労働総研ニュースNo.167号 2004年2月



目   次

・小泉『構造改革』の行きつく先─ 足利銀行・新生銀行問題にふれつつ
・雇用・失業闘争の現状と課題
・2003年度第2回常任理事会報告




小泉『構造改革』の行きつく先─

足利銀行・新生銀行問題にふれつつ

今宮 謙二

はじめに

 小泉「構造改革」のもと、強行的に大銀行再編を進め、現在は地方銀行の再編・整理という新しい局面に移りつつある。昨年11月におこなわれた足利銀行の「特別危機管理銀行」(一時的国有化)がそのキッカケとなっている。それに加えて一般の経済界では最近大きなショックが生じた。2月9日旧日本長期信用銀行を引き継いだ新生銀行が株式上場の売り出し価格を525円と発表し、19日に上場された株価の最終値段が、その約1.6倍にあたる827円をつけたことである。さすがに翌日は700円台に落ちこんだが、かりに800円台を維持するならば、株主であるリップルウッドを中心とする外資系グループは、わずか1210億円の資金投入で全体として約1兆円以上の利益を手にすることとなる。(今回の売却収入約2500億円、残りの株式保有時価約7600億円)しかもこの利益に対して日本には課税権がない。一方新生銀行の政府の公約資金注入額約7.8兆円のうち、すでに3.6兆円の損失は確定している。政府の引き受けた優先株3700億円は今後新生銀行の株価が上昇すれば売却益はでるものの、結局公的資金の最終損失額は4兆円から5兆円に達するとみられている。これだけの税金負担を国民におしつける一方で外資系ファンドに巨額な利益を保証した現実に多くの人が納得しないのは当然であろう。しかし、この新生銀行問題は、小泉「構造改革」そのものの実態を明らかにしたものである。つまり、小泉・竹中プランの行きつく先がこれであるといえよう。

1 小泉「構造改革」をどうみるか

 小泉「構造改革」はすでに3年以上経過した。これをどうみるかについて、反対する立場からすでに破綻したととらえる見方が支配的である。小泉政権発足時に発表した第1次骨太計画によれば、すでに今年は民間主導による景気回復過程にあったはずである。昨年10〜12月に実質成長率が年率で7%に達し、政府は景気回復が進んでいるとみている。しかし実態はそうではない。GDPデフレーターが2.6%というもとで実質成長率が高くつくりあげられた数字という面だけでなく、民間需要の最大要因である国民購買力は冷え切ったままだからである。2003年の家計最終支出は実質で1%増にすぎず、名目では逆にマイナス0.4%である。このように実質は高成長率でも名目は2.6%にすぎず、それも輸出や一部大企業の設備投資増加によるものであり、本格的な内需拡大による景気回復軌道にのったものではない。この意味で不良債権早期処理をおこない、景気拡大への道をねらった骨太計画そのものは実質的に破綻したとみてよい。しかし、小泉「構造改革」路線をこの面からのみ判断してはならない。
 小泉「構造改革」の本当のねらいは別なところにあったと思われる。それを一言でいえば、日本の社会・経済・政治体制そのものをできうるかぎりアメリカの望む形へ転換させようとするものである。小泉政権のねらいをこのようにみれば、小泉路線は破綻ではなく、着々と進んでいるといえよう。そして、これを言いかえれば、日本の国家的対米従属が一段と深まったことである。このような従属過程がより深まってきたのは、1990年代を通じてである。この意味で小泉「構造改革」の本当のねらいを理解するには、90年代を総括する必要がある。ここでは、くわしく検討できないが、次に簡単にまとめてみよう。

