労働総研ニュースNo.160号 2003年7月



目   次
[1] 2002年度における経過報告
[2] 調査研究活動をめぐる情勢と課題
[3] 2003年度の事業計画
[4] 研究所活動の充実と改善



労働運動総合研究所

2003年度定例総会方針案

[1]2002年度における経過報告

 02年度の事業計画は、(1)研究所活動の基礎的前提条件である全労連運動との連携強化、(2)研究活動の基軸として「基礎理論プロジェクト」と「不安定雇用労働者の実態と人権プロジェクト」とをすえ、2つのプロジェクトのテーマに各研究会活動を関連させ、研究所が一体となった研究活動を強化していく、(3)各プロジェクト・研究部会は年1回以上の公開研究会をおこなう、(4)必要に応じた政策提言の発表、(5)会員の拡大、(6)節約と予算の有効的活用、および(7)事務局活動の強化、などを決定した。
 02年度における研究所の諸活動は、基本的にこの総会方針を具体化しえたといえる。

(1)常任理事会活動の改善
 01年度理事会(02年8月4日)での討議をも踏まえ、02年度方針の具体化のための第1回常任理事会(02年10月5日)で、常任理事会開催は、「過半数以上の出席を努力目標にする」ことを申し合わせ事項として確認した。事務局は、その実現のため日程調整を重視してきた。企画委員会は、常任理事会の効率的で民主的な運営を保障するため、練り上げた議題を提案することにつとめてきた。
 03年3月、「『定昇廃止』は国民生活と労働運動に何をもたらすか―『定昇廃止』政策の撤回をもとめるアピール」発表に際しては、全理事の了承をえる手続をとった。

(2)全労連との協力・共同の強化
 労働総研の設立主旨に明記されているとおり、全労連運動との密接な協力・共同の強化は、労働総研活動の基本的前提条件であり、調査研究活動の基盤を強化することである。関係強化のため以下のことを実施した。

 (1)表敬訪問・懇談による相互の意見交換
 02年9月17日、全労連への表敬訪問を、事務局長が新任されたことを契機に初めておこなった。表敬訪問は、労働総研と全労連との協力・共同についての原則の再確認という点でも、正式に労働総研に対する意見を聞くという意味でも大きな意義をもった。これは、その後の協力・共同を強化するうえでも重要な訪問となった。03年6月2日、第2回目の懇談をおこなった。この懇談では、双方でおこなう研究集会等への積極的な協力と参加および今後の協力・共同のあり方などについても話し合われた。議題となった諸問題については、03年度の事業計画の具体化の中で検討していく。

 (2)全労連プロジェクトへの具体的な協力
 全労連の要請に応えて、全労連の各種プロジェクトへの協力・共同を以下のようにすすめた。
(ア) 「パート・臨時などではたらくみんなの実態アンケート調査」(02年1月〜年10月)
(イ) 「税・社会保障・賃金の『個人単位化』プロジェクト」(02年4月〜)
(ウ) 「社会保障(最低年金保障)プロジェクト」(03年7月〜)
(エ) 「派遣労働プロジェクト」(03年4月〜)

 (3)話題提供型調査の検討
 運動が当面している課題について、全労連と共同してタイムリーな調査をおこない、社会にアピールする話題提供型調査をおこなうため、小委員会を設け、(ア)国民・労働者生活に関連する行政最低価格、(イ)失業者の生計費調査についての検討をおこなっている。03年度の事業で具体化をはかる。

 (4)地方労連との協力・共同
 地方労連との協力・共同の取り組みが、以下のようにすすんでいる。
(ア) 大阪労連の全面的な後援による研究例会「これでいいのか日本資本主義」シンポジウム(03年2月8日、大阪市で開催、参加者は170人、これは東京以外での初めての研究例会である)
(イ) 埼労連と「不安定就労・中小企業労働者の実態」をテーマに共同調査を実施する。03年9月に中間報告をまとめ、04年2月に発表を目指す予定で取り組む。
(ウ) 愛労連・愛知労働問題研究所後援による研究例会(03年10月、名古屋市、参加者200人を予定、仮テーマ「どうなる日本資本主義」)を実施する。

(3)団体会員への表敬訪問と意見交換
 団体会員への表敬訪問をおこなった。表敬訪問団体とその日時は以下のとおりである。(1)自治労連・(2)日本医労連・(3)自交総連・(4)国公労連(02年11月22日)、(5)全教・(6)生協労連(02年12月6日)、(7)東京地評・(8)年金者組合・(9)福祉保育労(03年2月21日)、(10)全損保・(11)全労連・全国一般(03年3月28日)、(12)全信労・(13)建交労・(14)全印総連(03年5月9日)、(15)JMIU(03年6月5日)、(16)郵産労・(17)通信労組(03年6月6日)、(18)検数労連(03年6月27日)、(19)地銀連(7月3日)
 表敬訪問は、団体会員から当研究所の活動についての注文が出されると同時に、労働総研との親近感がわくようになったなど、相互理解のうえでも大きな意義をもつものとなった。団体会員が抱える諸問題、労働者の状態や攻撃の特徴等をリアルに知りえたことは、当研究所の調査研究・政策活動をすすめるうえで貴重な財産となっている。これを研究所活動に活かしていきたい。

