労働総研ニュースNo.168・169号 2004年3・4月



目   次

・2003年度プロジェクト・研究部会代表者会議報告
・2003年度第3回常任理事会報告
・2月〜4月の事務局日誌




2003年度プロジェクト・研究部会代表者会議報告

2004年3月27日13時〜17時
平和と労働センター・全労連会館

 司会(唐鎌直義常任理事):議事日程に従って会議を進行したい。各プロジェクト・研究部会からの報告は別紙資料(7〜11頁)にまとめられているので、参考にしていただきたい。会議は、牧野代表理事による挨拶を兼ねた基調提起を受けて、二つのプロジェクトの報告を軸に、各研究部会の議論をできるだけかみ合わせて報告・討議していただくことをお願いしたい。

挨拶を兼ねた基調提起

牧野富夫代表理事

 年度末のお忙しい時期にお集まりいただき感謝申し上げる。労働総研はプロジェクト・研究部会代表者会議を定例総会とは別の意味で、労働総研の調査研究・政策提起活動を進めて行く上での重要な会議として位置づけている。
 労働者状態の貧困化、社会保障水準の絶対的ともいえる低下状態が一方にはある。労働運動も極めて厳しい局面に直面しているが、野村證券女性差別事件や石播における思想差別事件の勝利などの動向にも見られるように、厳しい局面を打開する光も見落としてはならない。
 労働総研は、01年度のプロジェクト・研究部会代表者会議から、二つのプロジェクト、当時の時点で言えば、「基礎理論プロジェクト」と「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」を軸にして、各研究部会がそれを意識しながら、研究所全体の調査研究・政策提言活動を深めてきた。「基礎理論プロジェクト」は、昨年、「報告書」=『均等待遇と賃金問題―賃金の「世帯単位から個人単位へ」をめぐる論点の整理と提言―』(『労働総研クォータリー』No.51、2003年夏季号)を提出して一応の終結を見た。
 現時点で言えば、今日報告される「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」と、「基礎理論プロジェクト」は、「基礎理論」に「理論問題」を加えて、「基礎理論・理論問題プロジェクト」として間口を広げて、具体的には「ナショナルミニマム論の整理・検討プロジェクト」として研究活動に入っている。今日の各部会の報告は、部会研究の報告と同時に、二つのプロジェクト報告と絡めながら行っていただきたい。
 ナショナルミニマムについて言えば、全労連との共同研究、シンポジウムなどで一定の蓄積があるが、ベースのところでさまざまな理解がある。(1)所得保障にしぼって、全国一律最低賃金制などを中心にする議論。(2)それぞれの分野でナショナルミニマムを設定する議論。例えば教育についてのナショナルミニマム等々。ナショナルミニマムは統一的に理解し得るのかという問題がある。共通のベースはどこにあるのか。そうした問題点の整理が必要である。マスコミは、ナショナルミニマムの代わりにセーフティーネットという用語を使っている。これは「規制緩和」論の実態のないイデオロギー的議論である。いまこそナショナルミニマムを確立する必要な時はない。
 私の理解では、ナショナルミニマムは所得に収斂させる生活資料を貨幣で表す、全国一律最低賃金制をベースにまとめ上げるべきではないかと考えている。「基礎理論・理論問題プロジェクト」の実りある報告を期待したい。

不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト

萬井隆令常任理事

 プロジェクトの責任者の伍賀一道常任理事が所用で欠席のため、私が報告する。このプロジェクトは、不安定就業・雇用失業問題研究部会と労働法制研究部会を主体にして01年12月にスタートした。プロジェクト研究の焦点を定めるまでに手持ちの文献を検討したりして、柱立てが出来たのは去年の夏である。お配りしたコピーは未完成のもので、あと2回ぐらい議論した方がいいと思うが、最終稿に限りなく近いものである。
 ネーミングをどうするかで議論があった。不安定雇用労働者か不安定就業労働者か非正規雇用かといった議論があった。非正規雇用といった方が実態を広く捉えることが出来るという議論は早く消えた。「序」で、不安定就業にしたことが述べられている。「序」で、派遣やパートなどを「新しい働き方」として積極的に評価する立場があるが、それは望ましくない働き方だという立場で研究している。
 不安定就業労働者の実態と人権という以上、実態調査をやるべきであったが、全面的にはやれなかった。パート・臨時労働者については全労連の調査を、派遣労働者については政府研究機関の調査を活用した。派遣・業務委託についてはいくつかのヒヤリングを行った。不安定就業労働者を日本の労働組合はほとんど組織していないし、正確な実態をつかんでいない。不安定就業者の側から言えば組合と接触したことが経営者に分かると再雇用してもらえないという不安がある。このことがヒヤリングを困難にしている要因でもある。
 以下、概括的に報告する。
 「序」は当プロジェクト全体の方法論・立場を明らかにしている。
 「第1章 今日の日本における不安定就業問題の位置」は、総括的認識を明らかにしている。
 「第2章 『労働市場の構造改革』を推進する雇用行政」は、不安定化を進め、助長している行政批判である。
 「第3章 不安定就業の代表的形態の分析」は、パート・アルバイト、派遣、業務請負、フリーターを分析しているが、分析の方法が充分には統一されていない。
 「第4章 人権論から見た不安定就業問題」は、契約論から見て二つの類型を分析した。一つは契約更新拒否によって常に失業を意識せざるをえない有期雇用であり、もう一つが派遣などの特殊雇用形態である。なお、外国人労働者は強制送還といった固有の不安定要因をかかえているが、その問題には充分にはふれられなかった。なお、不安定就業と労働条件の低さが悪循環となっている。この悪循環を断ち切る政策方向を提起した。
 「第5章 アメリカ合衆国における市場原理の貫徹する労働市場と法規制の闘い」は、日本の将来図になる。
 計画ではドイツも入れる予定であったが、出来なかった。
 司会:萬井報告についての質問があれば出していただきたい。
 松丸和夫:ドイツが抜けているのは私の責任である。
 大木一訓:目次や編別構成は変えられるか。
 萬井:構成は変わらない。
 大木:不安定就業の増大は財界戦略も影響している。この問題はどこで出て来るのか。
 萬井:「新時代の『日本的経営』」、日経連の21世紀戦略はどこでも取り上げられているから特に取り上げていない。企業の意図との関連で「序」と「第1章」で触れている。
 大木:ドイツはたたかいの方向としても望まれており、是非入れてもらいたい。EUは新しい進展がある。EUレベルでの企業の社会的責任との関わりで触れて欲しい。
 丹下晴喜:ドイツは規制がかかっている。モデルになる国があれば紹介して欲しい。「2章」と「3章」は逆転した方がいい。実体から入ったほうが理解しやすい。
 萬井:ドイツは一つの典型であり入れたい。
 大木:ドイツも規制緩和されているという議論も強まっているので、その点にも触れてもらいたい。
 斉藤隆夫:アメリカの方向は日本の将来図であるというが、規制がかかったらこうなるということを示す意味でドイツは是非入れて欲しい。イタリアでも規制はゆるめられている。
 相澤與一:ILOのパート条約との関連やグローバリゼーションのもので各国でどのようにやられているかも触れて欲しい。
 金澤誠一:失業との視点を強調する必要がある。本質は失業の一形態なのか、就業の一形態なのかをはっきりさせることが重要だ。

