労働総研ニュースNo.162・163合併号 2003年9月・10月号



目   次

・『これでいいのか日本資本主義』シンポジウム
・8〜9月の研究活動
・8〜9月の事務局活動




労働運動総合研究所名古屋研究例会

「これでいいのか 日本資本主義」シンポジウム

2003年10月4日 労働会館東館2階ホール
後 援:愛知県労働組合総連合+愛知労働問題研究所

〈主催者代表挨拶:大木一訓(労働総研代表理事)〉
 本日は労働総研の研究例会に、お集まり頂きありがとうございます。
 労働総研は全労連の設立とときを同じくして、資料でお配りしております「設立趣意書」にありますように、「労働運動の必要に応えるとともに国民生活の充実向上に資することを目的」に設立され、全労連との「緊密な協力・共同のもとに、運動の発展に積極的に寄与する調査研究・政策活動」を行うために、労働運動と積極的に協力する全国の研究者と努力して参りました。
 労働総研は、年に2〜3回、研究所活動の成果をふまえて、一般公開の研究例会を東京で行ってまいりましたので、“東京の研究所”になっているのでないか、というご意見も頂いておりましたので、可能な限り地方でも開こうということになり、今年2月初めて、大阪労連の全面的なご協力も得て、大阪で開催いたしました。
 大阪での研究例会は非常に好評で、その記録を見た各地の県労連から、自分たちのところでもやりたいという申し込みをいただきましたが、今回は、愛知県労連の全面的なご協力を得て、名古屋で開催することになりました。また、「設立趣意書」に書いてありますが、「労働運動にかかわる全国各地のさまざまな分野の民主的研究者・研究諸団体などに、労働運動との協力・共同の場を提供する」ことも労働総研の仕事の一つでありますから、愛知労働問題研究所との連携を強めていきたいとも思っています。
 本日の研究例会の「これでいいのか日本資本主義」というテーマは、21世紀の転換期を迎えている新しい運動に密着したものではないかと思っています。非常に大きなテーマですが、これはいまいろんな角度から討議されるようになってきています。一つは何といっても日本の資本主義は、最近は「市場主義」といわれていますが、資本主義の限界が露呈されてきました。日本資本主義はあらゆる局面で破綻に直面しています。資本主義という場合、政治も含みますが、政治体制自体の破綻も生まれています。日本の政治は、東南アジアの中で孤立を深めています。今日、日本資本主義を民主的にどう改革していくかということが、現実の日程に上ってきていると思います。最近、労働運動では「転換期」といわれることが多いのですが、それにふさわしい情勢が生まれているなかでの、シンポジウムです。みなさんの職場や地域における取り組みを、このシンポジウムに具体的に反映して、活発な討議をしていただくことを期待いたしまして、主催者を代表しての挨拶とさせて頂きます。


これでいいのか日本資本主義、

これからどうなる日本資本主義

戸木田嘉久(労働総研顧問

私の思想形成と愛知

 私は名古屋でお話をするのは、何回目という程度で、いつも素通りをいたしておりまして、申し訳なく思っています。しかし、私と愛知との関わりは非常に強いものがあるのです。戦前、私は、豊橋で軍隊生活を送り、大変重要なことを学びました。それは、“人間は豊かに生活をできないと卑しくなってしまう”ということです。
 軍事演習で疲れると腹が減るのです。当時、軍隊の食生活は世間一般の生活よりはよかったのですが、内務班での食堂では、自分の前のご飯が、自分の前に座っている人のご飯より少ないのじゃないかと見えるのです。これには科学的根拠があって、自分のアルミ食器のご飯を真上から見ている。前の人のご飯は斜めから見るから高く見えるのです。そこで、ドサクサに紛れて、時々は、自分の前にあるご飯と他人の食器をすり替えるのです。ところが、すり替えたご飯を自分の前に持ってくると、やはり前の自分のご飯のほうが多かったように見えるのです。私は、“食べることは大事なことである”、“ちゃんとした生活することは人間の品性にとって大事なことだ”ということを豊橋の軍隊生活と戦争の中で学びました。
 そういう意味で、愛知は私の唯物論的な思想形成に大変関わりの深いところであります。

サービス残業廃止を20数年前から主張

 私に与えられたテーマは、「これでいいのか日本資本主義、これからどうなる日本経済」という大きなテーマです。「これでいいのか日本資本主義」ということについていえば、日本経済はいまのままでは、どうにもならんということははっきりしていると思います。先ほど、大木さんも挨拶で触れられておりましたが、日本資本主義は破綻に直面していると思います。
 私は、現在の日本資本主義はあまりにもひどすぎる、もうちょっとましな資本主義であってもいいのではないかと思っています。私は、日本資本主義のためにも、20数年前から心配をしてきたことがあります。私は、日本の経営者が「サービス残業」を当然のことのように労働者にやらせているが、日本の資本主義は本当にこれで大丈夫だろうか思っておりました。日本の資本主義をもっとマトモな資本主義にする必要があると痛感しまして、20数年も前から、「サービス残業」を止めさせるたたかいの重要性について発言を続けてきたのです。
 労働基準法では、労働者に残業をさせたなら、25%以上の割増賃金を支払わなければならないと決められています。だから使用者は就業規則に残業をやったら労働者には、25%以上の割増賃金を支払いますと約束しています。資本主義は契約社会ですから、資本家相互であっても資本と労働者との間であっても、約束した契約は履行しなければならない。約束や契約が履行されなくても当然だというのでは、契約社会としての資本主義は成り立たないことになるのです。
 ところが、「サービス残業」つまり、残業させて割増賃金どころか、時間当たり賃金も支払わないということは、労働者が当然受け取るべき賃金を、企業がクスネルことを意味しています。それが公然とやられている。使用者は、労働者を働かせたら「労働の対償」として賃金を支払わなければならないと労働基準法で決められているのです。ですから、使用者が、労働者を働かせておいて、労働者が当然受け取るべき賃金を支払わないということは、明確に罪を犯していることになります。
 食堂に入って、きしめん一杯550円と書いてある。みなさんが、きしめんを食べてしまってから、「350円しか持ち合わせがないから、まけてくれ」といい、それが公然とまかり通るようなことでは、契約社会・資本主義の経済秩序は成り立ちません。
 使用者が、8時間労働制のもとで、労働者を2時間残業させて、10時間働かせながら、残業させた2時間分の賃金は支払わないなどという無理が成り立つのだったら、それは資本主義の倫理に反しているのです。そんなことやったら、犯罪であり、資本主義をだめにするということははっきりしているのです。そんな日本の資本主義は、国際的にも信用されないのではないか。そんなことをやっていたらだめだ、私は、労働者の生活と権利という観点だけでなく、日本資本主義の資本主義としてのあるべき姿という観点からも、「サービス残業」の廃止を強く主張してきました。このことは、トヨタ自動車の会長であり、日本経団連会長でもある奥田碩さんのためにも、声を大にしていわなければならないと思います。

小泉「構造改革」の階級性

 私は、「これでいいのか日本資本主義」という問題を考える場合、つぎの三つのことを取り上げる必要があるのではないかと思います。
 第一の問題は、小泉「構造改革」の問題です。小泉首相の「構造改革」は、何度聞いてもよくわかりませんが、「三つの過剰」(雇用、設備、過債)の切り捨て、行財政「改革」といったことのように思われます。いま、ちょっと景気もよくなった、株の値段も上がってきた、企業の業績もよくなってきた、これらは「構造改革」路線による成果の芽が出てきたのだから、この方向をもっと育てることが重要であると、主張している人がいます。おそらく、政府や大企業・財界もそう考えているのじゃあないかと思います。
 また、「構造改革」では、小泉は少しやりすぎた、「改革」をもっとゆっくりやった方がいい、国家資金をバンバンばらまかないと危ない、という人もなかにはいます。しかし、こういう二つの意見は、私にいわせれば「目くそ鼻くそを笑う」類の違いはあるけど、本質的には同じだと思っています。
 政府・財界の「構造改革」路線は、労働者階級の立場から見るとまったく容認できるものではありません。そのことをまずハッキリさせる必要があります。したがって、私どもは、このような小泉「構造改革」にどのような要求と政策を対置して、国民的な共同を強化しなければならないのかという、問題が出てくると思います。まじ、小泉「構造改革」とは何か、そのことが問題になります。