2 1990年代の三つの特徴

 1990年代は「失われた10年」「長期不況の時代」といわれているが、これはあくまでも一つの側面でしかない。90年代は三つの特徴をもっている。第一はいま指摘したように、長期的不況の10年である、年平均1%という成長率をみても明らかである。ただし10年間一貫して1%台の成長率ではなく、95、96年には3%台に達した点も見落としてはならない。この時に自民党政権は消費税率アップ(1997年4月)など巨額な負担を国民におしつけ、急速に景気は悪化した。つまり、自民党政権の景気対策の失敗がこの時代にはっきりとしてきた点もみておく必要がある。
 第二の特徴はこの10年間を通じて日本経済の体質が変化してきた点である。92年からはじまった緊急経済対策は大手ゼネコン型公共事業を中心としておこなわれ、それが景気上昇に一つも効果がなかった。つまり、これまでの浪費型公共事業は景気対策として限界に達したのがはっきりとしてきた。さらに95年以降の公定歩合ゼロ台という超異常低金利でも景気に役立たない点も分かってきた。さらにこの10年間を通じて財政赤字が巨額化し、財政危機が日本経済の構造的問題として定着した。また産業空洞化にともなう高失業の出現と経常収支黒字幅の縮小化という現象もあらわれた。これらの日本経済体質変化は基本的にこれまでの大企業中心体制強化によってあらわれたのであり、社会的にもさまざまな矛盾やゆがみが生じてきた。政治的には支持基盤の変化にともなう自民党の没落過程、経済的には大企業の利益向上の一方中小企業衰退と国民生活犠牲という二極化現象、社会的には利潤中心の効率化社会にともなうモラル低下などなどである。
 第三の特徴はアメリカの対日圧力が強まり、日本の対米従属が経済・金融面と軍事・政治面の一体化を通じて、より深まってきた点である。これは95年以降、金融ビッグバン、銀行再編とともに日米安保共同宣言、新ガイドラインなどが成立したことで明らかである。

3 足銀国有化の問題

 小泉「構造改革」は90年代を通じてあらわれた長期不況、経済体質変化、対米従属強化の三つを総合的に解決するねらいがあったといえよう。しかし、それはあくまでも対米従属を軸として大企業中心体制強化をはかる限り、90年代の矛盾やゆがみを根本的に解決するのは不可能である。
 とくに小泉「構造改革」が対米従属強化をおこなうのは、日本の金融システムをアメリカ型へ転換させようとしたことにあらわれている。不良債権早期直接処理をおこなうことで、すでにアメリカ型をめざす四大金融グループをもとに産業再編をいっそう強力に進め、外資系ファンドの利益を保証する体制をつくりあげた。大銀行の不良債権処理はすでに山を越えた現在、小泉「構造改革」は新しい局面に入りつつある。
 この新しい局面は先にのべたように足銀一時的国有化である。銀行再編は大銀行から地方銀行などの中小金融機関までも対象となってきた。すでに以前から「オーバーバンキング論」など銀行数がおおすぎる議論をジャーナリズムで広まっていたが、いまそれが実行段階となってきたわけである。中小金融機関の整理・再編にはとくに二つの意味がある。一つは整理することで大金融機関の系列化が容易におこなわれること、二つは地銀などと密接な地域の中小企業の再編・倒産をおこなわせ、外資への身売りができる条件づくりである。
 そのために政府としては足銀を一つの前例として今後全国的に広げる必要がある。しかし、足銀を一時国有化するにはいくつかの問題がある。第一に昨年3月期、自己資本比率4.5%もあった足銀を破綻に導いた政府の強引な圧力である。中央青山監査法人が足銀との交渉で態度を変え、税効果資本をゼロとしたのは明らかに金融庁の圧力の結果である。そのため昨年9月の中間決算では1023億円の債務超過となり、一時国有化となってしまったのである。第二の問題は、このような政府の不当な圧力に対して、地方自治体が反対の意向を表明しながら、現実的にはっきりとした対応ができない点である。政府の決定を非現実的・不法と県知事は批判しながらそれへの対応策が具体化されていない。第三に足銀の取引先である地域の中小企業への対策が必ずしも十分でない点である。県としては600億円の制度融資拡充をおこない、昨年末までに200億円以上の利用があり、これで十分というが果たしてこれで良いのかの問題がある。本当に資金が必要な中小企業にこの制度が十分に利用できるのか、そしてこの程度の額で大丈夫だろうか。第四に足銀に働く人びとへの対策である。すでに足銀は賃金カット、300人の首切りを発表している。まじめに働いている人びとのみが犠牲になる方向でのみ処理される小泉「構造改革」の本質がここにもあらわれている。