ナショナルミニマム・プロジェクト

大須眞治事務局長

 責任者の浜岡政好常任理事が欠席のため代わって報告する。
 このプロジェクトは、牧野代表理事挨拶にあったように「基礎理論プロジェクト」が終了したので「基礎理論・理論問題プロジェクト」と幅を広げて、「ナショナルミニマム論の整理・検討を行う」プロジェクトとして、昨年12月に準備会を発足させ、今年に入って2回の研究会を行っている段階である。第1回目は島田務氏から生活保護の実態を、第2回目は金澤誠一氏から家計構造の変化から見た固定費の増大、家計費の硬直化の分析を報告を受けた。次回は小越洋之助氏から最低賃金とナショナルミニマムとの関連での報告を受ける予定である。
 当プロジェクトとしては、メンバーの報告が一巡した後、論点を絞った論点整理・検討に入っていくことを予定している。
 司会:固定費の中身をどう見るのか。所得でどんな生活をしているのか。教育費や住宅費などの検討が必要である。
 各研究部会からの報告は予め提出されているので、発言は二つのプロジェクト報告とできるだけ絡ませて行っていただきたい。

社会保障研究部会

相澤與一常任理事

 最低保障年金の額をどうするかが大変であった。「基礎理論・理論問題プロジェクト」の成果を踏まえなければならない。ミニマムを保障する構造、ナショナルミニマムをどのように構築するか、高齢期の生活保障をどうするかなど、緊急に解決が迫られている課題である。他の研究部会との連携が必要である。
 牧野:ナショナルミニマムに対する過大な期待がありすぎるのではないか。ナショナルミニマムの意義と限界を見極めることが重要である。ナショナルミニマムができたらすべてハッピーというわけにはいかない。
 大木:『日本の労働者階級』はナショナルミニマムを見る場合、タウンゼントを意識しながら考えていたように思う。いまどうなっているか繋げる必要がある。
 相澤:わが国のナショナルミニマム論は、ビバリッジの議論に25条をつなげた面がある。それはそれでいいとしても、政策論という点をハッキリさせる必要がある。マクロ経済を問題にする社会保障制度に介護保険導入して年金制度そのものを根本的に変える攻撃がされている。社会保障制度だけでは社会保障の問題は解けない。社会保障は「完全雇用」と「福祉国家」が前提である。世代間の再生産の前提条件をガタガタに壊すイデオロギー攻撃の下で、国民の間に「もうこうなったら仕方がない」という雰囲気が出ている。小泉「構造改革」は社会保障制度のマクロモデルを破壊している。われわれは不安定就業を増大させる政策と社会保障制度破壊の攻撃を一体のものとして研究し、政策批判と政策提言をしなければならないと思う。
 大木:社会福祉・社会保障を論じる時、日本では失業問題が入ってこないか、入ったとしても少ない。外国では社会保障と失業問題は一体のものとして議論・研究されている。相澤指摘は重要である。社会保障の問題研究に是非失業の問題を入れて欲しい。
 相澤:学校では社会福祉の領域として失業の問題を教えないのに、国家試験の問題には出てくる。「新しい働き方論」である。この論は、不安定就業と「新しい働き方」の住み分け論であって、労働能力のある人との関係では邪道であるが、障害者の新しい働き方・生活のありようとの関係では研究されてしかるべきであると思うので、不安定就業プロジェクト報告の冒頭部分で留意をお願いしたい。

労働時間問題研究部会

西村直樹理事

 本を出版するためのレジメ作りに2年近くかかった。03年度中には執筆に入る。レジメ作りが長びいた理由はワークシェアリングをめぐる議論が空転したためである。労働時間短縮の問題をEUで議論になっている企業の社会的責任(CSR)との関連で見ることが重要であると考えている。
 丹下:長時間労働は労働災害を引き起こすなど、企業の会計基準からみても問題となっている。
 大木:もう一つは環境基準の問題もある。執筆のためのレジメを見ると、全体の構成が「理想論」から見て、実態が悪いという組み立てになっているように思われる。実態から出発するようにして、構成を逆転した方がいいのではないか。
 藤吉信博:労働時間問題は搾取論の中心テーマである。そうゆう角度から取り組む必要があるように思う。
 斎藤隆夫:外国の事例を参考にすることはできないという意見もあるが、それは外国研究のあり方による。なぜそのような制度が実現したのか、勝ちとられてきたのかが分かる、制度の背景にある運動・労働者の意識にまで踏み込んだ研究でないと、日本の運動の役に立たないのではないか。
 大木:出版はいつ頃になるのか。財界の戦略と切り結ぶような、たたかいの書になるようにして欲しい。

