労働総研ニュースNo.159号 2003年6月



目   次

雇用・失業問題の特徴と雇用対策の問題点  斎藤 力

第5回常任理事会報告他



雇用・失業問題の特徴と雇用対策の問題点

斎藤 力

 小泉内閣は、経済のグローバリゼーションが進行する下で国際競争での勝ち残りを図ろうとする多国籍企業化した大企業の意向を受けて、「構造改革」路線を突き進んでいる。政府の雇用対策においても、労働力移動の促進など人件費コストの削減を図ろうとする資本のねらいに沿った施策が強められ、労働者にかつてない「痛み」を強いている。本報告では、(1)深刻さを増している日本の雇用・失業問題の特徴、(2)それに対する政府の雇用対策とその問題点、(3)雇用対策を担う職業安定行政の現状とそれをめぐる諸問題、の3点について述べることとする。

I 今日の雇用・失業問題の特徴

 日本における今日の雇用・失業問題の特徴は、失業問題のかつてない深刻化と、不安定雇用の拡大にある。

1 拡大・長期化する失業
 日本における失業問題を最もよくあらわす統計は総務省「労働力調査」であり、それを中心にいくつかの特徴をあげることとする。
 第1は、完全失業率が過去最悪の水準にあることである。2003年4月の完全失業率は5.4%、2002年平均の完全失業率も5.4%で、高水準状態が続いている。この1年間の完全失業者数も330〜380万人の間で推移している。
 第2は、統計上は失業者としてはあらわれないが実質的な失業状態にある人々(非労働力人口のうち、就職の意欲がありながら「適当な仕事がありそうにない」ために現在は求職活動をしていない人)が207万人もおり(「労働力調査」2003年1〜3月平均)、これらの人を含めると実質的な失業率は8%にも達する。
 第3は、4月の就業者数が25か月連続(前年同月比―27万人)、雇用者数は2か月ぶりの減少(同―6万人)となっていることに示されているように、就業および雇用の場が長期にわたって収縮していることである。これは、今日の日本経済が雇用吸収力を大きく失ってきていることを示すものである。不況の長期化に加え、多国籍企業化した大企業が生産の海外移転を大規模に進めていることもその大きな要因である。
 第4は、失業が長期化する傾向を強めていることである。10年前の1993年には、完全失業者のうち失業期間が1年以上の人は15.3%であったが、その後は急上昇をみせ、2003年1〜3月(平均)は31.1%とこれまでで最も高い割合となっている。長期化する不況の下で、いったん失業するとその後の再就職はきわめてきびしいことを物語っている。
 第5は、失業中の生活がきわめてきびしい状況に置かれていることである。総務省「就業希望状況調査」(2002年10.11月期平均)によると、完全失業者の収入状況は、調査時点での完全失業者349万人のうち最も多いのが「収入なし」の172万人で約半数を占めている。一方、「雇用保険(失業給付)」と答えているのは70万人で、完全失業者全体の2割に過ぎない。これは日本の雇用保険制度の大きな問題であり、「セーフティ・ネット」としての機能を果たし得ていないと言わざるをえない。
 第6は、若年失業問題が深刻な社会問題となっていることである。4月の15〜24歳の完全失業率は(季節調整前)で、全年齢区分の中で最も高くなっている。高校・大学卒業予定者の就職内定率も低迷しており、2002年3月卒業者のうち、進学も就職もしなかった人は大卒2割、高卒1割となっている。定職に就か(け)ない、いわゆる「フリーター」は推計で200万人以上とされているが、実際にはそれよりもはるかに多い「フリーター」の存在が指摘されている(注1)。いずれにしても、将来への不安を抱えて毎日を過ごさざるをえない若者が増えていることは間違いない。
 これに対して小泉内閣は、かつてない高失業状態の一刻も早い改善に全力をあげるどころか、「構造改革」の過程では失業率はさらに上昇すると公言し、企業によるリストラ強行を後押しさえしている。