政策を実現する国民的共同を強める

 2番目の問題は、日本資本主義の現状がいかにひどいか、それを転換していく労働者の要求と政策、それを実現する力に関する課題です。トヨタの働かせ方がいかにひどいか、これを正確にとらえることはもちろん大事なことです。エンゲルスは、『イギリスにおける労働者階級の状態』で、「労働者階級の状態は、現在のあらゆる社会運動の実際の土台であり、出発点である」書いています。
 しかし、エンゲルスが指摘していることの真意は、労働者階級の状態がいかにヒドイか、財界や大企業、政府の攻撃がいかにヒドイかということを、単に分析するということではないということです。研究者は、「運動の土台であり、出発点である」労働者状態を何のために分析するのかということを、はっきりさせないといけないと、私は考えています。私たちは、労働者階級の状態の分析を通じて、目茶苦茶な日本資本主義、破綻に直面している日本資本主義、「末期」ともいえる日本資本主義に、労働者階級の立場から、それを打開する理論と政策を対置していくことが重要であると思います。
 私は、この問題に関していえば、全労連が「21世紀初頭の目標と展望」という、スケールの大きな政策と運動方向を明らかにしていることを、きわめて重視しております。全労連のこの政策と運動方向は正しいと思います。しかし、それを実現していくためには壮大な国民的な統一と共同が必要です。労働者が持っている唯一の力は、労働者の団結した力です。労働者の数の力は、理論と政策に導かれ、団結してたたかわなければ力にならないのです。ですから、労働者が力を発揮するためには、階級的ナショナルセンターである全労連を大きくすることが是非とも必要です。
 全労連は、組織の力を発揮するために、組織拡大を緊急の課題と位置づけ、全国的に組織拡大のための基金をつくるということを、2003年7月の第32回評議員会で決定しました。私は、労働者の力を発揮するうえで、この運動が成功することに大きな期待を持っています。全労連が歴史的任務を果たしていくためには、200万全労連を早急に実現してもらいたいと心から期待するものです。その先には、500万全労連をつくらなければならないと思います。そして、全労連が「21世紀初頭の目標と展望」で掲げた政策を実現するために、国民的共同を強めていくという問題が2番目にあるのではないかと思います。

労働運動の社会的責任が問われている

 3番目の問題としては、全労連だけでなく連合を含む日本の労働運動の今日的問題があります。日本の経済と社会はひどい破綻状態にあります。このひどい状況をつくりだしていいる主犯は、大企業・財界、それを支援している小泉内閣であることはいうまでもないことですが、それをまかり通らせている、日本の労働運動に対しても、「これでいいのか日本の労働運動」ということが問われているのだと、私は思います。
 私は、労働運動の実践家ではありませんから、要求と政策をどう実現していくかについて、具体的に虎の巻のようなことはお話できませんが、労働運動論にかかわってきたものとして、日本の労働運動はこれでいいのかという点からも、少しお話しをしてみたいと思います。

アメリカと大企業支援の小泉「構造改革」

 まず問題は、小泉内閣の「構造改革」路線はどのようなものか、そして労働運動は、それとどのようにたたかうかということです。
 財界や政府は「三つの過剰」論をとなえています。「設備の過剰」、「資本の過剰」、「雇用の過剰」です。この「三つの過剰」を処理しないと、日本経済は立ち直れないというわけです。これを経済学的にいえば、日本経済は恐慌に陥っている、これを抜け出るには「三つの過剰」を切り捨てなければならない、ということでしょう。恐慌か不況か議論のあるところですが、バブルがはじけて、ものが売れないので「過剰設備」がでてきた、「過剰雇用」になったと主張するわけです。バブルのときに膨大な借金をして、バブルがはじけて、借金が「過剰債務」になったのですから、資本の立場に立てば、「過剰設備」や「過剰債務」を処理しなければならないと思うわけでしょう。
 資本主義のもとでは、好況と不況が循環して現れてきます。これは、資本主義の本質に関わる問題です。恐慌というのは、ものが売れなくて平均利潤が獲得できないということです。平均利潤を獲得できなくなった資本のことを「過剰資本」というのですが、資本は、この「過剰資本」を処理して、新しい体制をとりながら発展していこうとします。
 経済学的に見ると、そういうことになるからといって、使用者は、労働者の首を切るのは当然であって、労働者は首を切られても仕方がないのだなどという馬鹿な話には、絶対にならないのです。問題は、この大企業・財界、政府の攻撃に対して抵抗してたたかわなければ、つぎの経済サイクルの局面で、労働者と国民は、いまよりもっとひどい状況に陥ち入ったところから、出発させられるということになるのです。

標準労働時間をめぐる階級闘争

 このことと関連しては、小泉「構造改革」のイデオロギーである「規制緩和」、「市場原理主義」による「働くルール」の破壊を止めさせて、「働くルール」の再構築を図ることが重要です。解雇規制、「サービス残業」の禁止、労働時間短縮による雇用の創出、最賃制の確立、社会保障の擁護などです。
 マルクスは、『資本論』で、イギリスの労働者階級が劣悪な長時間労働を止めさせるために、血を流して長期にわたってたたかい、ついに標準労働時間を法律によって資本家階級に認めさせたことを、ブルジョア経済学に対する労働者の経済学の勝利だと高く評価しています。なぜなら、労働者が、労働時間短縮を求めてたたかわなければ、資本家階級は、長時間労働を労働者階級に強制するからです。労働者が闘争によって資本家階級に、1日の標準労働時間は8時間である、使用者がそれに違反すると罰せられるということを法律で認めさせたのです。長期の大闘争の成果として、労働者がブルジョア経済学に勝利したということが大事なところです。この標準労働日を確定する闘争に勝利した労働者階級は、さらに最低賃金制や社会保障制度を獲得していったのです。
「市場原理主義」とは、資本の横暴を規制する法律や制度を排除していこうという政策のことです。マルクスは、標準労働時間を資本家階級に認めさせることは、資本の運動を民主的に規制するうえできわめて重要なたたかいであるということを強調していますが、「市場原理主義」にもとづく「規制緩和」とは、このような「社会的規制」を取り除いて、「搾取の自由」を保障しろという大企業・財界の要求なのです。
 1日の標準労働日を8時間にせよという労働者階級の要求は、1886年、シカゴを中心に、1日8時間労働制を要求してたたかわれたアメリカ労働者の大ゼネストを記念して、エンゲルスが指導した第2インターナショナル創立大会が、毎年5月1日を8時間労働制などを要求する国際的デモンストレーションの日と決定して以来、労働者階級の国際的な共通要求になったことは、ご承知の通りです。
 そうしたたたかいの成果として、1917年には、レーニンが指導したロシア革命が勝利して、世界ではじめて8時間労働制が実現しました。1918年創立されたILOは第1号条約で「工業的企業に於ける労働時間を1日8時間且1週間48時間に制限する条約」を制定しています。その後、1936年に誕生したフランス人民戦線政府は、週40間労働制とバカンス(長期の有給休暇)を資本主義国でもはじめて実施したのです。
 戦後第二次世界大戦が終わって民主主義が前進するなかで、8時間労働制、さらに週40時間労働制は国際的にも一般的な労働基準として確立されました。