おわりに

 新生銀行の再上場と足銀の一時国有化問題は小泉「構造改革」のねらいの実態を明らかにしたものである。アメリカの方針を忠実に守り、外資系ファンドの利益を保証する一方、日本国民の生活や中小企業などを犠牲にするのが小泉「構造改革」そのものである。この「構造改革」のもと日本は経済・金融面と政治・軍事面が一体化しつつ、対米国家的従属を一段と深めてきている。この体制の最終の目標が憲法改悪であろう。アメリカとともに「戦争国家」となり、アメリカ世界戦略の有力なにない手となるのが、小泉政権の目標といえよう。小泉政権は同時に軍事面のみでなく、経済面でもアメリカの「双子の赤字」を必死となって支え、外資系ファンドの利益を最大となるよう努力しているのである。
 アメリカの方針を忠実に守るだけの小泉政権を一日もはやくやめさせる運動を広めるべきである。

(いまみや けんじ・会員・中央大学名誉教授)


雇用・失業闘争の現状と課題

平川 道治

1 一地方(大牟田)からの考察

◇ 失業者の実像
 建交労大牟田支部は、三池炭鉱の閉山に伴い、何の保障もなく放置されたじん肺患者の闘いを全面的にバックアップし、「あやまれ・つぐなえ・なくせじん肺」を合い言葉に、全国闘争の中で勝利に導いてきました。三池炭鉱じん肺訴訟を勝利和解で解決し、三池一陣、二陣、三陣が、それぞれ新組織で、残された全国のじん肺闘争を支援する体制ができた段階で、「失業と貧乏・戦争に反対」の旗を全日自労時代以来一貫して掲げる建交労の基本課題「雇用・失業闘争」に本格的に取り組みはじめました。
 私たちが、雇用・失業闘争を始めるに当たり、対象としたのは、いわゆる単純労働市場といわれる、失業者の群であります。
 雇用を守り、新たな失業を生み出さない闘いは、当然強化されなければなりませんが、340万人といわれる完全失業者、パート、アルバイト、派遣労働者など、不安定雇用を含めると1000万人を越える人々が、無収入、短期就労、無権利状態で将来生活設計が成り立たない不安な生活を強いられています。
 昨年2月には2回にわたり「働きたいみんなのアンケート」調査を行い、一定の実態はつかんでいましたが、単発に終わり、後の手だてができていませんでした。
 深刻化する失業者の実態に迫り、失業者の組織化と闘いの構築のためには、強固な意志と十分な手だてが必要なことから、失業闘争の専従を配置することを決定しました。
 活動としては、当面、3ヶ月間、毎週2回ハローワーク前にてビラ配り活動を展開しました。要員は専従と自労OB、公共分会(後注)の仲間7〜8名、時間は午前8時40分から正午まで、ビラの内容は失業者に役立つ情報、人間としての権利、法律関係など、個別の相談がある場合は誠実に対応し、一つ一つ解決していく事を確認しました。
 9月第1週より、ビラ配りを始め、現在まで19回、求人案内が水曜日に入れ替わることから、この曜日に定め、この日は公共分会で炊き出しを行い、失業者の人達がいつでもたまり場に集まり、昼ご飯が食べられる体制も整えました。
 最初の段階では、ハローワークは9時からと思っていましたが、求人情報を見る48台の検索機は8時30分から稼働しており、ほとんど席はふさがっていました。毎日来ているという常連さんもあちこちにたむろして、一生懸命情報交換をしている状況でした。
 「あんたたちゃ何な、仕事ば世話してくれるとな。」、「お金ば貰ってしよるとな、そんなら俺にもさせんな」等といって怪訝な感じで見ていた彼らも、回を重ねるごとに、苦情やら、相談をよせる様になりました。
 「年齢制限をはずしてくれ。」、「求人票は男か女か分かるようにしてくれ。」、「アルバイト情報は毎日替えてくれ。」、「相談員はもっと親切にしてくれ、せめて面接ぐらい受けさせてくれ。」、「首切られたばってん、何も貰うとらん、どがんなるとな」、「残業代をもらっていない、どうしたらいいでしょうか。」、「求人案内と実際は全然違う。」、「ハローワークは日曜、祭日も開けてくれ。」等々、ありとあらゆる意見が寄せられ、私たちはそれらを整理し、個別の問題は事務所に来ていただき、一つ一つ誠実に解決の道を示していきました。
 職安を動かす事例、監督署と相談する事例、少額裁判も視野に入れ、私たち自身も大変勉強になりました。内容証明で残業代を取った人、未加入の雇用保険をさかのぼり、加入させ、雇用保険の受給を得るようになった人、解雇予告手当の問題では、自分からやめると言った言わないで対応が難しく、監督署も深く立ち入れない状況の人…。少額裁判も、相手が応じなければ本裁判しかないでは、何のための制度かと疑念を持たざるを得ません。ともあれ、私たちが、本気で運動していることは理解していただき職安交渉に、4名の失業者が参加しました。
 職安所長交渉は、組合側30名の参加要請に対し、会場がない事を理由に10名、ビラに交渉と書いてあるが交渉なら、受けられないなど、散々ごねていましたが、10月31日午前11時より、狭い所長室に組合側10名、当局8名がひしめき合い、行われました。