2 増大する非正規雇用・不安定雇用
 失業問題の深刻化とともに、非正規雇用労働者の増大とその労働条件の悪化も大きな特徴となっている。これは、日本の雇用の質が大きく低下していることを示すものである。
 「労働力調査」(2003年1〜3月平均)によると、非正規の職員・従業員(パート・アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託、その他)は1496万人で、役員を除く雇用者4941万人の30.3%を占めている。
 非正規雇用労働者の増大とともに、労働条件の「底割れ」ともいうべき事態が進行している。非正規雇用労働者の中で最も高い比率を占めるパートタイム労働者の賃金(平均時給)は900円にも達しないという、極めて低い水準に据え置かれている。その一方で、かつては補助労働者的な存在であったパートタイム労働者も、今日ではその多くが正規雇用労働者に劣らない労働と責任が負わされるようになっており、パートタイム労働者の不満では「賃金が安い」が最も多くなっている。
 2000年度から2001年度の1年間に26.1%増と大幅な伸びを見せた派遣労働者(2001年度は約175万人)の賃金も、労働者派遣事業の対象業務の拡大につれて低下する傾向が強まり、2001年9月時点の調査によると、全体の平均年収は239.5万円となっている。中でも、派遣労働者の4割強を占める「事務用機器操作」業務に従事する労働者の賃金は204.7万円にしかすぎない。
 2001年における日本の民間労働者の年間平均給与は454万円で、97年の467万円をピークに低下している。(国税庁「民間給与実態統計調査」)これは、資本、政府が一体となった賃金抑制攻撃の結果であるが、その賃金水準さえ大幅に下回る、年間賃金が200万円前後の非正規雇用労働者の増大は、労働者全体の労働条件をいっそう引き下げる「重し」となるものである。
 日本を代表する経営者団体である日本経団連は、昨年12月に発表した「経営労働政策委員会報告」で、「派遣社員、有期雇用をはじめとするさまざまな雇用形態」の活用を主張している。ここには、短時間雇用、有期雇用、間接雇用、在宅勤務などさまざまな就業形態、雇用形態を組み合わせ、正規雇用労働者を減らして、より低賃金で雇用調整のしやすい非正規雇用労働者への置き換えをすすめ、人件費コストを大幅に削減しようという資本の戦略があからさまに示されている。

II 政府の雇用対策の問題点と矛盾

1 雇用対策の特徴と問題点
 政府は、1998年4月の「緊急雇用開発プログラム」以降、今日に至るまでの間に、ほぼ年2回のペースで雇用対策を講じてきた(注2)。
 日本では1990年代半ば以降、「雇用の流動化」促進が財界を中心に主張され、政府の雇用対策にも反映されるようになったものの、「緊急雇用開発プログラム」や同年の「雇用活性化総合プラン」においては、なお雇用の維持・安定対策や解雇等の防止が雇用対策の重点として掲げられており、労働力流動化の促進が施策の最前面に出るには至っていない。しかし、失業情勢が急速に悪化した時期に策定された「緊急雇用対策」(1999年6月)になると施策の内容が大きく変わり、雇用対策のトップに民間企業による雇用の創出とともに迅速な再就職の促進が位置づけられ、労働力流動化の促進が前面に押し出されるようになった。最も新しい「改革加速のための総合対応策」では、民間による労働力需給調整の活性化・多様な就業形態への対応が雇用対策の重点の一つとされ、雇用安定に対する国の責任・機能の後退と民間労働力需給機関による代替も強調されるようになっている。
 「多様な就業形態による就労の促進」は、言葉の響きがいいが、要は、長期・安定雇用の正規雇用労働者を非正規雇用労働者に置き換え、人件費コストを削減しようというのがねらいである。第156回通常国会には労働基準法、職業安定法、労働者派遣法、雇用保険法を抜本的に改悪する法案が提出された(注3)。これらの法案が成立することになれば、雇用対策は今後より労働力流動化の促進、失業の隠蔽(不安定雇用のさらなる拡大)に向かうことは間違いない。
 雇用対策は補正予算がらみで策定されることが多く、時には国政選挙に向けた目玉対策とされることもある。したがって、一般的に雇用対策の立案・企画から施策の具体化までの期間は極めて短く、担当の部局では「突貫工事」的な作業を強いられることが多い。そのため、多くの雇用対策は明確な政策理念や中長期的なビジョンを欠く傾向が強く、従来とは明確に考え方の違う施策や従来の枠組みを大きく踏み出す施策が、何の説明のないままに突如打ち出されることもある。内閣府の権限が強化された2001年1月以降、こうした傾向が顕著となっている。
 その代表的な例の一つが、「総合雇用対策」(2001年9月)の一環として創設された移動高年齢者等雇用安定助成金である。移動高年齢者等雇用安定助成金は、資本関係が50%超の子会社が親会社から移籍出向を受け入れた場合に支給される助成金である。厚生労働省はそれまで、安易な雇用調整を促進しかねないとして、子会社への移籍出向は助成金の支給対象として認めていなかった。そのことからすれば、この助成金の創設はそれ以前とは180度政策方向が違うものであるにもかかわらず、政府は「総合雇用対策」の中心的な施策の一つとして同助成金を導入したのであった。その背景には、子会社への有無を言わせぬ転籍(事実上の解雇であり、転籍後は賃金を3割程度削減するというもの)などによって11万人にも及ぶ大リストラ計画を進めているNTTの動向や、会社分割法制定などに対応するねらいがあったものと考えられる。
 いずれにしても、近年の雇用対策は、雇用の安定を図るというよりは、大企業を中心として強まっているリストラをいかに支援していくかという観点から策定されていることは疑いのない事実である。
 中には、「緊急雇用対策」(1999年6月)によって創設された「緊急地域雇用特別交付金事業」(2002年に「緊急地域雇用創出特別交付金事業」として改編)のように、失業者の生活維持・就労保障にとって活用しうる制度もあるが、就労期間が6か月に制限されており、長期失業という問題に対応できていないこと、政府は事業の恒常化を否定していることなど様々な問題があり、労働組合や地方自治体等から制度の充実・確立を求める声が高まっている。