女性労働研究部会

五島木実

 責任者の川口和子理事が出張で欠席されたので代理出席した。報告書にもあるように女性労働研究部会のテーマは、不安定就業プロジェクトとも関連するが、研究を深めていく上ではすべての研究部会との交流が欠かせないと、常々責任者は強調している。
 西村:少子化の問題提起が弱い。
 丹下:少子化を企業の蓄積と結びつけて掘り下げて欲しい。
 犬丸義一:女性労働問題をどう見るかが問われている。ゼンダー論ばやりだ。ゼンダー論は基本的には小ブルジョアフェミニズムである。ゼンダー論は作業仮説ではあっても、叙述論ではない。ゼンダーフリーの攻撃がかけられている。シャープな理論問題として、女性労働研究部会任せにせず、労働総研全体で取り組むべき大問題だ。2、3年かけた研究成果の上に立って労働総研としてシンポジウムをやるくらいの問題である。

中小企業問題研究部会

松丸和夫理事

 『中小企業の労働組合運動―21世紀への挑』を96年に出版してから8年が経過している。研究部会として1年間近く次の本の出版を目指して検討を重ねてきたが、『今日の中小企業問題と労働運動』として、ようやく全体の章立て構成が確定した。名前が書いてある人は、レジメの起草者であって、原稿を執筆する人ではない。
 中島康浩(部会事務局):研究部会のメンバーの半分が組合の役員である。資料でお配りした全労連の下請二法周知ビラのゲラを研究部会メンバーに見せて意見を求めたら、法改正後の政省令や労働基準法問題をも入れるべきであるという意見が強く、最終的には入れることになった。平沢会員が「企業の社会的責任」について報告したので、全労連としても政策化すべきであるということになり、改めて全労連職員向けに報告してもらった。中小企業問題研究部会は全労連の政策活動にも貢献している。
 萬井:「企業の社会的責任」の中には強制力をもった法文があるのに、努力義務的なレベルに下げてしまう傾向がある。下げないように注意する必要がある。

国際労働研究部会

斎藤隆夫理事

 ナショナルミニマムプロジェクトとの関連で言えば、全労連編で毎年発行している『世界の労働者のたたかい―世界の労働組合運動の現状調査報告』の執筆に国際労働研究部会メンバーが協力して、今年で第10集となるが、全労連の03年度の運動の重要な軸の一つとして、年金問題を重視していることもあり、毎年取り上げてきている調査項目に加えて、各国における年金改悪攻撃とのたたかいをできるだけフォローする努力を行った。
 不安定就業労働者のプロジェクトとの関連で言えば、各国で不安定就業労働者が大問題になっている。例えばイタリアでは、パート規制があって、パートを雇い入れる時には労働組合と合意が必要であった。擬似的従属労働者、バールでテーブルまでビールを運んでくる労働者をなどもそうなっているらしいが、「規制緩和」が進んでいる。このような「規制緩和」とのたたかいについても重視し、関連した研究部会との連携をも強めていきたい。
 大木:中小企業研究部会や国際労働研究部会は、全労連や単産の幹部と共同した調査研究活動を進めており、運動に役立つ研究成果も上がっているという点で、各プロジェクト・研究部会も教訓とすべきだと思う。

政治経済動向研究部会

大木一訓代表理事

 「春闘白書」の作成や他のプロジェクト・研究部会の研究成果との有機的連関を強めながら、情勢分析を系統的に深めていく努力をしている。全労連や関係する単産の幹部・活動家にも参加してもらい、できるだけオープンな形で研究会を開催していきたい。
 研究部会としては、全労連が2000年に提起した「21世紀初頭における課題と展望」をひとつの重要な切り口として、日本経済の労働者・国民を主人公にした再興と労働改革の方向を、全労連や他の研究部会との協力をえながら、その具体化、発展の方向を解明する調査研究に取り組みたい。
 藤吉:地銀連が行なった足利銀行破綻問題の現地調査に今宮謙二会員と参加した。地銀連、全労連や栃木労連などと相談して、地方金融機関の再編、地域経済の経営・雇用問題で、公開の研究部会やシンポジウムなども考えている。

関西圏産業労働研究部会

丹下晴喜

 研究部会活動は、今日の時点で、賃金問題を雇用や社会保障と関連させた広い視野で理論的に解明することを目標に、研究会参加者が現時点での賃金問題に対してそれぞれの視点からアプローチする形で研究報告をおこなってきたが、成果に結実させるまでに至っていない。若手育成と結びつけた研究部会の活動のあり方を工夫をしているところである。今後、本研究会の討論をふまえた各個人の研究成果を個人論文として発表していき、個人論文の積み重ねをふまえて、出版企画実現のめどをつけたい。また、労働者と研究者の交流が行えるような研究会運営をめざしたい。

労働運動史研究部会

犬丸義一

 労働総研の定例総会で何度となく研究所の研究活動にとって、現状分析と理論政策、歴史研究が欠かせないし、全労連運動の発展にとても日本労働運動の階級的・民主的伝統を継承発展させることが求められていると、主張してきた。すでに戦後の労働運動を担ってきた幹部が亡くなり始めており、関係者からのヒヤリングも喫緊の課題となっている。今年度の定例総会で、こうした長年の主張が認められ、労働運動史研究部会が発足することができた。体調を崩しているが、お礼を言わなければならないと思い出席した。研究部会は発足準備段階で、戦後の労働史研究の現段階の特徴や問題状況を数回にわたって検討し、ようやくヒヤリング対象者の選定やその略歴・プロフィール調査を報告し合える段階にまでこぎつけた。