≪基本要求≫
(1) 1.雇用対策法第1条、この法律は、国が雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働力の需要が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮する事が出来るようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と、経済的、社会的地位の向上を図るとともに、国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成とに資することを目的とする。
2.職業安定法第4条、失業者に対し、職業に就く機会を与えるために、必要な政策を樹立し、その実施に努めること。
(2) 1.労働基準法第1条、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2.雇用対策法第3条、不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること。

 この基本要求を全面にたて、個別要求10項目の要求実現をめざしました。当局側は「福岡労働局独自で、就職支援プログラムを作り、地域の実情に合わせて取り組んでいる。」「求人開拓も2名の開拓推進員を配置し、常時企業訪問している。」「商工会議所ともタイアップし、ダイレクトメールを活用したアンケート調査などをしている。」「悪質企業には監督署と連体し、対応している。個別要求については、中身の改善を図りながら対応していく、労働局に上げるものは報告する。」「本日回答できない分については後日回答いたします」との対応でした。
 私たちは、今ある全ての機能、制度を活用すること、現状では機能していない、今後も必要に応じて交渉を持つことを告げ、交渉を終わりました。交渉終了後、たまり場で豚汁を食べながら、報告会を持ちました。これには失業者の人達、組合員を含め23名が参加し、報告を聞いた者は、「奴らは何もわかっとらん」、「失業者の本当の厳しさを知らん」などの意見が寄せられました。翌日、職安所長が直接組合を訪れ、職業転換給付金の現状、悪質企業のリストアップをすることを報告しました。後日、求人差し止めの企業1社の報告もありました。