2 労働者への犠牲転嫁がもたらす矛盾
 政府の雇用対策は、すでに述べたような経営者側の雇用戦略に沿って、大企業を中心としたリストラによる大量の離職者の発生を容認し、これらの労働者の正規雇用から非正規雇用への誘導を支援・促進するものとなっている。ここ2、3年の雇用対策は特にその傾向を強めており、現在展開中の「不良債権処理の加速策」に伴う雇用対策も、労働者の産業間、企業間移動をすすめながら、彼らをパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者、請負労働者など、置き換えのききやすい雇用形態に誘導する性格のものとなっている。
 しかし、労働者に対する政府・財界の攻撃は、同時に労働者はもちろん、企業自身にもさまざまな矛盾をもたらすものとなっている。
 第1に、今日のリストラは中間管理者はもちろん、若年層にまで及ぶすべての労働者を対象としており、「労使関係の安定」を誇ってきた日本の企業社会に大きな矛盾を生み出していることである。企業は、成果主義などを通じた個別管理を新たな労働者支配の手法として導入しているが、これは先輩から後輩への技術や知識の伝承、職場のチームワークによって良質の製品・サービスを提供するという雰囲気を職場から排除することとなっている。
 第2に、労働力流動化の促進や人件費コストの削減が、企業内訓練(OJT)を通じて従業員の能力を高めていくという、日本の企業がこれまで持っていた底力を急速に弱めていることである。政府の雇用対策では「民間活力」を利用した能力開発の促進に重点を置いているが、目立った効果を上げているとは言えない。こうした事態が続けば、日本企業の国際競争力が低下することは確実である。
 第3は、大企業のリストラ強行が中小企業の存立基盤を根本から脅かしていることである。日本経済を支え、雇用吸収力が大きいのも中小企業である。しかし、各種の雇用対策関係助成金は近年、労働力移動支援関係のものの比重が大きくなる一方、中小企業にとって大きな支えとなっている雇用維持のための助成金は、「生産性の低い衰退部門を延命させるもの」として縮小・整理の対象となっている。これは、地域経済にも重大な影響を与えるものである。
 労働者や中小企業のたたかいは、まだこうした攻撃そのものを打ち破ったり大きく後退させるまでには至っていないが、着実な前進が見られる。例えば、労働法制改悪反対については、共闘のレベルまでには達していないが、全労連と連合という日本の労働組合のナショナルセンターがエールを交わすという場面も見られるし、大企業の横暴なリストラ攻撃に対して、労働組合と中小企業経営者の共同が生まれている地域もあるなど、かつてない動きが見られるのも近年の特徴である。

