運動が求められているのではないかと言う感想を持ちました。
 司会:予定の時間が近づいていますが、ご報告いただいた方から、同じようにそれぞれのお考えをお願いします。
 谷:少し現実的な話になりますが、栃木で色んな方とお会いした中で、旅館ホテル活性化協議会の方と懇談し、資料もいただきました。この地域には観光だけでなく、色んな産業があるけれども、温泉を中心にして、労働力の60%が観光で生活しているそうです。そこの資源の再開発をどうするかという問題で計画を出されたのが、地域一体型の再生と言うことで具体的な計画をお持ちのようです。レジュメの終わりに「現地の動きから見る」と書きましたが、県の商工観光課が地域再生ファンドに足銀の出資ができるような組合方式を作ること等を模索しているようです。
 足銀は破綻し国有化されましたが、地元企業と結びついた地域経済振興の仕事は、われわれが日常的にリレバンでやっている仕事です。どこの銀行も2年の間に計画出して、これを具体化するのですが、地銀のほとんどは似たような水準だと思います。ある地方銀行は毎回300先を業績改善対象にし1年間で頑張って立て直す仕事をする。その結果27先がランクアップで41先がランクダウンという結果が出ています。日本経済の状況からも企業再生には一定の時間が必要です。とりわけ企業の再生支援の仕事は人間が深く関わる世界だと思います。
今日の地元紙「下野新聞」のトップ記事を見て、栃木で聞いた色々な意見が「こういう形でリンクしたのだな」と思いました。金子一義産業再生担当大臣が記者会見で「産業再生機構による鬼怒川治温泉ホテル・旅館への支援見通しは、5月に入ってからの支援要請になりそうだ」と言っていたことは、多分このことでしょう。金融庁のやり方は許せないとハッキリ言いながらも、地域の産業、雇用、銀行を守るということを具体的な運動として広げて行くために、全国に発信することが非常に大事なことではないかと思います。
 鳥畑:すぐにお役に立てない話ばかりですが、自己資本比率を基準にした金融行政は、かなり欠陥があるというのは国際的にも明らかになっています。非常に副作用が強い。そういう国際議論がある中で、日本の金融当局の官僚の方も多分内情は分かっていると思います。自分達はかなり無茶なことやっていると思うけれども、自分たちでは変えられない仕組みになっている。そういった意味、でこの間、金融行政マニュアルの中小企業篇の改訂であるとか、リレバン、とにかく中小企業には間接金融がやっぱり必要だと認めさせた点も含めて、批判に応える形で少しは修正してきています。そこを取っ掛かりにして、それを現実に実行させる。具体化させるという批判や運動を強めて行く必要があると思います。
 谷さんも言われたように、大手金融機関と中小企業金融機関を一律にするというのはおかしい。突き詰めていくと、金融庁自身が大手金融機関と地方銀行、地域金融機関に対してダブルスタンダードやってきたんです。自己資本比率は、大手は8%で、地域の金融機関は4%でいいというのも、明確なダブルスタンダードです。要するに、地域の金融機関に対しては大手の2倍のリスク資産を抱え込んでいいと言いながら、そのリスク資産の評価については一律にやりますと言っている。地域は大手に比べれば中小企業が中心ですから、厳しい評価になるわけです。4%だから、すぐに吹っ飛ぶような仕組みで指導しながら、金融検査は大手と中小は区別する必要ないということは、道理がないおかしい話です。地域の実態であるとか、検査の面での中小企業、地域金融機関に合ったマニュアルを作らせるという運動をドンドン進めていくことが重要です。
 最後に、自己資本比率は、投資家から見た銀行の健全性であって、銀行の公共性、銀行が抱えている色々な利害関係者全体で見た健全性の基準ではありません。都道府県段階でその地域の銀行を社会的に評価する金融アセスメント法運動というのがありますが、そういった運動をもっと進めていくこと、具体的には我々の側から銀行の格付け評価を進めていくこと重要ではないかと思っています。
 司会:最後に一言述べておきたいと方がお有りか思います。
 生沢:谷さんが金融検査マニュアルの新しいもののコピーを出してくださいましたが、中小企業融資編の「別冊」では、中小企業の経営改善を勘案するとなっています。この中で、10年や15年調長期貸出は「資本的劣後ローン」に切り替えて扱えとなっています。これは、2、3年間金融庁と全国信用金庫協会あたりがやりあったことが、ポンと入ってきたのです。例えば、中小企業が15億円の機械を買うと、今の売上で1年に1億円づつしか返せないとすると、15年間の融資が必要になってくるわけです。それは15年をそのまま固定で借りるか、あるいは、手形の書き換えで延ばしていくとなります。ところが、金融庁は検査のたびにそれは「資本みたいなものだから、そんな処理はけしからん」といじめるわけです。