「調査研究活動のあり方」検討委員会中間報告

大木一訓代表理事

 本委員会は、2003年度定例総会方針に基づいて、労働総研の調査研究活動の実態と問題点を洗い出し、必要な改善・改革課題を常任理事会に提案する任務を負っている。労働運動の期待に応え、調査研究活動の力量を高める上で、(1)情勢に対して柔軟かつ大局的に研究できる体制の追求、(2)研究部会の設定・運営をできるだけ運動課題と緊密に結びつ、(3)調査研究活動における財政の効率的・有効活用の追求、(4)研究所の会員全体に(さらには広く労働運動の活動家に)開かれた研究所活動の組織化などに留意し、04年定例総会(05年7月)までに一定の成案を得て、総会で当面の改革目標を設定する方向で検討している。
 研究所の設立主旨および規約の内容を、今日の時点であらためて確認・発展させ、調査研究の課題設定のあり方を実践的、効率的に行なうため、(1)数年来追求してきた労働総研の「21世紀研究課題」を、最近の情勢や財界戦略との関わりで、さらにどう深めていくか、(2)「21世紀研究課題」との関連で、労働問題にかかわる基礎研究をどう総合的系統的に前進させていくか、(3)全労連の「目標と展望」との関連で、研究課題をどう深め具体化していくか、(4)研究課題を深めるうえで、日本共産党第23回大会等で提起されているような新しい理論的政策的論点をどう参考にしていくかなどの議論が行われている。
 全労連をはじめ、労働組合の財政事情が厳しくなる中で、研究所の財政構造についても改革が求められている。財政改革の下での調査研究活動をリアルに見通した調査研究活動を考える必要がある。プロジェクト・研究部会の再構成方向についての仮説として、(1)常任理事会の決定する重点研究課題にしたがって設置されるプロジェクト、(2)全労連等の実践的要請に応えて行なうプロジェクト・部会研究会活動、(3)常任理事会が承認した研究部会活動のあり方(現在進めている研究テーマについては、04年度(05年6月)末までに結果を出して、いったん終了する。それ以降は、検討委員会の提言にもとづく総会方針にしたがって研究部会等を再構成していく。)等がある。
 以上のような調査研究活動の検討や改革を一挙にすすめることは不可能に近いので、常任理事会での議論だけでなく、広く英知を集め、より豊かな内容にするため検討を深めていく。
 犬丸:アジア・アフリカ研究所はゼミ生制度を創った。その中から活動家が育った。国公立大学が独立行政法人化され、石原が都立大学の破壊・再編を強行している。新しい大学・アカデミズムの再編攻撃に対して、インターカレッジ的な研究体制をつくる必要がある。その点でも労働総研の出番だ。研究員制度を導入したらどうか。
 萬井:大阪民主法律家協会は、弁護士、研究者、労働者の三者構成で創られている。民法協の下に研究会をもって、実利と結びつけた研究を行っている。
 丹下:愛媛大学ではインターンシップに積極的にとりくんでいるが、個人的には、民商や県労連などの運動団体での研修も計画したいと考えている。学生に対する特別な対策を取る必要がある。

閉会の挨拶

大須眞治事務局長

 今日はさまざまな意見が活発に交わされ、豊な成果を上げたと思う。大木代表理事の提起に関連して議論された問題は、研究所の将来に関わる若手育成の問題でもあり、本日の議論を参考に、全体で充分議論し、英知を結集していきたい。

[各研究部会から事前に提出された報告書]

賃金・最賃問題研究部会報告
I 2003年度の研究実績

1) 日本における横断賃率の可能性
(1)過去の横断賃率論争の理論的整理(2)労働組合(電機等)職種別賃金要求の検討(3)連合評価委員会の新しい賃金論の評価(4)年齢別横断賃率の検討などについて、系統的な検討を行った。
2) 1)に関連して成果主義賃金および女性・非正規の賃金における均等待遇の問題については、部会の直接的研究テーマではなかったが、部会メンバーの多くが積極的に関わり、労働総研プロジェクト報告として出版されている。

II 2004年度の計画
以下の課題を予定している。
 1)日本における横断賃率の可能性の検討の総括
 2)非正規雇用を含めた均等待遇問題の課題、そのあり方の検討
 3)成果主義賃金について、その実態の解明
 4)最低賃金制とナショナル・ミニマムについて

社会保障研究部会報告
 全労連の最低保障年金制度案の作成プロジェクトに公文昭夫と唐鎌直義が派遣されたたこともあり、社会保障部会の研究例会は、昨年7月までに2回しか開催できなかった。昨年は厚労省の年金改革案が出されたために、研究会は2回とも年金がテーマとなった。
 最低保障年金制度案が不十分ながらも一段落着いた一方で、部会が早急に取り組まなければならない課題は、生活保護制度の改悪をはじめとして山積している。
 情勢としての社会保障問題だけではなく、日本の社会保障制度をどのように再構築するか、根本的な方向性を考えなければならない。政策提案型の研究を進めるには、部会に参加される会員諸氏のお知恵を拝借しなければならない。

労働時間問題研究部会報告
 1昨年来、リストラ「合理化」攻撃への対処の鍵として労働時間短縮闘争の意義を明らかにする出版物の準備にとりかかってきた。しかし2004年3月時点ではいまだ具体化していない。理由のひとつはワークシェアリングをめぐる日経連→日本経団連の動向の変化と国際的な経験への見解の不一致があった。
 出版物のレジュメの最終検討会を行い、分担を決めて執筆に入る。
出版物レジメ:「労働時間短縮と人間らしい働き方を取り戻す大運動へ(仮題)」