(4)政策・提言活動
 以下のような政策・提言をおこなった。
(ア) 01年10月、建交労から委託を受けた公的雇用政策研究プロジェクトチームは、02年1月、「『緊急地域雇用創出特別交付金』を活用し、改善を求める緊急提言」を記者発表した後、「緊急提言」をより総合的に発展させた「公的雇用創出のための政策提起」を02年12月、記者発表し、同日、東京・豊島区のラパスホールで、「政策発表の夕べ」を開いた。この「政策提起」は、建交労はもとより、全労連、地方・地域労連から歓迎され、運動を前進させるうえで一定の役割を果たすことができた。
(イ) 「『定昇廃止』は国民生活と労働運動に何をもたらすか―『定昇廃止』政策の撤回をもとめるアピール」(03年3月発表)を発表した。この「アピール」は、発表前から、単産、地方労連からの問い合わせがあり、発表後も資料請求がつづいたことに見られるように、この問題で一定の役割を果たしたといえよう。

(5)プロジェクト・研究部会活動
A) 「基礎理論プロジェクト」は、1年間の活動の成果として、03年3月、「基礎理論プロジェクト報告書=均等待遇と賃金問題―賃金の『世帯単位から個人単位へ』をめぐる論点の整理と提言―」を常任理事会に提出した。この「報告書」をテーマに、03年6月28日、公開研究会をおこなった。ここで出された意見等をも取り入れ、労働総研として『労働総研クォータリー』No.51(03年夏季号)で公表する予定である。(基礎理論プロジェクトは公開研究会を含め8回の研究会をおこなった。)
B) 「不安定雇用労働者の実態と人権プロジェクト」は、03年3月29日の公開研究会をふくめ、8回(うち聞き取り3回)の研究会をおこない、04年3月中には、研究成果を取りまとめる予定である。
各研究部会の活動状況は以下のとおりである。
(1)賃金・最低賃金問題研究部会(9回)、(2)労働時間問題研究部会(7回)、(3)社会保障研究部会(7回、うち公開研究会3回)、(4)青年問題研究部会(7回、うち公開研究会1回)、(5)女性労働研究部会(11回)、(6)中小企業問題研究部会(7回)、(7)国際労働研究部会(10回、うち公開研究会2回)、(8)政治経済動向研究部会(7回)、(9)関西圏産業労働研究部会(6回)

(6)研究例会
 以下の研究例会を開催した。
(ア) 「公的雇用創出のための政策提起発表の夕べ」(02年12月、参加者100人)
(イ) 労働総研主催・大阪労連後援「これでいいのか日本資本主義」シンポジウム(03年2月、170人)
(ウ) 緊急研究例会「『定昇廃止』の意味を問う」(03年3月、60人)
(エ) いのちと健康全国センターと共催「日独国際研究交流」(03年3月、30人)

(7)公開研究会
以下の公開研究を開催した。これらの公開研究部会には、研究部会メンバー以外の会員をはじめ、外部参加者も多数参加し、好評である。
(ア) 社会保障研究部会「小泉税制改革と社会保障」(02年10月)
(イ) 国際労働研究部会と全労連との共催「不安定就労の実態と規制について」(02年10月)
(ウ) 不安定プロジェクト「不安定雇用の立法課題」「ドイツの非定型雇用と規制改善」(03年4月)
(エ) 青年問題研究部会「青年問題研究のこれからの課題について」(03年4月)
(オ) 社会保障研究部会「年金者組合の最低保障年金制度創立の取り組みについて」(03年5月)
(カ) 国際労働研究部会と全労連との共催「『世界の労働者のたたかい2003年版』発刊によせて」(03年5月)
(キ) 社会保障研究部会「不安定就業者と年金制度」(03年7月)

(8)出版活動
 02年度は、研究所編による出版物は発行できなかった。全労連との共同編集あるいは編集に協力した出版物は以下のとおりである。
(ア) 『検証・大企業の連結内部留保―2003年新ビクトリーマップ』(02年12月、全労連刊)
(イ) 全労連・労働総研共同編集『2003年国民春闘白書―雇用、くらし、いのち、平和の安心へ―あらゆる職場・地域から国民総決起春闘を』(03年1月、学習の友社刊)
(ウ) 全労連『2003 世界の労働者のたたかい―世界の労働組合運動の現状調査報告第9集』(03年4月刊)

(9)財政執行
 02年度予算は前年度と較べて会費収入が減少するもとで、02年度定例総会は、プロジェクト・研究部会の調査研究活動の充実をはかるという方針を決定した。代表理事会と事務局は、常任理事会と研究部会の協力のもとに、(1)交通費をふくむ諸会議費の節減、(2)出版・印刷費の削減等、節約につとめた。団体会員・個人会員の会費納入状況の改善にもつとめた。こうした財政努力は、02年度の研究成果のうえで貢献した。

(10)地銀連からの寄付
 地銀連から、03年6月19日、研究所に対して100万円の寄付金が寄せられた。この寄付金は、特別会計の「特別研究基金」(仮称)として積立、今後の研究所の調査研究活動に有効に役立てる方向で活用することを検討する。