◇運動の全国展開に向けて
 深夜のコンビニ店勤務から、建交労の専従に転身した森永君(28歳)は、「文章は書いたことがありません。苦手です。」と言っていましたが、なかなかどうして、校正のよき師を得て、19回すべて書いてきた。そのうえ、パソコンに堪能で、パワーポイントを活用し、市民集会、討論集会、学習会等、呼びかけがあればどこにでも出向き、スライドで雇用・失業闘争の実態を紹介し、「解りやすい」、「失業問題は今、大変な状況になっていることがよく解った」と好評を得ています。さらに、ホームページを立ち上げ、全国に向けて闘いを呼びかけている。12月4日には、日本共産党の仁比聡平国会議員候補、八記博春福岡県会議員、地元市議など、多数の党関係者が応援に駆けつけ、職安所長とも、交渉を行いました。その際、私たちのホームページが無料開設のため、アクセス数が少ないことを知り、仁比さんのホームページにリンクさせていただくことになり、現在、400件を越えることができました。また、同行した「しんぶん赤旗」記者が森永君を「ひと」欄で紹介したこともあり、全国の仲間から、励ましやら、運動の照会などもきています。
 私たちは、ホームページをできるだけ若い人達にみてもらいたく、試行錯誤していますが、まだまだ充分とは言えません。全国の仲間に教えていただきたいと考えています。
 雇用・失業問題は全国的課題です。全国でさまざまな取り組みがなされていますが、民青(民主青年同盟)の取り組みを除いては、おおむね事業団を活用しての雇用拡大になっているような気がします。このことは、新交付金事業とからめてすぐに役立つ重要な運動ではありますが、今日の失業実態はそのくらいで済む状況ではありません。意図的に作り出された単純労働市場には300万人を越える失業者の群れが存在し、奥田財界の手足と化した小泉と政権与党の下では300万人の失業は改善されません。構造改革と規制緩和の下で、雇用条件はますます悪くなるばかりで、就職しても定着できないシステムが構成されています。
 正社員が、パート、アルバイトに置き換えられる状況では、正社員の雇用がないのはもちろんですが、常用雇用でも最長で1年、それの更新か、期限付き、半年の雇用でも試用員期間が設けられ、見込みがあれば社会保険を掛けると言いつつ、なかなか掛けてくれないのが実態です。「ここの会社は何にもしてくれない。」と自分から辞める。すると同じ求人がまた出される。それの繰り返しです。公共職業安定所の紹介だからと就職しても、何にも良いことはない、求人票と実際が違いすぎるというのが失業者の声です。今は職安に対する信頼は崩れています。
 若者達は情報誌をたよりに就職していますが、ここでも定着率は2.9ヶ月です。無収入状態の失業者は増える一方です。国会議員や公務員に対する反発は強くなり、生活保護、自殺、犯罪は激増しています。単純労働(失業)市場に目を向けた運動がない。かつての公的就労、制度事業が終息しかけている現状では「仕事よこせ」の運動はむりではないかという意見もありますが、事業団でも限界があるのではないかと思います。
 私たちは、失業者によく北欧の社会保障の話をします。「税金の使い方次第ではこんなこともできますよ。」というとみんな一様に驚きます。情報化社会といっても、本当に必要なことは知らされていない、マスコミも操作されている実態ではないでしょうか。
 ホームページをあちこちに立ち上げ、本当のことを知らせ、雇用・失業の大運動を起こそうというのが、私たちの目標です。新交付金事業の自治体における存続の意見書(陳情)の準備もなされました。全国すべての自治体で採択を勝ち取るためにも大運動が必要ではないでしょうか。

◇私たちの要求──失業者にまともな仕事と生活保障を!
 建交労大牟田支部の小さな事務所にはおおきな看板が上がっています。「失業者にまともな仕事と生活の保障を」と書いてあります。失業者向けのビラにもそのタイトルを付けています。あるとき「まともな」が抜けたときがありました。すぐさまOB幹部から指摘を受け、「あの看板はだてに上げているのではない。」、「まともな」というのはそれで生活できる賃金をもらえる仕事(常用雇用)のことだ。仕事なら何でもよい、ということではない、また病気やけがで働けないときや、もともと働けない社会的弱者のために、社会保障制度としての生活保障が必要なのだ。まともな仕事と社会保障は車の両輪であり、同時にすすめなければならない。私たちは失業者に、「日本では失業保険が切れ、どうしても仕事が見つからなければ生活保護しかない。ヨーロッパには生活扶助制度があり、失業保険より少し悪く、生活保護より少しまし、これで2年くらい生活をしながら、職業訓練や就職のための勉強ができる、と話す。非常に関心も高く、「そんなものがあれば助かるのに」、と話していました。
 日本でも、トライアル雇用(現在3ヶ月)がある。これを一定の生活ができるように充実させ、期間も1〜2年として活用するほか、職業訓練校を出た者も、どんどん挑戦させれば、即戦力の問題も解決します。
 私たちは、大牟田市長に対して要請書を出しています。市民派を標榜して、マニフェスト選挙を闘い当選した少数派(市民党4名)市長は、私たちの要請に応えようとしていません。この要請書は、提案型の10項目の要請であり、2月18日の交渉で提出しましたが、市長は出席する様子は見受けられません。私たちの要求は、憲法の生存権、勤労権の誠実な実行であり、市民生活と住民福祉の増進に勤める自治体の責任を基にした、大牟田の実状に合った具体的提案であります。このために行政が取り組んでいる雇用・失業に関する事業の実態、将来計画など、議員などの手も借り、すべて調べ上げ、待機している状態です。