 「資本のようなもの」だと言うのであれば、不況の時は金利を安くし、好景気になったら利回りを上げるようなシステムを考えたらどうだと、金融の原論や企業経営の論理も成り立たない無茶苦茶なことを押し付けようとしてきているんです。これが今後、中小金融機関いじめ、地域金融機関いじめに相当使われるなと資料のコピーを見ながら思いましたので、一言申し上げておきます。
 柴田:聖学院大学の柴田です。私は、アメリカのFDIC(連邦預金保険公社)元議長のシードマンの証言録『ベイルアウト(Bailout、緊急救済)』を翻訳したことがありますが、アメリカのFDICの銀行救済の場合を参考にすると、例えば、足利銀行の問題のように、預金保険機構の対応を事前にチェックするのは不可能だと言うのです。「足利銀行は問題あります。皆さんで相談して処理を決めてください」などと言うことは絶対できないのです。そのとたんに信用不安の問題が起きますから。ですから、金融行政はある意味で密室でやらざるを得ない。ただし、それをどうチェックするのかが重要です。金融庁の今の行政について言えば、大きな裁量権を持って密室でやるのだから、ことが終わったら徹底的にそれをチェックするシステムが必要です。
 アメリカには実際そのシステムがあって、パブリックヒアリングで、銀行救済問題の詳細な分厚い報告書が出ています。小さなコミュニティーバンクでも、それは企業間秘密などと言っても、税金投入しているのだから冗談じゃないという形で、誰が何を決定し、それが破綻してどうなったかというのを、事後的に徹底的にチェックします。ところが、日本では98年の長銀の問題も、あれだけの税金が投入されても報告書らしい報告書がぜんぜん出てこない。いつの間にか「膨大な税金が投入されて一件落着だからもういいだろう」という形になっている。やはり事後チェックを徹底的にやることによって、今やる金融行政をチェックする体制を作る必要があります。アメリカでは一応そのシステムがあるので、健全化が図られるのです。
 シードマンは、そのことを予期して『ベイルアウト』という証言録を書いたのです。後で散々文句言われるから、あらかじめ証言録を書いて自分の立場を明確化しているわけです。私は、竹中さんも引退したらきちんと証言録を書くくらいの気概を持ってもらいたいと思います。権力をもっている立場の人は、キチンと証言録を残すような社会風土を作るべきです。欧米ではそういう証言録を書くことは、社会的責任であるのです。民主党の知り合いにも、国会でキチンと報告書をつくるタスクフォースなり作って、事後チェックをキチンとしないと、後から後から問題が起きますよと、言っているのです。98年辺りからキチンと振り返って、報告書を作っていくと、今の金融行政の圧力になると思います。
 大木:今のお話とつなげてみると、事前チェックはできなが、事前警告はできると思います。と言うのは、この前は総選挙が終わった途端でした。今度は参議院選挙が終わった途端に何をするつもりかという問題がある。ですから、足銀の問題が今後どういう形で波及する可能性があって、それがその地域経済なり、あるいは住民生活にどういう問題を提起することが重要です。今日は地銀連の皆さんが多数ご参加いただいていますので、例えば、地銀連の責任で、そういう警告をハッキリと打ち出してもらえないだろうかという期待も持ちました。この前栃木でやられたシンポの時に、坂本さんが、「地域産業を育成する金融機関へと足利銀行を再編する。そういう必要がある」という問題提起をされたというお話が『しんぶん赤旗』に載っていましたが、そういう警告と合わせて、こういう形で地域経済と地域金融機関を再興するというような政策を併せて出していただけると非常に説得力も持つと思います。この問題は地域経済の問題であると同時に産別課題でもあるわけですから、産別としての具体化を大いに期待したいと思います。
 司会:時間も来ていますので、今日の研究会はこれで終わらせていただきます。今日の報告や議論については『労働総研ニュース』で発表する予定ですので、まとめはいたしません。最後に、労働総研の事務局次長の藤吉さんから閉会の挨拶を行います。
 藤吉:労働総研の政治経済動向部会の公開研究会に60名の方が参加していただき、予定していましたレジメを4回増刷りしました。この問題への関心が非常に強いことの反映だと思います。労働総研は、この問題で地銀連や栃木労連などとも協力して、シンポジウムなども開きたいと考えています。その時にはまたよろしくお願いします。
 今日の公開研究会の記録は、『労働総研ニュース』で、皆さんにお返ししたいと思います。今日はありがとうございました。(拍手)