国際的労働基準への反動的挑戦を許すな

 日本でも戦後、新しい憲法を獲得し、現代的な基本権が確立されるなかで、労働基準法で8時間労働制が決定されたのですが、日本はいまだにILOの第1号条約を批准していません。そして、小泉「構造改革」のもとで、8時間労働制、週40時間労働制の原則を骨抜きにし、「サービス残業」や無制限の長時間・過密労働を強制する変形労働や裁量労働制の導入など、戦後制定されて以来の労働基準法の大改悪が強行されているのです。これは、国際的な労働基準への反動的な挑戦であって、断じて許してはならないと思います。
 社会的・経済的な「規制緩和」政策は、小泉自民党・公明党連合政権のもとで、日本が国際的に見て一番ひどい形ですすめられています。これが問題です。新憲法のもとで、経済的規制の中軸をなすものとして、独占資本の横暴を社会的に規制する独占禁止法が制定されました。
 この独占禁止法も労働基準法の抜本的改悪とセットで、「資本の自由」、「搾取の自由」を求める大企業・財界の要望にこたえて、戦後禁止されていた純粋持株会社を認めるなど、抜本的に改悪されました。これは、「搾取の自由」の障害になっている「規制」を全部取り除き、自由に競争させれば、経済は活性化につながるというアメリカの「市場開放」要求と大企業の要求なのです。
 小泉内閣は、大企業の搾取強化の願望にこたえて、労働者派遣法を改悪し、職業紹介を原則自由にしました。こうすると雇用拡大につながるのだと主張しています。こんな馬鹿な話はなりたちません。民間企業が職業紹介をするということは、紹介する企業と紹介された労働者から手数料を取るということです。江戸時代の「人入れ稼業」の現代版です。これは、黄門さんに出てきてもらって退治してもらわなければならないことです。
 国の責任で無料で職業を紹介するという事業は、1930年世界恐慌で失業者があふれた、その失業者をささやかでも支えるためにできたんです。大企業が未曾有の首切り・人減らし「リストラ合理化」を強行し、かつて経験したことがないほど大量の失業者がつくりだされているのですから、国が責任をもって無料職業紹介を充実・強化すると同時に、公的な雇用創出事業を制度的に確立することこそが求められているのです。
 強いものと弱いものが競争したら、強いものが勝つのはわかっています。労働者と中小企業は「規制緩和」によって死活にかかわる犠牲をうけているのです。雇用が破壊される。自営業がつぶされていく。賃金が破壊される。年間収入がマイナスになる。終身雇用制と年功賃金が攻撃され、成果主義賃金になる。国民の生活と営業が破壊されているのです。

「リストラ合理化」の特徴

 80年代までの「合理化」は、「ME合理化」が主流でした。新しい機械が導入されて、それをテコにしながら「合理化」を促進する。相対的に賃金を安くして長時間働かせる。労働密度を高めるという搾取強化の三つの方法を組み合わせた「合理化」攻撃でしたが、90年代以降の「リストラ合理化」は、国際的な企業間競争に勝ち抜くということを錦の御旗にかかげ、独占資本の国際的な企業展開のなかで、一番有利な採算条件を国内でも作り上げる戦略をとっています。その場合、「リストラ合理化」は、「過剰設備」、「過剰資本」と「過剰債務」の切り捨て、「過剰雇用」の切り捨て、首切りをテコにしてすすめられているという特徴をもっています。
 もうひとつ、小泉内閣の「構造改革」戦略で重視しなければならないことは、大企業と大銀行を支援するために、超低金利政策で国民から収奪をつよめながら、公共投資の前倒しで、社会保障費20兆円の2倍以上の50兆円もゼネコンや大企業のために国家市場をつくっているという問題があります。超低金利政策の問題では、0.15%しか利息がつかなくなったので、庶民の貯金や預金の利子が国民全体で約100兆円取り上げられた計算になります。
 アメリカを中心にした多国籍金融機関や大銀行は、ただみたいな低金利で、日本の国債を買ったり、株を買ったりする投機資金を調達しているのです。アメリカの多国籍金融機関や日本の大銀行などは、超低金利のお陰で、逆に100兆円の金利を支払わなくてすむことになったのです。また、日本でお金をためても利息がつかないから、日本より高金利状態にあるアメリカへ日本のお金が流れる仕組みをつくって、アメリカ財政の赤字の穴埋めに日本のお金を動員しているのです。
 それに加えて、法人税の税率は引き下げ、贈与税や所得税の最高税率を引き下げて、逆に課税最低限を引き下げて大衆課税を強化する、消費税は10%以上、20%近くまで引き上げるという、無茶苦茶な大企業優遇、国民生活と営業破壊をおしすすめているのが、小泉「構造改革」なのです。こうして、労働者・国民の生活と営業が破壊されているわけですから、都市も農村も生活と産業・経済基盤が破壊され、衰退してきているのです。

「リストラ合理化」がつくりだす大規模災害

 このように日本資本主義と国民生活を破壊に導いている小泉「構造改革」のもとでは、大々的な「景気対策」をやっても、日本経済と国民生活は少しもよくならないのは当然です。小泉「構造改革」はその根本が間違っているから、「デフレスパイラル」といわれる状況も起こっています。国と地方の借金は700兆円を超え、サミット7ヵ国のなかで最悪で、財政は破綻状況にあります。「産業空洞化」が進行しています。
 重要なことは、首切り・「リストラ合理化」の結果、重大災害が激発していることです。最近続発している重大工場災害は、まったく異常な状況といわなければなりません。愛知県では、8月29日に7名の死傷者を出した名古屋市のエクソンモービル名古屋油槽所のガスタンク火災事故が発生しましたが、9月3日には、東海市の新日本製鉄名古屋工場でコークスオーブンガスホールダーの爆発事故が発生し、従業員15人が重軽傷者を負い、周辺住宅28棟が被害をうけています。9月8日には、黒磯市のブリジストン栃木工場のバンバリー棟の火災事故が発生していますし、9月26日、28日には、苫小牧市の出光興産北海道精油所原油タンク・ナフサタンクの火災事故が2度にわたって発生しています。JRなどは毎週事故を起こしています。
 ご承知の方も多いと思いますが、1960年安保闘争のとき1,200名の指名解雇を認めることができないということで、全国から支援を受けて三井三池闘争がたたかわれました。そのあとものすごい人減らし「合理化」攻撃がかけられ、2年後に炭塵大爆発が起き、470人の死者がで、2,000人のCO2後遺症患者がでました。この三池の炭塵爆発に続いて、三井山野炭鉱でも200余の死者がでる爆発があり、北炭夕張でも事故が起きました。
 これは人減らし「合理化」の結果なのです。当たり前の話です。その当時、炭塵爆発事故は十分防げたのです。それが縦坑、斜坑あいついで起こりました。こういう事故がいまの時代に起こることなど考えられないことだといわれました。炭塵を掃除して、石灰を撒いておけば、炭塵爆発など起こるはずはないのです。企業は、人減らし「合理化」のため何をやったかといえば、安全設備への資本投下をサボり、人員削減のなかで保安要員を減らして採炭夫を増やしたのです。そうすることによって、全体で一人あたりの出炭能率を上がたのです。事故が起きると、どこが発火点だと問題になります。電線だとかトロッコの軋みだとか、だいたい現場の責任になるのです。この60年代に起きた一連の炭鉱火災・炭塵爆発事故の原因は、安全保安要員が減らされたことに原因がありました。
 いま起きている一連の重大工場災害の原因は、「リストラ合理化」にあります。大規模な首切り・人減らしを強行し、新しい資本投入をせず、利潤率・搾取率を引き上げようとする。そのためには、搾取率を引き上げ、不変資本の設備率を下げればいいのです。安全設備を減らせば利潤率は上がることになります。いま起きている重大工場災害について、新聞は、設備の老朽化と書いています。
 これは調べればわかることですが、すでに減価償却をやってしまったただ同様になった設備を運転した可能性もあります。減価償却してしまったタダの設備は、原価計算のコストに上がらないから安くなるのです。さらに、今日の大災害では、未曾有の首切り・人減らし「リストラ合理化」のなかで、長年技能を積み上げてきたベテラン労働者が現場にいなくなっている、現場が請負作業になってきている、という問題も重要です。生産にとって熟練というのは非常に大事な問題です。学卒の新しい労働者を雇用しないということは、熟練労働者の蓄積した技能を継承できないわけですから、日本の資本主義の将来にとっても死活的問題となることは間違いありません。そうした意味でも、「これでいいのか日本資本主義」ということを、日本経団連会長のためにもつよくいいたいと思います。