III 職業安定行政をめぐる争点
  強まる民営化・アウトソーシングの動き

 最後に、雇用対策を行政の第一線で担当する職業安定行政の現状と、それをめぐる最近の特徴的な動きについて述べることとする。

1 職業安定行政の現状
 日本の職業安定行政を第一線の行政現場で担当するのは、厚生労働省の地方出先機関である公共職業安定所である。公共職業安定所の担当する業務は、職業相談・職業紹介、求人開拓、雇用保険業務、各種雇用対策業務などである。本省と公共職業安定所の中間には都道府県労働局職業安定部があり、公共職業安定所の行う業務の調整・指導業務を行っている。
 2002年度現在、公共職業安定所は全国に478所、主張所が109所、分室が27所設置されており、公共職業安定所の職員数は12506人となっている。日本では、1968年から総定員法がしかれて国家公務員の計画的削減がすすめられており、公共職業安定所の職員数もこの間大幅に削減され、1968年度の14553人と比べると2000人余りの減となっている。一方、行政の対象となる月間有効求職者数は1989年の135万人から1999年には254万人と1.88倍に、また雇用保険受給資格決定件数も同期間に50万人から107万人へと2.14倍という大幅な伸びとなっている。
 対労働力人口比でみた日本の公共職業安定機関の職員数は、先進国中で最低のレベルにある。こうした中で職員1人あたりの業務量は急増し、雇用・失業情勢の悪化が顕著となった1990年代末からは安定所が求職者をはじめとする利用者で終日混雑するという状況が全国共通してみられる。「1、2時間待って職業相談の時間は数分間」という状況が決してオーバーな表現ではないほどでなくなっている。職員の必死の努力にもかかわらず、利用者に対する行政サービスは低下せざるをえなくなっているのが現状である。
 こうした公共職業安定所の現状について、全労働省労働組合が作成した増員を訴える資料では、次のように述べている。
 「混雑を極める待合室、駐車場に入るのにも時間を要した後、さらに長時間待たされる来所者のストレスもピークに達し、窓口職員が暴行を受けたり、罵声をあびせられることもあり、気分の悪くなった来所者が救急車で運ばれることも珍しくありません。職員は一度机に着いたらトイレにも立てないような状況となり、精神的・肉体的な疲労は以前とは比べものになりません」
 政府の新たな定員削減計画(2001年〜2010年)では、国家公務員を10年で10%削減する方針となっており、公共職業安定所の職員数も業務量の急増にもかかわらず毎年数十人規模で削減されている。労働者・国民の勤労権をこれ以上後退させないため、公共職業安定所職員の大幅な増員が大きな課題となっている。