2 今後の課題

 失業者は今、困っています。今日、明日のお金が欲しい者がほとんどです。何日も運動に参加する事などできません。その限りでは、一人ひとりに対して、当面の生活設計の方向を示して応援していかなければなりませんが、私たちの運動を理解し、短期間の運動に参加することはできます。
 短期間の運動でも、全国規模になれば大きな力を発揮します。力を蓄え、集中的にエネルギーを爆発させるためには、それをさせる舞台が必要です。三池闘争以来、労働運動は資本の手に握られ、右傾化を繰り返し、まるで闘えないようになりました。経団連奥田会長は、ここぞとばかりに攻撃を仕掛け収奪を図ります。
 私たちは、既存の労働団体に雇用・失業闘争を呼びかけていますが、いまいち反応がありません。自分のところの防衛で精一杯なのでしょうか。しかし、就職しても、いきがい対策のシルバー人材センターより安い賃金で生活しなければならない実態や無収入で途方に暮れる失業者を放置して、自分たちの環境がよくなるはずはありません。
 日本経団連「経労委報告」にみられる「MADE“BY”JAPAN」の奥田戦略、政治を金で買い、財界大企業の思うがままに動かす方向、小泉内閣と政権与党は、アメリカいいなり財界いいなりでイラク派兵を強行し、政治も経済も軍事優先にならざるを得ない状況が作り出されている。こうした情勢の中で、闘うことを躊躇するなら、「今ある、失業者の実態は明日の我が身である。」ことにならざるを得ないでしょう。是非とも既存の労働組合、民主団体が単純労働(失業)市場に目を向けた闘いに参加することを切望します。
 この運動に共鳴し、同じ福岡の田川からも調査に来ることが決まりました。北海道、東京とも連携を取り、再び「戦争と失業に反対」の大闘争になることを期待するとともに、建交労大牟田支部は、全国のアドバルーンとして先頭に立ち闘う決意です。

※自労OB(全日自労OB)
 失業対策事業を引退し、組合員として残り、活動に参加している人。

※公共分会
 大牟田には、日雇いの窓口があり、毎日40〜50名が公共事業の仕事を求めて来ている。
 その中の約20名が建交労の組合員として活動に参加している。

(ひらかわ みちはる・建交労大牟田支部)


2003年度第2回常任理事会報告

 労働総研第2回常任理事会は、2004年1月24日、13時から17時まで、牧野富夫代表理事の司会で、労働総研2階会議室で開催された。
 常任理事会冒頭の研究会で、儀我壮一郎理事が「イラク侵略戦争の構造」のテーマで、アメリカ帝国主義の侵略性と政治経済構造について歴史的背景を踏まえた報告に基づき、討議をおこなった。