国民の立場からの政策とは

 それでは、以上見てきた大企業・財界と小泉自民党・公明党連合政権が強行している無茶苦茶な国民生活と営業破、地域経済への破壊攻撃に対して、われわれは、いったいどうすればいいのか。政府は、労働者・国民から、毎年国家収奪を強化して、膨大な金を大企業支援のために注ぎ込んできましたが、十数年たってもいっこうに景気はよくならないどころか、デフレスパイラルなどといわれるように、日本経済は不況が不況を呼ぶ深刻な危機的状況に陥っています。もちろん、食料やエネルギーの自給率の問題も含めて、危機的な状態になっているのです。
 だから、われわれが大企業・財界や政府に対置する政策は、一言でいえば「相手のいうことと反対のことやればいい」のです。「お前は経済学者のくせに、よくそんな無茶苦茶なことをいうな」と批判されるかもしれませんが、小泉内閣がアメリカや大企業の利益最優先で、労働者や国民を搾取し、収奪して、サミット国中最悪の借金財政をしながら、大企業のために税金を注ぎ込み、労働者・国民の生活や営業を破壊する攻撃をかけてきているわけですから、攻撃にストップをかけ、押し返さなければ、労働者や国民生活は改善されないのです。
 小泉内閣は、労働者や国民に膨大な借金を押し付け、年金や福祉の切捨てる一方で、その膨大な国民からの借金を大企業を援助するためにばら撒いているのです。小泉内閣のやっていることは、労働者・国民の立場からすれば、180度間違ったことをやっているのですから、われわれは、相手のやっていることと180度正反対の政策をかかげ、これを実現するために、国民との共同を強化しなければならないのです。そうしなければ、労働者・国民の生活が改善され、日本の経済と社会が再生しないことはあきらかなことではないでしょうか。

憲法改悪を許してはならない

 私は、小泉首相が日時を切って憲法改悪を行うと宣言している一連の動きを大変心配しております。憲法改悪の動きは何度もありましたが、そのたびに、労働者・国民の運動で中止させてきました。その国民的エネルギーは、第2次大戦の悲惨な経験から、二度と戦争をしたくないという国民の強い信念にあると思います。その国民の決意を体現した日本国憲法は第9条で戦争の放棄、戦力および交戦権を認めないことを宣言しました。この第9条のお陰で、日本国民は戦後57年間の永きにわたって、戦争をしていないという、世界に誇れる道を歩んでくることができたのです。
 この戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認の日本国の憲法の原則を否定する火種が日本の政治構造に埋め込まれているのが、日米安保条約にもとづく米軍基地の存在です。米軍軍事基地が戦後57年間も続いてるのはあまりにも長すぎます。それに思いやり予算をつけている。小泉首相は、歴史上初めてという大規模な戦争反対の国際世論に背を向け、国連憲章に違反して、イギリスを道連れにイラク侵略戦争を引き起こしたブッシュ大統領の強い要請に積極的にこたえて、日本をアメリカが引き起こす侵略戦争に参戦できる体制をつくるために、日本国憲法を改悪しようとしているのです。
 国際的にも、日本国憲法第9条をEU憲法や自国の憲法に制定させようという運動がひろがっています。圧倒的な国民が日本国憲法第9条を変えてはいけないといっていますが、9条は国連憲章にも合致した、21世紀の国際関係のあるべき方向を示した世界の宝です。国際世論をもバックにして、憲法改悪の動きを国民の大きな共同した力で阻止しなければならないと思います。
 そのために、日本の労働者は大きな役割を果たさなければならないと思います。このことは日本の労働者階級が日本国民に負っている社会的責任であり、歴史的責務でもあると思います。

切望される労働運動の再構築

 ところが、日本の労働運動の一翼は、「戦後第二の反動攻勢」のもとで、1970年代後半から労働戦線の右翼的再編を推進し、労働組合の社会的任務を放棄しはじめたのです。労働戦線の右翼的再編の口火を切ったのは同盟とIMF・JCで、民間先行、労働組合主義、左右の全体主義反対、国際自由労連加盟など4原則を踏絵にかかげていました。はじめ総評はこれに反対していましたが、社会党が公明党との間で、反共主義を政治的原則に、日米安保条約の容認、自衛隊の存在を認め、自民党の基本政策と同じ政治方針に右転落して以降、当時の総評指導部も「社公合意」を積極的に推進し、同盟・JC路線にもとづく労働戦線の右翼的再編成に合流し、全民労協から民間連合をへて1989年に連合が結成され、労働組合の社会的責任や影響力がことさらに薄くなったことは明らかです。
 こうした労働戦線の右翼的再編に反対し、労働組合が国民に負っている社会的責任を果たす立場から、統一労組懇が運動を強化し、資本からの独立、政党・政府からの独立、切実な要求にもとづく共同行動の促進という、労働組合の初歩的な原則にもとづいて全労連も連合と同じ1989年に結成されたことはご承知の通りです。
 全労連は頑張っていますが、日本の労働組合の組織率は、1970年の35.4%から「社公合意」が成立した1980年が30.8%、連合が結成された1989年は25.9%と一貫して大幅に減り続け、「リストラ合理化」の影響を受けて、2002年は戦後の史上最低の20.2%にまで落ち込んでいます。ストライキ件数も激減しています。六〇年安保闘争を政治的契機にして、1960年のストライキ件数は前年よりも500件以上多い1,709件に増加し、1974年には、最賃問題で四野党共闘と結んで総評・同盟などのナショナルセンターの共闘が前進して、10,462件に増加しますが、それをピークに、「社公合意」の1980年が4,376件、連合結成の1989年は1,868件、2001年は戦後最低の884件にまで激減しました。「合理化」攻撃に対してストライキでたたかった闘争を経験しいている私たちとしては、現在の労働組合の社会的影響力の低下を直視せざるを得ません。
 『労働運動』7月号に労働総研の藤吉さんが「労働運動の『変質』の動きをどう見るか」という論文を書いています。この論文は、トヨタや松下など世界的な大企業の労働組合が、企業がもうけたら労働者にもそのおこぼれを分けるという「パイの理論」が破綻したもとで、賃金が「労働の対価」であるというブルジョア経済学も否定して、「労働の質」の向上のために、組合がZDやQC運動を促進するなど、経営戦略の補完物化している新たな変化を分析しています。こうした新たな労働組合の変化は、職場労働者だけでなく労働者の生活と権利を改善しようとする労働組合との鋭い矛盾をも生み出しているということを見ておくことが重要です。