2 強まる民営化・アウトソーシングの動き
 新自由主義的な政策を推進する小泉内閣は、「小さな政府」づくりに狂奔している。内閣府に設置されて規制改革の推進を担当している総合規制改革会議は、昨年12月の第2次答申で「民間でできるものは官は行わない」という基本的スタンスの下で、公共職業安定所の民営化・業務のアウトソーシングを最重点項目の一つとしている。
 これまでは様々な問題をもちつつも、労働政策に関する重要方針の決定は政労使の三者で構成する労働関係の各種審議会での合意を原則としてきたが、2001年1月の中央省庁再編による内閣機能の強化によって、内閣府が各省庁の上に君臨する形となった。労働政策に関しても総合規制改革会議の答申が大きな位置を占め、政策の基本的な枠組みがそこで決められるようになり、審議会の実質的な機能は弱体化させられた。総合規制改革会議は、15人の委員全員が規制緩和推進の立場に立つ者によって占められ、しかも、そのうちの2人は雇用・労働分野の規制緩和によって大きな利益を手にできる大手人材ビジネス会社(リクルート社、ザ・アール社)の社長という、異様とも言える構成となっている。公共職業安定所の民営化、業務のアウトソーシングの動きも、大手人材ビジネス会社の主張を取り入れたものであることは明らかである。こうした中で、2001年の臨時国会では小泉首相自らが「今後、ハローワーク(公共職業安定所)の民営化論も含めまして、よく検討していきたい」と述べるなど、安定所民営化は政府首脳の大きな関心事ともなっている。
 一方、厚生労働省は今のところ、公共職業安定所の民営化等に対しては抵抗する姿勢を崩していない。しかし、民営化論の動きに押される形で、職業紹介業務のアウトソーシングを徐々に進めている。「総合雇用対策」(2001年9月)においては、民間の再就職支援会社を通じて雇用を行った会社に対して助成金を支給する措置を講じているし、「改革加速のための総合対応策」(2002年10月)では、公共職業安定所に登録した求職者の一部の職業相談・職業紹介を民営職業紹介事業者に委託するという施策も盛り込んでいる。また、公共職業安定所は職員数が不足しているために求職者に十分な対応ができないとして、時間をかけた職業相談は外部から募集する相談員に委ねるという施策も講じている。このことは、職員は短時間で数をこなす職業相談・職業紹介を、非常勤職員は時間をかけた、ていねいな職業相談・職業紹介を行うという、公的機関としては本末転倒の状態を招きかねないものである。
 日本では1988年に、「リクルート事件」という政治家・高級官僚が関与する大疑獄事件が発覚した。労働省(当時)では省のトップである事務次官が逮捕されたが、それは就職情報を独占しようとしたリクルート社からの働きかけを受けて便宜を図ろうとした責任が問われたものであった。人材ビジネスは、実態が不透明な請負事業を含めるとすでに数兆円に達していると思われ、将来は「10数兆円市場」になるとも言われる。
 日本では、ILOが1997年に採択した第181号条約を理由に、「官民連携した労働力需給調整機能の強化」との主張が強まっているが、同条約における労働者保護の充実という政府が果たすべき重要な側面が意図的に覆いかくされる傾向が強い。公共職業安定所の民営化、業務のアウトソーシング等による国民の勤労権の後退か、公的職業安定機関の充実による勤労権の保障か、このことが日本においても鋭く問われている。

 (注1)労働省「平成12年版労働白書」は、1997年時点の「フリーター」を151万人と推計している。これに対して労働科学研究所の赤堀正成氏は、「労働白書」の推計は「フリーター」の数を過小にあらわしており、90年にはすでに177万人の「フリーター」が存在し、その後、95年には242万人、2000年には379万人、2001年には409万人に達していると指摘している(赤堀正成「フリーター―新自由主義改革の落とし子―」『労働の科学』2002年2月号)。今年の「国民生活白書」でも、「フリーター」が1990年の183万人から2001年の417万人へと大幅に増加していると述べている。

 (注2)(1)緊急雇用開発プログラム(1998.4)、(2)雇用活性化総合プラン(1998.11)、(3)緊急雇用対策(1999.6)、(4)経済新生対策に基づく雇用対策(1999.11)、(5)ミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策(2000.5)、(6)日本新生のための新発展政策(2000.10)、(7)緊急経済対策(2001.4)、(8)総合雇用対策(2001.9)、(9)改革加速のための総合対応策=総合デフレ対策(2002.10)

 (注3)第156回通常国会に提出された主な法案およびその問題点は次のとおり。このうち、雇用保険法は4月25日、職業安定法および労働者派遣法は6月6日、労働基準法は6月27日、それぞれ「改正法」が成立した。

 なお、労働基準法「改正」法案では、「使用者は労働者を解雇できる。ただし、合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効」として、使用者による解雇の自由を明示していたが、労働組合の反対運動、野党4党の共同などによって政府・与党は衆議院段階で「法案」の修正を迫られ、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と修正されることとなった。また、有期労働契約の上限を現行の1年から3年に延長することについては、使用者による「人身拘束」を避けるため、附則において「(労働者は)労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができるものとする」との規定を加えることとされた。
 さらに、労働政策審議会が答申した法案要綱では「金銭解決」条項が盛り込まれていたが、これは使用者による不当解雇をやりやすくするものだとの批判が高まり、政府は法案提出段階でこの条項の削除を余儀なくされた。しかし、総合規制改革会議等では、「金銭解決」を今後も引き続き検討事項とすべきとしており、予断を許さない状況が続いている。