(11)藤本武前理事の解放運動無名戦士の墓合葬への推薦
 02年6月、90歳で逝去された藤本武前理事の家族並びに関係者から、解放運動無名戦士の墓に合葬するにあたり、推薦団体となって欲しいとの要請があった。03年6月7日の常任理事会で検討した結果、推薦団体となることを決定した。

[2]調査研究活動をめぐる情勢と課題

(1)反動と進歩の対決軸が鮮明になった時代を迎えた内外情勢
 イラク戦争後、労働者・国民の運動をとりまく内外情勢の特徴は、あらゆる面で反動と進歩の対決軸が鮮明になった時代を迎えていることである。
 第一に、アメリカ帝国主義は、国連憲章を無視し、地球規模でひろまった人類史上空前の国際世論の反対を押し切ってイラク侵略戦争を強行し、新たな世界支配の構築に動き出していることである。小泉自民党・公明党・保守新党連立政権は、その動きに能動的・積極的に参画し、憲法違反の「有事法制」制定、「イラク特措法」の強行など、アメリカに屈従し「戦争をする国」への道を公然と歩みはじめた。「有事立法」については、はじめ反対するかのような態度をとってきた民主党・自由党が賛成し、国会勢力の9割を結集する翼賛体制が形成されていることを軽視することはできない。
 しかし、アメリカ帝国主義の戦争政策は、国際世論の本流から見れば、逆流である。米英のイラク攻撃以前から、人類史上最大規模の戦争反対・平和を求める運動が高揚し、現在も引き続き取り組まれている。それらの運動を反映して、フランス、ドイツをはじめとしたサミット諸国で、アメリカの一国覇権主義に反対し、国連憲章にもとづく平和秩序を求める流れが形成されている。アメリカは国際社会との鋭い矛盾を抱え、孤立化の方向をたどっている。
 第二に、アメリカ独占資本主義の利益を最優先させた「グローバリゼーション」政策が、日本経済の発展にとって有害で危険なものであることが鮮明となっていることである。日本の独占資本は、アメリカ独占資本への従属を強めながら、多国籍企業化政策を推進し、日本経済の基盤を脆弱なものにし、深刻な危機的状況に陥れている。
 ゼロ金利や為替介入などによるアメリカへの莫大な資金供与、「不良債権処理の加速」による企業倒産の増加、りそな銀行の「国有化」、長期金利の異常低下に見る金融不安の拡大、産業「空洞化」と地域経済崩壊の深刻化、円高の進展と輸出の減少、大企業の無法なリストラ乱発のもとでの未曾有の失業・雇用不安の深刻化、マイナス人勧・「定昇廃止」等々によって、国民消費購買力は底なしに低下しつづけている。
 小泉政権は、深刻なデフレ経済のもとで、700兆円という再建の目途もたたなくなった財政赤字を打開するとして、医療費負担増や増税などで国民に全面的に犠牲を転嫁する政策を一段と強めている。マスコミでも、「小泉内閣は景気回復など考えていない。関心をもっているのは、アメリカや大資産家への富の再配分を積みますことだけだ」という批判の声をあげざるをえない状況である。
 日本の支配層は、「底割れ」が心配される日本経済の危機的状況を打開する能力がないばかりか、労働者・国民の利害と根本的に矛盾することが鮮明になっている。
 第三に、独占大企業が、純粋持株会社を軸に「集中と選択」を推進し、大型合併や企業分割、分社化、アウトソーシングなど、際限のないリストラを大規模に強行し、みずからの経営戦略の失敗を労働者に全面的に犠牲転嫁し、どんな不況のもとでも利益を上げることができる新しい利潤第一主義の体制をつくるため、戦後はじめてともいえる本格的で全面的な攻撃をかけてきていることである。日本経団連の「奥田ビジョン」に見られるように、国民の労働・生活・権利に対する大々的な攻撃が組織され、展開されはじめている。
 (1)非正規雇用の拡大、外国人労働力の導入、労働法制や社会保障の改悪、企業内組合の空洞化などをつうじ、職場から労働組合の力を一掃し、(2)成果主義の徹底、定昇の見直し・廃止、公務員賃金の切り下げ、裁量労働制・有期雇用・派遣労働の拡大などをつうじて、労働者の賃金・労働条件を全体として大幅に切り下げ、(3)法改悪や反動的な判決をテコとして、あるいは労働委員会の再編や各種紛争処理機関の新設をつうじて、労働者・労働組合の民主的な諸権利を制限し、たたかう道を閉ざす政策を推進し、(4)公務員の労働基本権問題等に見るように、ILOや国際人権委員会の勧告を公然と無視するような労働政策をとり、(5)国・公立大学や研究機関、生活・医療・福祉分野の行政分野における独立行政法人化・民営化・非公務員化の拡大、(6)大企業の一部労働組合が労働組合の原点をも放棄し、経営戦略・事業活動の補完物化する動向が生まれていることなどは、以上の点と関連して注目されなければならない。
 2010年頃の完成をめざして推進されはじめたこれらの反動的な労働政策に対しては、労働基準法改悪原案から「解雇自由原則」の条項を撤回させた運動に見られるように、すでに広範な労働者・労働組合の統一闘争が発展してきている。日本の労働者のたたかいは、公務員制度の改善や国鉄労働者の救済を命じたILO勧告などに見られるように、国際的に支持されていることも重要である。それは今後、内外の世論の支持をえて大きな国民的運動として発展していく可能性をもっている。全労連が提起している「21世紀初頭の目標と展望」の方向にそった民主的改革なのか、「奥田ビジョン」にそった反動的改革なのか、わが国の「働くルール」は重大な転機を迎えているといえよう。
 第四に、最近の労働者・国民の意識と行動のなかには、革新的胎動と後退が絡み合って、複雑な状況が生み出されてきていることである。
 小泉「構造改革」や戦争協力体制の強化のなかで厳しい「痛み」を強いられている大多数の国民の側の抵抗や反撃の行動は、支配層の巻き返しで、一定の後退と挫折を経験している。マスコミの反動化、政権与党となった公明党が果たしている欺瞞的で危険な役割、民主党・自由党の「有事立法」賛成、国会状況と国民世論の大きな乖離など、状況の本質が隠されたり、歪めて伝えられていることなども関連して、少なくない国民は事態の打開の方向性を見いだせないまま、政治参加や社会的な活動によって状況を革新することに、無力感や挫折感をいだく事態もひろがっている。
 こうした情勢のもとで、「日本経済復活」のための「国際競争力」論や「奥田ビジョン」、そして拉致問題やテロ問題などをテコにした排外主義や新たなナショナリズムなどのイデオロギー攻撃が、労働者や国民に影響をあたえている事態も軽視できない。こうしたイデオロギー攻撃が、深刻な雇用・失業不安の状態におかれている青年層へ与える影響は特に注視する必要がある。特に、賃金・雇用・社会福祉破壊攻撃の口実になっている「国際競争力」論の研究を重視する必要がある。
 しかし、他方、小泉政権が強行する構造改革や対米追随の戦争協力などに対するの国民の不満や批判は、NGOやNPOの活動のひろがり、それへの青年層の参加、イラク戦争反対・平和を求める広範な青年、女性、知識人の活動、新たな住民本位自治体の誕生と前進などに示されており、生活の安定と民主主義の発展、平和を求める国民の行動はさまざまな分野で展開されている。労働者・国民は具体的なたたかいの展望と適切な行動の場を求めており、多くの労働者・農民・業者・女性・青年・住民などが、異常な対米従属・大企業の利益最優先の自民党・公明党・保守新党連立政権や財界などが推進する悪政に対抗するために大同団結の必要性を痛感するようになってきている。
 国民的要求を実現していくうえで、特に、日本共産党と無党派の国民諸階層・団体・個人で構成する全国革新懇(平和・民主主義・革新統一をすすめる全国懇話会)や地域と職場における革新懇運動が、平和・民主主義・生活向上の3目標で国民多数派の共同を本格的に追求している役割は重要である。02年3月、全労連、全商連、新婦人、自由法曹団、日本共産党の5団体が共同で開催した「リストラ反対、雇用と地域経済を守る3・30集会」は、この問題での各階層の運動と経験を交流し、具体的で現実的な打開の運動・政策方向を模索した集会として重要な画期となった。このような労働組合運動、農民運動、中小業者運動、女性運動、青年運動、医療・福祉分野における運動、住民運動や国際協力の分野などの運動の中に、日本資本主義のあり方の抜本的な見直しと日本の将来にむけた真摯な建設的努力に取り組むきわめて革新的な内容がふくまれていることに着目しなければならない。