全労連「21世紀初頭の目標と展望」を掲げて

 大企業の労働組合が、憲法改悪の策動と連動した一連の政治反動の動きを支えるような、「産業報国会」とまではいいませんが、企業との「運命共同体」化の方向をつよめることを軽視することはできません。しかし、国民の利益を守る立場に立ち、さまざまな政治反動の攻撃に国民とともに反対し、労働者の生活と権利を守るために運動をしている全労連が結成されて以降、連合の政策と運動にも一定の変化が現われていていることも見落としてはならないだろうと思います。全労連と連合は具体的な政策課題で共闘を行ってはいませんが、労働法制改悪反対闘争や最賃闘争などではかなり近寄った要求で運動していることを、私は注目しています。
 連合の会長選挙で対立候補を立てたゼンセン同盟は万単位で未組織労働者の組織化を促進していますし、連合傘下で中小企業の金属・機械労働者の組合であるJAMや連合・全国一般も、傘下労働者が中小企業の労働者であるということから、先に述べましたようなトヨタや松下の巨大企業労働組合の最高幹部が推進しようとしている「企業運命共同体」化の政策や運動と矛盾を鮮明につくりだしていることは間違いありませんし、全労連傘下のJMIUや全労連・全国一般などの同じ産業別の労働組合の戦闘的な政策と運動が、JAMや連合・全国一般などの政策と運動に反映していることは間違いありません。
 私は、全労連が、JRやNTT、あるいは国立病院で起きている首切り・「リストラ合理化」に反対する全国的な共闘をすすめていますが、未組織の組織化に関連しても、より頻繁に産別と地方労連との間で合同会議などをもって、運動を強化することが大事だと思っています。組織拡大基金カンパとともにこうした運動が大いに展開されることを強く期待したいと思います。私は、愛知の地域労組「きずな」の運動は大変重要だと考えています。「きずな」の方針を読ませていただきましたが、あれを徹底的にやればいいと思います。
 最後に、企業主義の克服の問題について触れておきたいと思います。マルクスは、労働者が数の力を発揮するためには団結しなければない、しかし、団結は労働者間の競争によってうち砕かれるということを強調しています。労働者が、賃金や労働諸条件を引き上げるためにたたかえば、企業がつぶれるかもしれない、そうすれば、失業してしまうではないかという人がいます。そういう意見は、各企業ばらばらにたたかっているからでてくるのであって、産別の統一闘争、全国的な共同闘争、統一闘争をやれば企業はつぶれないのです。どうして企業がつぶれるのかといえば、労働者や労働組合まで巻き込まれた企業間の競争でつぶれるのです。同じように、中国の賃金が低いから日本の産業がつぶれるという人もいます。しかし、日本も明治時代以降、低い賃金で日本資本主義は発展してきました。中国の場合も同じように、低い賃金のレベルから出発しているのです。中国は低賃金だからけしからん!とはいえません。中国の低賃金と競争するためには、日本の賃金を引き下げなければということにはなりません。中国の方を上げなければならないのです。そういう国際連帯をどうつくりあげていくのかを検討する必要があると思います。
 日本の労働運動は、いま、国内的にも国際的にもその社会的責任、歴史的任務を果たすことがつよく求められていると思います。歴史が要請している日本の労働運動の社会的責任を果たせるように再建するという課題は、国民共通の願望でもあります。そのように再建していくためには、職場を基礎に、地域的、産業別統一闘争を全国的に展開しながら、企業主義を克服していくことが重要です。
 運動の政策的方向は、いうまでもなく全労連の「21世紀初頭の目標と展望」です。それを実現していくためには「壮大な統一と共同」が必要です。そのためにも、200万全労連の組織拡大をやり抜かれることを切望して、お話を終らせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

〈司会:浅生 卯一(東邦学園大学教授)〉
 ただいまの戸木田先生の基調的なお話を受けて、早速、パネラーのみなさんにご発言をいただきたいと思います。はじめに、愛商連会長の太田さんからお願いします。


国民の団結した力で日本経済の再建を

太田 義郎(愛知商工団体連合会会長)

 私は、名古屋市の中村区に住んでいますが、三日ほど前から、私の住んでいる商店街をご老人が続々通るようになったんです。何でかと聞いたら、近くに自然食品の店ができたというんです。朝早くから、30〜40の人が並んで何かもらっておるんだわ。健康食品の店は、はじめはただの景品を配って、だんだんと高い健康食品を売りつけるんださね。病院代も高こうなったから、老人は無け無しの年金や貯金を取り崩して、健康食品を買わされて、自分の健康を守ろうとしておるんです。小泉「構造改革」による医療費の改悪に便乗して、こんなとんでもない商売が横行しているんです。
 9月18日、東区の輸送会社「軽急便」名古屋支店で、「軽急便」と契約した「会員」がガソリンまいて爆死するという事件がおきましたね。本当に変な話ですが、「民商の会員」でなくてよかったと思いました。爆死した「会員」の話の内容は本当にメチャ深刻です。「軽急便」は、荷主の都合に合わせれば、毎月40〜50万円の収入が可能であるといううたい文句に引かれて応募してくる個人業者を「会員」とする形で契約し、荷物輸送を「委託」することになっておるのです。「会員」は「軽急便」に「登録料」7万円、「指導料」7万円を支払い、100万円前後の専用車両を購入して事業をはじめるんだわ。ところが爆死した「会員」の「売上」は、結局一月8万円しかない。経費は全部自分持ち、始めるときは何十万収入もあると聞いて始める。軽自動車を買い、ガソリン代も電話代も全部自分持ち、やった仕事から、「登録料」だ「指導料」だといって売上からピンハネされて、結局8万円しか残らない。家族含めて4人だけど食っていけない。この事件は「軽急便」の「会員」への約束違反、詐欺行為に対する抗議による爆死事件ではないかと思うんです。
 全商連の本部は柄にもなく、田中角栄元首相の邸宅や学習院大学などがある東京の目白という超高級住宅地にあるんです。そこで駅前で配られているチラシをもらって見ると、マンション価格が1,480万円と書いてある。もう一つのチラシには1,780万円と書いてある。あァー東京のマンションも安くなったなーと思って、机に座ってよくよく見ると、1億4千万円だがね。庶民の感覚から見ると1億4千万円は高い。品川駅の近くの高層マンションは、ほとんど設計図の段階で売り切れるという。最低でも1億5千万円、2億円のマンションがどんどん売れているというんです。世の中景気がいいんですよ!ものすごくいいんです。1億円以上のマンションが飛ぶように売れている。1,400万円〜1,600万円のマンションは売れないそうです。
 よく考えれば、金持ちで10億円の収入がある人は、これまでは7億円ほど税金を取られていた。3億円しか手に残らなかったが、いまは手元に7億円残って3億円が税金で取られる仕組みに変わったんです。これなら何億円ものマンションを二つ買えるわけだがね。竹中という大臣が億ションをふたつもっているというが、これならわかる。
 税制が変わっただけで、利益をこうむる人がいる。いま長者番付で金持ちの人の名前がでてくるのを見ると、たとえばサラ金の経営者がどんどんでてくる。聞いたこともないインターネット関連の人たちは、何億円ともうけている。そういう人がいる一方で、「軽急便」の労働者のように働いても働いても月収わずかに8万円とう人がでてくる。いま儲かってもうかってたまらんという人は、新興宗教のように人を100人も1,000人も働かせて、搾取と収奪を続けている人たちです。いわゆる有能な人がものすごいもうけているんです。それが、ローソンやサークルK、「軽急便」の経営者だがね。片一方で、努力しても生活できない人が増えるんです。
 愛商連の事務所の近くに99円ショップがあるんです。あれはほとんどフランチャイズシステムです。今日お集まりの労働者の方に商売のこといってもわからないかも知れないが、「売上」から「仕入価格」を引いたのが「粗利益」というんです。たとえば100円が「仕入価格」で、それを120円で売ったら20円の「粗利益」がでます。ところが、サークルK本部はフランチャイズしているコンビニから「粗利益」の42%を持っていくんです。コンビニというのは大体そういう風ですよ。だから儲かるんです。こんな収奪の知恵を働かせる頭のいい人は儲かっているけれど、ふつうに働く人は利益がないんです。そういう儲けの仕組みを考える人は大きな利益だしている。こんな世の中になっているんです。
 私のところは米屋です。米屋はもう斜陽だと思っていたら、「太田様塾の経営をしませんか」というチラシが入っていた。うちだけにきたのかと思っていたらみんなのところにチラシを入れているんです。この「学習塾」の経営もフランチャイズですね。ドトールコーヒーという180円コーヒーがあるでしょ。あれもフランチャイズです。3,000万円ほどの資本金でやれるといいます。そういう儲けの仕組みを考える人は利益を上げているが、フランチャズに参加した人は収奪されるというのが現状です。
 巷ではどういっているかといえばこれも大変な状態です。うちの奥さんが病院へ行ったらとき、待合室で混んでいたそうです。待合室でおじいさんが、障害者の人が来たのを見て、「こんな人が来るで混むんだわ」といっておったと怒っていました。ところが若い人は、「年寄りばかりきている」と怒ってるわけです。年金の問題でいえば、「公務員の人は年金よけいもらえてええな」といわれている。公務員や労働者は、「商売人は税金をちょろまかしていいなぁ」といっている。
 先ほどの戸木田先生の話にもあったように、いま国民同士が、隣の人のご飯が多いように見えるようにさせられているんです。国民同士が文句言い合ってる状況をつくりだされているのです。国民同士の利害がぶつかっている。そんなとき、小泉は2010年国家の収支はとんとんにするとさりげなくいっている。小泉首相は「私の任期中は増税はしません」といって、後の内閣が増税できる仕組みを着々と整備しているのです。プライマリーバランスをとって収支とんとんにするということは、消費税を20%に引き上げるということです。日本経団連会長の奥田さんがいうように、毎年1%ずつ引き上げて16%にするというようななまやさしいものではないのです。こんな風になったら国民は生活していけるのかということです。国民がお互いで文句言ってる間に、消費税を上げるのは福祉を守るためにやむをえんとなりかねません。政府は、消費税を導入するとき何といったのか思い出してください。「福祉のために使う」といったでしょう。ところが福祉のためなどにはほとんど使っていない。政府は国民への約束を平気で破っているんです。国民が黙っていたら何されるかわからん状況です。
 しかし、情勢も大きく変わってきています。私たちは商工会議所や商店街連合会などを回って懇談をしていきたのです。商工会議所の部長さんが、「民商さんと意見はほとんど一致している、これから世の中どうなるかわからんので、定期的にいろんな情報を教えてください、いまは一緒に運動できないが、いつかいっしょに運動するときはよろしく」といわれたのです。こんなことをいわれたのははじめてのことです。びっくりしました。商店街連合会の専務さんとは、「商店街は元気が出ない、後継者もいない」という話になる。あらゆるところで国民が団結して、日本の経済をよくするために話し合いをすすめていきたいと思います。