 1.労働時間短縮闘争の今日における意義
 2.労働時間短縮闘争が世界的に広がる必然性について
 3.日本やアメリカの新自由主義的多国籍企業の労働時間管理
第1章 財界の労働時間破壊策は日本の労働者に何をもたらしているか
第2章 時短闘争の現状と政府・財界の労働時間政策
 1.わが国の労働時間短縮闘争の経過と現状
 2.21世紀初頭での政府・財界の労働時間政策の特徴点
 3.今日のグローバル化のもとでの政府・財界の21世紀戦略とリストラ「合理化」
第3章 国際的な時短闘争の歴史と到達点・その意義
第4章 今日におけるわが国での労働時間短縮闘争の意義とその方向
むすび 国民的な反転攻勢へのエネルギーの鼓舞

女性労働研究部会報告
 当部会はほぼ毎月研究会を行ってきた。取り上げたテーマ及びその概要は以下の通りである。
 1.主な産業(企業)における女性労働力活用戦略の現状について:(1)トヨタ自動車、(2)伊藤忠商事、(3)日本IBMについて、それぞれから報告者を招き新たな企業戦略の一環としての女性活用策とその実態、労働組合の対応、課題等について聞き取りを行い討義した。共通する特徴は、(1)正規と非正規(とくに最近は派遣)の置き換え(トヨタでは男女)による安い労働力としての女性活用。(2)個人単位の成果主義・スキルアップを含む目標管理など競争原理による過酷な「男女機会均等」の女性活用。(3)これらの一方での各種ファミリーフレンドリー施策、セクハラ対策等の重視(とくに日本IBMのこれら施策は日本の一般企業に比べ多彩「先進的」)。(4)これら施策の反映として、幸せな家庭よりも「仕事」が生きがい(伊藤忠商事)、将来不安の第一は「自分のスキル不足」(日本IBM)など、女性労働者の意識変化も指摘され注目された。来年度も引き続き行う予定である。
 2.男女平等問題について:(1)厚生労働省「男女間の賃金格差問題に関する研究会報告」(02年11月)、(2)兼松商事の男女差別是正についての東京地裁判決(03年11月)、(3)大沢真理『男女共同参画社会をつくる』(日本放送出版協会)、等をとりあげ、検討した。
 労働総研「基礎理論プロジェクト」が作成した「報告」(個人単位化)についても、改めて討議を行った。
 3.非正規雇用問題について:生協労連が取り組んでいる「正規職員とパートの均等待遇推進への試案」について、試案執筆者の八谷副委員長から報告を受け討議した。あわせて、全労連臨時・パート連絡会の「指針(厚生労働省)活用の具体策」についても討議した。
 4.労働組合女性部の運動課題と現状について:当部会メンバーの全労連・中嶋女性局長の報告を受け、全労連、連合の女性政策、とくに全労連が提起している労組の意思決定機関への女性の参画推進(3割目標)と女性部のあり方、全労連および中央単産に設けている「男女平等推進委員会」の状況など、実践的課題について討議した。

中小企業問題研究部会
 1.昨年7月の総会以降4回の研究部会(うち2回は公開)をひらき、前年度から目標としている『今日の中小企業問題と労働運動』(仮称)の書籍発行をめざしている。この間の研究によって、(1)書籍の目的、(2)内容のポイント、(3)理論的な検討事項、(4)目次案(章建て)などを検討、具体化してきた。1996年に出版した『中小企業の労働組合運動』と違う点は、今日、各産業で直面している産業空洞化、新自由主義とネオ・コンの優勢、グローバル化の進展など「中小企業問題」の解明を正面に据えること、また、その解決をめざす運動も労働組合に限定せず、業者、市民団体、地域住民、NPO、青年、学生、政党など広範な勢力との共同の発展を解明することである。現段階では、6つの章・節立てとその内容についての討議がすべて終了した。近く、執筆作業に入るが、原稿の点検作業を繰り返すため出版までにはあと数ヶ月を要する。章・節立てと内容の具体化(担当者=執筆者とは限らない)は以下の通り。
 序文・中小企業問題と労働運動(総論)、第1章・日本経済の構造変化と中小企業問題。改革の方向(吉田会員)、第2章・政府・財界の中小企業政策の新段階と転換運動(相田会員)、第3章・中小企業の労働者の状態変化の特徴と運動(金田会員)、第4章・地域振興と中小企業問題をめぐる労働運動(相田会員)、第5章・中小企業における新たな労使関係の確立(坂田会員)、第6章・中小企業における労働運動の課題(小林会員)
 2.研究活動の合間にも、直面する中小企業問題について適宜報告しあい、中小企業における労働組合運動の発展に寄与してきた。とくに昨年8月以降、改正下請二法の政省令策定にあたり、全労連、関係単産と部会が協力し、意見書提出や当局との懇談によって、(1)下請振興基準の「国等の他の施策との関連」に「労働基準・安全衛生の確保…十分に配慮すること」を追加させ、最低賃金を含む労働基準の確保、配慮を明文化させた、(2)下請代金法運用基準では「適用対象取引の例示」「書面交付の義務」「業種ごとの違反事例」を新設させた、(3)下請代金法では取り締まれない荷主と運輸業・倉庫業との取引を、独占禁止法に「特殊指定」させるなどの成果を引き出した。また、建交労、MICの「下請二法学習会」に当局担当官が講師を引き受け、全労連・春闘共闘の「周知ビラ」(8万枚)を最終校正してくれるなど、公取委、中小企業庁と全労連との連携強化に部会として貢献してきた。4月1日施行を前に開催された夜間の学習会(生協労連、東京春闘共闘、映演総連)や懇談会には講師・説明員なども引き受けている。
 1月の研究部会で報告された「企業の社会的責任論」(平澤会員)が時宜を得たもので、直後に厚生労働省が「雇用における社会的責任」の基準を6月目途に策定すると発表した。現状では部会内での検討にとどまる可能性があるため、全労連として改めて平澤会員を招いての学習会を開催してもらい、月刊「全労連」に寄稿を要請している。この内容も新しい書籍に反映させていく。