2003年度第4回常任理事会報告

 労働総研第4回常任理事会は、5月15日、13時30分から17時まで、牧野富夫代表理事の司会で、労働総研2階会議室で開催された。
 常任理事会冒頭の研究会で、今宮謙二会員から「『金融再編』による『金融破綻』」が報告された。討議で、この問題はアメリカの要求する日本の経済・金融「再編」に全面的・積極的に応じる小泉・竹中「構造改革」から生み出されるものであり、足利銀行を破綻させた金融庁の圧力が、今後、地方金融機関の破綻と地域経済、地域における中小企業経営と雇用問題に重大な悪影響をあたえる問題であり、これに反対する広範な共同を強めることの重要性が確認された。

I 報告事項
 1)全労連編『世界の労働者のたたかい2004年』の発行、2)全労連地域交流集会(5月15〜16日)への大江洸代表理事、金沢誠一理事の参加、3)プロジェクト・研究部会代表者会議(3月27日)、4)政治経済動向研究部会公開研究会(4月15日)、5) 埼玉県労連との共同調査、6)事務局の活動、および7)研究部会活動状況について、藤吉信博事務局次長が報告した。全労連との協議内容について、大木一訓代表理事が、全労連04年度方針案なども紹介しつつ報告した。討議の結果、全労連との協議・共同を引き続き強めていくことが確認された。

II 協議事項
 1)入会員の承認について、大須眞治事務局長より報告があり、承認された。
 2)伍賀一道常任理事が、「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」のまとめについて報告し、討議の結果、7月3日の第1回理事会の後、公開プロジェクト研究会を開催すること、およびその成果は『労働総研クォータリー』で公表する方向を確認した。
 3)浜岡政好常任理事が、「ナショナルミニマム・プロジェクト」の現況を報告し、了承された。
 4)大須眞治事務局長が、人事検討委員会の中間報告を報告し、討議した。牧野富夫代表理事が討議を踏まえ、人事検討委員会で検討を深めることが了承された。
 5)大須眞治事務局長が、2004年度総会議案の骨子を報告し、第2回目のフリー討議を行った。討議を踏まえ、次回の常任理事会には草案を提出して、討議することが確認された。
 6)大木一訓代表理事が、シンポジウム「これでいいのか日本の社会、これからどうする日本の労働運動」、そのための調査を含む、設立15周年記念行事案を報告し、討議の結果、了承された。その他の事業についても、練り上げて04年度総会までに具体的案を提起することが確認された。
 大須眞治事務局長が、04年度定例総会までの作業・日程を報告し、了承された。
 8)藤吉信博事務局次長が、『05年国民春闘白書』編集委員会を04年総会後早急に立ち上げるため、全労連、学習の友社と協議することについて、および9)編集企画について報告し、了承された。


2003年度第5回常任理事会報告

 労働総研第5回常任理事会は、6月12日、13時30分から17時まで、牧野富夫代表理事の司会で、労働総研2階会議室で開催された。
 常任理事会冒頭の研究会で、若井雅明公務労組連事務局長から「公務員賃金と人事院制度」が報告された。人事院が「民間準拠」を口実に、5年連続でマイナス勧告を行い、公務員の年収が5年連続ダウンし、公務・民間の際限のない「賃下げの悪循環」が作り出され、勤労者全体の所得が5年続きで減少している。この問題は、労働者・国民の生活改善要求と不況打開の運動を結合することの重要性を明らかにしているということが、討論を通じてこもごも強調された。この問題を広範な共同の課題のひとつとして追求していくことの重要性が確認された。