深刻の度を増す高校生の就職状況

近藤 啓志(愛知高等学校教職員組合前書記長)

 今日は、愛高教が行っている高校生の就職状況調査について話したいと思います。正直にいって大変な状況になっています。私は、7年ぶりに職場に帰って浦島太郎的状態なんですが、逆にいうと7年前といまがよく比較できる点では、事態の大変さがはっきり見えるという利点もあるようです。私は、県立刈谷北高で生徒たちを教えているのですが、7年前と状況がいろんな面で違っています。この高校へくる生徒たちは、トヨタ系列の中堅社員の子供たちが多いので、経済的には裕福な家庭階層の子供たちだろうと思います。
 ところが、いま問題になっているのは、授業料未納者の問題です。6ヵ月以上未納だと退学処分となるのです。愛知県はそれを急に厳格にやると言い出しました。私は、授業料未納者が何人もでるとは予想もしていませんでした。事務の方に話を聞いたら、「先生、時代が違うよ」といわれました。親が子供の高校の授業料さえ払えない。そんな事態に追い込まれているのです。県立高校はアルバイトは学校の許可制になっています。小遣いほしさの生徒は学校にかくれてやるけれども、親が子供にアルバイトをやらせてくれと学校にいってくるとか、届けを学校に出すというのは相当深刻なんです。
 愛高教はそんなに力はないけれども、緊急奨学金制度というのを立ち上げました。給付枠は50人ですけどももういっぱいという状況です。求人状況ですがずいぶん心配しています。就職できるかどうかだけではないからです。職業高校へ行った生徒の大半は就職を目指して入学し、学業にいそしんできているのです。ところが、就職が困難な状況にあるので、卒業した先の展望が見えないということは、生徒たちにとっては大変なことなのです。高校生活が有意義に送れない原因となっています。「俺たち先がないからなぁ」という生徒がでてくる。フリーターでいいやとなるのです。
 数値で見ると、一昨年7月時点で、求職を希望した生徒数に対する求人数は3.1倍ありました。昨年2.4倍に落ちました。2.4倍の求人というのは実際には1.0倍位の数値です。求人書類を全国的にどこの職安にも送るという企業があるからです。高校生がそんなところに勤めるのはイヤだというような居酒屋チェーンなどは、無差別に求人の書類を送ってきます。今年の求人数は昨年よりも横ばいか下がっているようです。
 ふたつ目の問題として、就職決定率があります。これはがくんと落ちています。愛知県は全国的に見て就職決定率がいい方ですが、12月末で見ると、一昨年は83.8%でした。昨年は63.1%です。最終的には93%程になったのですが、これは統計上のカラクリがあるのです。「就職するのはもういい」とあきらめる生徒や、「フリーターでいい」という生徒は統計からどんどん除かれていくので就職率が上がっているにすぎません。
 求人内容にも変化が起きています。雇用の流動化の影響から、特に著しいのは女子の就職です。商業高校へいく生徒の授業の中身は、基本的には事務系の職種を目指す内容ですが、いまは女子の事務職の求人はもうありません。事務職の求人が高校から四年制大学や短期大学にしました。トヨタ系の企業は四大卒を一般職として採用しています。一般職というのは、かっての高校卒の給与体系です。高校生のはいる余地がなくなってしまいました。高校女子を事務職として採用するもうひとつの大口が金融機関でした。しかしいまは、愛知県の金融機関で高校生を事務職として採用するところは、ほぼありません。
 派遣業の影響で、人材派遣業が安く派遣していくので、販売職への就職がほとんどなくなりました。百貨店、大手スーパーほとんど採用しませんので大変困っています。愛知は製造業が多くあるので、男子高校生の就職率は比較的よかったのです。ですから、高校時代にがんばった生徒は比較的安定した企業に就職できるということで、「はげみ」にもなっていたのですが、いまは、頑張った生徒の行き先がないのです。公共性の高い企業は、本来、地元の生徒を受け入れるところですが、それがないのです。中部電力は高校生を採用しなくなりました。県下の電気科に衝撃が走りました。企業の社会的責任を問わなければならないと思います。愛知県は他県と比べて高校生の就職率が比較的良かったので、そういう角度から企業の社会的責任を追及する動きが弱かったと反省しています。青年の就職を保障する共闘を強力にすすめなければならないと思っています。各学校の先生方の意見を紹介しておきたいと思います。「人材派遣を重視するのは、産業基盤の沈下になる。日本の技術者を育てることにならないと思う」「子供に将来展望を与えてほしい、行政も青年の雇用について積極的になってほしい」。これが高校現場からのの意見です。

社会的責任を果すために奮闘する

見崎 徳弘(愛知県労働組合総連合議長)