(2)悪化する労働・生活状態と労働組合運動の課題
 労働者・国民の状態悪化は、02年度総会以来さらに深刻化し、生活不安・社会不安を異常に高めている。労働組合運動は、次のような課題を中心に展開されるであろう。
 第1は、大企業の横暴な首切り・人減らし・リストラ「合理化」攻撃に反対し、大企業の社会的責任を明確にし、大企業の横暴を規制すると同時に、リストラよってつくりだされている失業に反対し、雇用・生活と権利を前進させていくという問題である。このたたかいは、中小零細企業の経営を守るたたかいとも不可分にむすびついている。今年度は、全労連・建交労などによる失業反対大行進も予定されており、この点での理論的・政策的貢献が引き続き求められているといえよう。
 第2は、賃金の切り下げを跳ね返していく問題である。この問題は、男女平等・同一労働同一賃金、賃金支払い形態の改悪とたたかっていく問題と不可分である。また、この問題は、最低賃金制やナショナルミニマム確立の運動と連動した賃金底上げの運動ともむすびつけて発展させる必要があろう。
 第3は、タダ働き残業や長時間労働とのたたかい、労働時間短縮のたたかいをいっそう強化し、人間らしく生き働くことのできる環境を、少しでも多くつくりだしていくことである。最近の学会でも、日本の労働者が理不尽な資本の攻撃に怒ることさえできないでいる大きな要因が長時間労働にある、と議論されている。雇用拡大のためにも時短は緊急課題である。人間らしく考え、社会活動に参加できる余裕と労働組合運動への参加を強化するうえでも重要な課題である。改悪労働基準法が自民党・公明党・保守新党・民主党・自由党などの賛成で採択されたが、これを職場に持ち込ませない、発動させないたたかいが重要である。
 第4は、大量失業の激増、非正規労働者の激増、一連の労働法制改悪によって労働組合攻撃が強められているもとで、未組織の組織化をすすめ、社会的影響力の大きい労働組合を建設していく問題である。この問題は、事実上、正社員=従業員団結の域にとどまっている企業別組合を改革し、労働組合の「社会的ポジション」の低下を打破していく課題とも不可分である。
 全労連が組織拡大基金を設けて、組織拡大に本格的な取り組みをすすめようとしている今日、この課題はますます運動上の焦点となっていくにちがいない。
 第5は、医療制度改悪下の健康破壊、予想される消費税引き上げ、年金制度改悪の策動、矛盾が噴出している介護制度の改悪や崩壊に対して、労働者・地域住民の生活を守るたたかいを発展させていく問題がある。地域における困窮と生活崩壊は今日きわめて深刻であり、負担増・制度改悪はとうてい許されるものではない。生活難の打開は、雇用とともに中小企業の営業を守るたたかいであり、地域社会の再構築をすすめる課題ともむすびついた問題である。労働相談や生活相談活動、地域における生活・福祉・医療の協同組合活動を発展させる問題も、今日非常に重要な課題となっている。
 第6は、「有事法制」成立という状況下で、日本を「戦争をする国」にさせない、「有事法制」を発動させない運動を発展させ、憲法9条・平和と民主主義・国民の基本的人権を守り、平和と戦争に反対する国民的共同の力を大きく発展させるという問題がある。小泉自民党・公明党・保守新党連合政権は、国会論議もつくさず、国民の合意をえることもなしに、次々にアメリカ帝国主義の戦争への協力を強め拡大している。
 国民の間では、言論統制や戦争への不安はひろがっており、政府・財界のアメリカ追随政策やアジア無視の政策に対する疑問や批判もひろがっているが、事態の本質を解明・普及する運動が情勢の進展に立ち遅れていることを反映して、少なくない労働者・国民が無力感や諦めにとらわれている状況が見られる。国際世論の流れがアメリカ帝国主義の一国覇権主義的無法を許さない方向へますます強化されているなかで、広範な労働者・国民の意思を一つの力に結集し、確信をもって日本と世界の平和秩序を確立していく運動を前進させることが求められている。この点では、陸・海・空の運輸労働者や医療・建設労働者の統一行動等が組織されてきているが、これらの運動に、研究者や文化人など広範な層が参加し、新たな共同を発展させていくことが強く求められているといえよう。