国際労働研究部会報告
 国際労働研究部会では、4月以降ほぼ月一回のペースで研究会を開催してきた。テーマは「世界の労働者のたたかい」第10集の編集と各国の労働組合運動の現状についての研究であった。「世界の労働者のたたかい」の編集については、国別担当者を若干変更するとともに同誌が10集という区切りの年を迎えたので、何らかの特集的記事を載せる必要があるという判断から、その内容をどうするかが論議された。様々な論議を経て、最近10年の労働問題・労働運動の動向を歴史的に概観できるような統計指標を掲載することとした。また、全労連の取組とも関連して、主要先進国で今年ほぼ共通に見られた年金制度改悪の動きとそれに対するたたかいを各国別の記述の中に含めること、組合員拡大のたたかいの現状についても触れることを申し合わせた。
 各国の労働組合運動の現状については、研究会の度ごとに特徴的な動きが話題提供され、会員にとって良い勉強の機会になっているが、今年度は特に次のような主要な機関・国について一回の研究会をあてまとまった報告を聴き、討論する形を取り入れた。取り上げた機関・国と発表者はEU(宮前)、ドイツ(島崎)、イギリス(木暮)、イタリア(斉藤)である。そのほかILOや社会フォーラムの動きなどについてもそれらに参加した全労連メンバーからビビッドな動きが紹介された。
 今年度は、公開研究会のような形での啓蒙・宣伝活動は取り組めなかったが、2004年度には「世界の労働者のたたかい」を素材にして公開研究会を開きいと考えている。そのためにも「たたかい」を3月中には発行できるよう努力中である。

政治経済動向研究部会報告
 経済的にも政治的にもいっそう厳しい情勢の展開の中で、実践的な調査研究課題に取り組んできた。日本資本主義の現状と今後をどう見るかについての久留間報告、産業「空洞化」の実状と問題点を国際産業連関表分析の手法に基づいて解明した報告(木地会員)、足利銀行破綻・国有化問題に関する地銀連現地調査への参加(今宮会員、藤吉会員)に基づく、公開研究会及びシンポジウムを地銀連などと協力して開催することを予定している。

 2004年度の調査研究計画
 労働者・国民が情勢との関連で解決を迫られている諸問題について、2つの角度から接近したい。
 1)研究部会独自研究課題の推進
 (1)日本の産業や地域経済が今日直面している危機的状況を構造的に解明し、そこでの「労働改革」の重要性を浮き彫りにする、(2)「市場原理主義」をかかげる財界・政府の経済政策を、産業・地域経済・中小企業・労働政策の問題を中心に、体系的に批判する、(3)産業空洞化・地域経済衰退のさらなる急進展と、中小企業・零細業者危機の激化に対応して、積極的な日本経済再興への政策提言、(4)労働政策や労働組合の改革課題とその具体化の方向の解明、(5)労働組合運動を中心に、広範な勤労諸階層との協力・共同にと、共同提言・改革の条件解明、等が独自な研究課題となる。
 2)情勢分析の系統的蓄積
 上記の研究課題とも連動させながら、「春闘白書」や他のプロジェクト・研究部会の研究成果との有機的連関を強め、情勢分析を系統的に深めていく。例えば、(1)イラク問題の分析、(2)来年度予算と国・地方財政、(3)足利銀行問題と金融再編、(4)「年収300万円時代」と労働運動、(5)自治体リストラの新段階、(6)参議院選挙と労働組合、(7)産業空洞化と「アジア自由経済圏」問題、等々について、できるだけオープンな形で研究会を開催していく。

青年問題研究部会報告
 2003年度下半期には、フリーター、青年労働の非正規化、失業問題を検討対象にしてきた。全労連青年部をはじめ、民主的な青年団体の活動及び政策について知見を得てきた。さらに、失業問題及び青年の労働を通じての自立援助の課題を検討していく。さしあたり、政府の進めている自立援助政策─若者自立・挑戦プランの具体化を検討する。

労働運動史研究部会報告
 当研究部会は、2003年度定例総会において、新設の検討と準備を開始することが確認され研究部会である。
 準備会で責任者に互選された犬丸氏と研究部会メンバーが、総会以後の第一回常任理事会で確認されたので、調査活動を開始した。
 当研究部会は、討議の上、調査研究の範囲を、戦後労働運動史―終戦直後から全労連の結成にいたるまでの期間とすることを確認した。そのため、(1)研究史の概括的な特徴、(2)戦後労働運動史の時期区分、(3)研究史の到達点、などについての報告・検討を数次にわたって行ってきた。
 そのような戦後労働運動史研究の成果の上に立って、当研究部会新設の主要な任務でもある、労働運動経験者の聞き取り対象者の選定も進めている。現在、産別会議関係者として数名、統一労組懇から全労連設立に至る関係者として数名が検討されている。すでに名前の揚がった関係者のヒヤリングのための準備資料を作成中である。「労働運動関係者からの聞き取り、資料収集の機会がますます制限される状況が生まれている」ということが当研究部会の新設の大きな動機であったことからしても、ヒヤリング対象者の拡大を早急に検討していくことが求められる。