 シンポジウムのテーマは「これでいいのか日本資本主義」です。率直にいえば「これでいいはずがない日本の資本主義」だと思います。ところがそのことに関しての国民的合意ができていないのです。
 大企業が強行する「リストラ合理化」によって多量につくりだされる失業と雇用不安の問題がきわめて深刻です。労働相談にきた事例ですが、青年が「首を切られた」と駆け込んできました。高校を卒業し、自動車整備士学校で整備士の資格を取って愛知トヨタに就職したというのです。雇用契約書は臨時社員雇用だったといいます。この時節に正社員になるのはそれなりの見習い期間があっても「仕方がない」と思って半年待ったといいます。しかし、正社員になれない。1年たち、1年半たったけれども、同期に採用された青年はみんな臨時採用のままであるというので、同期の臨時社員が集まって、社員になるための試験があれやってもらいたい、試験に通ったならば、正社員にすると約束してなどの意見が出され、会社に聞きにいこうということになったけれども、誰も聞きにいけないので、言い出しっぺの自分が聞きにいったら、契約期間満了で「あんたは次からはいりません」といわれたというのです。「これはどういうことだ」というのが相談の内容です。こんな理不尽なことで青年を解雇をしたのは愛知トヨタですよ。労働相談所長の阿部さんが、その青年にローカルユニオンに入ってもらい、血相を変えて交渉に行きました。愛知トヨタは「すみません、すみません」といって、もう一度再契約をするといったけれども。青年の方は「こんな会社は信用できない」と怒って最終的には金銭解決で終わりました。
 もう一つの例ですが、ある女性が、高島屋で販売職の試験を受けて採用されたので、高島屋で働けると思って高島屋に出勤したら、実は、高島屋がつくった別の派遣会社の採用であったというんです。高島屋がつくっている派遣会社が高島屋にテナントとして入っている高級専門店に彼女を派遣したのです。労働相談所にはこういう問題がどんどん入ってきます。
 これは別の事例ですが、就職担当の先生が、ソニーから工場見学の誘いがあったので出かけていったそうです。ソニーには全国に7つの工場がある。愛知県の幸田町にある幸田工場は全国一の工場だそうです。いってみて驚いたのは、半数以上が外国人労働者で、日本人労働者がいないので、来年の卒業生はどれくらい採ってくれるかと聞いたら、申し訳なさそうにゼロだというです。それを聞いた先生はソニーに怒ればいいのに、工場見学から帰ってきて愛労連にきて、「もうちょっと愛労連は雇用問題をしっかり取り組め」と怒っていました。私は、「私も怒れるけど、先生も校長会や行政やいろんなところで、青年の雇用がこれでいいのか」といってくださいよといいまして、お互いでそういう行動を強めていこうということになりました。
 このように大企業は、若者の雇用をがたがたにしておいて、最高の利益を上げています。戸木田先生も強調されていましたが、「サービス残業」問題、36協定の青天井問題は大変深刻です。調べてみますとトヨタ系の企業の36協定では、残業時間が720時間とか1,080時間というものがあります。労働基準法の改悪のなかでも、年間の残業時間は360時間を上限にすると政府は国会で答弁していますが、その約束はどこに行ったのかということです。その上に「サービス残業」があるから無茶苦茶な過労死や過労自殺がでるほどの超過密労働時間になっています。
 びっくりしましたが、中部電力は「サービス残業」による不払い賃金を6,500人の労働者に総計9億円支払いました。こうしたことは社会的な運動によって実現することですから、愛知トヨタにもソニーにも中電にも、われわれは名指しで、「サービス労働時間をなくして、社員を雇用せよ」と要求しなければならないと強く決意しているところです。連合系の大企業の労働組合は何をやってるのかといいたいと思います。最近続発する重大企業災害事故の原因は「リストラ合理化」にあると、戸木田先生が強調されましたが、新日鉄のタンク火災、エクソンのガソリンタンク爆発、「軽急便」での爆発事故など、これが21世紀の労災かと思われる事故ばかりです。こんなことでは、企業の技術力も安全も地に落ちたと思います。戸木田先生は「これでいいのか日本資本主義」というのは、「これでいいのか日本の労働運動」ということでもあるといわれましたが、労働組合の責任者の一員として居づらいシンポになりましたが、全労連運動を大きくして、労働組合運動が国民に担っている社会的責任を果たすために奮闘したいという決意をのべまして発言といたします。

〈司会:浅生 卯一〉
 元トヨタ自動車の労働者、名古屋市職労、新日鉄労働者やアイシン精機の労働者、住友軽金属の労働者から、それぞれ、自分の体験を踏まえて今日のシンポジウムのテーマに関連して発言がありました。パネリストとしては最後の発言となりますが、戸木田先生の方からまとめの発言をお願いします。


全労連「21世紀初頭の目標と展望」を
職場で議論し、壮大な国民的共同を

戸木田 嘉久

 大企業が強行する大規模な首切り・人減らし「リストラ合理化」と、それを促進する小泉自民党・公明党の連合政権によって、かつて経験したことのないような「雇用破壊」、「賃金破壊」、「就職破壊」がすすんでいる。そういう深刻で厳しい情勢を、今日のシンポジウムでお互いに確認できたと思います。
 先ほどからのみなさんの発言で、共通してだされている問題は、大企業・財界と小泉内閣の攻撃とどう対決し、労働者や国民の生活と権利をどう守り、改善するたたかいを組織していくのか、ということだろうと思います。たたかうための壮大な旗印は、私が先ほどいらい強調もし、戦後の労働運動、もっといえば、現段階で日本の労働運動が到達している最高の水準にある全労連の「21世紀初頭の目標と展望」を、職場や地域における要求、さらに単産の要求・政策と具体的に詰めた議論をしながら、今日の日本資本主義が陥っている、経済や政治の局面だけでなく、あらゆる社会的な局面での行き詰まりと破綻を、労働者・国民の立場から民主的方向で打開していく、壮大な国民的規模での合意と共同をつくりだしていくことであろうと、私は痛感しております。
 全労連の「21世紀初頭の目標と展望」は、ご承知のように、日本国憲法の民主的平和的五原則である、国民主権と国家主権、恒久平和の原則、基本的人権、議会制民主主義、地方自治を基礎に、「人間らしく働くルールの確立」、「健康で文化的な国民生活の最低保障の確立」、「憲法と基本的人権の擁護、国民本位の政治への転換」、「労働組合運動の壮大な共同と統一に向けて」の四つの柱から構成されています。このようなスケールの大きな政策を提起したナショナルセンターはこれまでありませんでした。そういう意味で、私は「21世紀の目標と展望」を日本労働運動の最高の到達水準にある政策だと、評価しているのです。
 「これでいいのか日本資本主義」に対抗して、全労連は、労働者・国民の立場から、日本の経済とか社会はいかにあるべきかについて、これだけスケールの大きな政策と運動方向を提起しているわけですから、みなさんは、この政策を実現するために、労働運動が国民におっている歴史的使命、社会的責任を果たされるよう、組織拡大に全力をかたむけ、この事業が大きな成果を収められるよう強く期待します。


世直しに力を合わせて

見崎 徳弘

 日本社会がおかしい、このままではダメだという人たちが増えていますが、本日のシンポは改めてそれを確認できたと思います。問題は「どうするか」です。会場発言にもありましたが、今は民間でも公務職場でも攻撃が矢継ぎ早で全面的なので、それぞれが自分の課題で手一杯で、励まし合い響きあって全体を変える、そういう闘いがつくれずにいる。そんないらだちをもつ仲間は少なくありません。でも道は見えてきた、そう言っていいのではないでしょうか。
 たとえばサービス残業です。愛労連は4年ほど前、リストラ「合理化」反対、「雇用守れ」の一環として、大企業職場の活動家の協力も得て「サービス残業根絶」を訴える、葉書アンケート付きのチラシ数万枚を配ったことがあります。そのときは反応は鈍くて、帰ってきた葉書は数枚だけでした。しかしキャンペーンを続けて変化をつくってきた。今は厚生労働省が「サービス残業禁止通達」を出し、労働局などが音頭を取って「過重労働防止大会」を開く、労働者や家族の訴えがあれば労基署が直ちに告発に入る、そういう流れが定着しました。まさに激変です。「ただ働きの強要やめよ、過労死はごめんだ」という労働者や家族の思いと、「大企業は身勝手なリストラをやめ、雇用を増やせ」「若者に仕事を」という県民の要求が重なり、太い流れになったわけです。
 日本資本主義の異常が際だってきているだけに、「人間らしく生き働きたい」という当たり前の願いや要求にこだわり、その実現をめざして職場や地域で頑張ることが、「働くルール」の確立や「世直し」にもつながる、そういうことだと思います。ただ、こういうたたかいを積み重ねて、戸木田先生が「立派な旗印」だと評価された全労連の「21世紀初頭の目標と展望」が示すような「世直し」を太い流れにするためには、まだまだ課題が多い。多くの労働者が気概を持って立ち上がり、生き生きと活動に参加するようになるにはどうしたらよいか。「世直し」の幅広い共同、太い流れはどうしたら作れるか。労組役員も、大企業職場の活動家の皆さんも、いろいろと悩み考えています。いまは大きな転機です。運動を担う者、「世直し」を考える者が、膝をつき合わせて話し合うこと。十分に考えあい、力を合わせること。そのことが常にもまして重要になっているのではないでしょうか。