(3)労働者・国民の声に応える組合運動の発展と労働総研の役割
 今日の労働組合運動が直面している問題は、主体的力量強化の必要だけではなく、新しい情勢の発展の要請に応えて、労働組合運動を、みずからが組織している労働者はもちろんのこと、未組織労働者をふくむすべての労働者・国民の声に応える労働組合として発展させ、社会的影響力を拡大し、質量ともに運動の力量を強化する必要があろう。労働者階級のなかで急激に増大し続けている非正規労働者の組織化の問題は避けてとおることはできない重要問題である。
 労働者・国民の声に応える労働総研の調査研究活の課題は以下のようになろう。
(1) 全労連は、労働者・国民の要求に応える国民春闘や賃金闘争を新たな情勢のもとで効果的に発展させるリアルな検討を開始している。労働総研は、連合傘下の企業連における春闘・賃金交渉をもふくめ、調査研究する必要があろう。
(2) 日本の労働者は未曾有の首切り・人減らし・リストラ「合理化」攻撃のもとで、タダ働き残業を含め2300時間を超える長時間・超過密労働を強制され、過労死・自殺に追いやられている。日本の年間実労働時間は、ドイツよりも800時間、フランスよりも700時間以上も長いという異常さである。労働時間短縮闘争を人間らしく生き働くルールの確立と結びつけ、国民的な運動課題として解明することが緊急に求められている。
(3) これからの労働組合運動にとって、地域での労働者家族やさまざまな就業者層との連帯、住民の「民主主義と人権」の拡充を追求する市民運動や地域経済の再興をめざす業者運動との連携が、重要な運動内容になると思われる。この点で、地域労働組合の役割と可能性について、総合的・創造的に検討・研究していくことが求められている。
(4) 小泉内閣の国民生活切り捨て政策と対決し、国民生活を向上させる運動にとって、全労連が政策提起している「21世紀初頭の目標と展望」を、実践的にも、理論的にも深めることが緊急の課題となっている。労働総研は、21世紀日本におけるナショナルミニマム(労働者の人間回復のプログラム)を具体的・理論的に深め、広範な労働者・国民の要求に応える研究活動をすすめることが求められているといえよう。
(5) 労働者の階層・世代間の違いをふくめ、労働者階級の意識の実態・構造・変化方向などについて、丁寧な研究と把握をしていく必要がある。
(6) 労働運動の発展には、将来の労働者・国民を育てる学校教育・大学のあり方も、きわめて重要な課題である。いまその教育・大学が、教育基本法の「改正」策動・大学「改革」などを通じて、大きく改悪されつつある。これは今後の労働者・国民のくらしや、平和と民主主義にかかわっても、きわめて重大な問題である。大学所属の研究者を多数擁する本研究所にも、こうした教育・大学問題への取り組みの強化が求められている。
(7) 国際的な労働組合運動の連帯を発展させるうえでも、世界の労働者のたたかいの調査研究は重要である。また、アジア諸国の経済・社会・労働運動の調査研究は特別に重要視される必要がある。
 労働総研は、以上の課題への取り組みを少しでも前進させ、革新的動向へと成長発展させる研究・政策提起のために貢献しなければならない。