I 報告事項
 1)全労連が5月12〜13日に開催した「地域運動交流集会」に、大江洸代表理事と金沢誠一理事が参加した。金沢誠一理事が提出した報告を基に、大江洸代表理事が補足報告を行った。2)6月1日に行った、労働総研と全労連とが共同で開催する15周年記念シンポジウム「これでいいのか日本社会、これからどうする日本の労働運動」(仮題)と、それを成功させるために行う労働者・労働組合調査を中心議題にして行った全労連との懇談について、藤吉信博事務局次長が報告し、大江洸・大木一訓両代表理事がそれぞれ補足報告を行った。3)事務局の活動、および4)研究部会活動状況について、藤吉信博事務局次長が報告した。

II 協議事項
 1)入会員の承認について、大須眞治事務局長より報告があり、承認された。
 2)大須眞治事務局長より、創設15周年記念シンポジウムと調査の基本を具体化するため、労働総研と全労連とでプロジェクトティームを作り検討することが提案され、討議の結果、確認された。
 3)大須眞治事務局長より、04年度定例総会に提出する方針草案が提案され、討論で出された積極的な意見を充分考慮して仕上げ、理事に送付することを確認した。
 4)大須眞治事務局長より、人事検討委員会の検討状況が報告され、討論の結果、活力ある人事を行うことが確認された。
 5)大須眞治事務局長より、03年度第1回理事会の議事日程が提案され、確認された。
 6)大須眞治事務局長より、理事会後に開催する「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」公開研究会の準備状況について報告があり、公開プロジェクト研究会の討論を反映した成果として『労働総研クォータリー』で公表することを確認した。


2003年度第6回常任理事会報告

 労働総研第6回常任理事会は、7月3日、13時から14時まで、牧野富夫代表理事の司会で、平和と労働センター・全労連会館3階会議室で開催された。

I 報告事項
 藤吉信博事務局次長が、1)事務局の活動、2)研究部会活動状況、および3)人事検討委員会の活動の推移について報告した。

II 協議事項
 1)入会員の承認について、大須眞治事務局長より報告があり、承認された。
 2)大須眞治事務局長より、第1回理事会に提出する04年度定例総会方針草案が提案された。討論の結果、小泉自公政権が、憲法改悪が政治日程として掲げるという緊迫した情勢に相応しい情勢論として練り上げる必要性がある等の意見が出された。理事会での議論も踏まえ、仕上げることが確認された。
 3)伍賀一道常任理事より、理事会後に開催する「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」公開研究会について報告があり、公開プロジェクト研究会の討論を反映した成果として『労働総研クォータリー』で公表することを確認した。


2003年度第1回理事会報告

 03年度第1回理事会は、7月3日14時から16時まで、平和と労働センター・全労連会館3階会議室で開催された。大須眞治事務局長が成立要件を満たしているとして、開会を宣言した。議事は牧野富夫代表理事の司会で進められた。
 大江洸代表理事が挨拶した後、藤吉信博事務局次長が、04年度方針案の内、「[1]03年度における経過報告」を行った。「[2]調査研究活動をめぐる情勢と課題」について、大木一訓代表理事が提案した。「[3]04年度の事業計画」と「[4]研究諸活動の充実と改善」について、大須眞治事務局長が提案した。
 延べ13人が発言し、討論で出された意見を検討し、反映させるべきものは反映させることが確認された。
 牧野富夫代表理事が閉会挨拶を行い、議事は16時に終了した。


5月の事務局日誌

5月 11日 事務局会議
14日 JMIU結成15周年記念レセプション(大木代表理事)
15日 第5回企画委員会
第4回常任理事会
自治体問題研究所第44回総会へのメッセージ

5月の研究活動

5月 7日 賃金最賃問題研究部会─高橋信夫「虚妄の成果主義」を読む
国際労働研究部会
19日 労働運動史研究部会─聞き取り準備作業状況報告
26日 女性労働研究部会─労働総研「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」報告書について
労働時間問題研究部会─「オランダのワークシェアリング」「トヨタの生産現場」内容紹介他