関西圏産業労働研究部会報告
I 2003年度活動の概要
 関西圏産業労働研究部会の今年度の研究会活動は、以下の通りであった。
 2003年7月21日 研究報告「日本の確定拠出型年金」(吉田健三氏)、出版プラン「現代日本の賃金─賃金理論と賃金闘争─」の提示(三好正己氏)
 2003年9月20日 研究報告「現代日本の不況と資本循環−不況のもとでの賃金を考えるために」(丹下晴喜氏)
 2003年11月22日 研究報告「今日の賃金制度の動向と社会的収入の再分配」(上瀧真生氏)
 2004年1月31日 研究報告「『成果主義賃金』をめぐる諸問題」(浪江巌氏)
 2004年3月20日 個人執筆プランの検討

II 研究会活動の総括と今後の方向性
 2003年度の研究活動は、今不況時における労働者階級の全般的な状態悪化をふまえて、今日の時点での賃金問題を雇用や社会保障と関連させた広い視野で理論的に解明することを目標とした。研究会は、三好正己氏の課題提起をもとに、研究会参加者が現時点での賃金問題に対してそれぞれの視点からアプローチする形で研究報告をおこなった。残念ながら、形ある成果に結実させるまでには至らなかった。事務局体制の変更もあり、関西圏の賃金問題の実態分析も実現できなかった。
 今後の方向性としては、発表機会を捉えて、本研究会の討論をふまえた各個人の研究成果を個人論文として発表していくことを目指す。個人論文の積み重ねをふまえて、出版企画実現のめどをつけたい。また、労働者との協力関係を再構築して、関西圏での賃金問題の実態分析の準備もすすめたい。

「調査研究活動のあり方」検討委員会中間報告  04/3/26 検討委員会
(1)本委員会設立の目的
 ・労働総研の調査研究活動の実態と問題点を洗い出し、必要な改善・改革課題を明らかにする。
 ・労働運動の期待に応え、調査研究活動の力量を高めるため、次のような点に留意して、部会・ブロジェクト研究の再編成に取り組む。
 (1)情勢に対して、柔軟かつ大局的に研究できる体制を追求する、(2)研究部会の設定・運営は、できるだけ運動課題と緊密にむすびついた形ですすめる、(3)調査研究活動における財政の効率的な有効活用を追求する、(4)研究所の会員全体に(さらには広く労働運動の活動家に)開かれた研究所活動を組織化していく
・さしあたり、04年度(05年7月の総会)までに一定の成案を得て、総会で当面の改革目標を設定する。

(2)検討をすすめるうえでの問題意識(例示─これまでの討議の中から)
・研究所の設立主旨および規約の内容を、今日の時点であらためて確認・発展させる必要がある。
・調査研究の課題設定のあり方をいっそう深める必要がある。例えば、(1)数年来追求してきた労働総研の「21世紀研究課題」を、最近の情勢や財界戦略との関わりで、さらにどう深めていくか、(2)「21世紀研究課題」との関連で、労働問題にかかわる基礎研究をどう総合的系統的に前進させていくか、(3)全労連の「21世紀初頭の目標と展望」との関連で、研究課題をどう深め具体化していくか、(4)研究課題を深めるうえで、日本共産党第23回大会等で提起されているような新しい理論的政策的論点をどう参考にしていくか、といった視角から。
・各部会・プロジェクト研究の現状把握のうえに立って、それらの総合的統一的発展を保障するような体制をどう確立していったらよいか。部会=プロジェクトの独自性を尊重しつつ、相互の連携・協力関係を発展させるとともに、情勢=運動課題への全体的統一的取り組みをどう強化するか、が問題である。
・統一的総合的取り組みのためにも、研究所のオリジナルな系統的調査をどう組織するかが問題である。
・会員個々人の研究成果をどう結集し研究所全体の力としていくか、運動家と研究者との共同研究をどう拡充し発展させるか、会員間の活発な討論を発展させるためには、どんな方策をとったらよいか、等々といった問題を検討する必要がある。
・会員相互の協力・共同を発展させるうえでも、すべての会員に研究所活動への参加の機会を保障していくことが大切であろう。この点ではとくに、地方での研究例会の持ち方や会員の研究所活動への参加のあり方を考える必要があるのではないか。
・若手研究者の育成・結集について、特別の方策をとる必要はないか。また、女性研究者の役割強化をどのようにはかっていくか。
・全労連をはじめ、労働組合の財政事情がきびしくなるなかでは、研究所の財政構造についても改革が求められているのではないか。必要とされる財政改革はどのようなものか、また、そのもとでの調査研究活動はどのような条件の下に組織されることになるか、それらの点をリアルに見通した調査研究活動を考えておく必要がある。

(3)プロジェクト・研究部会の再構成方向の仮説
 上記に例示したような論点の検討のうえにたって、また、いままでの調査研究活動の成果をいっそう発展させる方向で、これまでのプロジェクト・研究部会等の活動を、以下の3つに分類し再構成していってはどうか。
 (1)常任理事会の決定する重点研究課題にしたがって設置されるプロジェクト研究
 (2)全労連等の実践的要請に応えて行なうプロジェクト・部会研究会活動
 (3)常任理事会が承認した研究会活動
 (現在進めている研究テーマについては、04年度(05年6月)末までに結果を出して、いったん終了する。それ以降は、検討委員会の提言にもとづく総会方針にしたがって研究部会等を再構成していく。)

(4)実施計画策定の方法と手続き
 以上のような調査研究活動の検討や改革を、すべて一挙にすすめることは不可能である。実施計画をつくって、緊急度の高く重要なものから、着実に検討し改善・発展をはかっていくべきであろう。


2003年度第3回常任理事会報告

 労働総研第3回常任理事会は、3月6日、13時30分から17時まで、牧野富夫代表理事の司会で、労働総研2階会議室で開催された。
 常任理事会冒頭の研究会で、小西陽一全労働中央執行委員から「労災保険・職業紹介の民営化」問題について報告された。討議で、この問題は労働者の権利の後退をはじめ、雇用・労働諸条件へ重大な悪影響をあたえる問題であり、これに反対する労働組合・労働者の広範な共同を強めることの重要性が確認された。