[3]2003年度の事業計画

 情勢と運動が要請する理論的で実践的な調査研究活動を旺盛にすすめるうえで、全労連運動との密接な協力・共同、連帯強化は、研究諸活動の基礎的前提条件である。同時に、わが国における労働運動の階級的民主的強化を推進するため、政府・財界のイデオロギー攻撃に対する系統的な批判的研究、連合をふくむすべての労働組合、未組織労働者、あらゆる階層の労働者状態の調査研究が必要である。
 03年度事業計画は、こうした基本的視点の再確認のうえにたって、02年度事業計画で打ち出した2つのプロジェクトを研究所活動の基軸にすえた、7つの柱を発展させる立場から、以下の事業を実施する。

(1)プロジェクト・研究部会活動の課題と目標
A)基礎理論・理論問題研究プロジェクト
 02年度の「基礎理論プロジェクト」が、1年間の研究活動の成果として、03年3月、「基礎理論プロジェクト報告書=均等待遇と賃金問題―賃金の『世帯単位から個人単位へ』をめぐる論点の整理と提言―」を発表し、終結した。これを受け、03年度の「基礎理論プロジェクト」として、「日本のナショナルミニマム確立の課題」(仮称)を新設する。
 このプロジェクトは、全労連が01年8月に決定した「21世紀初頭の目標と展望」との関わりを深く意識しながら、EU諸国におけるナショナルミニマムの発展をも考察しつつ、国民諸階層に共通するナショナルミニマムの運動論的・実践的問題を、基礎理論にまで遡って研究する。これは、政府・財界の国民生活・福祉切捨て政策・イデオロギーを論破するうえでも重要な役割をはたすことになろう。

B)不安定雇用労働者の実態と人権プロジェクト
 当プロジェクトの課題は、1)グローバル経済化、「構造改革」など今日の日本資本主義の有り様とかかわらせて不安定雇用問題を捉えること、2)不安定雇用の代表的形態の分析をとおして、従来の不安定雇用問題との共通点、独自な点を明らかにすること、および他の先進国と比較し日本的特徴を浮き彫りにすること、3)不安定雇用労働者の権利面での問題、労働法理論上の論点を明らかにすること、4)不安定雇用労働者を組織し運動をすすめてきたこれまでのさまざまな取り組みを分析し、国際的な先進的事例と比較しつつ、今後の展望を示すこと、である。
 プロジェクト発足から1年余り、非正規・不安定雇用に関する既存の調査報告書の検討および労働組合にたいする聞き取りなどをもとにした分析や、労働法上の理論的検討をおこなってきたが、現場の労働実態に即した詳細なデータをえるには到っていない。さらに各方面の調査に取り組みつつ、04年春にはプロジェクト報告書をまとめる予定である。

(1)賃金・最低賃金問題研究部会
 1)財界の賃金政策との対抗関係を意識した課題
(ア) ベアなし、定期昇給廃止など、賃金抑制・賃金引下げ、成果主義化に対する系統的な批判と対抗軸の検討。現実の政府・財界の政策の意図の認識とこれに関係する賃金政策・理論の批判的検討をも目標とする。
(イ) 政府・財界が主張する「個人単位化」の吟味。これは今回提出された基礎理論プロジェクト報告書「均等待遇と賃金問題」の問題提起とも関係する。特に非正規雇用・不安定雇用労働者、若者、女性を考慮した賃金問題の実態分析と対抗軸の検討が目標となる。
(ウ) 職種別横断賃率の日本における可能性の検討。
(エ) 運動主体の必要性を意識した国際比較の視点の課題。例えば、a)成果主義賃金との関連におけるアメリカの賃金・人事評価制度の実態比較、b)1998年ILO新宣言(労働における基本的原則及び権利に関するILO新宣言)の「最優先条約」の検討、c)ナショナルミニマムの課題、各国の全国一律最賃制の特徴及び賃金と社会保障の関係の国際比較。

(2)労働時間問題研究部会
 1昨年以来、リストラ「合理化」攻撃への対処の鍵として労働時間短縮闘争の意義を明らかにする出版物の準備にとりかかってきたが、諸種の理由から、現在なお実現に到っていない。長い討議の結果,ようやく新しい出版物のレジュメを作成するところまでこぎつくことができた。
 03年度は、04年の前半の完成をめざして、執筆に取り掛かることにする。新たな改悪労働法制下の運動の手引となるような実践的な内容を盛り込む予定である。出版の状況によるが、大衆的な公開研究会などをおこないたい。