I 報告事項

 1)労働総研三代表理事の「自衛隊のイラク派兵に反対する」声明について、藤吉信博事務局次長が経過報告し、討議の上、この問題については研究所の活動でも重視していくことが確認された。2)2004年1月8日行なわれた全労連との懇談について、大江洸代表理事から、お互いの組織が今年15周年を迎えるにあたり、記念行事について共同した取り組みを検討していくなど、懇談の内容について報告され、承認された。3)基礎理論・理論問題プロジェクトについて、浜岡政好常任理事から、第1回の会合で確認された活動予定に基づいて、研究を進めて行くとの報告があり、承認された。4)昨年より売れ行きが好調で増刷された全労連との共同編集による『2004年国民春闘白書』について、5)事務局の活動状況について、6)研究部会活動の状況について、および7)編集委員会の活動状況について、藤吉信博事務局次長が報告し、了承された。8)埼玉県労連との共同調査の状況について、大須眞治事務局長から、調査票に基づくアンケートが埼労連ではじまったなどの報告があり、承認された。

II 承認事項

1) 入会会員の承認について、大須眞治事務局長より報告があり、承認された。
2) 調査研究活動のあり方検討委員会の検討状況について、以下のような報告があった。
この問題は困難な問題を含んでおり、議論が始まったばかりである。以下のような原則を土台に、慎重な議論を進める。(1)〔研究会部会のあり方を考える目的〕、(2)〔検討の前提条件〕、(3)〔プロジェクト・研究部会のあり方の検討方向〕
 討議の結果、基本的に当該委員会の報告を慎重に具体化していくことが確認された。なお、労働組合研究の検討も当委員会で行なうことになっているが、5)および8)の議題と関連するので、それらの議題とあわせて討議することとした。
3) 人事検討委員会の活動について、牧野富夫代表理事から、(1)常任理事会等の活性化と(2)若返りをはかる方向で、検討を進めているとの報告があり、討議の結果、確認された。
4) プロジェクト・研究部会代表者会議について、大須眞治事務局長より報告され、討議の結果、議題と開催日(3月27日)、会場(平和と労働センター・全労連会館)等を確認した。
5) 全労連との協力・共同の強化、および8)労働総研創立15周年記念行事について、大須眞治事務局長より報告があり、討論の結果、(1)労働組合研究の問題は、創立15周年記念行事のひとつとしての記念シンポジウム「これでいいのか日本資本主義、これからどうする日本労働運動」(仮題)でも取り扱うこととし、全労連と協議を深める、(2)このシンポジウムは、日本資本主義の異常さを告発するに止まらず、日本の労働運動が直面する課題を打開する方向を提起し、労働組合運動の奮起の契機になるようなものとする、(3)そのためには、全労連の全面的な協力のもとに準備を行なう必要がある、(4)15周年記念行事の全体については2004年度定例総会に提案する、等のことが確認された。
6) 足利銀行破綻問題調査について、藤吉信博事務局次長から、(1)地銀連と共同して現地調査を行なう、(2)調査結果に基づいて、全労連、地銀連と共同してシンポジウム等を開催するとの提案があり、討議の結果、確認された。
7) 今後の日程について、大須眞治事務局長より提案があり、討議の結果、総会までの日程を早めに決定することが確認された。
8) 編集企画について、相澤與一常任理事より提案があり、イラク戦争・憲法問題について系統的に追求することの重要性が確認された。

1月の研究活動

1月 7日 事務局会議
8日 全労連との懇談(大木・大江・藤吉)
全労連旗びらき(大木・大江・牧野・藤吉)
10日 埼労連旗びらき(大須)
15日 国民春闘共闘・単産地方代表者会議講演(大木)
国民春闘共闘旗びらき (大木・大須・藤吉)
拡大事務局会議
16日 通信労組旗びらき(藤吉)
24日 第2回編集委員会
第2回企画委員会
第2回常任理事会
30日 事務局会議

1月の事務局日誌

1月 5日 政治経済動向研究部会
23日 青年問題研究部会(公開)──青年の運動の現状をどうとらえ、何を課題としているのか
28日 女性労働研究部会──生協労連「正規とパートの均等待遇推進」政策案について
労働時間問題研究部会──出版物の章立ての再検討について
30日 中小企業問題研究部会──「中小企業問題と労働運動」の章立て、内容について他