I 報告事項
 1)足利銀行破綻現地調査について、2)全労連の組織拡大推進基金カンパへに応えて労働総研が会員に呼びかけたカンパへの礼状が熊谷金道全労連議長よりカンパを寄せた会員へ送られたことについて、3)全労連編『世界の労働者のたたかい2004─世界の労働組合運動の現状調査報告(第10集)』が国際労働研究部会の協力で発行されることについて、4)事務局の活動および5)研究部会活動状況について、藤吉信博事務局次長が報告した。

II 協議事項
1)入会員の承認について、大須眞治事務局長より報告があり、承認された。
2)全労連との協議について、および
3)設立15周年記念行事について、大須眞治事務局長より、労働総研は今年12月に設立15周年を迎えるので、2004年度定例総会から2005年度定例総会までの1年間を設立15周年年とし、(1)全労連の全面的な協力を得た設立15周年記念シンポジウム「これでいいのか日本の社会、これからどうする日本の労働運動」の開催、(2)設立15周年行事にふさわしい出版計画を検討する、ことが提案された。討議の結果、(1)は全労連のリアルな調査を土台にシンポジウムを行い、実態から研究者が学ぶ場とすべきであることが強調され、11月、12月に結成・設立15周年を迎える両組織の協力・共同を強化する実りある事業として十分時間もかけ企画を成功させることが重要であることが確認された。(2)はシンポジウムを練り上げて出版してもいいのではないかという意見が出された。このような立場を踏まえ全労連との協議に臨むことが確認された。
4)プロジェクト・研究部会代表者会議(本号参照)の開催について、大須眞治事務局長より提案があり、一部修正して確認された。
5)研究部会活動のあり方検討委員会について、大木一訓代表理事より提案があり、討議の結果、いままでのプロジェクト・研究部会・調査研究活動の成果を発展させる形で、研究所の調査研究・政策提案活動のあり方を、財政状況をも考慮して、より実践的・効率的に再編する、労働組合研究の問題は15周年記念事業の中で具体化する、ことなどが確認された。
6)「不安定就業労働者の実態と人権プロジェクト」のまとめについて、伍賀一道常任理事より、3月末までに研究を終了し、夏休み前までには最終原稿を完成し、出版したい旨の報告があり、了承された。
7)「基礎理論・理論問題プロジェクト」の進捗状況について、浜岡政好常任理事より報告があり、承認された。
8)「問題提起型」調査具体化の現況について、金田豊常任理事より報告があり、承認された。
9)人事検討委員会の活動状況について、牧野富夫代表理事より報告があり、承認された。
10)2004年度定例総会までの日程調整について、大須眞治事務局長より提案があり、討議の結果、以下の日程が確認された。
 (1) 第4回常任理事会(5月15日)
2004年度定例総会方針案作成のための自由討議
 (2) 第5回常任理事会(6月12日)
企画委員会・事務局が作成した素案に基づく討議
 (3) 第6回常任理事会(7月3日)
第1回理事会に提出する04年度定例総会議案などの最終確認
 (4) 第1回理事会(7月3日)
 (5) 公開研究会=不安定雇用労働者の実態と人権プロジェクト(第1回理事会終了後)
 (6) 総会議案・招請状発送(7月15日)
 (7) 第2回理事会(7月31日)
04年度定例総会議案の最終的確認
 (8) 2004年度定例総会(7月31日)
 (9) 懇親会(7月31日)
11)2004年度総会議案第一回目のフリー討議を行った。

2月〜4月の事務局日誌

2月 7日 第3回編集委員会
9〜10日 足利銀行破綻現地調査(今宮・藤吉)
26日 全日本民医連第36回定期総会へメッセージ
3月 5日 事務局会議
6日 第3回常任理事会
12日 日高教第20回定期大会へのメッセージ
全労連との懇談(大木・大江・牧野・大須・藤吉)
13日 東京私大教連25周年記念祝賀会(大須)
26日 第2回調査研究活動のあり方検討委員会
27日 第4回編集委員会
第3回企画委員会
プロジェクト・研究部会代表者会議
4月 17日 第4回企画委員会

2〜4月の研究活動

2月 25日 労働時間問題研究部会─出版物の章立ての最終整理ほか
27日 女性労働研究部会─女性労働者の運動課題〜全労連・連合の女性部方針などから
28日 基礎理論・理論問題プロジェクト─生活保護の実態
3月 1日 不安定雇用労働者の実態と人権プロジェクト─報告書のまとめ
12日 国際労働研究部会─「世界の労働者のたたかい2004」について
基礎理論・理論問題プロジェクト─家計構造の変化から見た固定費の増大、家計費の硬直化の分析
15日 労働運動史研究部会─戦後日本労働運動史
24日 中小企業問題研究部会─出版物の章・節立ての具体化について
30日 労働時間問題研究部会─出版物の章立ての最終整理ほか
4月 2 日 国際労働研究部会
6日 女性労働研究部会─不安定雇用労働者の実態と人権プロジェクト「報告書」を中心に
12日 賃金最賃問題研究部会─リンダ・ブルム『フェミニズムと労働の間』について
15日 政治経済動向研究部会 (公開)─新局面を迎えた小泉・竹中「金融改革」
(「労働総研ニュース」5月・6月合併号掲載予定)
17日 基礎理論・理論問題プロジェクト─最低賃金とナショナルミニマムの関連
20日 青年問題研究部会─全労連「青年要求大綱(案)」について
21日 労働時間問題研究部会─出版物の章立ての最終整理ほか
30日 中小企業問題研究部会─「中小企業問題と労働運動」の構成、執筆分担ほか