国民の気持ちに合った新たな
運動を共同して前進させよう

太田 義郎

 ディーゼルトラックの排ガス規制で、商売人の乗っているディーゼル車のなかで使用できないものがでてくるのです。トヨタや日産は、日本では環境問題で使えない車を売っておいて、外国へそれをクリアできる車を売っているんです。日本で旧型のディーゼル車はもう使えないよといって、トラック運送業者で廃業せざるをえんという実情がうまれています。これから先、5〜6年の間に愛知県下で60万台の車が排ガス規制の対象になるんです。いま、自動車の株価が上がっているでしょ。排ガス規制対象の車を全部新車に買い換えるからだという話だがね。いま、排ガス規制対象車についての製造企業や行政の責任を追及する運動を、業者と労働者が一緒にすすめているところです。
 テレビの周波数を変えて、いままでのテレビではテレビの画像が映らんようにするという政策もおかしなことですよ。テレビの良く見えない区域や画像を奇麗にするなどといってテレビの周波数をデジタル化するといっとるが、何も私たちがそうしてほしいといっているわけでないのに、勝手に電機会社とテレビ局がいっしょになって、今まで見えていたテレビを、周波数をデジタル化することによって、見えなくしてしまう。新しいテレビ買い換えなきゃテレビを見られなくしてしまうというのはどんなに考えてもおかしいことです。国民は1億台以上あるテレビをこれから買い換えざるをえないのです。電機産業と電気屋はもうかるでしょう。資本主義はそんなに勝手なルールをつくっていいのですか。不公平だと思います。
 ところが、日本の資本主義はそうやってすすんでいく。国民が仕方ないといってあきらめているからです。私たちは、消費税増税反対の署名を集めています。愛商連ですでに6万人くらい集めました。金持ちが消費税はしょうがないというなら解るが、いちばんどうしょうもいない生活に困っている人が、財政赤字で政府が困っているからしょうがないといっている。日本人は、いい人が多いのです。アメリカとイギリスのやっているイラク侵略戦争支援のために、日本政府が1500億円ものお金を支援するといっています。ヨーロッパはこんなお金を出すことについては7割が反対しています。アメリカとイギリスが勝手に戦争をしかけておいて金まで出してくれという理屈は成り立たないというのが世論となっています。そんな金はアメリカとイギリスが出せばいいがというのが世論です。日本でもイラクへの自衛隊派遣や憲法改悪には7割以上の国民が反対しているように、日本の世論は健全な状況を示していますが、巨大な権力には刃向かえない、仕方がないということになっているんです。時代の「閉塞状況」がある。これを打ち破る必要があります。
 今日、この会場にくるために金山駅に着いたら、きれいな音楽が聞こえてきたんだね。コンコースでブラスバンドが演奏している周りに、たくさんの人が集まっていました。都会の中で美しい音楽が流され多くの人びとが足をとめ、聞き入って、拍手をしていました。民商も「商工新聞」の拡大をやっているが、やってもやっても増えないんです。いま、議論していることは、エスカレーターが下りなのに、登りのエスカレーターと間違えているのではないかということです。1歩上がっている間に3歩下がっているのではないかということです。運動の発展方向、「時代の閉塞」状況を打開するポイントはどこにあるのかということです。いまの時代はおかしいのです。普通の人が、普通に働いて飯が食っていけないのは、誰が考えてもおかしいのです。高校を卒業しても仕事につけないというのもおかしいのです。残業やっても銭をくれんというのも、誰が考えてもはおかしいのです。しかし、おかしいことをおかしいといってもどうにもならんから、みんな黙っているのです。
 いま、多くの日本国民は世の中おかしいと感じています。職場や、仕事のなかで、身のまわりで、世の中おかしいと感じている。その人たちの共感を呼ぶことに成功したら運動は大きく盛り上がると思います。金山駅のコンコースで高校生がやっていたように、労働運動も元気を出して国民に呼びかけたらどうですか。みんなの共感を呼んだら、私たちが主流になることは間違いありません。憲法9条改悪されたら、ものがいえんようになってしまう時代になります。いま、あらゆる階層の国民が団結して、国民の気持ちがつかめるような運動を提起して、国民の気持ちに合う新しい運動を、わが民商は提起していきたいと思っています。こうした共同をいっしょにやろうではありませんか。

〈閉会の挨拶:藤吉信博(労働総研事務局次長)〉
 今日は、いろいろと行事が重なっていたようですが、参加者もほぼ会場いっぱいとなりました。愛労連の全面的なご協力で、名古屋での研究例会は成功したと思います。ありがとうございました。
 50年余にわたって日本の労働運動の発展のために奮闘されてこられました戸木田先生の日本労働運動よ頑張れという古武士のような講演は、参加されたみなさんの財産になったことと確信しております。会場でも販売しております戸木田先生の最新の著書である『労働運動の理論発展史』は、ページ数も多く、値段もはりますが、組合に一冊置いておくというだけではなく、是非、座右に置いて、線を引きながらお読みいただき、日本の労働運動が到達してきた理論的発展を自分のものとして、確信をもって労働運動をすすめていくためのテキストとしてご活用いただくことをお願いいたします。
 研究例会の成功のために最後までご協力ありがとうございました。

(注:これは、発言者に加筆・補筆して頂いたものです。)


8・9月の研究活動

8月 9日 中小企業問題研究部会(公開) 「今日の中小企業問題と労働運動」について
9月 1日 賃金最賃問題研究部会 職種別賃金問題について
10日 国際労働研究部会 EUの制度の構造について他
労働時間問題研究部会 最近の10年間の時短闘争の特徴について
11日 女性労働研究部会 日本IBMにおける企業戦略と女性活用策について
13日 基礎理論・理論問題プロジェクト プロジェクトの具体化について
20日 関西圏産業労働研究部会 現代日本の不況と資本循環
26日 青年問題研究部会 「国民生活白書」と「自立・挑戦プラン」他

8・9月の事務局日誌

8月 12日 第1回企画委員会
話題提供型調査打ち合わせ
23日 全日本民医連50周年記念レセプション(牧野)
25日 自治労連第25回定期大会へのメッセージ
27日 国公労連第49回定期大会へのメッセージ
29日 全労連・全国一般第15回定期大会へのメッセージ
30日 建交労第5回定期大会へのメッセージ
9月 3〜4日 リストラ反対、雇用と地域を守る全国交流集会(大須・藤吉)
8日 全法務省労働組合第58回定期全国大会へのメッセージ
全運輸労働組合第42回定期大会へのメッセージ
14日 東京靴工組合第44回定期大会へのメッセージ
17日 全労連第2回賃金闘争交流集会(金田・藤吉)
20日 福祉保育労第19回定期大会へのメッセージ
21日 生協労連第36回定期大会へのメッセージ
23日 広島県労働者学習協議会創立40周年記念パーティーへメッセージ
26日 9.26持株会社NTT包囲総行動へ連帯メッセージ
事務局会議
  29日 国民春闘白書編集委員会