(3)社会保障研究部会
 04年度に予定されている大がかりな年金改悪を控えて、社会保障研究部会では、当面「年金問題」にテーマを絞って、研究会を開催することを計画している。
 02年度は、「年金と財政」、「『最低保障年金制度』案に至るまでの全日本年金者組合の活動」、「不安定就業者とこれからの年金制度」、という3つのテーマで公開研究会を開催したが、03年度も「女性と年金」、「若者と年金」などのテーマで公開研究会を開催し、総合的に年金制度の現状を捉え、政策提案型の研究活動に近づけていきたい。

(4)青年問題研究部会
 以下の2つの点に留意して、青年の社会化、政治化を研究課題にする。

1) 青年の就業状態の悪化
 青年は日経連「新時代の日本的経営」の雇用政策の深刻な影響を直接受けている。それは戦後生まれの青年の、また親世代の、したがって日本の労働者家族のまったく経験しなかった新事態である。
2) 生育過程の思想的環境の世代的変化

 近代主義とマルクス主義の影響力の強かった戦争直後や高度成長期とは違って、生育過程の思想的環境は激変した。それは青年と労働組合の関係にも現れている。
 03年度は、実態調査によって、1)に焦点を当てたい。

(5)女性労働研究部会
1) 主な産業別に、女性労働の変化と現状の諸特徴について(ア)それぞれの新たな企業戦略、(イ)その一環としての女性労働力活用の具体策、(ウ)それらが女性労働者にもたらしている諸問題と矛盾、(エ)労働組合の対応、などを研究する。すでに01年度に自動車産業についておこない、03年7月の研究部会では総合商社を予定しているが、とくに政府が積極的に推進するファミリー・フレンドリー施策の各企業における実態なども検討したい。
2) 昨年度に基礎理論プロジェクトでおこなった「賃金等の世帯単位から個人単位への転換」に係わる諸問題についても、例えばた成果主義・多立型賃金体系と男女賃金格差問題、家族生活様式の変化と展望など、引き続き研究を深める。

(6)中小企業問題研究部会
1) 昨年度にひきつづき『中小企業問題と労働運動』(仮称)の書籍発行に全力をあげる。この間の研究で、ア)書籍の目的、イ)内容のポイント、ウ)理論的な検討事項、エ)目次案(章建て)などを検討、具体化してきた。1996年に版した『中小企業の労働組合運動』と違う点は、今日、各産業で直面している産業「空洞化」、新自由主義とネオ・コンの優勢、グローバル化の進展など「中小企業問題」の解明を正面にすえること、また、その解決をめざす運動も労働組合に限定せず、業者、市民団体、地域住民、NPO、青年、学生、政党など広範な勢力との共同の発展を解明することである。近く執筆分担して作業に入るが、原稿の点検作業を繰り返すため出版までには数ヵ月を要する。
2) 執筆・点検の合間にも、直面する中小企業問題について適宜研究し、中小企業における労働組合運動の発展に寄与する。例えば、改正下請二法の積極面の研究など。
3) 執筆が一定程度すすんだ段階で公開研究会を開催し、ひろく意見を聞き、内容に反映させる。

(7)国際労働研究部会
 当研究部会が編集・執筆に協力している全労連編『世界の労働者のたたかい』は、04年版で第10集となる。10周年記念にふさわしい特集内容を検討する。この記念号の発刊を契機に、『世界の労働者のたたかい』を、より多くの人びとに知ってもらい、広範囲に普及するため、多くの人が参加できる形態で、メーデー前夜祭の時期に、全労連と共催して、公開研究会あるいは研究例会を開催したい。
 調査研究の基本点は、a)各国の労働者が掲げる要求と政策、b)その運動・闘争の形態と戦術、c)その運動の到達点と成果をあきらかにある。また、可能な限り、ア)賃金・労働時間、イ)雇用・失業、ウ)社会保障、エ)組織化、オ)政治問題について、掘り下げた解明に努力したい。
 03年度の課題は、ブッシュ・アメリカ大統領が強行している国連憲章違反の覇権主義に対する国際的な闘争、アメリカ大企業の利益最優先の「グローバリズム」に反対する各国労働者のたたかいを、日本における労働運動の目でリアルに分析・充実させることである。

(8)政治経済動向研究部会
 アメリカ帝国主義の一国覇権主義とアメリカ独占資本の利益を最優先させる「グローバリゼーション」政策に能動的・積極的に追随する日本独占資本は、東北アジア経済圏構想とむすびついた海外直接投資を強化している。日本独占資本は、それを推進するため、「国際競争力強化」論のイデオロギーを宣伝しつつ、国内では未曾有の首切り・人減らし・リストラ「合理化」を強行し、これまで日本経済を支えてきた中小零細企業の「再編」淘汰と大規模な失業者・不安定労働者群を創出し続け、産業「空洞化」の推進によって日本経済の構造的矛盾を極限にまで推しすすめている。
 03年度では、日本の産業構造の具体的な分析と国際産業連関分析を関係づけながら、産業「空洞化」に対抗する産業政策を模索したい。