1 労働基準法
(1)使用者による解雇自由を容認 労働者保護法であるにもかかわらず、使用者による解雇の原則自由を明記。正当な理由のない解雇は無効とされているものの、労働者側にその立証責任が負わせられる可能性もある。解雇無効となった場合でも、労使双方による金銭解決の道を開く案が出されたが、労働組合の強い反対で削除された。
(2)有期労働契約 期間の上限を、原則1年から3年に、専門職等は3年から5年に緩和。契約更新時には、雇い止め(解雇)や労働条件引き下げの恐れがあり、若年定年制の復活も懸念される。
(3)裁量労働制 企画裁量型労働制の要件を緩和。何時間働いても、予め定められた時間だけ働いたとみなす制度である裁量労働制の緩和は、長時間労働、サービス残業(不払い労働)をまん延させ、過労死を拡大させる恐れが強い。

2 職業安定法
 求職者からの手数料徴収の要件緩和 現在は就職時の賃金が年収1200万円以上の経営管理者、科学技術者の年収要件の引き下げ(700〜800万円に)(省令「改正」)

3 労働者派遣法
(1)労働者派遣期間の延長 上限を原則1年から3年に緩和し、専門的な業務(現在は指導で3年)については制限を撤廃する。正規雇用労働者の派遣労働者への置き換えを進めることになる。
(2)派遣対象業務の拡大 これまで禁止されていた製造の業務への派遣を容認。派遣労働者への代替を進めるとともに、低賃金化を加速させることは必至。

4 雇用保険法
(1)保険料の引き上げ 失業給付にかかる保険料(労使折半)を、1000分の2引き上げ(2年間は現行保険料に据え置き)。
(2)給付の引き下げ 給付水準(基本手当日額)および所定給付日数の引き下げ。基本手当日額を約4分の1引き下げ。自己都合離職者の所定給付日数を現在の最高180日から150日に引き下げ。

(会員・全労働省労働組合中央執行委員)

(本稿は、3月25日に開かれた第7回日独労働セミナー=愛知労働問題研究所主催、の報告原稿を元に作成したものです。)

 




第5回常任理事会報告

 第5回常任理事会は、03年6月7日、ユニオンコーポ会議室で、大木一訓代表理事を議長に開催された。

I 報告事項
1)常任理事会決定の遂行状況や一連の事務処理について、藤吉事務局次長が報告した。特に、埼労連から申し入れのあった地域経済振興と中小零細企業労働者についての労働総研・埼労連との共同調査の件と、愛労連・愛知労働問題研究所から申し入れのあった労働総研研究例会シンポジウム開催の件については、積極的に対応することが確認された。
 大江代表理事から、全労連との懇談(6月2日)では、それぞれの立場から、協力・共同の具体化についての提起があり、その実現に向けて検討を進める必要であることなどが報告された。また、JMIU(6月5日)、郵産労・通信労組(6月6日)への表敬訪問が有意義であったと報告され、了承された。
 故藤本武前理事の家族を含む関係者から、解放運動無名戦士の墓に合葬するための推薦団体になって欲しいとの依頼があったことを、藤吉事務局次長が報告し、全員異議なく了承した。

II 協議事項
 2003年度定例総会方針案作成のための自由討議が、企画委員会・事務局が作成した討議のための素材をものに、第4回常任理事会から継続して行われた。

5月の研究活動

5月 7日 国際労働研究部会(公開・全労連と共催)─「世界の労働者のたたかい2003」
労働時間問題研究部会─各自執筆分担について
23日 国際労働研究部会─「世界の労働者のたたかい2004」について
社会保障研究部会(公開)─年金者組合の最低保障年金制度創設の取り組みについて
28日 青年問題研究部会─今後の研究課題について5月の事務局日誌
5月 8日 拡大事務局会議
9日 加盟単産訪問(大江・大須・藤吉)
話題提供型調査委員会
10日 第4回常任理事会
第4回編集委員会
16日 事務局会議
埼労連との共同調査打合せ
17日 自治体問題研究所第43回総会へメッセージ
27日 事務局会議
30日 全印総連創立50周年レセプション(藤吉)