(9)関西圏産業労働研究部会
 02年度は、関西圏に現れている日本資本主義の矛盾の現局面、とくに地域の企業のリストラの状況や失業問題を中心に、現場労働者と協力して分析してきた。この研究過程をつうじて、今日の賃金の全般的な低下に労働運動が対抗していくための、賃金問題の理論的・実証的分析を深化させる必要性が研究部会の共通認識となった。
 このことを踏まえ、03年度は、搾取論的立場からの、賃金問題を中心に、地域の労働者の協力もえて、関西圏の実態を中心に調査研究活動をすすめる。そのためにも、これまで協力をえてきた地域の労働者との連携を強めていきたい。成果は個別論文として発表するとともに、その成果を踏まえて、著書の出版計画を具体化する。

(2)出版・広報事業
(1) 『労働総研クォータリー』、「労働総研ニュース」、“Rodo-Soken Journal”など、3種の定期刊行物の企画・編集を充実させ、読者拡大と労働総研の存在と役割を、労働運動をはじめ社会的にアピールする。
(2) 研究例会、公開研究会はもとより、魅力ある労働総研の活動内容をつうじて、労働組合幹部・活動家、研究者の労働総研への広範な参加を呼びかける。
(3) 常任理事会は、出版企画・編集上で積極的な役割をはたし、プロジェクト・研究部会等の研究成果を取りまとめた出版物を発刊する。
(4) 全労連との共同編集による『2004年度国民春闘白書』は、03年度版が学習テキストして利用しやすくなったと評価されているが、発行の時期を早めてほしいという要望がある。編集委員会を早期に立ち上げ、現場の要求に応えていくようにしたい。全労連編の『2004年度ビクトリーマップ』および『2004世界の労働者のたたかい』への執筆に協力し、内容の充実をはかる。
(5) 必要に応じた政策提言を発表する。発表媒体は印刷物だけでなく、可能な限り労働総研のホームページをも活用する。

[4]研究所活動の充実と改善

 03年度における研究所活動の充実と改善のため、以下を重視して取り組む。

(1)研究部会活動のあり方についての検討を開始する
 2000年度定例総会方針で、労働総研10年の活動を総括し、策定した「21世紀初頭における情勢の特徴と研究課題」を土台に、情勢と運動の要請に応じた研究所活動の改善がはかられてきた。研究所設立の趣旨にそって、今日的に充実させる立場から、以下の項目について検討を開始する。

(1)研究部会のあり方について
 研究所の調査研究・政策提言活動の改善が開始されて3年を迎えるが、この改善活動をさらに前進させる。そのため、地方会員の調査研究諸活動への参加問題をもふくめ、ア)プロジェクトと各研究部会の関係、イ)各研究部会相互の連携、ウ)研究例会と公開研究会との関係など、研究部会のあり方について、04年度3月開催予定のプロジェクト・研究部会責任者会議で一定の結論を出す方向で検討する。

(2)労働運動史研究部会新設の検討
 永年懸案となっていた労働運動史研究部会新設について、検討と準備を開始する。これは、戦前・戦後の労働運動関係者からの聞き取り、資料収集の機会がますます制限される状況が生まれており、わが国の労働運動の積極的伝統を労働運動の諸政策に引継ぎ発展させるうえでも、調査を開始しなければならない。

(2)人事検討委員会の設置について
 04年度の定例総会では、役員改選がおこなわれる。総会の決定にもとづき、常任理事会の委嘱によって、04年度の役員選考に関する人事検討委員会を設置する。

(3)個人・団体会員の拡大
 03年度定例総会時の会員数は、新規会員の入会と高齢会員の死亡・退会とがほぼ同数であった。02年度末の会員数は、01年度末と比較して同数に留まった。団体会員はもとより、個人会員拡大の意識的な拡大を追求しなければならない。

(4)『労働総研クォータリー』読者拡大
 『労働総研クォータリー』は、特集によって単発的ではあるが注文の増加がある。単発読者が定期読者になってもらえるよう、企画・編集を魅力ある内容に充実し、定期読者の拡大に努力する。

(5)地方会員の活動参加
 地方会員が研究所の調査研究活動に参加できやすくするための検討については、研究部会のあり方についての検討の項でもふれたが、今後、中央・地方における各種公的委員会・審議会へ、労働者側委員とともに、公益委員として参加することが予想される。それへの対応も準備しなければならない。

(6)事務局体制の整備・強化
 労働総研の調査研究活動を機能的・効率的に推進する上で、総会の決定を具体化し、代表理事・常任理事会の適切な指導と援助のもとで活動する事務局の役割は重要である。事務局機能の効率的な運営をおこなうため、02年度から実施している、状況に応じた代表理事をふくむ拡大事務局会議の開催と事務局会議の定例化を定着させる。

(7)事務員の退職手当引当金の新設
 事務局を支える事務局員の生活保障の一環として、金額的には不十分ではあるが、退職手当引当金制度を新設する。1996年第3回常任理事会は、特別会計制度を審議し、97年度定例総会で承認された。この特別会計は、積立金科目として退職手当引当金があげられていたが、実際には積み立てられてこなかった。02年度会計監査の監査所見をも考慮して、退職金制度を新設する。これにともない、特別会計科目を「特別研究基金」と「退職手当引当金」および「その他」に明確化する。退職手当の積立額などについては、常任理事会の委嘱により企画委員会で検討する。